SURVIVAL GAME

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1
若葉城聖学園……………

この学校は今時珍しいエスカレータ式の国立の学校である。

小学部・中等部・高等部・大学部があり、この学校に入った者は成績がどうであれ大学部までの進級が約束されている。

その為、入学希望者は多く、試験や面接で選ばれる入学生は500人以下である。

この学校の大学部二年である詩音はあと二年で終わる学校生活を満喫しようと休みがちだった学校へ久しぶりに足を向けるのである。

だが………

そこで待っていたのは、恐ろしい現実だった………。


Sion’s presents

SURVIVAL GAME


詩音は珍しく学校の授業を受けて疲れていた。

「ふぁ〜…………久しぶりに授業を受けると肩が凝るわ〜……」

などと欠伸をしながら窓際へ歩き出す。

流石に大学生と言うだけあって、つい二ヶ月前まで一週間に一回、顔を出すか出さないかといういい加減な生活を送っていた。

それでも、成績は悪くないのである。

五段階評定をすればおそらくオール4と言うところであろうか。

詩音は窓を開けて外の空気を一杯に吸った。

「あ〜あ…………このままずーっとこうしてられたら良いのになぁ……」

窓の桟に腕を乗せてグラウンドを見つめる。

そこは中等部専用のグラウンドだった。

「おっ?またやってるな?野球部っていつもああなのよね〜……まぁ、スポンサーが水晶院だから仕方ないか………」

この場所は四階。(この学校はかなり広いので小学部は一階・中等部は二階・高等部が三階・大学部は四階と階層で学部が区切られている)

