SURVIVAL GAME

SCHOOL WAR
2
詩音はサングラスを外し、目を抑えていた。

時折、目に激痛が走る。

それに耐えながら、詩音は一人、深く考えていた。

留学していた時付き合っていた彼氏が今、腕の良い医者になっていて、その彼が詩音が発病して入院した時、担当医として再開したあの日のこと………

そして、彼から言われた絶望的な言葉を思い出していた。


『詩音、落ちついてよく聞くんだよ』

『何?改まっちゃって…………』

詩音は首を傾げ、彼を見た。

見た……と言っても、実際にはぼんやりとしか見えてはいない。

『あのね、眼の検査の結果なんだけど……』

『もう結果が出たの?まだ2日しか経ってないわよ?』

『視力……落ちてる一方なんだ………もしかしたら、一生見えなくなるかもしれない』

彼の言葉を聞いて、詩音は微笑みをなくし、言葉も失った。

『一生って………それって失明するって……こと?』

『そういうことになるね………完全に視神経を侵しちゃってたから………』

『そっか………』

『あとね、酷い乱視も出ちゃってるんだ。乱視の補正はコンタクトでするといいよ。作る手配はできてるよ』

『ならさ、そのコンタクト……カラーにしてほしいな………』

『それは構わないけど………度も入れてあるけど、今より……そうだな……本を近づけて読める程度にしか見えないから……』

『うん、それだけしてくれるだけでも嬉しいよ……』

少し哀しげな表情を浮かべて、詩音は目を閉じる。

『ごめんね、詩音……僕がもっとしっかりしてて……技術ももっと持っていたら………』

『いいよ………この病気が治っただけでも……嬉しいし……それに、眼が治らないのはレオンのせいじゃないから………』

そう言ってはいても……目が見えなくなるという現実を知った詩音の心は絶望しか残されていなかった。


そんなことを思い出しながら、詩音は一人で覚えたばかりのタバコを取り出し、火をつけた。

「全く………眼までダメになっちゃうなんて……ホント、私の人生メチャクチャね………」

淋しそうな表情で、空き缶を灰皿変わりにして一服する詩音。

詩音は今まで、20歳を過ぎてていても健康を損なうタバコだけは一切手をつけてなかった。

だが、ニューヨークで病気に侵されてからは気持ちが沈んだときとかにだけ吸う様になっていた。

ちなみに日本で吸わなかった理由はもう一つあった。

それは…………

嵩哉がタバコ嫌いだったからである。

初めて出会った頃にはもう成人だった詩音に、一緒に暮らすことになったときに嵩哉が断固として詩音にタバコを吸わせようとはしなかったのである。

「こんなとこ、嵩哉に見られたら、アイツ凄い顔して怒るわね……」

そうぼやきながら詩音は苦笑した。

「でも………もう何したって………私は………」

すると、詩音はすぐ傍で殺気を感じ、タバコの火を消して銃を構える。

神経を研ぎ澄ます詩音。

だが、敵が先に動いた!!

