SURVIVAL GAME

DANGER TRIAL
2
市立刻麗中学 三—五教室


「あゆむ。さっき季伊奈から電話が来たんだけど………」

「なんだよ、翼。季伊奈から電話が来るなんていつものことだろ?」

「それがさ………詩音が………ヘリオスの会社に行くって……」

「なにぃ?!!」

翼の言葉にあゆむは驚く。

「何でだよ?!俺達に内緒で………」

「仕事で行くらしいよ」

「……………それ早く言えよ」

「それは良いとして………あゆむってさー………前から思ってたんだけど……詩音のこと好きなんでしょう?」

翼の言葉にあゆむは顔を真っ赤にする。

「な………な…………」

「気付かないとでも思ってた?本当に年上美人に弱いよね。あゆむって……」

「ば………馬鹿言うなよ………詩音が………俺みたいな六つも離れてる年下を相手にするかよ……」

「あ、認めた」

「それにライバルがいる!!」

「ライバル…………?ひょっとして嵩哉のこと?」

翼はそこまでお見通しだった。

嵩哉の気持ちにも気付いているのである。

本人すら気付いていなかったのに全くもってすごいやつである。

「お前さ………超能力かなんか使ってんじゃねえのか?」

「別に?ちなみに航平と季伊奈の好きな人も知ってるよ?」

「そこまで知ってるのかよ………」

「まぁね〜……感は良いからさ」

<それにしても四角関係ってやつ……?>

翼は内心そう思っていた。

だが、それがもっと複雑になるとは流石の翼も思わなかったのである。

<でも問題は詩音の気持ちだよね………>


株式会社「ヘリオス」本社


詩音は会社の社長とこの「ヘリオス」へ訪れた。

結構大きい会社である。

「すごい…………」

「そうじゃろ?この会社は海外にも進出してる大手会社だからな。皇財閥がなくなった今は、この会社が日本一を誇っているんじゃよ………そういえば 詩音ちゃんの苗字も「皇」じゃったな?」

