ユグドラシル聖戦記外伝

4月・・・・それは春休みが終わりを告げ、新しい年度が始まる月である。

・・・・コウヘイ達の最後の士官学校生活が始まる。




士官学校編4章「BEBEREAVED」





春休みを例によって例の如くナディアで過ごしたコウヘイは寮部屋に戻って来ていた。

「ふ~っ・・・やっぱりここは落ち着くな・・・」

「・・・・なに年寄臭いこと言ってんだ、お前は・・・」

と、ツッコミを入れる約1年以上書かれなかったユウキ君。

「くぅ・・・そうだよ、長かったよ、作者め・・・・一体俺を何だと・・・・」

「・・・愚痴を言うのはいいけど、もうすぐあのクソ長い始業式が始まるぞ」

「うっ、そうだった・・・・サボるか?」

「止めとく。ユーリにバレたら延々懺悔させられそうだから」

「・・・・・尻に引かれてるんだな」

「・・・・・ほっとけ」





で、始業式の校長先生の長くて有り難いお話し中・・・

「・・・・・う~ん・・・・・」

「・・・何を神妙な顔して悩んでいるの、コウヘイ?校長先生の話を無視して・・・」

と、何か唸ってるコウヘイにそういうユーリ。

「・・・・・・・何か大事な事を忘れてる気がするんだよな・・・・・一体何を忘れてるんだ・・・?」

「・・・どうせ大した事じゃないでしょ・・・思い出せないような事なんだから」

「・・・・それもそーだな・・・」

と、『大事な事』の事はもう頭の隅から忘れ去ることにするコウヘイであった・・・・





数日後・・・・入学式の日・・・

「今年も結構沢山入ってきたみたいだな~」

「・・・・そうみたいだな・・・」

と、寮部屋の中でそういうコウヘイとユウキ。ちなみに2人は入学式には参加していない(参加するしないは自由である)。

「・・・・そういえば、こっちに送られてきた手紙、まだ読んでないな・・・」

と、机の上にある手紙の束を確認していくコウヘイ。

「・・・・・・・・・ん?トラキアから・・・・?」

と、トラキア城から送られてきた手紙がある事に気付くコウヘイ。

「珍しいな、向こうから手紙がくるなんて―」

と、手紙の内容を見ているうちにさーっと血の気が引いていくコウヘイ。

「おい、コウヘイ、どうしたんだ?なんか顔色悪いけど・・・・」

「ユウキ・・・・・」

「何・・・・・・?」

「今すぐドアの鍵を閉めろ・・・・・!!」

「はい?」

「早くしろ!!」

が、コウヘイのこの言葉はすでに時遅しというヤツであった・・・



ガチャ!



「お兄様ーー!!」

と、唐突にドアが開けられて10歳ぐらいの少女が寮部屋の中に入って、コウヘイに飛びつこうとする。



スカッ!ガターンッ!!