狙いは詩音のサングラス。今は陽が差し込んでいて、廊下は非常に明るい状態にあった。

マフィアの一人が詩音のサングラス目掛けて銃を放った。

そして、サングラスに見事に当たり、サングラスが壊れてしまう。

詩音の眼に強烈な光が差しこんだかのようなまぶしさが襲う。

そのせいで詩音は怯み、大きな隙を作った。

「クッ………」

その瞬間、詩音はみぞおちに拳を入れられ、気を失ってしまった。


その頃、嵩哉達は双雅と合流した。

双雅の傍にはマニがいる。

「双雅、大丈夫??」

葵の言葉を聞いて、双雅は嵩哉に支えられかろうじて立っていた葵を抱きしめた。

「葵………心配したんだぞ………!!」

「うん……ごめんね………」

こうして二人は仲直りをしたという…………

『それじゃあね、双雅。私はこれで失礼するわ』

マニはそう言って教室を出ようとした時だった。

校内放送が入りだしたのである。

『ニューヨーク市警のエリートさんにお知らせだ。相方を捕獲させてもらった。相方を殺されたくなかったら今すぐに体育館にくるんだな。』

と、英語でそう流れたのである。

マニの表情が一変する。

その様子を嵩哉は見逃さなかった。

「……どした?」

『………詩音が………!!!』

嵩哉の問いにマニが一言だけそう答えた。

その言葉が意味するもの……それを彼は感じ取った。

『何処へ来いって……?』

『体育館よ』

『そっか………じゃあ俺は行く』

『ちょ……ちょっと待ってよ!!!呼びだされたのは私よ。それに一般人を巻き込むわけにはいかないわ!!』

マニの言葉に嵩哉はニヤつく。

その不適な笑みは、自分自身をあざ笑うようにも捕らえられる。

『俺は一般市民とは違う……!!それに、俺はアイツをこの手で守りたいんだ!!もう絶対に……傷つけたりするもんか………』

3年前の、あの日の光景が彼の心によぎる。


血に染まり……顔色を青ざめて倒れたあの時の詩音を………


『俺はもう後悔はしたくない。今度こそアイツを連れ戻す。俺は……3年も待ったんだ………!!もう……絶対に逃がしてやるもんか』

『………』

マニはそのまま黙りこんでしまう。

そして、マニは持ってたベレッタを準備する。

『………なら私も一緒に行くわ。一人で行くのは危険よ。援護は私に任せて』

『あぁ、そうしてくれると助かるぜ』

そう言って、マニと嵩哉は体育館へと向かった。


刻麗高校 体育館


体育館の倉庫室に、詩音は閉じ込められていた。

もちろん、両手足は拘束されている。

眼も眩しくて閉じたままだ。

見張りの男が2人ほど、詩音の傍にいる。

「ほんと、スカした女だぜ。一言も喋らないどころか泣きも喚きもしねえ…」

「随分とまぁ……お高くとまってるもんだよなぁ………」

そういう会話を詩音はただ黙って聞いていただけだった。

だが、心の奥底ではすごく悔しい思いがこみ上げていた。


あの時……あんな病気さえしなければ……もし、この眼が見えていたなら……


どうしてもそのことが悔やみきれずにいた。

けれど自分自身を責めても、他人を責めても、それはどうにもならないことだった。


幾度、この身体を責め立てて壊そうとしただろう……

幾度、この身体を傷つけて深い傷を負っただろう……


傷つけて、痛みに耐えて……自分の血で塗れた手を見るたび、思い出されるのは楽しかったころの思い出と、思いをよせてる者の笑顔だった。

その度に、胸が苦しくなって泣き叫んだことだろう……

たった一つの希望にかけて……

とった行動も、結局裏目に出るばかりで詩音の心を打ち砕いていく。

全てを投げ出しても手に入れたかったものも、夢となって消えていってしまった。

叶えることもかなり困難な現実に、何度涙を流しただろう。


そんな思いが段々込み上げてくる。