そう聞かれ一瞬ドキッとする詩音。

「皇財閥と私は一切関係ありませんよ。社長」

「そうじゃよな〜。もし詩音ちゃんが皇財閥の娘さんじゃったらわしのもとにはいないよな〜」

などと言って先へ歩いていく。

<よかった………ばれなくて…………>

と思っていた矢先だった。

「おお、大貫社長、お待ちしていました」

「いやなに……織田社長もお変わりなく……」

「そちらの女性は…………?」

「うちの秘書で皇くんだ。皇くん」

詩音は社長に呼ばれ社長の横に立った。

「彼はこの会社の社長の織田社長だ」

「秘書の皇と申します」

詩音は織田に一礼をした。

<この男が生物兵器を………?>

会社の中を見ても普通の会社とは変わらない。

ただ大きさが違うと言う点であろう。

詩音は物珍しく会社の中を見まわす。

「皇秘書はここに興味がおありかな?」

「え……いえ、すごく大きい会社だな……と思いまして。どう言ったシステムで会社を賄っているのかは興味ありますけど……」

「詩音ちゃんは本当にコンピューターが好きじゃの〜」

「コンピューターですか?」

「ええ、私はアメリカで少しコンピューター学を学んだものですから……そう言うのには興味があるんです」

詩音は本当に嬉しそうにそう語った。

「そうですか?では少しだけですがお見せ致しましょう。うちの秘書に案内・説明をさせましょう。うちの秘書の小橋くんだ」

小橋と呼ばれた男は織田に呼ばれ、詩音に一礼をした。

「小橋くん、ここにいる皇秘書に会社の中などを案内してあげたまえ」

「わかりました。皇さん、こちらへ………」

「社長、少し見学に行ってまいります」

「行ってらっしゃい」

詩音は織田と大貫に一礼をして小橋の後についていった。

その後姿を織田はじっと見ている。

「大貫社長、彼女は良い子ですね」

「うちの自慢の秘書なんじゃよ。21歳と言う若さですでに秘書検定の一級を合格している」

「そうですか…………」

その時、織田の目が怪しく煌いた………

<あの娘………もしかして………>


詩音は小橋に案内され色んな所を見せてもらった。

「皇さんはアメリカでコンピューター学を学んでいたそうですね」

「ええ。ほんの少しですけど………」

詩音は小橋に聞かれそう答えた。

「ではコンピューターにはお詳しいのですね」

「ほんの少しのノウハウはあるつもりです」

「貴方のような方がこの会社にいてくれると大変心強い………」

「え?」

「いえ………何でもありませんよ」

<この男………何を考えているのかしら………?>

詩音は小橋の怪しい言動に違和感を覚えた。

<この会社………絶対に何かある………!!!>

そして微かに小橋にじっと見られているような……そんな視線も感じていた。


「では、我々はここで失礼しよう」

「織田社長、小橋秘書、今日はありがとうございました。いい勉強になりました」

詩音は織田と小橋に一礼をした。

「皇くん、行くぞ」

「はい、社長」

織田と小橋は大貫と詩音を見送っていた。

彼らが車に乗りこみ、姿が見えなくなったところで、織田が動いた。

「小橋…………あの皇秘書のことを調べたまえ」

「かしこまりました」

「あの娘…………何かある………」


詩音は今家路に着くのに車に乗っていた。

その時もあの織田の視線と小橋の視線が気になって仕方がなかった。

「……………」

詩音は携帯電話を取り出した。

そして発信履歴をだして電話をかけた。

「要介さん。詩音です」

「詩音さん、どうかしたんですか?」

「実は要介さんにお願いしたいことがありまして…」

「なんでしょうか?私にできることでしたら協力します」

「私達の身元データを一部だけプロテクトしてくれませんか?すべてのことに関するデータの………」

「何かあったんですか?」

「あの後ヘリオスへ行って来たのですが……何かありそうな予感がするんです……会社のデータは対したことは書いていないので気にしてはいないのですが日本政府のデータを調べられでもしたら…………」

