ユグドラシル聖戦記外伝

「ユウキ様、ウイングロードのイナルナ様から手紙が来ています」

と、ファングがユウキに手紙を渡す。

「イナルナから?どれどれ・・・・・・!ファング、すぐに旅支度だ」

「どうしたんですか、ユウキ様?」

ファングの問いにユウキは、

「・・・・ウイングロードで暗黒教団のアジトが発見されたそうだ」

と、答えた。





ユウキ外伝9章「CARESSOF VENUS」





と、いうわけでウイングロードのイナルナ達の隠れ家。

ユウキ(と、例によって護衛のファング)が到着して数日間、イナルナ達は暗黒教団のアジトをどうするか話し合っていた。攻めてもいいのだが、今のイナルナ達はショウが諸国を回っており、グレイス・ロベルト・ギリアムはそれぞれ各地で戦っているため、結構戦力が欠けている。また、ヘタに行動すると、この隠れ家の存在がバレてそのままこの地を支配しているエデンと事を構えるハメになる可能性もある。ユウキはすでに何回か戦争でエデンの軍とも戦っているがその時の経験から考えて例え少人数のイナルナ達でもなんとかなる相手だろう。だが、少なくとも今はまだその時期ではない。

「さて・・・どうしたものか・・・」

「攻めるならやっぱり少人数で攻めたほうがいいわね・・・」

「ああ・・・こっちの守りもあった方が安全だ」

と、ユウキやイナルナ達が話し合っている隣でオグマは、

「なぁ・・・お前等、何をこの数日間話し合っているんだ?」

と、訊ねる。

「・・・・オグマ!?貴方、正気!?数週間前から暗黒教団のアジトをどうするか皆で相談してたじゃない!?」

「はっ、俺がそんな事に感心を抱くと思ったか?」

オグマのその言葉に、

「・・・・オグマ、お前、それでマイラに勝つつもりでいるのか・・・・?」

「オグマ様、さすがにそれはちょっと・・・ねぇ、アールマティ?」

「私もそれはどうかと思います・・・」

「オグマ様、王族がそれではまずいと俺は思いますが・・・まぁ、俺はトラキア王家に仕える身ですから関係ありませんが・・・」

と、ユウキ・ハトホル・アールマティ・ファングにツッコミを入れられるオグマ。

「お、お前等・・・・」

「で、どうするかだ・・・」

皆にツッコミを入れられて御立腹のオグマを無視してまた話し合いを続けるユウキ達。

「やっぱりさっき言った少人数で行くのでいきましょう」

「ま、元々少人数だけどな・・・行くのは・・・・俺と・・・」

「私も行くわ」

「・・・・・・・・わかった」

イナルナの言葉に少しだけ考えてから、そう答えるユウキ。

「イナルナが行くなら俺も行くぜ。ユウキにイナルナは任せておけないからな」

「なんだオグマ、聞いてたのか・・・・その言葉、そっくり言い返してやるよ」

「何だと・・・?」

と、睨み合うユウキとオグマ。

「また始まりましたね・・・」

「叔父様とテンルウ様が仲良かったって本当かしら?」

「・・・・まぁ、俺たちは余計な手出しはしない方がいいだろうな・・・」

と、ユウキとオグマの睨み合いを見ながら言うアールマティ&ハトホル&ファング。

「もう・・・こんなところで喧嘩しないでよ・・・」

「・・・まぁいいか・・・ファング!お前はこっちに残ってくれ」

「はっ!ご武運を!!」

と、いうわけで手短に準備を済ませ、外へ出るユウキ&イナルナ&オグマ。

「それにしても・・・・竜と犬がじゃれ合ってるって言うのもなんか凄い気が・・・」

と、竜用の厩舎で何故かじゃれ合ってるマグとイナルナの愛犬ブランを見て呟くユウキ。