グラウンドが大きく見渡せる。

風が心地よく吹く。

すると…………


「きゃあああああああああああああああああああああ!!!」


何処からともなく悲鳴が聞こえてきた。

詩音はその声のした方へと走っていった。


血だらけの女生徒が倒れている。

しかも、他に外傷は見当たらない。

何故かきな臭い匂いが詩音の鼻を刺激した。

詩音はその女生徒の身体を起こす。

「これ………銃の弾傷じゃない………」

その女生徒は左腕を撃たれていた。

しかし、銃声は一切聞こえてない。

詩音は辺りを見回す。

感覚全てを集中させて人の気配を探った。

あたりに人の気配はない………

そう悟った詩音は彼女をおぶり、保険医のところに連れていった。


「先生!!先生?いないの?!」

詩音は第一保健室の戸を乱暴に開けた。

だがそこには誰もいない。

このままでは彼女は失血死してしまう。

詩音は保健室にある薬品を引っ張り出した。

一応、応急処置としてハンカチを力一杯傷口の上で縛り付けてある。

だがこれはあくまで応急処置なのである。

15分おきにハンカチを緩めないと彼女の左腕が壊死してしまうからである。

薬品に関して少しノウハウのある詩音は止血剤を取り出し彼女に注射した。

「ごめんね………ここまでしてもらって………」

彼女は意識を取り戻していた。

「大丈夫?すぐに医者に連れて行ってあげるわ!!でも……誰に撃たれたの?」

「それが…………見たことのない人だったから………」

そしてまた、校舎に悲鳴が響き渡った。

「逃げて!!!私のことは構わないから!!!」

「何言ってるの?!!はやくしないと貴方、失血死するわよ?!!」

「聞いて……私は大学部四年の藤崎っていうの。この学校には大いなる秘密がある………お願い、はやくここから逃げて!!!」

「でも………」

「貴方も殺されてしまうわよ?!!」

しかし、詩音には藤崎を置いて逃げることなど出来ない。

相手は怪我人なのである。

「!!!」

その時藤崎は人の気配を感じた。

「隠れて!!」

「え?」

「いいから隠れなさい!!!」

そう言われても隠れる場所がない。

詩音は隠れられる場所を懸命に捜す。

藤崎は業を煮やしたのか、立ち上がり保健室の床を丹念に調べた。

そして、床を捲り上げたのである。

そこには人一人が入れるぐらいしかない大きさの穴があった。

「ここに入って隠れて!!」

「貴方はどうするのよ?!」

「私はここに残る。貴方だけでも逃げて。あいつ等はここにいる全員を殺すつもりよ?実際にここにいた教師全員が殺されていたわ!!」

「な………何ですって?!」

「………ありがとう。ここまで人に優しくされたのは初めてだったわ……貴方だけでも生き残って………」

藤崎は詩音を穴のある方へ突き落とした。

詩音は身体の大勢が取れなくなり穴に落ちる。

藤崎はそのままその穴を塞いだ。

詩音の視界は真っ暗になる。

「ねえ!!ここを開けて!!開けてよ!!!」

「詩音さん………ここには大いなる秘密がある……それを暴き出してヤツらを…………組織の連中を………」

「藤崎先輩!!ここを開けて!!!」

しかし藤崎にはもう詩音の言葉は聞こえない。

詩音には上からの音がはっきりと聞こえる。

そして、すぐに保健室の扉は開き、銃声が聞こえた。

詩音はその音の大きさに耳を思わず塞ぐ。

その銃声を聞いて藤崎の死を想像した。

「おい!他にも誰かいないか?」

「捜せ!!」

詩音は息を殺して、なるべく音を立てないように動かないようにした……


あれから何分経っただろうか………

物音が一切聞こえなくなり、詩音は自分の頭の上にある天井を押した。

床はいとも簡単に開いた。

そこには………

藤崎の無残な遺体があった………

詩音はそれを見て自然と涙がこぼれるのである。

「藤崎先輩…………ありがとう………私………必ず貴方の仇を……皆の仇をとって見せるわ………!!!」


詩音は保健室の戸をそっと開けた。

そこは血生臭い匂いと返り血を浴びた壁、そしてここの生徒の死体が転がっている。

四階の……大学部の生き残りは詩音しかいなかった………





「航平………私達………どうすれば良いの?」

「季伊奈、泣いてたって何も解決しないぞ?」

「でも…………」

航平と呼ばれた男子生徒と季伊奈と呼ばれた女子生徒は死体の山で埋め尽くされた廊下を歩いている。

この二人はこの学校の高等部一年で同級生だった。

「とりあえず、他にも誰か生き残ってるかどうかを確認する必要があるな……」

「えぇ〜…………怖いよぉ………」

季伊奈は半泣きで航平の後についてくる。

そして、航平は人の気配を感じ取った。

そこは二年生の教室だった。

「おい………ここに誰かいる………」

「え……?まさか……さっきの?」