「そういうことですか。わかりました」

「プロテクトデータを作ってE−Mailで送りします。それを使ってください。普通のプロテクトデータならきっとハッキングされるでしょうから……」

「わかりました。送られしだいにそのプログラムをデータに入れておきます。」

「お願いします」

詩音はそう言って電話を切った。

「嫌な予感がするの………何か企んでいた眼をしていた………!!あの秘書……」


自宅


詩音は玄関の鍵を外しドアを開けた。

「詩音お帰り〜」

そこには翔がいた。

「詩音、ここのところ教えて欲しいんだけど………」

「ごめん!!今ちょっと忙しいの。これが終わったらすぐ教えるわ。あと晩御飯の支度お願いね!!」

詩音はそう言ってきららの申し出を断り、自分の部屋へ入っていった。

「どうしたんだ?詩音……血相変えて………」

「何かあったのかな……?」


詩音はパソコンの電源を入れ、プログラムを打ち、プロテクトデータ作成にかかった。

「まずは……ハッキングされた時の為に私特製のコンピューターウイルスがハッキングされた時点で流れこむプログラムをっと………」

詩音は徹底的にキーボードを打っていく。

その早さは異常なまでに早く、かつ正確だった。

「あと、この偽の身元データが立ちあがるように…………」

その作業が一時間以上続いた。


「きらら。詩音は帰ってきてないのか?」

嵩哉がバイトから帰ってきて早々にその事を聞いた。

「詩音は帰ってきてからすぐに部屋にこもりっきりだけど………」

「そうか」

嵩哉はそう言って詩音の部屋の前に立ち詩音の部屋のドアを開けた。

「詩音、はいるぞ」

「!!!」

「……………………」

二人の間に沈黙が走る。

詩音は着替えの途中だった。

脱ぎ掛けのインナーが胸のところで丁度とどまっている。

「ちょっと!!早くドア閉めてよ!!!」

「あ…………悪ぃ………」

つくづく間の悪い男である。

嵩哉はすぐにドアを閉めた。

その顔は真っ赤である。

<詩音の裸なんて見慣れてるから免疫がついて全然平気なのに…………何で今日は………>

嵩哉の心臓は異様な早さで鼓動している。

見慣れているのは、嵩哉が詩音に用事があって部屋のドアを開けるとほとんどが着替えてるなり、風呂上りでバスタオルしか羽織ってないという場面によく遭遇するからである。

本当に間の悪い男である。

ある意味…………よすぎなのかもしれない。

「嵩哉、ノックしてから入る様にしたほうが良いよ?いつもこうじゃない」

「…………どうも慣れちゃって………」

あゆむはそんな嵩哉を見て少し機嫌の悪そうな顔をしている。

翼はそのあゆむの横にいるのが少し怖かった。

彼の周りに微かに怒りの気が漂っているからである。

「……………」

翼は知らないフリをしてコーヒーを飲む。

「あゆむ……………?」

翼は恐る恐る彼に話しかけた。

「…………………何?」

その声は怒りに満ちている。

<こわ〜…………>

そこへ、着替えが終わった詩音が出てきたのである。

「嵩哉!!あんたってどうしていつもいつも………」

「だから!!謝っただろ?!それにな、別に裸見られたって減るもんじゃねえじゃねえか!!」

「減る減らないの問題じゃないでしょうが!!!」

詩音は嵩哉に怒鳴りつける。

「詩音、晩御飯食べようよ。俺、お腹すいちゃった」

あゆむはまだ不機嫌そうな顔をして詩音に言う。

「あ、待っててくれたの?ありがとう」

詩音はあゆむに笑顔でお礼を言う。

その笑顔を見てあゆむは少し嬉しくなった。

「いや……別にお礼を言われるほどじゃあ………」

「あら、謙遜しちゃって。相変わらず可愛いわね。あゆむは………」

何故かいつも可愛いと詩音に言われるあゆむ。

詩音は妙にあゆむをよく可愛がっている。

だが彼はそれを喜んでいる。

翼はそんなあゆむを見て「変わったやつ……」と思った。


丁度その頃