「でも、凄く仲が良さそうよ・・・」

「確かに・・・・マグ!じゃれ合ってるところ悪いが仕事だ、行くぞ!!」

ユウキがそう言うと、マグはブランとじゃれ合うのをやめてユウキ達を乗せて飛び始めた。





「で、どっちに行けばいいんだ?今は適当に飛ばしているが、俺はどこにあるかは知らないぞ」

と、イナルナに訊ねるユウキ。

「っていうか、お前の場合、ここら辺の地理も全くわかってないだろーが」

「・・・・オグマ、お前だけここから蹴り落とすぞ?」

「・・・・・やるか?この方向音痴野郎」

「黙れ、この流星剣馬鹿」

と、再び喧嘩し始めるユウキとオグマ。

「マグの上で喧嘩なんかしないでよ。危ないから・・・あ、西の方に行ってね」

「OK。マグ、西の方へ行くぞ」

と、ユウキの言葉を受けて西に向けて飛んでいくマグアナック。

「ところでユウキ・・・・ユーリさんの病気の方はどうなの?」

「・・・・・・・・・・・もう1年持たないだろうって医者が言ってた・・・まだ、クスハには話してないが・・・・」

「・・・・・そう・・・・ごめんなさい、そんな時に呼び出してしまって・・・」

「気にするなって・・・お前が気に病むことじゃない」

「うん・・・・」





数十分後・・・

ユウキ達は問題の暗黒教団のアジトの近くの森にマグを残して、洞窟の前に来ていた。

「ふ~ん・・・・・どっからどう見てもただの神殿っぽいな・・・って、お前等、顔色悪いぞ。どうしたんだ?」

と、洞窟を眺めながら言うオグマ。

「・・・・オグマ、感じないか?この重苦しい雰囲気・・・殺意・・・間違いない。ヤツ等のアジトだ」

「・・・・凄まじい憎悪だわ・・・・本当に何もわからないの?」

「全然。気のせいじゃないか?」

「・・・・お前なぁ・・・・・・・本当にヘイムの血を引いてるのか?」

「ちょっと怪しいわ・・・」

「ユウキはともかく、イナルナまで失礼な事言うな!俺は母上の子供に決まってるだろうが!!」

「何をそこまでこだわっているんだか・・・・」

「本当ね・・・とりあえず、今入ったら目立つでしょうから、夜まで待ちましょう?」

「そうだな」

「お前等・・・二人だけで話を進めるなよ・・・」

「お前にそういう意見を期待しても無駄だからな」

「・・・・・ユウキ、覚えてろよ・・・・」





数時間後・・・すっかり真夜中になった頃・・・3人の男女が暗黒教団の神殿に忍び込んでいた・・・そのうち二人はヘイムとオードの血筋を引く兄妹、もう一人はダインとブラギの血筋を引き、紅蓮の竜騎士と恐れられている青年・・・いずれも暗黒教団にとっては危険人物である。

「結構あっさり忍び込めたな。俺としては暴れたかったから面白くないけど」

「・・・何を言っているんだか・・・」

「バレちゃったらまた大変じゃない・・・・・」

「このメンバーなら楽勝だろ」

「そんな事言ってると足元すくわれるかも知れんぞ」

「あぁ?ユウキ、てめぇ、この俺が雑魚どもにやられるって言いたいのか?」

「こんな所で喧嘩は止めてよ・・・・」

と、話ながら神殿の中を歩いていくユウキ&イナルナ&オグマ。

そして、しばらく歩いて・・・



・・・・カチッ



「・・・・・ん?」

と、先頭を歩いていたオグマが床のスイッチを押してしまう。



ガシャッ!!



と、落とし穴が発動。

「うわっ!危ねっ!!」

と、慌てて落とし穴から後ろへ飛びずさる。

「ユウキ!代わりに落ちろ!!」



ズガッ!