「いや………わからない………」

航平は息を呑み、戸に手をかけゆっくりと戸を開けた。

航平はその教室を見渡した。


ガチャッ


航平のこめかみに何かが当たっている。

「お前……さっきのヤツらの仲間か?!」

航平は顔を動かさず視線だけを右に向けた。

同じ制服を着た少年が自分にハンドガンを向けていた。

「じ………銃……?!」

「待って!!私達ここの生徒だよ!!ね?同じ制服を着てるでしょ?」

「同じ制服を着ているからといってここの生徒とは限らないだろ?」

「生徒手帳よ、これで信じてくれる?」

季伊奈は少年に生徒手帳を向けた。

そこには季伊奈の名前と写真、そしてごく普通の内容が書かれていた。

「何だ………一年生か………脅かしてすまなかったな」

少年はそう言って航平に向けていたハンドガンをしまった。

「あんた………一体………」

「俺の名は嵩哉。高等部二年だ」

「でも、なんでこんなもの持ってるの?」

そう、普通の学生がハンドガンなんてを持っているはずがない。

「これか?これは担任から貰った。一応本物だぜ」

「た………担任って………なんで担任の先生がそんなもの持ってるの?!」

「そんなこと俺が知るかよ」

嵩哉は何も聞かされず、ただ担任にハンドガンを渡されていただけだった。

航平は改めてその教室を見渡した。

ここにも、上級生と思われる人間の死体がゴロゴロしている。

「この人達………あんたのクラスメイトか?」

「そうだ………皆殺されたよ………」

嵩哉は少し悔しそうな顔をして教室の壁を思いきり殴りつける。

「あいつら………全員で………俺を匿ったんだ………自分の命を捨ててまで俺を助けたんだ………!!」

「ねぇ……一体この学園で何が起こっているの……?」

季伊奈はまた泣き出してしまった。

「誰か………そこにいるの?」

女の声が聞こえ、航平、嵩哉は身を隠す。

季伊奈は声を立てないように航平が口を押さえている。

「誰かいないの?」

その声はしだいに大きくなる。

そして、この教室の前にやってきたのである。

嵩哉はすかさず、ハンドガンをその女に構えた。

急に現れてビックリしたのか彼女は両手を上げている。

詩音だった。

「よかった………まだ生き残りがいたのね………」

「貴様……何者だ?!」

「私?私はこの学園の大学部二年の詩音……聞いたことない?」

詩音は首を傾げて三人に聞いた。

「私……聞いたことあるよ。たしかこの学園に詩音って言うものすごくコンピュータの扱いが上手な人がいるって………」

「その詩音よ」

詩音はにっこり笑って三人に言った。

嵩哉は半信半疑ではあったが、一応相手は先輩である。

ハンドガンを懐にしまい込んだ。

詩音はそれを確認した後に両手を下ろした。

「それにしても……貴方ずいぶんと物騒なもの持ってるのね」

「俺に聞くな、ここの教師が持ってたんだから」

「教師が……?ここ二年D組でしょ?担任って確か五十嵐だったわよね?英語担当の………」

「お前……良く知ってるな」

「そりゃあね、君達よりもこの学園にいる期間は長いから」

詩音は思い出に浸るような顔で辺りを見まわした。

「教師が銃を持っているって言う事は……この学園の何処かに武器庫があるはずね」

詩音は左手を顎に添えて考えこんだ。

そして、一つの心当たりがあった。

「コンピューター室へ行けば何かわかるかも………」

ボソッと詩音は囁く。

「とりあえず、そこへ行ってみようぜ。それに他にも生き残りがいるかもしれないし………今は皆一緒に行動したほうが良いと思う」

航平は詩音と嵩哉、そして季伊奈にそう提案した。

「そうだね。皆一緒にいれば怖くないよね?!」

「季伊奈、お前本当に怖がりだよな」

航平は季伊奈の頭を撫でた。

くしゃっと髪が崩れる。

「だって………こんなところに一人でいたら気が狂っちゃうよ……」




四階・コンピューター室


ここのコンピューターは大学部の人間がおもに使うところである。

航平達は初めて四階に上がった。

この学園はIDカードで全てを管理されている。

階段などというものはほとんど使わず、すべてエレベーターで生徒たちは上り下りしている。

大学部の詩音は全階層を、航平達高等部は三階まで行き来が出来るのである。

今は詩音が一緒にいるので、全員四階に上がることが出来た。

「四階ってこうなってるんだぁ………」

三階の高等部とはまるで雰囲気が違う。

教室も各教室がすべて講義室になっている。

その大きさは計り知れない。

初めて四階へ上がった航平達は物珍しそうに教室を見ている。

その一つのコンピューター室は一番大きな教室である。

そこもIDで扉が管理されているのだ。

詩音はカードをカードリーダーに通した。


カチャ


キーの外れる音がする。

詩音はドアを開けコンピューター室に入った。