小橋は日本政府の機密ファイルを開き、詩音の経歴などを調べていた。

だがすでに詩音の作ったプロテクトファイルが立ちあがっており、彼は明確な詩音の経歴を調べることが出来なかった。

どうやっても詩音の作った偽ファイルが立ち上がるばかりなのである。

「やはり会社の方の社員ファイルもここの機密ファイルも役に立たないか……だがあの秘書………必ず何か秘密がある………」

生半可のパソコンの知識だけでは詩音の作ったプログラムは壊れはしない。

詩音のプログラムはハッキング・クラッシュ対策が非常に強固である。

そのためどんなクラッシャーやハッカーなどもそう簡単には壊したり進入したりすることは出来ないのである。

「そう簡単にはいかないってことか………」

小橋はそう囁きながらパソコンの電源を落とした。


次の日の聖ヶ丘学園


その日の聖ヶ丘学園はものすごく騒がしかった。

嵩哉・航平・季伊奈の三人は一緒に登校し、学校の異変に気付いた。

「おい、未鷲見嵩哉とその兄妹の航平と季伊奈ってあの若葉城聖学園の生き残りらしいぞ?」

「え?まじかよ………ひょっとして自分達だけ逃げたんじゃね〜の?」

「昨日来ていたあの美人のねーちゃんもそうらしいぞ?」

そんな噂が一気に持ちあがっていたのである。

季伊奈は信じられない顔でその噂を耳にした。

「な………何それ………!!!」

季伊奈の表情は怒りに満ちている。

「一体誰がそんな噂を…………」

「………………」

嵩哉は黙って校舎の中に入っていった。

「あ、お兄ちゃん待って!!」

「…………誰だよ………本当に………!!!」

航平は不機嫌そうな顔で二人の後を追った。


聖ヶ丘学園 3−D教室


嵩哉のクラスもその噂で持ちきりだった。

クラスメイトは嵩哉が近づくとその傍から離れる。

まるで嫌われ者扱いである。

「……………」

嵩哉は不機嫌な顔をして自分の席に座った。

周りは「嵩哉と航平達が教師やクラスメイトを捨てて逃げた卑怯者」だの何だのと嵩哉の目の前でこそこそとぼやいている。

それを見てて一番気に入らなかったのは絵菜瑠だった。

「ちょっと!!!あんた達やめなさいよ!!」

「絵菜瑠………」

「そんな確信の持てないような噂を聞いて間に受けて周りの人に言いふらして!!!いいかげんにしなさいよ!!見てて腹立つわ!!」

絵菜瑠はどうやらヒステリーの気があるらしく、そう言った後机を蹴り飛ばした。

「嵩哉君も彼らの言う事気にすることないよ。ただの噂なんだからさ……」

「……………………絵菜瑠。後で話しがある。屋上に来てくれ」

絵菜瑠の耳元で声を小さくしてそう言った嵩哉は、自分の席を立ち、鞄を持って教室を出ようとする。

「嵩哉君、何処に行くの?!!」

「こんなやつらと一緒に授業なんて受けたくないね。馬鹿馬鹿しい」

嵩哉は力任せに教室のドアを閉めた。


聖ヶ丘学園 2−B教室


航平のクラスも嵩哉のクラスと同じく、航平を避けるそぶりをしていた。

それを見てて航平はすごく不機嫌だった。

流はそんな噂を諸ともせずに航平の傍にいた。

「航平、気にするなって………お前はちっとも悪くないんだからさ」

「……………俺、今日の授業出ないわ」

「航平………」

「屋上で昼寝してる。こんなやつらと授業だなんて反吐が出る」

航平が席を立った時、季伊奈が教室前にいた。

季伊奈は泣いていた。

「皆が…………私に……教室出てけって………私と一緒に授業受けたくないって言うの…………」

季伊奈はそう言って航平に泣きついた。

「季伊奈、俺も今日は授業でないから終わるまで屋上に行ってよう。流、後でノート見せてくれない?帰ったら姉貴に聞くわ」

「ああ、わかった」

航平は泣いている季伊奈を連れて鞄を持って教室を出ていった。

それを後で見ていた流。

彼の怒りは爆発した。

「てめえら………いい加減にしろよ………!!!」

流はそう言って自分の近くにあった机を蹴飛ばした。