「はいっ!?」

と、オグマに足を引っかけられて落とし穴に落とされるユウキ。



ヒュッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー・・・・・・・・・・



「・・・・・・・・・あれ?」

落とし穴の底へ落ちていくユウキに間の抜けた声をあげるオグマ。

「お、おおおおおオグマッ!?い、いいいいい一体何やってるのよ!?」

「え、え~と・・・」

ユウキが落ちていくのを見て錯乱しているイナルナに詰め寄られるオグマ。

「ユウキとオグマが仲悪いのは知ってたけど、まさかユウキを転落死させるなんて・・・・!!」

「て、転落死って・・・・別に殺してねーだろ!!ユウキだからこれぐらいじゃ死なねぇよ!!」

「じゃあ、殺人未遂よ!!気でも狂ったの!?」

「ちっ、ちがっ・・・お、俺はただ、さっきからユウキにムカツクことばかり言われたから、少し痛い目にあわせてやろうと・・・」

と、こちらもやっぱり少し混乱しながら言うオグマ。まさか、落とし穴がこんなに深いとは思っていなかったのだろう。

「オグマの馬鹿ぁ!!」

と、イナルナはオグマにそう叫ぶと、泣きながら一人暗い神殿の中を走り去ってしまった。

「い、イナルナ!?お前、そっち行ったのはいいけど、道わかってるのか!?」

と、オグマも慌ててその後を追って走り出した。





・・・・・・夢を、見ていた。

「ひっく・・・・ひっく・・・」

少女が人ごみの中で泣いている。どうやら、迷子のようだ。

「イナルナっ!ここにいたのか」

そこへ少年がやって来る。どうやら彼女を探していたようだ。

「ユウキ!」

と、目を真っ赤にした少女は少年に気付いて安堵の表情を見せる。

「皆心配していたぞ。早く帰ろう」

「うん・・・・怖かったよ~」

と、少年に泣き付く少女。

「大丈夫だよ・・・・どんなに怖い事があっても俺がお前だけは絶対に守ってやるから」

「本当に?」

「もちろん」

「ありがとう!大好きよ!」

・・・・他愛もない子供同士の約束である。だが、この約束は少年にとっては自分の全てをかけた誓いとなる。そして今も・・・・・





「・・・・・・!!」

ユウキは、暗い牢屋の中で目を覚ました。

「・・・俺は・・・確か・・・オグマのヤツに落とし穴に落とされて・・・・あの野郎・・・後でブン殴ってやる・・・・」

と、言いながら天井を見るユウキ。天井には、ぽっかり穴が開いている。

「なるほど・・・・落とされたら牢屋に直行か・・・・さて・・・どうやって脱出するか・・・」

と、鉄格子を見ながら考えるユウキ。

「・・・・・・壊すか」

そう言うと、ユウキはグングニルで鉄格子を貫いて破壊した。

「・・・・・・さっさとイナルナと合流しないとな・・・」

と、ユウキは呟いて牢屋から脱出した。





一方、泣きながら走り去ってしまったイナルナは・・・

「ユウキぃぃぃぃ・・・・」

と、まだ泣きながら、神殿内をさ迷っていた。ちなみにオグマとは完全にはぐれてしまってる。

「ふぇぇぇぇぇ・・・・」

と、そこへ・・・・



ガシッ!!



「!?」

後ろから口を掴まれてしまうイナルナ。

(な、何・・・・?)

自分の口を掴んでいる者が何者であるか、イナルナはそれを確かめようとした。だが、確かめるまでもなかった。彼女を掴んでいる手は腐っていたからだ。

「!!!!」

自分の口を掴んでいる者の正体を知って恐怖を感じるイナルナ。

(ユウキ・・・・助けて)