と、それを避けるコウヘイ。で、本棚に激突する少女。

「俺は妹に抱きつかれて喜ぶ趣味はないんだ。気安く飛びつくな!!」

「ううっ、酷い・・・・・」

「・・・・・っていうか、妹・・・?」

と、さも当然のような質問をするユウキ。

「・・・・・・コイツ、俺の妹・・・・」

「は~い、ミホっていいま~す!ペガサスナイト目指してま~す!」

と、わけの分からないテンションで自己紹介をするミホ。

「へぇ・・・結構可愛いじゃん」

「え?可愛い?本当に!?きゃ~、嬉しい~」

「冗談でもそんな事言うなよ・・・・コイツ、おだてに弱いからそれで一生付きまとわれても知らんぞ。俺はお前と兄弟になるのは嫌だからな」

「・・・・お前なぁ・・・妹を可愛いと思わないのか?っていうか兄弟って・・・」

「全然思わない。兄弟のことはもう気にするな」

「・・・・・・・・そうだな、女にはユーリしか興味を示さないお前にそんな事聞いても無駄だったな。俺が馬鹿だったよ・・・・兄弟のことも気にしない事にする・・・・」

「何か気になる言い方だな、それ・・・・」

「お兄様、ユーリ一筋だもんね~」

「・・・・あ、お前、まだいたの?早く帰れ」

と、妹にキツイ一言を浴びせるコウヘイ。

「・・・・お兄様、全て完璧のこの私の一体何処が悪いっていうの!?」

「全部。特に自己中なところ」

「・・・・・・・・・」

と、コウヘイの一言に真っ白に燃え尽きるミホ。

「う~ん、酷い兄貴だなぁ・・・・っていうか、いくらなんでも全て完璧って・・・なぁ・・・」

「女の事なら全てお任せのユウキ大先生から見てこの馬鹿妹はどれくらいだ?」

「そーだなぁ・・・・10歳って事を考慮に入れれば60点ぐらい」

「入れなかったら?」

「25点」

「・・・・・・・・・・・」

未だに燃え尽きてるミホ。

「はぁ・・・・困ったもんだな・・・・とりあえず、部屋の外に放置しとくか」

と、ミホを部屋の外に放り出すコウヘイ。

「・・・・ところで、この子、ペガサスナイト目指してるって言ってたけど、確かトラキアに天馬はいないような・・・・」

「俺のお袋がセンティアの天馬騎士だったからな」

「ふ~ん・・・・」

「それにしても、俺としたことがコイツが入学することをすっかり忘れるとは・・・・」

「そんなに嫌なのか?」

「・・・・・お前、俺がどんなに苦労してたか分からないからそんな事が言えるんだよ・・・」

と、半分死んだような目で言うコウヘイ。

「・・・・そ、そっか・・・ま、まぁ、頑張れ・・・・」

「・・・・ふっ・・・」

と、遠い目をするコウヘイであった。





さて、その数日後・・・・

「さぁ~て、今日から戦闘の授業再開だな!女の子達に俺のカッコよさをアピールするぜ!!」

「・・・・気合入れるのは別にいいんだけどさ・・・俺の記憶が確かならお前、春休み前にうちのクラスの女子を口説いて射止めなかったか?」

と、それぞれ武器を手に運動場へ向かうコウヘイとユウキ。

「ふっ、それはそれ、これはこれ・・・・」

と、あっさり言いやがるナンパ野郎(爆)

「おい、後ろにその彼女がいるぞ・・・・」

「えっ・・・?」

「ユ~ウ~?何を女の子達にアピールするんですって?」

と、彼女に詰め寄られるユウキ君。

「い、いや、あはははは、ラヴィアン、これには深~いわけが・・・・」

「・・・春休み前には『君の言葉は小鳥のさえずり、君の瞳は星の瞬き』なんて言ってたのに!」

「うあ。そんな恥ずかしいこと言ったのか?コイツ。同じ人間としてどうかと思うな」

と、ツッコミを入れるコウヘイ。

「うぅ・・・そんなツッコミよりコウヘイ、早く助けてくれ・・・・」

「いや、そういうややこしい話に割り込んで痛い目見たくないからな」

「ほら、諦めてきびきび歩きなさい!」

と、ラヴィアンに引っ張られるユウキ。

「コウヘイぃぃぃぃ!!早く助けろぉぉぉぉ!!」

「ふっ、お前の事は一生忘れないよ・・・1週間ぐらいは」

と、哀愁を込めた台詞を言うと、コウヘイはさっさとその場を立ち去った。





「あ、コウヘイ!」

修羅場から立ち去ったコウヘイは今度はユーリに話し掛けられた。

「ユーリ・・・魔法の訓練か?」

と、杖で色々しているユーリに訊ねるコウヘイ。

「ええ、プリーストってこれぐらいしかすることないし・・・一応、攻撃も基本ぐらいは習うけど・・・」

「プリーストは攻撃魔法使えないからな・・・この授業に最も関係無さそうな気がする。ところで、妙に憂鬱そうな顔してるがどうかしたか?」

「どうかしたか?・・・って言われると別にどうもしてないんだけど・・・ちょっと心配な事はあるわね・・・」

「何が?」

「私の知り合いの子、今年から戦闘の授業受けるんだけど・・・どうも心配なのよね・・・・」

「心配?お前の知り合いって事はそれなりの地位のヤツだろうが・・・」

「そうなんだけど・・・昔っから運動音痴だったから・・・」

「・・・なるほど、それは心配―」

と、ここまで言いかけてコウヘイは急に上を見上げた。

「ユーリ、離れてろ」

「えっ・・・・あっ!?」

と、ユーリも、コウヘイの言葉を聞いて上を見上げて、彼の言葉の意味を理解する。

・・・・二人目掛けてくるくると剣が回転しながら落下してきていた。

「危ない!!」

下級生がコウヘイに向かってそう言う。

「・・・・ふん・・・・」

コウヘイはユーリが離れた事を確認すると、鋼の槍を落下してくる剣目掛けて投げつけた。



ガギィン!・・・・ドサッ!!