「ただの噂間に受けて、広めて………他人追い詰めて何になるんだよ……!!!」

「流…………」

「おまえら…………今度航平の目の前で今日みたいなことしてみろ………?!全員ぶん殴ってやるからな………!!!」

流の怒りの気迫にクラス全員が押される。

「…………流……ごめん……俺たちが間違ってたよ」

「後で私………航平君に謝ってくる………」

そう言う言葉がクラスに出てきたのである。

「季伊奈ちゃんはA組だったよね?A組の子にも言っておく」


聖ヶ丘学園 屋上


航平が季伊奈と一緒に屋上に着た時にすでに先約がいた。

嵩哉である。

「嵩哉、お前もか」

「…………どうした?季伊奈」

目を赤く腫らした季伊奈を見て嵩哉が聞いた。

「ううん…………何でもない………」

まだ微かに泣き声が入り混じっている。

「詩音に電話する………」

「やめろって………アイツ仕事中だから………」

「だって…………」

「航平、好きにさせてやれ」

嵩哉は航平にそう言った。

嵩哉の言葉が嬉しかったのか季伊奈は笑っている。

そして季伊奈は自分のポケットから携帯電話を取り出し、詩音の携帯にかけたのである。

「もしもし?」

「 詩音〜………聞いてよ〜……」

詩音の声を聞いたとたん、季伊奈は再び泣き出した。

「ど……どうしたの?」

詩音は季伊奈の泣き声を聞いて戸惑っている。

「詩音……あのね………」

「あ、ごめん 季伊奈。今接待の途中なんだ。後10分で終わるからかけなおして上げる。だからちょっと待ってて、ね?」

「うん………」

「じゃ、後でね」

詩音はそう言って電話を切った。

季伊奈はその電話をじっと見つめている。

「なんだって?」

「今、接待の途中なんだって………後でかけ直してくれるって……」

まだ泣き止んでいない季伊奈の頭を撫でる航平。

嵩哉はそれを見てさらに不機嫌になる。

「ったく………一体誰だよ……!!!こんな噂流したの……!!!」

「それは言えてるな。しかも昨日の今日だぞ?詩音がヘリオスに行ってからこうなるなんておかしくないか?」

「詩音………ひょっとして敵にかぎつけられたんじゃないのか?」

「あいつに限ってそんなミスはしないだろ?」

「嵩哉君」

その時に嵩哉のクラスメイトの絵菜瑠がきた。

「来たか」

「なぁに?話って………」

「ちょっとこっちにこい」

嵩哉は手招きをして絵菜瑠を呼ぶ。

絵菜瑠はそう言われ嵩哉の横に来て座った。

「どうしたの?」

「絵菜瑠、俺達にこれ以上関わるな」

「…………どうして?私もいじめられるかもしれないから?」

「それもあるが………俺らにはあまり深く関わるな」

「…………理由を教えて!教えてくれないのなら私、ずっと嵩哉君から離れないから」

嵩哉は悩んだ。

航平と季伊奈も浮かない顔をしている。

航平はそしてある決意をした。

「嵩哉、言えよ。俺も流にだけは言うつもりだから………」

「…………………」

「嵩哉君!!」

「……………あいつらの言っていた噂の一部は本当だ」

「え?どう言う事?」

「俺達は若葉城聖学園の生き残りだし、俺はこいつらの兄貴じゃない。昨日来ていた女も俺達の姉じゃない」

嵩哉の言っている言葉がサッパリ飲みこめていない絵菜瑠。

「俺の本当の名前は暝嵜航平」

「私は綾峯季伊奈。昨日来ていた女の人は皇詩音」

「す……皇……?!!」

絵菜瑠はその苗字を聞いて過剰反応した。

「………何か知ってるのか?」

「…………皇財閥って聞いたことない?」

「皇財閥?」

「皇財閥っていうのは世界で三番目にはいるくらいの大きな会社を経営していた人がいるの。確か………その当時の社長が………皇……恒……でもその社長さん15年くらい前に急に亡くなって…………その後奥さんの静香が夫の後を引き継いで支えてたんだけど、その人もつい三年くらい前に亡くなって……後を継ぐはずの娘さんが行方不明になって……財閥は崩壊。その財産は総額およそ5000億……」