「・・・・・・イナルナ?」

と、神殿の地下を歩いていたユウキはなんとなく、イナルナの危機を察知する。

「・・・・・・オグマのヤツめ・・・・・今度こんな事があったら容赦なくグングニル投げるって5,6年前に言ったのを忘れやがったみたいだな・・・・」

と、そこへ、どうやら侵入者に気付いたらしく、暗黒魔道士達が現れ、ユウキに向かって魔法を唱え始める。

「お前たちの相手をしていられるほど暇じゃないのに・・・・・!」

と、ユウキもグングニルを手にそれに応戦する。

「はあぁぁぁぁぁ!!」

とグングニルを振り回しながら暗黒魔道士達を薙ぎ倒して行く。

そこへ、

「!?」

と、自分に向けて振り下ろされる剣を慌てて後ろへ飛んで避けるユウキ。

「・・・・・ふっ、少しは腕が立つらしい・・・!」

と、かすって額から血を流しながら呟くユウキ。彼の前には、一人の剣士がいた。





その頃、オグマは・・・

「イナルナ~!!どこへ行った~!?」

と、バレることなどほとんど考えず大声を出しながらイナルナを探していた。

「ったく・・・もしかして捕まったりしたんじゃないか?これだからあいつは・・・」

と、原因は自分にあるのに棚に上げて呟くオグマ。

そこへ・・・

「・・・・ちっ、ゾンビか・・・ま、少しは暴れないとな・・・」

と、ゾンビの集団を見つけて銀の大剣片手に戦闘を始めるオグマ。

「どけどけどけどけーーーっ!!」

と、ゾンビに流星剣をぶち込むオグマ。

だが、

「そこまでだ!!」

「!?」

と、暗黒司祭と思われる男が現れる。男の隣には・・・

「イナルナ!!」

「オグマ・・・・」

と、縄で縛られたイナルナがいた。

「これ以上動けば、イナルナ王女の命はないぞ?」

「・・・・ちっ・・・・」





ユウキはまだ剣士と戦いを繰り広げていた。

「なるほど・・・お前が名高いあのトラキアの紅蓮の竜騎士か・・・なるほど、マイラすら一目置いているというのも伊達ではないようだな」

「それはどうも・・・・」

と、戦いながら話をしている二人。

「だが、お前は考えた事がないのか?マイラに刃向かったところで待っているのは絶望だけかも知れないのだぞ?」

「・・・・・」

「そうだとしても、お前は戦い続けるのか?」



スバッ!!



ユウキのグングニルが剣士の脇腹を斬り裂く。

「ぐっ・・・・!!」

「・・・・・確かに、俺には・・・俺達には絶望しか残されていないのかもしれない。こんな抵抗を続けても無駄なのかもしれない・・・・だが、そうだとしても俺はこんな惨めな抵抗を諦めるつもりもないし、後悔するつもりもない。何が待っていようと、誰がどう言おうと、これが俺の選んだ、俺の生きる道だ」

ユウキはこう言いながら心の中で(イナルナを守る事もな・・・)と呟いていた。

「・・・・・ふっ・・・なるほどな・・・・しかし・・・・自分の心のままを貫くというのは・・・簡単なようで・・・難しいことだぞ・・・・お前はいつまでそんな事を言っていられるかな・・・・?」