航平・季伊奈・嵩哉も一緒にコンピューター室に入る。

ドアが閉まると再びキーロックされてしまった。

ここはオートロック製の扉で管理されているのだ。

詩音はここにあるコンピューターの電源を調べた。

まだコンピューターはすべて生きていた……

詩音はすぐさまパソコンの電源を入れる。

WINDOWSが起動される。

そして、詩音はすぐにMS—DOSを起動させた。

プログラムを打っていく詩音。

その手の動きを見て季伊奈は感動する。

「すごい…………こんなに速い動きでプログラムを打っていく人、初めて見た……」

季伊奈と航平はその動きをじーっと見る。

嵩哉は興味がなさそうにディスプレイを見る。

「よし、これを立ち上げれば…………」

詩音はそのままENTERキーを叩いた。

すると………

学校全体のマップが画面に出てきたのである。

「すごい………」

季伊奈はものすごく感動している。

航平はこのマップを見て違和感を感じた。

「なぁ、先輩」

航平は詩音を呼んだ。

「詩音で良いよ。先輩って呼ばれるようなガラじゃないもん」

「じゃあ、遠慮なく………詩音、このバツ印………何かあるのか?」

航平はディスプレイを指差した。

そこには赤いバツ印が書かれていた。

「ここは確か……立ち入り禁止区間だったと思ったわ。でも今はそんなこと言ってる場合じゃないわね。この学校には秘密がある………」

そう良いながら詩音は武器庫らしい部屋を見つけるため再びキーボードを打つ。

そしてわかった場所は一階の立ち入り禁止区間の中にある左端の部屋だった。

「ここね………行ってみましょう……けど……その前に………」

詩音は学校のマップをプリントアウトした。

「これ、皆に渡しておくわね。何かあったら大変だから………」

「ありがとう詩音さん」

季伊奈は詩音にお礼を言う。

航平、嵩哉の二人はただ黙って詩音からマップを受け取った。

「そうだ……これで生存者の確認できそうよ」

詩音がそう言うと、航平はすごい剣幕で

「捜してくれ!!中等部や小学部にもきっと何人かいるはずだ!!」

「わかったわ」

詩音は航平に言われるままキーボードを打つ。

すると、赤い点滅が6つ光ったのである。

「生存反応が6つ……全部二階からだわ」

「場所は?」

「そうね………マップを見ると………二年六組の教室からね」

「急ぎましょう。彼等が何処かに行ってしまわないうちに!!」

詩音は残りのメンバーの為にマップをプリントアウトし、四人はコンピューター室を出た。




「ねぇ………私達これからどうなっちゃうのかなぁ……?」

「きららさん……泣かないで下さいよ……私まで泣きたくなっちゃいますぅ……」

不安にかき立てられながら、六人は二年六組の教室でじっとしていた。

そのメンバーの名はあゆむ・きらら・葵・翼・双雅・翔の六人である。

その中の一人、きららは恐怖のあまりに泣き出している。

葵はそんなきららを慰める。

「くそっ………一体どうしてこんなことになったんだ?!」

翔は血塗れた壁に拳を叩きつける。

「落ちつけよ。とりあえず……ここから生きて帰る事を考えないと……」

あゆむはそんな翔を落ちつかせようとする。

「……………友達も先生も皆死んじゃった………本当に生きて帰れるの?」

この教室にも死体は10体以上転がっている。

しかも皆きちんと寝かせてあった。

不安が六人を襲う。

皆が何も話さなくなり、シーンとしていた。

すると………

誰かが歩いている足音が聞こえた。

しかも、一つではない。

きららと葵は怖がり互いを抱きしめあう。

「皆………音を立てるなよ………」

六人は出来るだけ息を殺した。

「ここね」

「きっといるはずよ」

「そうだと良いんだけどな」

そう言う会話がこの教室のドア越しから聞こえる。

<おい、俺達がここにいること、ばれてるんじゃないのか?>

双雅が声をなるべく殺して五人に伝えた。

<そんな………どうして………?>

<私達………殺されちゃうの?>

ひそひそと話をする六人。


ガラッ


教室のドアが開いた。

「よかったぁここにいたのね。捜したわよ」

女性は六人に近づいた。

「来るな!!」

「やだなぁ……私はここの生徒よ。安心して。貴方達を殺しに来たとかそう言うわけじゃないから」

「でも私服………………」

すると、今度は高等部の制服を着た男子生徒が二人、女子生徒が一人入って来た。

「私服で当然だ。そいつはこの学園の大学部の人間だからな」

嵩哉が六人にそう伝える。

「だ………大学部?」

「始めまして。大学部二年の詩音よ。生徒手帳を見せたほうが良いかな?ほら」

詩音は懐から生徒手帳を出した。

確かにその手帳は詩音がこの学園の大学部の二年生だと言う事を証明している。