コウヘイの投げた槍は見事に剣の中心に命中し、そのまま人のいないところへと落ちた。

まわりでは突然起きたアクシデントでざわざわしている。

「・・・・やれやれ・・・」

と、余裕そうな感じで・・・実際彼にとって余裕だったが・・・呟くコウヘイ。

そこへ、

「す・・・すみませんでした・・・」

と、剣を誤って飛ばしてしまったらしい下級生が謝りに来る。

「・・・・・・・・・・・武器を扱う時は真剣にやれよ」

と、落ち着いた感じで言うコウヘイ。だが、彼にとっては至極当然の事である。戦う以上、武器をふざけて扱っていては間違いなく死を招くのだから。

「・・・・・・・は、はい」

あまりに落ち着き払ってるコウヘイに空恐ろしくなったのか、下級生はそう言うと、頭を下げて逃げ帰るかのように友人と思われる他の下級生の所へ戻って行った。

「ふぅ・・・・どうにかなった・・・・・・のか・・・・?」

「あ、あぁ。それにしても凄い人もいるもんだ」

「ホント・・・すげぇよなぁ・・・俺もあのぐらいになれたらな・・・・」

と、いう下級生達の会話を微かに聞きながらコウヘイも槍を拾ってユーリの所へ向かう。

・・・・数年後、彼らは同じ戦場で戦うのだが、それはまだ先の話である・・・・





「コウヘイ、大丈夫?」

と、心配そうにコウヘイに訊ねるユーリ。

「見ての通り、全然大丈夫だ」

と、あっさり言うコウヘイ。

「そう・・・・でも、ショウったら・・・・後で御灸を据えて上げないと・・・」

「知り合いか?」

「さっき言った子よ。さすがにまだ忘れてないでしょ?」

「ああ・・・・・だが、はっきり言ってあいつ・・・・戦うこと自体微妙に間違ってる気がするが・・・」

「過保護に育てられたから・・・・」

「過保護で育てるとロクな事ないからな~・・・・」

「それは経験上?」

「ああ。ミホを見ればわかるだろ?親父も止せばいいのにお袋にそっくりだからって溺愛しちまって・・・」

「ふふ・・・・あまりひがんじゃ駄目よ?」

「誰がひがんでいるんだか・・・・」

コウヘイは溜息を付きながらそう呟いた。





それからしばらくして、夏休みになった。

当然の事ながらコウヘイはナディアで休暇を過ごしていた(ちなみにミホは無理矢理トラキアへ帰らせた)。

とりあえず、宿題しながら時間を無駄にだらだら過ごしていたある日・・・・

「よっ!遊びに来たぜ、コウヘイ」

と、いきなりコウヘイの部屋に・・・さすがにまだユーリと同室ではない・・・入ってくるユウキ。

「・・・・・・お前・・・・・・どうやって城の中に入ってきたんだ・・・・?」

「それはもちろん、兄貴のツテで・・・」

「あ~、カルディナの城で庭師やってるって言う・・・」

「違う!将軍!!」

と、ツッコミを入れるユウキ。

「そうだっけ?」

「・・・・いいよ、お前の記憶力は期待するだけ無駄だから・・・」

「・・・・・で、何しに来たんだ、お前は?」

「いや、暇だったから」

「・・・・・・・・」

と、頭を抱えるコウヘイ。

「あ、コウヘイ、勉強してたの?・・・っていうか、ユウキも来てたの?」

と、唐突にドアを開けてユーリ登場。

「どうしたんだ、ユーリ?」

「ちょっと頼みたい事があるんだけど・・・」

「頼みたい事?」





数十分後、コウヘイ・ユーリ・ユウキの3人はナディア城の地下避難通路へと来ていた。

「最近、ここから呻き声が聞こえるって噂になってるのよ。なんだか、幽霊がいるだのそんな噂にまでなってるんだけど・・・明日はシオン様が来るから早く解決しておきたいのよ・・・・実際なんと言うか、言葉にし難いんだけど、そんな邪気って感じのものも感じるし・・・・」

「で、それを俺が調べろ・・・と」

「そういう事☆」

「・・・それで、なんでユウキまでいるんだよ」

「いや、楽しそうだから」

「・・・・・・」

呆れたのか、真っ暗な道をランプ片手に黙って進み始めるコウヘイ。

「あ、待ってよ、コウヘイ」

ユーリも彼の後ろを追う。

「う~ん・・・・この雰囲気、肝試しにはいいなぁ・・・って、おい、置いてくなよ!」

と、ユウキも慌てて二人の後を追いかける。

「・・・・・それにしても、この避難通路、何処まで続いてるんだ?」

「グランビア城まで。でも、道があまりに複雑過ぎて誰も使う事が出来ないんだけどね」

「・・・・・・・・はぁ~、ユグドラシルの貴族の考える事は分からないな~・・・そんな無駄な避難通路造るとは・・・・トラキアじゃあ考えられないぜ」

「貧乏らしいしな、トラキア」

「避難通路ないしな。トラキア城」

そう話しながら3人は通路を進む。





数時間後・・・

「・・・・・・・なぁ・・・・・」

「何?」

「・・・・思ったんだけど、ユーリ、お前、地図とか持ってるのか?」

「・・・・・・・・・・・」

コウヘイの言葉に固まるユーリ。

「・・・・・・・やっぱり持ってなかったんだな・・・ちゃんと帰れるのか?」

「・・・・・・あは、あははははは・・・・・」

と、乾いた笑い声をあげるユーリ。

「コウヘイが道を覚えるなんて間違いなくないしな・・・・」

「どうするんだよ・・・・今なら後ろに戻れば帰れるけど」

「まだ一本道だからな。これから枝分かれしてくかもしれないが」

「それじゃあ、一旦戻り―」

と、言いかけて、ユーリはいきなりガクッと膝をつく。

「ユーリ!?」

と、驚くユウキ。

「安心しろ、神託が降りてるだけだ。」

「神託?」

「なんて説明するか・・・作者も午前3時過ぎにそういう事をわざわざ調べたくないらしいが、まぁ、神サマの声が聞こえてくるってものでいいんじゃないか?よく知らんが必ず当たるらしいぞ」

「・・・・・・・・電波?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ユウキのその一言でこめかみの上辺りに青筋を立てるコウヘイ。