一番会いたかった人物と対面した時も、結局自分の意志とは別の行動をとっていた。

以前より、素直になれなくなっている自分を思って、詩音は自分自身をさらに疎ましく思う。


そう思っていた矢先であった。

「それにしてもよ、中々良いタマじゃねぇ?この女………」

「お?やっぱりお前もそう思うか??」

「なぁ……どうせ殺すなら頂いてからでもいいよなぁ?」

その言葉を聞いて詩音の背筋が凍りつく。

「目も見えてねぇんじゃ抵抗もできねぇだろうしなぁ……」

そう言って男の一人が詩音に近づく。

だが詩音は、隠し持ってたナイフで腕の縄を切っていた。

そして、全神経を研ぎ澄まし、気配だけで相手の位置を悟り、拳銃を男の額に付きつけた。

「私に触れるな。私に触れていいのはこの世でただ一人だけだ!!」

見えない目をうっすらと開け、睨みつける詩音。

だが、その銃には少し違和感があった。

「へっ………撃ってみろよ、弾もはいってない銃で何ができるってんだ」

「何………?」

詩音の持っていた銃はすでにマガジンが抜き取られ、弾は一発もはいってない状態だった。

目が見えない詩音にはそれがわからなかったのだ。

「勇ましいのは良いが、こういう時くらいは可愛い反応してくれるよなぁ……」

「…………」

心の奥底に恐怖という文字が浮かぶ。


<いやだ………イヤダ………怖い………コワイ………!!!>


そう言う気持ちが頭の中をよぎる。

詩音は怖くて怖くて仕方なかった。

そう思うことは殆どなかった。

「観念しな!!ニューヨークの市警のお高く止まったねえちゃん」

これから全てが終わる………そう思った時だった。


ガァ……ン


体育倉庫の扉が乱暴に開けられる。

「き……貴様、何者……!!」

男の一人が焦った口調でそう言う。

詩音は一瞬、扉を開けた人間がマニだと、そう思った。

「俺が何者だろうとお前らには関係ない。ただ言えるのはそこにいる女の騎士様みたいなもんか?」

その声を聞いて詩音は驚く。

その声の主は嵩哉だった。

「何をワケわからんことを………!!」

「そのままの意味さ。それ以上その女に触れてみろ。この俺が許さないぜ!!」

「…………」

突如現れた男の出現に、見張りの男たちは戸惑う。

しかも、その男はマグナムを持っていた。

見張りの男たちはほとんど手ぶら状態である。

「観念するんだな」

そう言って彼は男たちに銃を付きつける。

だが、男たちは詩音が隠し持ってたナイフを彼女の首筋に付きつける。

「撃てるもんなら撃ってみろ!!この女の喉切り裂いてやるぜ」

「あぁ、切り裂いてみろ。それ相応の痛みをお前らにも味合わせてやる」

その彼の言葉を聞いて、詩音は少し驚く。

もちろん、彼がそんなこというとは思ってなかったのである。

「そいつは俺の女だ。返してもらうぞ」

「………」

「ほざけ、もうこの女の命もここまでだ!!」

グッと喉にナイフの刃を押しつける。

そこから少し血が流れ出す。

その時だった。

後に隠れていたマニがナイフを持っている手を撃ったのだ。

思わず手からナイフを落とす見張り。

一瞬にしてできた隙をつき、嵩哉は見張り二人の足を狙い、銃を放った。

詩音も、開放されたあと腕を掴んでいた男の腹に肘鉄をかます。

だが、その時も詩音は眼が見えていない。

嵩哉は詩音がずっと瞳を閉じているのを疑問に思った。

「詩音………大丈夫か?」

嵩哉が詩音の頬に触れようとしたとき彼女はビクつく。

まるで怖がっているかのようだ。

「詩音………」

『今の詩音の眼は一切見えていないわ。だから警戒心も強いのよ』

『眼が見えてない…?どういうことだ』

『そのままの意味よ。あとは本人に聞きなさい』

マニが嵩哉の耳元でそう囁き、その場を立ち去った。