「決まっている。死ぬまでだ」

「・・・・・いい目をしているな・・・・ぐふっ」

そう言うと、剣士は二度と動かなくなった。

「・・・・・・・・結構時間を食ってしまったな」

そう呟くとユウキは再び歩き始めた。





数十分後・・・・

「・・・・・・駄目だ・・・階段一つ見つからない・・・・」

と、ユウキは天性の方向音痴を最大に生かして上に上がる階段すら見つけられていなかった。

「やれやれ・・・どうするか・・・ん?」

と、ユウキは扉の前に見張りがいるのを見つける。

「あれは・・・・確か俺が落とされた牢屋だったような・・・・・なんで見張りがいるんだ?見張りがいるという事は誰か捕まっているという事か?」

とりあえず、見張りをサクッと倒して、中に入るユウキ。

そこにいたのは・・・・

「・・・・げっ、ユウキ・・・」

オグマだった。

「・・・・・見なかった事にしよう」

そう言って牢屋から出ようとするユウキ。

「あ、てめぇ、待ちやがれ!!俺をここから出せ!!」

「却下。俺を落とし穴に落として牢屋に直行させたんだから、それくらいは当然の罰だ。自力で何とかしろ」

「俺だってそうしたいけど、武器は全部取られちまったから何にも出来ねぇんだよ!!さっさとここ開けろ!!」

「・・・・・10000ゴールドだ」

「は?」

「10000ゴールド出せ」

「て、てめぇ・・・・」

「20000ゴールド」

「くっ・・・・」

「30000ゴールド」

「・・・・・」

「40000ゴールド」

「・・・・・」

「50000ゴー・・・」

「わかったよ!!10000ゴールド出せばいいんだろ!?」

「はじめから素直にそう言っておけばいいんだよ。前払いだ」

「くそっ・・・・」

とユウキに10000ゴールド渡すオグマ。

「それじゃ・・・・・」

と、グングニルで鉄格子を破壊するユウキ。

「全く、随分金にうるさいじゃねーか・・・・」

「トラキア王家家訓その3:嫌いなヤツを助ける時は金を払わせろ。ダインはいいことを言ったな」

「・・・・・・・・・・・言い切りやがったな・・・・」

「ああ、言い切ったぞ」

「きっとダインは金にうるさかったせいで友達いなかったんだろーぜ」

オグマの嫌味を無視してユウキは、

「・・・・ところでイナルナはどうしたんだ?」

と、言う。

「・・・・あ、え~と・・・・・は、はははははははは・・・」

「笑ってないで答えろ・・・・」

「うっ・・・・はぐれた隙に捕まっちまったよ・・・なんでもマイラの所に送るって言ってたがな・・・」



ドスッ!!



と、ユウキはオグマに向けてグングニルを投げ、オグマは間一髪でそれを避ける。

「うわっ!危ねぇ・・・・」

「やっぱりお前にイナルナを任せるとロクなことがないな・・・・・・・・」

「くそっ、否定できないのが悔しい・・・・」

「何をブツブツ言ってる。ほら、お前の剣だぞ」

と、オグマの銀の大剣を見つけたユウキはそれを投げ渡す。

「こうなったら徹底的に叩いてやるぜ・・・」

「イナルナを助けてからな」

こうして二人は牢屋を出た。





「で、一体何処に階段があるんだ?」

「・・・・確か・・・こっちだと・・・」

と、オグマの案内で神殿内を進むユウキ。

「これでイナルナに何かあったら・・・・わかってるだろうな?」

「・・・・そう思うならさっさと告れよ・・・イナルナがお前の事をどう思ってるかぐらいわかっているだろう?」

「・・・・・・今は駄目だ」

「何でだよ?」

「照れるから」

「・・・・・・・・・・・・・」

「何か言いたそうだな?」

「当たり前だ」

「聞いてはやらんぞ」

「・・・・・って、ユウキ、気付いたか?」

「気付いた、と言うより、もう見えてる・・・・」

と、何者かの気配に気付くユウキとオグマ。

そして二人の前に現れたのは・・・

捕まったはずのイナルナだった。





「イナルナ!?」

と、驚くオグマ。

「・・・・・・捕まっていたんじゃなかったのか?」

と、イナルナに訊ねるユウキ。

「うん・・・・でも、どうにか逃げ出して・・・」

「おい、イナルナ!お前が捕まっちまったせいで俺まで捕まってコイツに殺されかけたんだぞ!!どうしてくれるんだよ!!」

「それは自業自得だろう、オグマ」

「うっ・・・・」

ユウキにツッコミを入れられて何も言えないオグマ。

「・・・ユウキ・・・」

「・・・・」

「会いたかった・・・!!」

と、いきなりユウキを抱きしめてしかもキスをするイナルナ。

「んなっ・・・・・!?」

その光景を見て呆然としているオグマ。

「・・・・・」

「・・・どうしたの?難しい顔なんかして・・・」

「・・・・・お前、誰だ?」

「!!」

ユウキのその言葉に驚愕の表情を浮かべるイナルナ。

「お、おい、何言ってるんだよユウキ。どっからどう見てもイナルナじゃないか?お前、頭がおかしくなったんじゃないか?」

とか言ってるオグマを完全に無視してユウキは、

「さっさと化けの皮を剥がさせてもらおうか」

と、無茶苦茶機嫌悪そうに言う。

「・・・くっ!」

と、イナルナが身構えるより早く、



バキッ!!