「ご………5000億?!!!」

その金額を聞いて三人は驚く。

「うん。うちのお父さんが皇財閥が経営していた一流会社で働いていたの。えーとね……確かその恒さんの娘の名前が詩音だって聞いてたわ」

「あいつ………財閥の娘だったのか………」

その時、季伊奈の携帯がなった。

詩音からである。

「もしもし」

「季伊奈。で?聞いてほしいことって何?」

季伊奈が話し出そうとした時、嵩哉が季伊奈の携帯を奪った。

「詩音、お前財閥の娘って本当か?!!」

「な……何いきなり変なこと言ってるのよ? 嵩哉………」

「真実か嘘か!!二つに一つ!!」

「………………」

「しらばっくれるのか?」

「………………」

嵩哉が絵菜瑠にあることを聞いた。

「絵菜瑠、お前の親父の名前は?」

「修よ」

「詩音、外村修っていう名前知ってるか?」

「外村………ああ……確か………そんな名前の秘書が父さんの会社にいたような……」

「絵菜瑠、お前の父さんの仕事内容は?」

嵩哉は携帯を少し離して理絵に聞いた。

「会社の秘書よ」

「……………詩音………お前やっぱり……」

「………………」

「 詩音!!」

嵩哉は電話越しで詩音に怒鳴りつける。

「…………そうだよ……………」

「何でお前そのこと俺達に………」

「皆には関係ない話でしょ?私が………そう言う家柄の出身だってことなんて」

「じゃあお前、俺達の学費や生活費って全部………」

「家の財産から出してるよ」

「何でそんなことするんだ?俺達にはお金取っとけって言っときながら自分はその財産俺達のために削って………」

「…………そこに外村さんの娘さんがいるのね?確か……絵菜瑠って言ってたかな?」

「ああ、そうだけど」

「彼女に聞いたらわかるよ」

「俺はお前の口から聞きたい」

「………今、会社の中だし、皆に聞こえるから今は話せない」

「じゃあ俺、今日はバイト休みだから早く帰ってこいよ」

「わかった」

「 季伊奈。ほら」

嵩哉はそう言って季伊奈に携帯を返した。

「詩音?ごめんね、嵩哉に携帯横どられちゃってさ……」

「で?季伊奈は別の件なの?」

「うん、実はさ………うちの学園で………私達が城聖の生き残りだって言う噂が広まっちゃって………今私達授業受けてないの」

「な………何ですって?」

詩音は季伊奈の言葉を聞いて驚いた。

「詩音……どうしよう……このまま噂が長引いたら私達この学園にいられないよ……」

「わかった………原因は帰ったら調べるわ。それと……授業に出にくいようなら家に帰ってなさい」

「わかった」

季伊奈はそう言って携帯を切った。

「詩音が、授業に出にくいなら家に帰ってなさいって」

「じゃあ、帰るか?」

「俺はこの時間終わるまでいる。流に話しがあるし……」

「しょうがねえな。じゃあ俺も付き合うよ」

「私も〜」

「嵩哉君…………話の途中なんだけど……?」

絵菜瑠は言いにくそうに嵩哉の服のすそを引っ張ってそう言った。

「あ………忘れてた……」

嵩哉は頭を掻きながらそう言った。

「俺達は、教師とクラスメイトに守られて生き残った城聖学園の生徒」

「…………」

「皆、俺達の目の前で死んでいったよ」

「別に他の生徒や友達を見捨てて逃げたわけじゃないよ」

「そうだったの………辛かったんだね………」

絵菜瑠は嵩哉達の言ったことが理解できたらしく、同情の目を嵩哉達に向けている。

「でもね、嵩哉君。私は貴方のとこにいるわ」

「………お前、話し聞いて………!!!」

「だって………私は………嵩哉君の………友達だもん………友達が……自分の大切な友達助けて何が悪いの?」

「俺達の傍にいると危険だからそう言ってるんだ!!」

「どうして危険なの?!!」

「俺達はある仕事を依頼させている。その依頼事態が危険だからだ」

「…………わかったよ………」

絵菜瑠はそう言って屋上を去っていった。

その背中は淋しそうだった。

「絵菜瑠………ごめん……」


その後、航平は流にさっきと同じ事を彼に伝えたのである。


自宅


詩音は帰ってきてから嵩哉・航平・季伊奈に自分の家柄、事情を話した。

「要するに………詩音は家を継ぎたくないからっていう理由で会社を潰したわけじゃないんだ……」

「今までね……ずっと調べてた。あの日のことを今でも覚えているわ……お父さんが元気良く出勤して………それまで病気なんて一つもしてなかったお父さんが……気付いた時に白い布を顔にかぶせられてさ………お母さんに聞いたよ。せめたりもした……どうしてお父さんは死んだんだって………」