『あ、これ詩音に渡してね。そうじゃないと彼女、眼が見えないから』

そう言って渡したのはサングラスだった。

そして、彼らは二人きりになる。

嵩哉はマニに言われた通り、詩音にサングラスを掛けてやる。

「もう、眼開けて良いぞ」

そう言われてゆっくりと眼を開ける詩音。

視界が、戻っているのがわかった。

そして、一番最初に目にはいったのは怒った表情をかもしだしてる嵩哉だった。

「…………ありがと…………」

「全く………つくづく攫われる女だよな。お前って……」

「…………」

嵩哉にそう言われても、視線を反らし、ただ黙っているだけの詩音。

「なんで、葵にあんな態度を取った?」

「…………」

「答えろ」

「…………」

「詩音!!!」

葵のことを聞こうとしても詩音は一言も話そうとはしない。

そんな詩音を見て、だんだん腹がたってくる嵩哉。

「詩音………どうしてだ、答えろ!」

「…………」

怒鳴り口調で嵩哉が詩音に聞く。

それでも詩音は口を開こうとはしなかった。

ただ黙って、視線を反らしたまま、うつむいている。

しびれをきらし、嵩哉が行動に出る。

うつむいてる詩音の顔を上げ、無理矢理キスをする。

「!??」

とっさの行動に詩音は驚くが、すぐに我に返り、嵩哉から離れようとする。

が、女の力では到底かなうはずもない。

たった少しの間に、されるがままになってしまう。

詩音もだんだん諦めたのか、抵抗しなくなる。

そして、互いの唇が離れた時、詩音の顔が真っ赤になる。

「………嵩哉………」

「やっと俺の名を呼んだな。詩音」

「………」

「どうして、葵を傷つけた?」

再び、嵩哉は詩音に質問する。

「……葵を……傷つけたくなかったから……」

詩音は嵩哉の問いに小さな声でそう答えた。

「だからって、足にかすり傷を負わせるなんてどうかしてるぜ」

「………足を怪我したら、葵は立っていられなくなる………そしたら人質なんて役に立たないわ」

「だから、ケガを負わせたのか」

「……葵には悪いコトしたって思ってるよ……」

詩音の声がだんだん淋しさを感じる声になる。

「………詩音…………」

「でもっ……今の私には………そうすることでしか葵を守れなかった……守れないのよ………!!!」

「詩音………泣かなくても………」

詩音の瞳には涙が溢れている。

とめどなく流れる涙が詩音の顔を濡らす。

「………もう………行くわ………」

「行くって……何処に行くんだよ」

「………ニューヨークに帰る。私の帰る場所はそこしかないから」

そう言って、詩音はその場を立ち去ろうとした。

嵩哉はそんな詩音をひき止める。

詩音の左手をがっしり握って離さない。

「………『絶対に帰ってくるから』って………約束、破るつもりかよ」

「…………」

「詩音!!」

「………ごめん………私には、もう貴方の傍に居る資格なんてない」

詩音はそう言いながら首を横に振る。

心の奥底からこみ上げてくるものをじっと堪えながら。


きららたちはまだ学校に蔓延っているニューヨークマフィアの殲滅に全力を注いでいた。

マニも合流してそっちの方を手伝っている。

なるべく銃を使わないように、格闘技で敵をなぎ倒していく。

とくにあゆむ・翼・葵・双雅の4人は気を配っている。

学校で銃なんぞ使おうものなら学校にいれなくなってしまう可能性だってある。

それだけは避けようと必死で頑張る4人。

きらら・翔・航平・季伊奈は何のためらいもなく銃を使っている。

向こうも銃を使ってくる分、お互い様というところであろうか。

「あゆむ!!ちょっと下がって!!」

きららがあゆむの身体を思いっきり引っ張る。

「わっ!!!」

そして翔があゆむをつけ狙っていた敵に向かって銃を放つ。

「ぐあぁっ!!」

銃弾は右胸に当たり、敵はそのまま倒れこむ。