「・・・・ま、まぁ、そ、そう怒るなって・・・な?」

「・・・・・とてつもなく殴りたい衝動を感じたんだが、あまり騒ぐと聞こえなくなるみたいだし、今回は忘れてやろう」

「そ、それはどうも・・・・っていうか、お前、初めて見たわけじゃないみたいだけど、驚かないのか?」

「もう付き合い長いから見慣れてるし・・・・それに慣れると可愛く見えるぞ」

「・・・・・・・・・そうなのか?」

と、さすがにそれには首をかしげるユウキ君。

そこへユーリが起き上がる。

「大丈夫か?ユーリ」

「ええ、平気よ・・・・」

「で、何が聞こえたんだ?」

「・・・・・・この奥にマイラの配下の亡霊が眠ってるって・・・」

「マイラ・・・・・って何だ?」

コウヘイのその一言にピシッと固まるユーリとユウキ。

「こ、コウヘイ・・・・貴方ねぇ!私たちの御先祖様が倒したんでしょうが!それでもダインの直系の子孫!?」

と、キレるユーリ。

「ゆ、ユーリ、落ち着け・・・・これは冗談だ。マイラが何かなんてわかってるに決まってるだろ?」

と、しどろもどろに言うコウヘイ。

「本当に?」

「も、もちろん・・・・」

「コウヘイが言うと死ぬほど胡散臭いからな・・・・」

と、横から口を出すユウキ。

「じゃあ、聞くけど、マイラって何なの・・・・?」

「・・・・・・・・・ヘイムの姉とか・・・・」

・・・・・・・・・・・・・・

「・・・・この・・・・・馬鹿!!脳味噌醗酵ヨーグルト!!」

「・・・・キレたい気持ちもわかるけど仮にも恋人に対してそれは酷すぎると思うぞ、ユーリ」

しかし、何気に当たってる辺り恐ろしい限りである(爆)。

「ユーリ、落ち着けって!話が完璧に違う方向に行ってるぞ!?な?」

「・・・・はっ、確かにそうね・・・・で、マイラの配下の亡霊が封印されてたんだけど、その封印が何かの拍子で解けて目覚めてるみたいなの」

「ふむ・・・・・それで?」

「で、どうも、それが呻き声の原因みたいね。ゾンビとかもいるらしいし」

「ああ、100m先に12匹のゾンビがこちらに向かって歩いて来てるのが見えるしな」

「それなら話が早・・・・・・・・・って、えっ?」

「・・・ちょっと待て、コウヘイ・・・・・この暗闇の中でもそこまで判別つくんかい・・・・」

「明るい場所ほどでもないけどな」

と、あっさり言い切るコウヘイ。

「・・・・・で、どうする、ユーリ?一旦戻るのか?あまり考える時間はないぞ」

「・・・・・このまま進みましょう。早く封印し直さないといけないわ・・・・2人とも、もちろん付いて来てくれるよね?」

「・・・・愚問・・・だな。お前が行くというのなら当然俺も行く。お前1人を行かせるわけないだろ?」

「絶対にそう言ってくれると思ったわ、コウヘイ」

と、言いながら見つめ合うコウヘイとユーリ。

「お~い、2人だけの世界に入らないでくれないか?」

「・・・・・お前もくるんだろ?」

「ま、ここまで付き合っちまったからねぇ・・・・」

「そういうわけだ、行くぞユーリ。危ないから俺の後ろにいろ」

「わかったわ」





と、いうわけで、先に進むことになったコウヘイ達3人。

「う~ん・・・気持ちいいぐらいゾンビがいるな・・・」

「・・・・・気持ちいいのか?ユウキ」

「・・・・すまん、やっぱり今のは無しって事で・・・・」

「・・・・・2人とも何言ってるんですか・・・・私は戦えないんだから早く何とかしてよ」

「了解」

と、言ってゾンビを鋼の槍で薙ぎ払うコウヘイ。

ユウキも負けじと銀の剣でゾンビを斬り倒す。

「で、この交差点はどっちに行けばいいんだ?」

「・・・・・・・右の方へ」

「OK」





と、いうわけで、並み居るゾンビを薙ぎ払いつつ、奥へと進んでいくコウヘイ達御一行。

「ふむ・・・・456m31cm2mm先に棺桶が見える」

「・・・・んな細かい距離までわかるんかい、お前は・・・・」

「・・・・まぁな」

「・・・・あそこに多分、憑依された人が入ってると思うわ」

「・・・・・とりあえず、一筋縄では行かないんだろうなぁ・・・しかし、憑依した後にわざわざ棺桶に入ってる必要あるのか?」

「コウヘイ、ヴァンパイアだって棺桶に入ってるでしょ?ちなみにあの棺桶には元々魂を封印する器があったはずなんだけど・・・」

「いや・・・・それとこれは明らかに違う気が・・・・」

とか言いつつ、3人は棺桶の側に近づく。

そこへ、



ギギィ・・・



と、棺桶の蓋がコウヘイ達が到着するのを待っていたかのように開く。

そして、中からグランビア軍の兵士の服を来た・・・おそらく、グランビア軍の兵士に憑依しているのだろう・・・男が現れる。

「・・・・・・ダインとブラギか・・・・部外者もいるようだが」

男の言葉に、コウヘイは眼を細めて鋼の槍を構え、ユーリもコウヘイの後ろで杖を構える。ユウキも、銀の剣を鞘から抜く。

