ユグドラシル聖戦記外伝

ナディアが蛮族から解放されてから1年半・・・ナディアでは現在ある話題で盛り上がっていた。

ナディア城の城主ルノーの娘のユーリとトラキアの王子コウヘイの結婚である。



特別編 HAPPY WEDDING




トラキアの王子であるコウヘイは3年半ほど前にある事情で勘当され、その後2年間傭兵として放浪の旅をしていたが約1年半前、許婚のユーリがローバー王国の王子ディアマンテに攫われたときに彼女と再会したのであった。



ナディア城の廊下

コウヘイは一人、廊下を歩いていた。結婚式まで後1週間である。

「コウヘイ?どこに行くんだ?」

彼にそう話しかけてきたのはコウヘイの戦友で、ユーリの主人のシオンの夫でもあるテンルウだった。

「テンルウか・・・お前こそこんなところで何やってるんだ?」

「俺か?俺はシオンと子供の所に行くんだよ」

「子供・・・・オズマとイファルナだっけ?」

バキッ!!

「違う!!オグマとイナルナだ!!いい加減覚えろ!!」

「つっ・・・・叩く事ないだろ・・・」

「バカ言うな!!俺とシオンの可愛い可愛い子供の名前間違えられてたまるか!!」

(・・・・・・・・親バカ?)

コウヘイはそう思ったが今のテンルウにそんな事を言うと流星剣を食らいかねない・・・・実際に数週間前にある事件で彼がミスを犯したせいで流星剣をぶち込まれたばかりだった・・・・ので言ったりはしなかった。

「で、お前はどこへ行くんだよ?結婚式まであと1週間だろ?」

「・・・トラキアに行って親父に会ってくる」

「!!」

テンルウはコウヘイが勘当された理由は知らなかったが・・・・と、言うよりコウヘイはあまり教えようとはしなかったが・・・・彼がある事情でトラキアを出奔したのは知っていた。

「おいおい・・・本気か?」

「ああ、本気だ。夜までには帰ってくる」

そう言うとコウヘイは愛竜のマグアナックのところへ行き、彼に乗ってトラキアの方へ向かった。



ユーリは礼拝堂で一人祈りを捧げていた。コウヘイが急にトラキアへ行くと言い出した時はさすがに彼女も驚いたが(ちなみに彼女だけはコウヘイが勘当された理由を知っている)、何か理由があるのだろうと思い、行かせることにした。

「・・・・・・・コウヘイ・・・」

しかし、彼女は何故か嫌な予感がしていた。コウヘイの身に何か良からぬことが起こるのではないか・・・そう思っていた。もちろん、コウヘイの天才的な槍の腕前は知っているのだが、それでも・・・

「・・・・?」

閉っているはずの窓が開いていることに気づき、それを閉めに行くユーリ。

そこへ・・・・・

「ユーリ公女・・・覚悟!!」

と真上から暗殺者が降りてくる。

「きゃぁ!!」

「流星剣!!」

駆けつけて来たテンルウが暗殺者に流星剣を繰り出す。

「ぐわぁ!!」

暗殺者はそれを食らって倒れる。

「て、テンルウ様・・・有難うございます・・・・」

「ああ・・・やはり、こっちにも来てたか・・・・」

「やはり・・・・?」

「・・・・さっきシオンも襲われた・・・そっちの方も俺が倒したが・・・」

「・・・それでは、彼らは私とシオン様を狙って?」

「恐らくな・・・コイツを連れて行こう・・・・」

テンルウが暗殺者を抱え、二人は礼拝堂を出て行った。



「ああ・・・血塗れ・・・」

暗殺者を連れて来たテンルウとユーリを待っていたのはシオンのその一言だった。

「し、シオン・・・トマトジュース飲め・・・な?」

「シオン様・・・まだヴァンパイアの習性が抜けてないですわね・・・・」

「これもコウヘイのせいだ・・・・・全く・・・・」



「ハックション!!・・・・風邪でも引いたか?」

コウヘイはトラキアへ行く途中、くしゃみをしていたのであった。



「で、何でシオンとユーリを襲った?」

テンルウが暗殺者二人に尋問する。

「・・・・・・・」

「答えないつもりかよ・・・言え!言うんだ!!」

「・・・・へっ・・・そんなこと教えてたまるかよ」

プチッ・・・

「言わないと・・・・・その首、斬り落とすぞ?」

と、テンルウがバルムンクを鞘から出して暗殺者の一人の首に当てる。

「じょ、冗談はよせよ・・・・」

「冗談だと?俺のシオンを襲った罪は重いぞ・・・・?」

と、暗殺者の首から血が垂れる。

「・・・・・・わ、わかったよ・・・は、話すよ・・・」

暗殺者が語ったことは次の事であった。

かつてユーリとシオンを攫いコウヘイに殺されたローバー王国王子ディアマンテの一番の部下が彼らに暗殺を依頼されたこと。暗殺するのはコウヘイ、ユーリ、シオンだったこと。