「詩音………」

「ごめん……しんみりしちゃったね……。晩御飯食べよう。今から作るから」

詩音はそう言って立ちあがり台所に向かった。

「悪い事聞いちゃったね………」

「そうだな……」

「詩音」

「なぁに?」

詩音は嵩哉に呼ばれ、台所から返事をした。

「後で俺達に授業してくれよ?」

「わかってるって」

その時、家の電話が鳴った。

季伊奈が受話器を取る。

「はい、未鷲見です」

「季伊奈さん?空木です。 詩音さんはいらっしゃいますか?」

「ええ。少々お待ち下さい。 詩音!!電話だよ!!」

「はいはい」

詩音は季伊奈に呼ばれ、電話の受話器を季伊奈から受け取った。

「もしもしお電話変わりました」

「詩音さん、空木です。大変です、情報が漏れました!!」

「え………?!!」

「どうやら政府の中に情報を横流ししていた者がいたらしいんです。彼の名は浅倉………」

「浅倉……?」

嵩哉はその言葉を聞いて、詩音から受話器を取った。

「ちょっと嵩哉!!」

「あんたに聞きたいことがある。その浅倉って言う男に18歳の息子がいるか?」

「ええ、いますよ。確か名前は………」

「いや、いい。ありがとうございます」

嵩哉は詩音に奪い取った受話器を返した。

「あ、ごめんなさい。それで………情報が漏れたというのは……?」

「詩音さんのデータなんです」

「私の………?!」

「ええ、その情報はどうやら「ヘリオス」に漏れたようです」

「…………あの社長………政府の人間を買収したわね……!!!」

「とにかく、 詩音さん貴方は特に気をつけてください。何が起こるかわかりませんから………」

「わかりました。要介さん、わざわざありがとうございます。それと……明日からこっちの電話線は一次切っておきますから……」

「わかりました」

詩音はそのまま受話器を置いた。

「詩音………」

「詩音、噂の原因がわかったから調べなくても良いわ」

「何か心当たりでもあるの?嵩哉」

「ああ………それに………明日から任務遂行だから学校は休むけどな」

「そういえばそうだったね」

「さ、今日は早めに寝るか。明日早いしな」


その夜…………

季伊奈の携帯電話が鳴った。

流からである。

「季伊奈、話があるんだ。今抜け出せるか?」

「え?今から……?うん、わかった………」

季伊奈はこっそりと家を抜け出そうとした。

その時のドアの音で詩音が自分の部屋からその様子を見ていた。

「ふ〜ん…………季伊奈もなかなかやるじゃない………」

そう思いながら、詩音はある人を想う………

「ま………私の場合、無理な話よね………年上好みの私が年下に気を持っちゃうなんてさ……」

そう言いながら詩音は音を立てずに自分の部屋のドアを閉めた。


季伊奈は流の呼び出しで近くのローソン(嵩哉のバイト先)の前に来た。

そこには流が外で一人、季伊奈のことを待っていた。

「季伊奈」

「流くん、どうしたの?話って何?」

「あの………ここじゃなんだから………近くにファミレスがあるからそこに行こう。俺がおごるよ、腹減ったし…………」

「あ…………うん………」

季伊奈と流は近くのファミレスへと向かった。


そこについても二人は黙ったまま。

沈黙が二人を覆う。

「あのさ………話って………何?」

季伊奈は改めて流に聞いた。

「いや………あの………」

流は言葉に詰まる。

だが、深呼吸をして彼はこう言った。

「季伊奈。俺とさ…………付き合ってくれないか?」

「はぁ?」

季伊奈は流の言葉を疑った。

「だから…………俺さ、お前のことが好きなんだよ」

「……………嘘…………」

「嘘でこんなこと言うかよ」

「あ……………」

季伊奈はその時、自分の好きな人を思い浮かべた。

だが彼は季伊奈のことなど何も思っていないだろう。

他に好きな人がいることに季伊奈は気付いたのだから……

<嵩哉……………>

季伊奈はそれでも諦めきれなかった。

「ごめん…………私さ…………他に好きな人がいるんだ………だけどその人にも他に好きな人がいて…………自分の気持ちがわからなくなってるの………だから………流の気持ちには答えられないよ………」