「・・・一応、言っとくが、俺はダインじゃない。コウヘイだ。覚えておけ」

「フフフ・・・・安心しろ、それくらいは理解している。この者の記憶からな・・・・しかし、来たのがヘイムの女ではないのは残念だがな・・・・」

「・・・・おい、ヘイムの女って・・・・」

「・・・間違いなくシオン様の事ね・・・何故シオン様の方が良かったの?」

「・・・・それをお前たちが知る必要は無い・・・」

そう言うと、男は剣を抜いて3人の前に立ちはだかる。

「2人とも、あいつを倒そうなんて考えちゃ駄目よ。憑依を解く事が出来ればあの人は元通りになるはずだから」

「・・・・どうやって、憑依を解くんだ?」

「それは私に考えがあるわ。コウヘイ、ナイフみたいなもの持ってる?」

「持ってる事は持っているが・・・・」

「それを使うから、私に貸して」

「ああ・・・・」

そう言って、ユーリにナイフを貸すコウヘイ。

「じゃあ、私の準備が終えるまで、時間を稼いで」

「りょーかい。んじゃ、行こうぜ、コウヘイ」

「そうだな」

と、小声で会話すると、コウヘイとユウキはそれぞれ武器を持って男に飛び掛る。

が、

「しゃらくさい!!」

と、先に攻撃しようとしたコウヘイの槍を剣で受け止め、さらに、そのまま壁にぶっ飛ばす。



ズドォン!!



「ぐっ・・・!」

と、壁に穴が空くほどの勢いで激突して膝を付くコウヘイ。

「コウヘイ!!」

と、封印の準備を一時中断してコウヘイに駆け寄ろうとするユーリ。

が、頭から血を流しつつも、コウヘイは近寄ろうとするユーリに向かって睨む。

ユーリは、それを見て、ハッと我に返って再び封印の準備に戻る。

一方、ユウキの方はコウヘイの事も気になっていたが相手の方がそれを確認させるほどの隙を見せてはくれなかった。

「くそっ・・・・・」

そう言って男と鍔競り合いをするユウキ。が、ジリジリと押され続ける。

そこへコウヘイが男に向かって鋼の槍を投げる。

しかし、それを察した男は鍔競り合いで押していたユウキを蹴り倒して剣でそれを弾く。

「・・・・冗談じゃないな」

鋼の剣を抜いてそう呟くコウヘイ。ユウキは倒れたまま男に腹を踏まれている。





ユーリは、彼らが戦っている間に棺桶の方へと向かっていた。

「この中にあるはず・・・・」

と、言って、棺桶の中を探るユーリ。

そして・・・

「あった・・・・」

と、魂を封印するための器である瓶を見つけるユーリ。

「これを・・・・・」

瓶の蓋を開けて、貸してもらったナイフの刃を左手に当てようとするユーリ。

そこへ・・・・

「貴様っ!?何をしている!!」

と、男がそれに気付いてユーリの方へと向かおうとするが、

「行かせるかよ・・・・・!」

と、腹を踏まれていたユウキが男の足を掴む。

「このガキっ、邪魔をするなぁ!!」



ズドンッ!!



「うわぁ!!」

と、壁に蹴り飛ばされるユウキ。

「トドメを刺してやる・・・!」

そう言ってユーリに向かって剣を突き刺そうと飛びかかる男。

「きゃあああああ!!」



グサッ!!



「こ、コウヘイ・・・・・」

と、ユーリは自分を庇って男の剣で刺されたコウヘイを見て呆然とする。

「コイツ・・・・!」

「・・・・・・続けろ」

右肩に剣が刺さったままの状態でコウヘイはそう言う。

「でも・・・・」

「続けろ!!」

コウヘイは、男の手を掴んで口から血を吐きながらそう叫ぶ。

その叫びに答えて、ユーリは左手にナイフの刃を当てる。

「つっ・・・・」

と、手を切る痛みに声をあげながら、瓶に自らの血を入れるユーリ。

そのまま、彼女は封印のための文句を唱え始める。

「くそッ!・・・・・こんなところで・・・・・!!」

と、男は悔しそうに叫ぶ。

そして、ユーリが封印のための文句を唱え終えた時、男に憑依していた亡霊は再び瓶の中に封印されていた。

「・・・・大丈夫、コウヘイ?」

と、剣を抜いてそこから血が吹き出たりしているコウヘイにリライブをかけながら言うユーリ。

「・・・・死ぬかもと思ったけど何とか生きてるよ・・・・」

「無茶ばっかりするんだから・・・・・」

と、半泣きでそう言うユーリ。

「・・・・・つーか、俺は?」

すっかり忘れ去られていたユウキはそう呟く。

「ユウキは別に唾でもつけとけば治るでしょ?そんなに怪我も酷くないんだし」

と、冷たく言い放つユーリ。

「・・・・俺って・・・・」

「ところで、封印の方法って結局なんだったんだ?」

ユウキの事を無視してユーリに尋ねるコウヘイ。

「コウヘイに言っても無駄だと思うけど・・・ブラギの血を引く者の血液を器入れて封印の文句を言えばいいの。どうも前の封印は弱くて普通の人でも開けれるみたいだったから今回は強くかけておいたんだけど・・・・」