「・・・・じゃあ、まだ暗殺者がいるのか?」

「い、いや・・・・コウヘイの方は出かけているところを襲う・・・って」

「それじゃあ・・・・」

ユーリの顔が青ざめる。

「・・・・ユーリ、あのコウヘイがそう簡単にやられるわけないだろう?」

テンルウはユーリにそう言って落ちつかせる。

「そうですわね・・・・あのコウヘイがそう簡単にやられるはずありませんわね・・・・」

ユーリは自分にそう言い聞かせるがそれでも不安を捨て去る事は出来なかった。



一方、コウヘイはトラキアに辿り着いていた。3年半ぶりの帰郷である。

「・・・・・・ここら辺もあまり変わってはいないな・・・・」

かすかな記憶を頼りにコウヘイは城の方へ行く。



「クーパー様、門の衛兵がこんなものを預かったと・・・」

大臣がトラキア王国の王クーパーに手紙と思われるものを渡す。

「・・・・?ふむ・・・・・」

クーパーはその手紙を読むと、

「大臣、少し外に出てくる」

「は・・・?」

「しばらく頼むぞ」

そう言うと、クーパーは自室へ戻っていった。



トラキアの酒場・・・

コウヘイは酒場のマスターに噂話を聞いている。

そこへ一見旅をしているように見える男が入ってくる。

「・・・・・・久しぶりです、親・・・もとい父上」

「うむ・・・・」

二人は小声で話す。

「・・・・ここじゃ場所が悪いから外へ出ましょう・・・・」

そして二人は酒場の外へ出る。

「本当に久しぶりだな・・・お前がトラキアを出てもう3年以上が経つのか・・・・」

「ええ・・・・で、父上・・・・」

「うむ・・・お前がここへ来た理由はわかっているぞ・・・これだな・・・?」

クーパーはコウヘイに指輪と思われるものを渡す。

これはコウヘイが3年半ほど前に職人に作らせたが完成前にコウヘイが城を出たのでクーパーが持っておいたものだった。

「・・・ええ・・・・」

「ユーリと結婚すると聞いたからそろそろ来ると思っていたぞ」

「・・・・・」

「ユーリとは仲良くやっているか?」

「え?・・・・ま、まぁ・・・・」

「・・・・・・・・・ミホとは会わんのか?」

「・・・・アイツと会うと喧嘩になるからな・・・・・」

「・・・・そうか・・・・・」

その後二人はしばらく昔の話をした。

「・・・・と、私はそろそろナディアに戻ります」

「そうか・・・・結婚式には行かないぞ」

「はい・・・こっちもそのつもりです」

こうして二人は別れた。そして2度と会うことはなかった・・・・



コウヘイはその後トラキアを出て森を通っていた。すっかり夜になってる。

「・・・・今夜中に帰れるかな・・・?」

そう思いながら、森を進むコウヘイ。しかし・・・

「・・・・・・・」

彼はトラキアを出た辺りから誰かに尾行されているのに気が付いていた。

「どこの誰かは知らないが、そろそろ出てきてもらおうか!!」

そして、数人の男達が出てくる。

「・・・・トラキア王国王子のコウヘイだな?」

「・・・・人違いだ」

コウヘイはそう言うが・・・・

「ならば、シヴァと呼んだ方がいいか?」

「・・・・・お前達・・・・何者だ?」

コウヘイがグングニルを構えながら尋ねる。

「ディアマンテ様の部下のプジョー・・・と言えばわかるか?」

「・・・・!!」

記憶力が絶望的にないコウヘイでもその男の名前を忘れたわけではなかった。むしろ嫌と言うほど良く覚えている。

「・・・・・で、ご主人様の敵討ちか・・・・?」

「・・・・そういうことだ・・・貴様さえいなければディアマンテ様も死ぬことはなかったのだ」