と、ユウキはイナルナの顔面を壁に向かって蹴り飛ばす。

「・・・・・フン」

と、イナルナが動かなくなったのを確認して、彼女の顔を引き剥がすユウキ。その下には別の女性の顔があった。

「・・・客観的に見ればまぁまぁの美人なんだろうな。オグマ、お前の知り合いか?」

「ロベルトじゃあるまいし、そんなわけないだろ・・・・っていうか、女の顔面蹴り飛ばすとは・・・・お前、レディファーストとかそーいう心掛けは持ってないのか?」

「・・・・・なんか文句あるか?」

というユウキの怒気の入った言葉にオグマは、

「・・・・いや、ありません」

と、答えた。

「それにしても、よくイナルナが偽者だってわかったな?」

「・・・・細かな仕草がいつもと違っていた。それに・・・」

「それに?」

「・・・・イナルナはいきなり俺に抱きついてキスするほど積極的じゃあない」

「・・・・なるほど」

「っていうか、お前、本当にイナルナの兄貴か?偽者かどうかも全く判別がつかんとは・・・」

「うっ・・・・い、いや!!偽者と言ったら古今東西、本物より目付きが悪いとか、マフラーやブーツやグローブの色が違うとか、そういうのだろ!?」

「・・・・・何の話だ?」

と、わけの分からない方向へ話が進んでいく。

「ま、まぁ、そんなことよりコイツ、何処かに運ぼうぜ。あの牢屋辺りに」

「そうだな・・・・」





と、いうわけで再び牢屋に戻ってきたユウキとオグマ(とその他1名)。

「うぅっ・・・・」

「気が付いたか」

と、何処で手に入れたのかわからないが縄で縛られている偽イナルナ

「私をどうするつもり?」

「とりあえず、イナルナのいる場所を吐いてもらおうか」

「・・・嫌と言ったら?」

「その時は・・・・」

「ふっふっふ・・・・身体中くすぐってやるぜ・・・っていうか、やらせろ!」

と、言うオグマ。



バキッ!!



「うぐっ!!」

「この阿呆はほっといて・・・」

「ユウキ・・・お前、俺のことなんだと思ってる?」

「流星剣馬鹿のスケベ」

「・・・・・・・おい・・・」

「さっきの言葉を返すと、オードもお前みたいな変態だと思えてくるぜ・・・」

「・・・・・で、ど、どうするつもりですか・・・・?」

と、冷汗をかきながらユウキに訊ねる偽イナルナ。

「・・・・・そうだな、まず足から斬り落として、次に腕、そして首という順番に・・・後でマグの餌にしてやる」

と、いうユウキの言葉に、

(コイツの方が俺よりよっぽどヤバイんじゃ・・・っていうか、間違いなくキレてる!・・・今のコイツに刃向かうのは流星剣が使えない状態で壊れた剣を持ってドラゴンゾンビと戦うよりもずっと危険だな・・・)