「強く・・・・ってどれくらいなんだ?」

「ヘイムの血筋が入ってないと開けれないぐらいかしら?」

「なるほど・・・・・」

と、包帯を巻きながら納得するコウヘイ。

「で、コイツどーするんだ?」

と、ユウキが倒れているグランビアの兵士を指差して言う。

「とりあえず連れて帰りましょう。事情はナディアでゆっくり聞くとして」

「そうだな」

こうして目的を終えたコウヘイ達はナディア城へと戻る。

・・・・・・遠い未来、再びこの棺桶が開けられる事を知るはずもなく・・・・・・





数時間後、ナディア城に戻ったコウヘイ達は兵士をとりあえず、城の医者に見せ、部屋に戻った。

「ふぅ・・・・何か、疲れたな」

「・・・・・・そうだな」

と、どっから持ってきたのか知らないけど、シャレードをグラスに入れてるコウヘイ。

「コウヘイ~・・・って何飲もうとしてるのよ、2人とも・・・」

と、再び唐突に部屋に入ってくるユーリ。

「シャレード。ユウキが持ってきた」

「ユーリも飲む?」

「いや、私達、未成年・・・・」

「そんな事は気にしない気にしない。なぁ、コウヘイ?」

「そういう事だ」

「全く・・・・まぁ、黙っててあげますけど。あまり飲まないでよ?明日シオン様に貴方を紹介しないといけないんだから」

「わかってるって・・・っていうか、俺、考えてみれば酒飲むのは初めてのような・・・」

「そりゃあいいじゃん。とりあえず、乾杯」

と、シャレードを飲むコウヘイとユウキ。

そして・・・



バタッ



「・・・・へ?」

「こ、コウヘイ!?」

一杯飲んだだけでぶっ倒れたコウヘイに驚くユウキとユーリ。

「も、もしかして・・・・コウヘイって・・・・」

「・・・・・下戸・・・・・・?」





次の日・・・

「お久しぶりです、シオン様」

「久しぶりね、ユーリ・・・・ところで、今日紹介してくれるはずだった、例の貴女の婚約者は・・・・?」

と、ユーリに訊ねるナディアにやって来たシオン様。

「あ、こ、コウヘイはちょっと今日は風邪で寝込んじゃって・・・・」

と、どこか慌てた様子で言うユーリ。

「そう・・・それは残念ね」

「そ、そうですわね・・・・・」

(まさか、二日酔いで寝込んでいるなんて口が裂けても言えないわ・・・・)

と、心の中で呟くユーリであった。





約1ヵ月半後・・・・

9月29日。

夏休みを終えて再び士官学校に通い始めたコウヘイはこの日の夜、自室でユウキとブラックジャックをしていた。

「そーいや、明日はお前の誕生日だっけ」

「・・・・・・ああ」

と、ブラックジャックをしながら話すコウヘイとユウキ。

「明日は土曜日だけど、どっか出かけるのか?」

「ユーリが外で買い物しようって言ってるからそうするつもり」

「ふ~ん・・・・俺も明日は出かけるけどな」

「ラヴィアンとか?」

「まぁな」

「・・・・・まだ振られてなかったのか」

「・・・なんだ、その言い草は・・・」

と、コウヘイにツッコミを入れるユウキ。

「・・・・・ところで、お前、卒業したらどうするんだ?」

コウヘイはユウキにそう質問する。

「俺か?そうだねぇ・・・・自由気ままに傭兵でもしながら暮らすさ」

「自由気まま・・・・か」

「お前は・・・・・ってお前の場合は簡単か」

「ああ・・・・帰ったらまた色々と大変な事になりそうだ・・・・」

「俺はお前が王様になるところなんか想像出来ないけどな」

「・・・・誰か代わってくれるなら代わって欲しいぐらいだよ」

と、溜息を付くコウヘイ。

「・・・・せめて、直系じゃなくて、傍系に生まれていたら、まだそこら辺の事を考えずにやっていけたんだけどな」

最初の最初の初期設定では傍系だったもんなぁ・・・・

「・・・・・何か聞こえたが、無視するとして、俺はそろそろ寝る。待ち合わせに遅れるとユーリはうるさいからな」

「・・・・・待ち合わせの時間、覚えてるのか?」

「・・・・・・さ、寝るか」

(・・・・・忘れてたな)