「・・・・・・・・・」

「と、いうわけで死んでもらう!!」

蛮族と思われる男達がコウヘイを囲み襲いかかる。

「・・・・甘い!」

銀の剣で蛮族を薙ぎ払うコウヘイ。

「ぐわぁ!!」

「ぎゃあ!!」

「この程度ならすぐに決着をつける・・・・!!」

そう呟き、敵陣に向かうコウヘイ。

しかし・・・

グサッ・・・・

「くっ・・・・・」

うしろにいた蛮族に矢を放たれ、それが彼の身体に刺さっていた・・・



一方ナディア城では・・・・

「マジで遅いな・・・・コウヘイのやつ・・・・」

テンルウがそう呟く。

「・・・・・・・コウヘイ・・・・・」

と、その時、

ピシッ・・・・パリィン・・・

「おいシオン、どうした?」

「・・・コウヘイ様のグラスが急に割れて・・・・・」

「・・・・・・・」

それを聞いてユーリはますます不安になっていくのであった。



無数の矢を身体中に受けながらコウヘイは蛮族を斬り倒す。

「・・・・はぁはぁ・・・・・・」

コウヘイは本来ならもう倒れても・・・・死んでしまっても・・・・おかしくないほど傷を負っているのに蛮族をほとんど全滅させていた。

しかし・・・

「・・・・・うっ・・・・」

遂に力尽き、倒れてしまう。

「・・・・・ようやく力尽きたか・・・」

(・・・・・・身体に・・・・力が入らない・・・・・今まで、死を感じた事は何度もあったが・・・・ここまで来たのは初めてだ・・・・俺は・・・・・死ぬのか・・・・・・・・・)

コウヘイの頭にそれまでの人生が走馬灯のように過る。

(・・・・・・・・すまない・・・ユーリ・・・・・もう・・・戻れそうじゃない・・・・)

恋人の名前を思い浮かべるコウヘイ。

そして次に浮かんだのは彼女の悲しむ顔であった。

(・・・・俺は・・・アイツを何年待たせた?・・・・アイツはいつも俺が帰ってくることを信じてたのに・・・俺は・・・・)

「そろそろ・・・・死ね!!」

と剣を振り下ろそうとするプジョー。

だが、

「死ねるかぁ!!」

と、剣をグングニルで弾き、立ち上がるコウヘイ。

「なっ・・・・・?」

「死ねない!まだ死ぬわけにはいかない!!俺には俺の帰りを待っている人がいるんだ!!アイツをこれ以上待たせない為にも、死ぬわけにはいかない!!」

「お、おのれぇ!!」

プジョーが剣を手にコウヘイに突進してくる。

「・・・・・遅い!!」

コウヘイがグングニルをプジョーに向かって投げる。

「ぐはぁ!!」

グングニルが身体に突き刺さり、絶命するプジョー。

「・・・・はぁはぁ・・・・マグ・・・・・帰るぞ・・・・ユーリの待ってるナディアへ・・・・」



「・・・・・私・・・・外へ出て見て来ますわ」

ユーリがそう言って城門の方へ行く。

「おい、俺も行くぞ」

テンルウがユーリについて行く。

「コウヘイ・・・・・」

約30分後・・・

「おい、あれはコウヘイじゃないか?」

城に向かってくる竜を見てテンルウがユーリに言う。

たしかに、ナディアでは竜なんてコウヘイのマグアナックぐらいしかいない。

「・・・・コウヘイ!!」

ユーリとテンルウの前でマグが降りてくる。

「・・・・・・・・・待たせたな・・・・・・」

身体中から血を流しながらマグから降りるコウヘイ。

「・・・・コウヘイの馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!!私がどれくらい心配したと思ってるのよ・・・・・」