と、心の中で呟くオグマ。

「ひ、ひえぇぇぇ!わ、わかりました!こ、答えます!!」

「わかればいいだよ、わかれば。で、イナルナは何処にいる?」

「は、はい!1階の祭壇にいます!」

「で、祭壇の場所は?ついでにバレずに進入できる場所も教えろ」

「階段から・・・・(中略)・・・・に曲がればあります」

「おい、オグマ、覚えたか?」

「ああ」

「それじゃ行くぞ」

そう言って偽イナルナを置き去りにして牢屋から出て行くユウキ&オグマ。

「あ、あの・・・私はどうなるのでしょうか・・・・?」

その問いに答えられる者はいなかった・・・





十数分後、ユウキとオグマは言われた通りの道を進んでバレずに祭壇に進入していた。

「確かにバレずに進入できたけど、ここからじゃ、少し遠すぎないか?」

と、ユウキに言うオグマ。このバレずに祭壇に侵入した場所は、ちょうど祭壇の入り口の壁の上の方である。

「しかもかなり広いし・・・この部屋・・・ここからだと一気に攻めるのは難しいかもな」

と、愚痴り続けるオグマ。ちなみにイナルナは祭壇の一番奥の方にいる。なにやら話し込んでいるらしい。

「くそっ、何言ってるのか小声で全然わからないぜ」

「『イナルナ王女を捕まえることができるとは我々はついているな』」

「・・・・俺は無視か?っていうか、ユウキ、お前聞こえたのか?」

「唇を読んだだけだ」

「・・・・そーいえば、読唇術とか得意だったよな、お前って・・・」





「で、マーベリック様、これからイナルナ王女をどうなさるのですか?」

と、部下と思われる暗黒魔道士が司祭に尋ねる。

「うむ・・・マイラ様からの使者が到着するまで監禁しておく・・・」

「・・・・・」

「が、その前に・・・」

「その前に?」

「巫女の力を貰っておくか・・・」

「なるほど・・・」

「・・・・!!」

その言葉の意味を理解して恐怖するイナルナ。





「・・・・・・・」

「おい、ユウキ、『その前に・・・』の後はなんて言ったんだよ」

「・・・・・オグマ・・・」

「何だよ・・・」

「突撃だ」

ユウキの殺気が溢れるその言葉に、

「は?」

と、言うオグマ。

「いいからさっさと暴れて来い!!」



ブンッ!!