「あゆむ、銃を使わない分遠距離は不利なんだから気をつけて!!」

「あ、ありがと……きらら」

「葵も、女の子なんだから航平の後についてろ!!」

「なんで俺なんだよ………」

「おっきいから☆」

「……………」

きららの一言に航平は絶句する。

「お前………それ変な意味でもとらえられるぞ……?」

「そっちの方は絵菜瑠さんしか知らない事だから私はなんとも………」

「…………きらら、あとで一発ぶん殴る………」

きららのちょっとアブナイセリフに航平が癇癪筋を露わにする。

「まぁまぁ…航平、穏便に………それに大きい小さいはその人の好みだしね」

「季伊奈………お前まで………!!!」

季伊奈のツッコミに航平は少し泣きたい気持ちになった。

「航平、そんなことで悲しくなってないで早く援護してよ!!」

「悲しくなんかなってないっ!!!」

翔にそう言われて、さらに機嫌を悪くする航平。

「うわぁ……航平ご立腹ぅ………」

「うるさいぞ!!翼っ………」

「あゆむ!!前にいるよ!!」

「葵!!航平の後ろにつけ!!」

「だからぁ、なんで俺なんだよ!!!!」

「きらら、はやくあいつやっつけてよ!!」

「双雅、後ろ危ない!!」

「季伊奈、マシンガン放つなぁ!!学校が壊れるぅ〜!!!」

などとケンカ(?)しながら敵を一掃していくご一行であった。

『………日本の高校生って元気なのね………』


「なんで、資格がないっていうんだよ」

「私は………もう………生きていく理由すらないわ」

詩音の淋しそうな顔を見て、嵩哉はまた少しイライラする。

「お前、向こう行ってから変わったな……前はそんなこと絶対に言わなかったぞ?!」

「そうね……昔の私だったらどんな低い確立でも、希望を失わずになんでもこなしてきたでしょうね……でも、今はそんなことすら忘れちゃったわ……」

「なんで………そんな悲しいこというんだよ………」

「嵩哉には、私の苦しみなんてわからないわよ!!わかってたまるもんですか!!」

詩音は急に怒りだし、嵩哉をせめてヤツ当たる。

嵩哉は詩音が初めて自分にヤツ当たりをして少々驚いてる。

「詩音………」

「あ………」

詩音は自分が嵩哉に対して何をしてしまったかを思い出し、しゅんとした表情になる。

「ごめん………」

「いや……そんなことは別に………」

「とにかく、私は日本にはもう2度と帰らないわ」

「詩音……!!」

「止めても駄目………私の決心は変わらないわ」

意志の強い瞳で嵩哉を見る詩音。

「じゃあ………その決心、変わるようにしてやる……!!」

「ちょっ………嵩哉、やだっ………」

だが、その言葉も虚しく終わる………


「それにしても……嵩哉と詩音……遅いね………」

『詩音………』

あゆむの言葉にマニが詩音を心配する。

「詩音……会いたいな……」

あゆむがボソッとそう囁いたのを、マニは聞き逃さなかった。

<ひょっとして、彼も詩音のことを………?>

もちろん、マニの直感は的中する。


「………これでもまだ決心、変わらないか……?」

「…………」

詩音は嵩哉の問いに答えず、ただ黙りこんでいる。

「詩音………」

「…………ごめん………私には……無理よ………」

「どうしてそんなに……自分を投げ出すコトするんだよ……」

「それは………言えない……」

「眼と……関係あるのか……?」

詩音は嵩哉のその言葉に少し反応する。

「そうなのか……?」

「眼もそうだけど………他にも大事な事が………」

「眼はどうして………?」

「失明寸前。今も、嵩哉の顔はうっすらとしか見えてない……もう殆ど視力がないに等しいの。原因は私がニューヨークに滞在してから間もなく侵された病気のせい。真っ先に視神経がやられちゃったの。手術もしたんだけど、無理だった」