と、心の中でツッコミを入れるユウキであった。





次の日、9月30日・・・・

「ねぇ、コウヘイ、次は向こうの店に見に行きましょうよ」

「・・・・・なぁ、何で俺の誕生日なのに、お前の好みっぽい店ばかり回ってるんだ?」

「だってコウヘイに任せちゃったら、間違いなく、武器屋にしか行かないじゃない」

「・・・・・・・・・」

と、ユーリにツッコミ喰らわされて言い返せないコウヘイ。

「ほら、露骨に嫌そうな顔しないで、行きましょう」

「・・・・・俺って・・・・」





数時間後。

コウヘイはユーリに散々付き合わされた後、彼女と一緒に喫茶店で休憩していた。

「・・・・・疲れた・・・・っていうか、なんで俺のポケットマネーで色々買わされてるんだ・・・・?」

「まぁ、いいじゃない☆」

「いや、よくないだろう、絶対」

と、不機嫌そうにツッコミ入れるコウヘイ。

「もう・・・・これあげるから少しは機嫌直してよ」

そう言ってお守りっぽいものをコウヘイに渡すユーリ。

「・・・・何これ?」

「見ての通り、お守りよ。所有者の守備力を上げる効果があるの。コウヘイ、無茶ばっかりやるからこういうの必要でしょ?」

「・・・・・反省を促された気がするけど、ありがたく貰っておくよ、ユーリ」

と、ユーリに言うコウヘイ。

「うん」

ユーリはそう言って、コウヘイの顔に自分の顔を寄せる。

「ユーリ・・・・」

コウヘイも、彼女の唇に自分の唇を近づける。

そして・・・・・

「ここに居たのか、コウヘイ!!」

と、士官学校の教師が喫茶店に入って来てコウヘイ達に酷く慌てた様子で声をかける。

「・・・・・・何ですか、先生?まだ門限まで時間あると思いますが」

いいところだったのに邪魔されたコウヘイは不服そうな顔をしながらそう教師に言う。

「そんな事言ってる場合じゃない!!」

と、コウヘイに向かって叫ぶ教師。

「・・・・何かあったんですか?」

そう教師に尋ねるユーリ。彼女もコウヘイほどではないとはいえ、少し不服そうな顔をしていたが、教師の慌てぶりにすでに真顔になっていた。

「今すぐ、学校に戻れ!!大変な事になった!!実は・・・・・」





数十分後、士官学校の保健室。



バンッ!!



コウヘイは保健室の扉を思いっきり開けて入った。

そこには・・・・・

ベッドの上で白い布を顔にかけられているユウキの姿があった・・・・

「おい、冗談だろ・・・・・ユウキ・・・・」

と、呆然としながら呟くコウヘイ。

ユウキの側ではラヴィアンがずっと泣いていた。

「何でそんなものかけられて寝てるんだよ・・・!!返事ぐらいしろ!このナンパ野郎!!」

そうユウキに向かって叫ぶコウヘイ。

だが、ユウキはその言葉に何も反応したりすることはなかった。

「・・・・・・おい、ラヴィアン、何があった」

と、ラヴィアンに尋ねるコウヘイ。しかし、ラヴィアンは泣くばかりでコウヘイの質問に答えようとはしない。

「何があったかって聞いてるんだよ!!一体誰が殺った!?なんでコイツはこうなった!?」

痺れを切らしたコウヘイは、ラヴィアンの胸倉を掴んでそう叫ぶ。

「ちょ、ちょっと・・・・コウヘイ・・・・」

と、後から入ってやはり呆然としていたユーリはコウヘイのその姿を見てさすがに止めようとする。

「・・・・ひっく・・・・ひっく・・・・ユウキは・・・・ユウキは、私のせいで・・・・」

ラヴィアンの話をまとめるとこんな感じだった。

ラヴィアンと二人で出かけていたユウキは、途中で、騎士崩れの男たちに絡まれた。

色々あって、何人かは倒したが、武器をその時持っていなかったラヴィアンを人質に取られてしまい、その後はそいつ等にリンチと言ってもいいぐらい、攻撃され、こうなってしまったという事だった。

「・・・・・・そいつ等、何処にいる?」

と、胸倉を離してそう尋ねるコウヘイ。

「・・・・・確か・・・・・・城下町の裏路地の方の酒場の近くだったと・・・・」

「・・・・・・・・」

それを聞くと、コウヘイは無言で、ベッドの側にかけてあったユウキの剣を取って、保健室から出て行った。

「コウヘイ!!」

と、それを追いかけるユーリ。

そして、廊下に出てコウヘイの服を後ろから掴む。

「コウヘイ・・・・・」

「ユーリ、止めないでくれよ」

「・・・・うん、わかってる。止めないわ。私が言ってもコウヘイは一度決めた事は止めたりしないもの・・・」

「・・・・・・ユーリにはいつも悪いとは思ってる・・・・」

「いいわよ・・・・・もう慣れたから・・・・それに、私はそんなコウヘイが好きだったんだから・・・・」

「・・・・ユーリ・・・・」

コウヘイは、そう言うと彼女と見つめ合い、キスをする。

「行って来る」

「気をつけてね」

「言われなくても気をつけるさ。俺は俺の帰りをいつでも待っている人がいる事を、誰よりも知っているから」

そう言うと、コウヘイはユーリに背を向けて、歩き始める。

親友の仇を取るために・・・・・





数時間後・・・・

裏路地付近にある酒場から騎士らしい鎧を付けた男達が出てくる。

彼らは、少し前にグランビアで不祥事を起こして騎士の位を失ってしまっていた。

それで、最近はここら辺で酒飲んで暴れてたりして地元住民に迷惑をかけていた。

「それにしても、今日は気持ちいい日だったぜ、馬鹿なガキを一人皆で気が済むまで殴れてよ」

「全くだ。全然動かなくなっちまったから死んだかもしれねぇけど、そんな事知ったことか」

などと話ながら裏路地を歩く男達。

そこへ・・・・

「・・・・・お前等か?ユウキを殺したのは・・・・」

と、彼らの後ろから声がかかる。

そこには、コウヘイが立っていた。腰にはユウキのものである銀の剣を下げて。

「あぁ?なんだ、てめぇは?」

「コイツを殺したのはお前達か、と聞いているんだ」

そう言ってコウヘイはユウキの写真を彼らに見せる。

「あぁ、そいつか。女と一緒にいちゃついてたからちょっかいかけてやったら俺たちにつっかかってきてよ、女を人質にとって皆で動かなくなるまで殴ってやったんだ。全くいい気味だぜ」

「死んだみたいなこと言ってるけどよ、つっかかってきたのはその馬鹿なんだぜ。俺たちの挑発に乗った方が悪いんだよ。どうせ人の一人二人死んだところで、世の中に何の支障が出たりしねぇだろ」

と、コウヘイに言う男達。

「・・・・・確かに馬鹿だったよ。いつも女に声かけて逆に手痛い反撃を喰らうようなナンパ野郎だった。それでも・・・・アイツは俺のたった一人の親友だったんだ・・・・・!」

そう言って、銀の剣を鞘から抜くコウヘイ。

「何だ、やるってのか?馬鹿みたいな事言うのはやめな。これでも俺達は前はグランビアで騎士をやって―」



ズバッ!!