「うわっ!?」

と、ユウキに祭壇の奥の方へ投げ飛ばされるオグマ。





「な、なんだ!?」

と、唐突に投げ飛ばされてきたオグマに驚くマーベリック&その他一同。

「オグマ!!」

「くそっ・・・ユウキのヤツ・・・まぁ、いいか。やってやるぜ!!」

と暗黒魔道士相手に暴れ始めるオグマ。

遅れてユウキも現れ、イナルナを縛っていた縄を斬る。

「ユウキ!!」

「待たせたな、イナルナ。これ、リザイアの魔道書だ」

と、イナルナにリザイアの魔道書を渡すユウキ。ちなみにこれはオグマの銀の大剣と一緒に牢屋に置かれていたのである。

「喰らえっ!流星剣!!」

「リザイア!!」

「消えろ!!」

と、三者三様に暴れまくるユウキ&イナルナ&オグマ。

「・・・・ん?」

乱闘になっている中、ある事に気付くユウキ。

「どうしたの、ユウキ?」

「・・・・さっきの司祭に逃げられた。追いかけてくる」





「はぁ・・・はぁ・・・」

と、部下を見捨てて祭壇から逃げているマーベリック。

「鬼ごっこは気がすんだか?」

自分の後ろから声が聞こえて振り返るマーベリック。

「お、お前は・・・・!紅蓮の竜騎士・・・」

「覚えていただいてどうも・・・・楽に死ねると思うなよ」

「ま、待て!待ってくれ!!金ならいくらでも払う。望む事ならなんでもしてやる!!だから命ばかりは・・・・!!」

と、いうマーベリックの命乞いに、

「今の俺の望みは・・・お前の死だ」

と、答えるユウキ。

「頼む、お願いだ、待って―」

「・・・・・・・死ね」





「ふ~っ・・・とりあえず終わったな」

と、神殿を抜け出してそう呟くオグマ。

「誰のせいで苦労したと思ってるの・・・?あ、ユウキ、ちょっと水筒貸して」

「ああ」

と、イナルナに水筒を渡すユウキ。イナルナは水筒に入ってる水で顔を洗う。

「・・・・ありがとう、ユウキ。で、ちょっと聞いてよ、オグマったら・・・」

「お、おい!言うなよ!!」

「・・・ウイングロードのこと、喋っちゃったのよ・・・」

「・・・・・・・何だと?」

「私が捕まったときに、隠れ家を教えれば解放してやるって言われてあっさりと」

「・・・・・・俺は今日までオグマの事を流星剣馬鹿のスケベと思っていたが、それは間違いだった・・・」

「ど、どういう事だよ・・・」

「お前は流星剣馬鹿のスケベなんかじゃない!!ただのスケベ馬鹿だ!!」

ユウキのその言葉に、

「ちょ、ちょっと待て!!」

と、反論するオグマ。

「そういう時はとりあえず別の場所を教えとけばいいだろ!!」

「・・・・・・あ、そういう手もあるか・・・」

「・・・・まぁ、それで解放してくれるような相手じゃないが・・・・」

「・・・・マイラの所に使者は送ってたから、ウイングロードの事がバレるのは時間の問題よ・・・」

「・・・・このスケベ馬鹿は・・・・トラキアの反乱分子を抑えるのにあと1年は欲しかったのに・・・!!」

「・・・・お、お前等・・・そこまで怒らなくても・・・・」

と、二人の殺気に冷汗を流すオグマ。

「黙れこのスケベ馬鹿!!」

「少しは反省しなさい!!」



この後、オグマは小一時間ほど、ユウキとイナルナにボコられることになる。





イナルナ達が挙兵する半年前の事であった・・・・







後書き

作者:A HAPPY NEWYEAR!!と、いうわけで2002年最初に完成させた小説はユウキ外伝9章となりました

ユウキ:ものの見事に去年中という〆切を落としてしまったということだな

イナルナ:大体今日、1月10日よ?あと5分もしないうちに11日になるけど

オグマ:相変わらず馬鹿な作者・・・・

作者:くっ・・・・・今回は特別編含めてユウキ外伝10作目ということでイナルナとオグマも久々に登場したぞ・・・

オグマ:俺はともかく、イナルナはあまり活躍しなかったような・・・

作者:・・・・うっ・・・あ、ちなみにあの回想は一応イナルナ達がトラキアに遊びに来た時に祭りがあって遊びにいったら迷子になったという設定です。当時イナルナ9歳、ユウキ8歳。ちなみに、その後何時間で城に戻れたかはツッコミ入れないこと(爆)

ユウキ:・・・・おい

作者:偽イナルナにキスされるのは本編の作者に言ってみたら面白そうと言われたから(おい)

ユウキ:・・・・・・・・・・・・・・・

イナルナ:・・・・・・・・・・・・・・・

オグマ:(ヤバイ!何か話題を変えないと!!)で、今回は他にもう一つ企画があるんだろ?

作者:そう、10作目を記念して企画としてNG編を(爆)

ユウキ:NG編って・・・・・

作者:まぁ、とりあえず、この下に









「結構あっさり忍び込めたな。俺としては暴れたかったから面白くないけど」

「・・・何を言っているんだか・・・」

「バレちゃったらまた大変じゃない・・・・・」

「このメンバーなら楽勝だろ」

「そんな事言ってると足元すくわれるかも知れんぞ」

「あぁ?ユウキ、てめぇ、この俺が雑魚どもにやられるって言いたいのか?」

「こんな所で喧嘩は止めてよ・・・・」

と、話ながら神殿の中を歩いていくユウキ&イナルナ&オグマ。

そして、しばらく歩いて・・・



・・・・カチッ



「・・・・・ん?」

と、先頭を歩いていたオグマが床のスイッチを押してしまう。



ガシャッ!!



と、落とし穴が発動。

「うわっ!危ねっ!!」

と、慌てて落とし穴から後ろへ飛びずさる。

「ユウキ!代わりに落ちろ!!」



ズガッ!



「はいっ!?」

と、オグマに足を引っかけられて落とし穴に落とされるユウキ。

が、



ガシッ!



「おわっ!?」

「お前も一緒に連れて行く!!」

と、落ちる寸前にユウキに足をつかまれるオグマ。



ヒュッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー・・・・・・・・・・



そして二人は落ちていった。

「・・・・・え~と・・・・」

そこに取り残されたイナルナはただただ呆然とするのであった。





一方、こちらは牢屋目掛けて落ちていってるユウキとオグマ。

「お、おい!ユウキ!!一体どうするんだよ!?」

と、怒鳴るオグマに、

「○ョー、君はどこに落ちたい?」

と、呟くユウキ(爆)。

「・・・・ってお前は足にジェット付けてるサイボーグか!?」

とか言っているうちに二人は地面に激突、気絶するのであった(爆)。









作者:はい。ちなみにここだけは本文より先に作ってたり(爆)。あ、元ネタはサイボーグ0○9

ユウキ:作者・・・・

作者:ん?

オグマ:流星剣!!

イナルナ:ナーガ!!

ユウキ:グングニル投げ!!

作者:ぐはぁ!!

ユウキ:・・・・・・全く・・・・伏字の意味なんてほとんどない気がするぞ

イナルナ:やっぱり馬鹿ですね

オグマ:・・・・阿呆らし・・・じゃ、締めるか・・・