ユーリが泣きながらコウヘイに怒鳴る。

「・・・・・・・ゴメン・・・・・・・・」

「おい、大丈夫なのか?」

テンルウがコウヘイに尋ねる。

「・・・・・あんまり・・・・・・・大丈夫とは言えないな・・・・」

「コウヘイ?」

そして、コウヘイは二人の前で倒れるのであった。



1週間後

「・・・・・・・・・」

コウヘイはまだ所々包帯が巻かれているが身体を動かすには問題ないぐらいまで回復していた。

「・・・・・おい、すこしは落ちつけよ」

テンルウにそう言われるが、コウヘイはあんまり落ちついていない。

「・・・・・・・」

コウヘイは黙って部屋中を歩き回っている。

何かを待っているときにうろうろ歩き回るのは彼の昔からの癖である。

「コウヘイ様、準備ができましたわ」

シオンが部屋に入ってくる。

「ああ、わかった・・・・」



トラキア城

「え~?お兄様トラキアに戻ってきたの!?」

コウヘイの妹のミホがクーパーに言う。

「うむ・・・・今頃、結婚式をやっているだろう」

クーパーはそう言うと溜息をつき、コウヘイの幸せを願うのであった。



「コウヘイ・・・これ、似合ってる?」

ウェディングドレスを着たユーリがコウヘイに尋ねる。

「ああ、とてもよく似合ってる」

と、笑いながら答えるコウヘイ。

「コウヘイ君、これからも娘を末永くよろしく頼む・・・」

ユーリの父親であるルノーがコウヘイにそう言う。

「ええ、こちらこそ」

コウヘイがルノーにそう言う。

「コウヘイ様、ユーリ、結婚おめでとう」

シオンの弟であるオスカーとその恋人のキラがコウヘイとユーリに挨拶に来る。

「ありがとう、オスカー、キラ。ところでお前らの方はどうなんだ?」

コウヘイの問いにオスカーは

「い、いや・・・それは・・・・・」

と言い、オスカーとキラは顔を紅くするのであった。

「まぁいいか・・・」

「コウヘイ結婚おめでとう~」

テンルウの従兄弟であるマルスが二人に挨拶にくる。

「ありがとう、マルス・・・ってなんか寂しそうだな?」

「え?い、いや・・・そんなことは・・・・」

「・・・・・無茶苦茶我侭なヤツでいいならそのうち紹介してやる」

コウヘイは寂しそうなマルスを励ますつもりで言った。

「コウヘイ、ユーリ、結婚おめでとう」

「コウヘイ様、ユーリ、結婚おめでとうございます」

テンルウとシオンの夫婦が二人に挨拶に来る。

「ありがとう、テンルウ、王女」

「もうあまり傭兵家業みたいなことするなよ?」

「・・・・考えておくよ」

「ユーリもコイツが無茶しないように見張っとけよ?」

「はい」

(お前に言われちゃお終いなんだが・・・・)

とコウヘイは思ったが一々ツッコミを入れるのは止める事にした。

「コウヘイ様、あまりユーリをほっといたりなんかしないでくださいよ?」

「ああ、わかってる・・・ところでテンルウ・・・」

「何だよ、コウヘイ?」

「・・・・あんまり王女を怒らせるなよ?」

「・・・・え?何で?」

「二人で何話してるの?」

ユーリがコウヘイに尋ねる。

「・・・いや・・・まぁ、ユーリならわかるだろ?」

「??」

「だから・・・・・キレたときの・・・・・・」

「ああ・・・・・・確かにそうかもしれないですわね」

「・・・・・・・だから何でだよ?」

今一つ納得のできないテンルウだった。

そしてコウヘイとユーリの結婚式は過ぎて行くのであった。



1ヶ月後・・・

結婚してからもコウヘイは時々酒場へ行って色んな情報を聞いていた。

その日も彼は酒場へ行って噂話を聞いていた。

そこへ・・・・

「おい!!コウヘイはいるか!?」

と、テンルウが入ってくる。

「・・・・テンルウ?どうしたんだ?オズマとイファルナを見てなくて良いのか?」

「だから、オグマとイナルナ!!って、それどころじゃない、大変だぞ!!ユーリが・・・・」

「ユーリがどうかしたのか?」

「聞いて驚くなよ?・・・・・・・懐妊したそうだ・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・マジ?」

しばらく黙った後、コウヘイはテンルウにそう尋ねるのであった。

「嘘ついてどうする・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・俺・・・ユーリのところに行って来る・・・」

「ああ、そうしてやれ」

コウヘイは酒場から出て行った。



ナディア城のコウヘイとユーリの自室

「おい、ユーリ!!」

「コウヘイ?どうしたの?」

「いや・・・その・・・・」

「もしかして、子供の事?」

「・・・・・・ああ」

「ええ、本当よ」

「そ、そうか・・・ははは・・・」

「・・・・大丈夫?混乱してるみたいだけど・・・」

「え?大丈夫だけど・・・・?」

とか言いつつ、コウヘイはかなり動揺している。

「しっかりしてよ・・・・もうすぐ父親になるんだから・・・・」

「あ、ああ・・・・・・」

この後約半年間は平和が続くことになる・・・




異端者航平(以下異端者) ようやく終わった・・・

コウヘイ 長かったな・・・・・

異端者 ん?お前は馬鹿なのか頭の回転が速いのかよくわからないコウヘイじゃないか!

コウヘイ おい・・・そんな言い方ないだろ・・・あの時は久々に依頼が失敗したのとユーリに「この馬鹿ぁ!!」って言われたので混乱しまくってたんだからさ・・・・・

異端者 まぁ、確かにそうかもな・・・・

コウヘイ ところで・・・ラスト辺りは本編11章とほとんど変わらんような気が・・・・・(汗)

異端者 ネタが思い浮かばなかったんだよ・・・・

コウヘイ まぁ、一週間後はテストだし、頑張れよ・・・

異端者 ああ・・・・頑張るよ・・・・(遠い目)