「!?」

男の言葉が言い終わる前に斬りかかるコウヘイ。そして、その一撃で一人が地に倒れる。

「こ、コイツ!?」

「・・・・・言っておくが、俺はユウキほど甘くはない・・・・・!!」

そう言って男達に向かって再び剣を構えるコウヘイ。

「クソッ、やっちまえ!!」

その言葉と共に男達が一斉にコウヘイに襲い掛かる。





数分後・・・・

「あ、ああ・・・・・・」

既に生き残っている男は一人だけとなり、他は皆、コウヘイによって明らかに致死量とわかるほどの血を流して倒されていた。

「残りは・・・・・お前だけだ」

そう言ってコウヘイ・・・彼は、返り血で真っ赤に染まっていた・・・は最後に残った男に向けて剣を振り上げる。血に塗れてるとは言え、銀の剣は月光を反射してきらめく。

「ま、待て、待ってくれ!俺たちが悪かった!金ならいくらでも払う!だ、だから待てッ!!」

「金・・・・?そんなものはいらん。俺が欲しいものはただ一つ・・・・お前の命だけだ」

「そ、そんな!嫌だ!死にたくない!!」

「一人二人人間が死んだところで、世の中が変わったりしない・・・・・だったか?」

「まっ、待て―」



ザシュッ!!



コウヘイは銀の剣に付いた血を拭き取ると、鞘に入れる。

「こんな・・・・こんなクズのせいで、ユウキが・・・・・くそッ!!」

コウヘイはそう言いながら壁に拳をぶつけていた。





それから少しして、コウヘイは士官学校の寮の自室の前まで戻って来ていた。

(・・・・・これで、中でアイツが冗談だと言ってくれたら、どんなに気が楽になるんだか・・・)

そう思いながら、コウヘイはドアを開ける。

「お帰りなさい、コウヘイ・・・・・」

中には、何故かユーリがいた。

「・・・・ユーリ・・・・・なんでここに・・・・」

「・・・・・心配だったから」

「・・・・・そうか」

そう言うと、コウヘイは自分のベッドの上にとても疲れた様子で座りこむ。

ユーリは、ここまで憔悴しきったコウヘイを見たのは初めてだったし、この先、二度とこんなコウヘイは見る事は無かった。

「ねぇ、コウヘイ・・・・言っても無駄だと思うけど、あまり気にしない方がいいわよ。ユウキが死んだのは、貴方のせいじゃない」

「分かってる・・・・・そんな事は分かり切ってる!!」

そうユーリに叫ぶコウヘイ。

「分かり切ってるんだ・・・だけど、納得がいかないんだよ、俺の中で・・・・・」

「コウヘイ・・・・・・」

「ユーリ、無理言って頼むけど、何とかしてバルキリーを使ってユウキを蘇らせることは出来ないのか?」

「・・・・・バルキリーを使うには、生き返らせるべき人間か神託で判断しなきゃいけないの。個人的な感情だけで簡単に人を生き返らせていたら、それこそ大変な事になるでしょ?」

「・・・・そうだな、そうだよな・・・・・それで神託は?」

「・・・・・・駄目だったわ」

「・・・・・・そうか」

「・・・・本当は私も今すぐナディアに戻ってバルキリーを使いたいって思うけど・・・・」

「・・・・・いいよ、そればっかりは仕方ない・・・・」

「ごめんなさい・・・・・」

そう言ってユーリは立ち上がって自分の部屋に帰ろうとする。

だが、コウヘイに手を掴まれる。

「コウヘイ・・・・?」

「ユーリ・・・・・悪いけど、今日だけは・・・・ずっとここにいてくれないか?」

と、ユーリに対して疲れきった様子で言うコウヘイ。

「・・・・・わかったわ。今日だけは、ここにいてあげる・・・・」



・・・・こうしてコウヘイとユウキの友情は終局を迎える。

季節は秋。これから徐々に寒くなっていく時期に入っていた。









後書き

作者:はい、士官学校編、1年半以上の時を超えてついに新作執筆完了~

コウヘイ:大体五月頃から書いてた気がするから、約半年間書いてたことになるぞ・・・・

ユーリ:途中随分長い間止まってましたけどね

作者:うっ・・・・・・

コウヘイ:で、何だ、この長さは・・・・・

作者:・・・・いや、前座のはずのところが随分長くなってねぇ・・・そこで切ろうかと思ったけど、その後が短くなるのはわかってたから結局そのまま書いた。

コウヘイ:ふ~ん・・・・

ユーリ:ところで、思ったんですけど、最後のは一体どう解釈すればいいんでしょう?

作者:いわゆる、「御自由にご想像ください」ってヤツだが、元ネタみたいな事はないと思うから、安心しな。つーか、俺が認めん(爆)

コウヘイ:じゃあ書くなよ、そんな事・・・・

作者:いやぁ、つい・・・・・っていうか、疲れたのでここで締める(爆)