「そっか…………」

「本当に………ごめんね………」

季伊奈はそう言って店を出た。

「季伊奈…………」


詩音達は北海道の山奥にある「ヘリオス」の研究所に向かった。

そこでは生物兵器が開発されているという。

「詩音、何で今回小型のロケットランチャー何て入ってたと思う?」

「それを使わなくちゃならないほどの生物兵器が要るってことなんじゃないの?」

葵の質問に詩音はあっさりと答える。

双雅はそのロケットランチャーをまじまじと見ている。

「すっげー………でもこれ、葵やきららにはちょっと重くないか?」

「なら俺が使うよ。そのロケットランチャー」

そう言って翔が双雅からロケットランチャーを奪う。

「弾は?」

「全部で………20発だね」

「重そう…………」

周りのメンバーはロケットランチャーを見てそう思う。

けど実際になかなか重いものである。

「あとは前と同じ武器で良いよね?」

「まぁ………良いんじゃない?」

「火炎放射器もあるよ?」

「対戦車ライフルも………」

「今回すごいね…………」

「サブマシンガンもあるよ」

全員が口々にそう言う。

「俺、対戦車ライフル使おうかな?」

「私サブマシンガン使う〜★」

きららと航平がサブマシンガンと対戦車ライフルを持って、戦闘準備にかかる。

「じゃ、そろそろ作戦に移りましょうか?チームメンバー……決めないとね」

「詩音、今回は俺と組もう!!」

あゆむが詩音の左手を握って力一杯に言う。

「え?私は全然構わないけど」

「じゃ、そうしよう。な?」

「ええ、いいわよ」

その様子を見ていた嵩哉が面白くなさそうな顔をする。

それに気付いた航平が嵩哉の気持ちに何となく気付いた。

だがあえてわざと嵩哉にこう言った。

「どうした?機嫌悪そうだけど?」

「…………別に、何でもねえよ」

さらに不機嫌そうに嵩哉は自分の武器の手入れを始めた。

<そう言うことか…………>

航平は嵩哉の気持ちに確信が持てた。

嵩哉はやきもちを焼いているのである。

「季伊奈、俺達は俺達で作戦に移るぞ?」

「え?…………うん」

航平は季伊奈の気持ちに気付いていた。

だが、それでも中学部の頃からずっと一緒で、その頃から季伊奈のことが好きだった航平にしてみれば諦めきれないのである。

たがいにすれ違っていた。

「なぁ、季伊奈………昨夜遅くにどこいってたんだ?」

「え?!」

季伊奈は航平の言葉に驚いた。

しっかりとばれていたのである。

「ちょっと………」

「ちょっとって何だよ?女が一人夜遅くに出ていったら心配するだろ?」

「本当………何でもないから………」

昨夜のことを思い出す季伊奈。

<流…………本当にごめんね………私…………>

そう心で言い聞かせる季伊奈であった。


基本的なメンバーは嵩哉とあゆむが入れ替わったということ以外に変わりはなく、それぞれは作戦通りに行動をうつす。


ヘリオス研究所


「これは……織田社長」

織田は小橋を連れて研究所に来ていた。

「ところで………サンプルは手に入ったのか?」

「はい、昨夜あの城聖学園の綾峯季伊奈と暝嵜航平の友人を………あと外村の娘をこの研究所に連れてきています。外村の娘は軟禁、暝嵜航平と 綾峯季伊奈の友人はただいま実験中です」

「そうか………城聖のヤツらのそれを知ったときの顔が早く見てみたいわ」

「ところで………皇の娘はどうするつもりなのですか?」

「皇一族は皆殺しだ。あやつらがいてはヘリオスは日本一の会社でいられなくなる。あの娘に生きていてもらっては困るのだ。15年前にアイツにやったことが全て無駄になってしまう」

織田の顔付きが一気に変わる。

「皇詩音だけは絶対に殺せ」

「かしこまりました」

「社長、侵入者です」

「来たか…………皇の娘………おい、アレを発動させろ」

「アレはまだ実験中です!使うのは………」

「いいから使え!!」

「はい……………」

研究員は織田に言われるがまま、アレを発動させた。

そして織田は早々に研究所を去った。