「よかったぁ!!他にもいてくれたんですね!!」

葵が詩音に抱きついて泣き出した。

きららも詩音に泣きついた。

「無理もないわね……まだほんの中学生だもの………」

詩音は泣くきららと葵を抱きしめた。

「私は高等部一年の季伊奈だよ。よろしくね」

「同じく高等部一年の航平だ」

「俺は高等部二年の嵩哉」

三人が生徒手帳を出して自分の名を名乗った。

「俺達は………」

「中等部二年、あゆむ」

「同じく中等部二年の翼」

「同じく双雅」

「私も中等部二年の葵ですぅ」

「私は三年のきららです」

「俺も中等部三年の翔です……」

六人も生徒手帳を出して詩音達に名を名乗った。




「とりあえず、今はここに生存者全員がそろったって言うわけだな」

「生存者全員って……!!!」

「ああ、他のヤツは皆殺された」

嵩哉と航平が口々に言う。

「そんな………たった10人しか生き残っていないなんて………」

あゆむ達中等部のメンバーは肩を落とした。

それもそうである。

この学園の生徒が全員来ていたら全部で約8000人はいたことになる。

それに加え、小学部の教師が20人、中等部の教師が35人、高等部の教師が48人、大学部の教師及び教授が50人いる。

それだけで約8200人以上はこの学園にいたことになる。

その生き残りが10人。

最悪の数字である。

「で、私達はこれから一階にある立ち入り禁止区域にある武器庫に行くの。貴方達も来たほうが良いわ。護身具だけでも身につけておかないと………」

「武器庫なんて……何があるんでしょうか?」

「おそらく………銃火器系でしょうね………日本の国立学園にこんなものがあったなんて未だに信じられないけど………今はそれに頼るしかないわね」

詩音は例の考えるポーズを取ってメンバーにそう伝えた。

「『時代の変わり目………』か……」

嵩哉は小さな声でそう囁く。

「詩音、こいつらに渡すものがあったじゃないか」

「あ、忘れてたわ。この学園のマップよ。何かに役立てて」

詩音は中等部のメンバー全員に先ほどプリントアウトしたマップを渡した。

「先生には悪いけど………IDを貰っていきましょう。これがないと立ち入り禁止区間にはいれないから………」

詩音はこの教室で息を引き取った教師の胸ポケットからIDを取り出した。


一階・小学部


そこの惨劇は一番ひどく、まだ先の長い小学生が大量の血と共に横たわっている。

小学部の人間は全員殺されていた。

二階とは比べ物にならないほど血生臭い匂いが充満している。

「何も知らない子供まで…………」

詩音は思わず口を手で覆う。

きらら・葵・季伊奈はそれを見て可愛そうに思ったのか泣いている。

「お前等、今は感傷に浸ってる場合じゃないぞ」

嵩哉はあっさりとその場をスタスタと歩いていく。

「あの人………冷たい………」

葵が思わずそう口走った。

嵩哉はその言葉が聞こえたらしく、後ろを振り返り葵を睨みつける。

「嵩哉、威嚇するのやめろよ………」

航平が嵩哉の肩に手を置いて言った。

「だが………これはあまりにもひどいぞ」

あゆむが小学三年生くらいの子供の死体をじっと見た。

「弾が10発以上撃ち込まれてる………」

銃の弾傷を数えたあゆむ。

<きっと………いや………怖かっただろうな………>

そう思いながら両手を胸のところで組んでやるあゆむ。

「あゆむは優しいな」

翼が思わずそれを口にする。

あゆむと翼は同級生だった。

小学部の五年生の頃からずっと同じクラスで良く一緒に遊んだりした仲である。

今では腐れ縁と化している。

「お前さ…………これって当然のことだろ?」

「まぁ………死んだ人をいたわるのは人間として当然だね……けど今はそんなことをしている場合じゃないことはお前だってわかってるだろ?」

「………………そんなものなのかな……?人って……死ぬと忘れられていくだけなのかな………?」

「………………」

翼とあゆむはそのまま黙り込んでしまった。

「二人とも……どうしたの?」

何も知らない葵が二人を交互に見ながらそう聞いた。

「別に……なんでもないよ」

翼が葵に気を遣わせまいと気休めの言葉を言う。

「そっか………」

葵は納得いかなかったがそれ以上聞くのをやめた。

そして、小学部の立ち入り禁止区間前の扉に辿りついた。

詩音は教師の胸から取り出したIDを通す。

ドアのキーが外れた。

詩音はドアを開ける。

嵩哉達もドアが閉まらないように次々と奥へ入っていく。

最後の一人、きららが入ったあと、ドアは閉まり、キーがロックされる。

詩音は一番置くの左の部屋の前に立ち尽くした。

カードリーダーにカードを通す。


ピー………ガチャッ


認識信号とキーがロックされる音が鳴る。

詩音はそのドアを開けた。

その時詩音の目に飛び込んできたのは…………