詩音の言葉を聞いて嵩哉は絶句する。

「で……他にも大事な事って………?」

「………3年前に負った傷………覚えてるでしょ?」

「………あの時の腹のキズか?」

詩音は嵩哉の言葉に頷く。

「そのキズが……どうかしたのか?」

「………あのキズが原因で………一部の臓器が機能しなくなった」

「……一部って……?」

「それは女にとって、とても大事なもの………」

「………まさか………」

詩音の表情が哀しみでいっぱいになる。

詩音の気持ちを察したのか、嵩哉は詩音を強く抱きしめる。

「………ごめん。そんな理由があったなんて気付かなくて………」

「………それでも…………何とか望みにかけたの。少しの望みでも……でも、そんなに変わらなかった………」

「……確立は?」

「……10%以下」

そして嵩哉は意外な言葉を口にした。

「なんだ……10%もあるんじゃん……」

「嵩哉………?」

「0じゃないんだろ?」

「そ…それはそうだけど………」

「眼は?」

「……眼も同じくらい……」

嵩哉はその言葉を聞いて少しホッとしていた。

詩音にはそれがよくわかっていない。

「なんで…?なんで安心してるの……?」

「なんでって………少しでも確立があるならそれに賭けろよ」

「………そんなの、無理だよ………」

「どうしてそうマイナスに物事を考える?」

「どうしてって……10%しかないんだよ??どうしてその確立にかけられる?90%は駄目ってことなんだよ?!」

「だから……そう弱気に出てどうするんだって俺は言ってるの」

嵩哉は詩音の頬を優しく撫でる。

でも詩音には嵩哉の考え方が理解できない。

「………もう少し自信持てよ………」

「………どうやって自信もてって言うの……?」

「自信っていうのは……人に聞いてどうにかなるようなもんじゃねぇだろ」

「そんな風にいうなら、偉そうなこといわないでよね」

「俺は………たとえ詩音が五体満足な状態じゃなくなったとしても、もう2度と動けないような状態になっても………俺はお前の事ずっと好きでいる」

嵩哉の言葉は詩音の心に響く。

「お前がこの世からいなくなっても、お前の事、嫌いになんてなってやらないからな」

「嵩哉………」

「3年間、ずっと待ってたんだぞ……普通、立場逆じゃねえか………」

「…………」

「希望を捨てるなよ。お前はあの死に染まった学園から、生き残った一人じゃないか………今生きてるのだって……たった少しの可能性からだろ?絵菜瑠の親父さんだってお前の帰り、待っててくれてるんだぞ?」

詩音は、嵩哉がそういった言葉に少し疑問を持つ。

「………それ、どういう………」

「皇家は復活したんだよ。お前の親父が築いてきたものも……お前の親父さんに付いてきた人たちも………皆、お前の帰りを待ってる」

「嵩哉………」

「詩音、俺はお前を絶対に逃がさないからな」

そう言って、嵩哉は詩音を強く抱きしめる。

「お前の居場所は俺の傍だ。帰ってくる場所も俺のいる場所だ」

「あ………」

「お前が立ち直るまで、俺の傍から離さないからな」


それから30分後、嵩哉は詩音を連れてみんなのいる場所に戻ってきた。

「嵩哉さん、おかえりなさい」

「あぁ、なんとか無事に取り返せたぜ」

でも、詩音は嵩哉の後ろにただ立ちすくみ、黙ったままである。

『詩音。からだの方は大丈夫…?』

『……大丈夫、なんともないわ』

『………とりあえず……ここにいたマフィア達は全滅したわ。私達の任務はコレで終わりよ』

「…………」

再び詩音は黙りこんでしまう。

すると、あゆむが走ってきて詩音に抱きついた。

「詩音、逢いたかったよ!!」

「あゆむ、また背が伸びたんじゃないの??」

「うん、あれから6センチくらい伸びたんだ」

「そっかぁ……あゆむももうすぐ大人だもんね」

そう言って詩音はあゆむの頬を撫でる。

あゆむは少し顔を赤らめて照れている。

詩音の後で嵩哉が面白くない顔をしている。

マニはその表情を見て、嵩哉が詩音に気があるなと思った。

『詩音って日本でもモテる方なのね』

マニが嵩哉の傍でそう呟いた。

『日本でも…って?』

『うちの職場でも詩音って男性陣に人気があるの。狙ってる人たちも結構多いのよね』

それを聞いて嵩哉はますますムスッとふくれ面をする。

マニはそんな嵩哉を見て苦笑する。

『あなたって本当に詩音のコト、好きなのね………』

『…悪いか?』

『別に悪いとは言ってないけど……そうね、貴方に逢ってから詩音は少し笑うようになった……とだけ言っておくわ』

マニはそう言って詩音の肩に手を置く。

『マニ』

『さ、詩音かえろ。仕事もおしてるしね』

マニの言葉に詩音は頷く。

「じゃ、私………行くね。皆元気で」

そう言って詩音は嵩哉の横を通りすぎようとしたとき、嵩哉は詩音にこう囁いた。

「お前に帰ってくる気がないっていうなら、俺はお前を攫ってでも俺の傍に連れ戻すからな」

その言葉を聞いた瞬間、詩音の口元に微笑みが戻った。


「あーあ………結局詩音は戻ってこないし、学校は暫く休校だし………ヒマだよ」

「あゆむ、そんなこと言ってないで受験勉強しないと大学受からないわよ?」

きららがそう言ってあゆむの頭をコンっと小突く。

「イタイなぁ………何てことすんだよ………」

「ほら、さっさと問題解く!!」

相変わらずな雰囲気で家のなかはにぎやかである。

一方嵩哉は、空木からの仕事依頼があったので依頼書を読んでいる。

「………俺にこの役やれってか………」

書類を読んでがっくりくる嵩哉。

「ヘリオス社の理事長の娘の誘惑………なんか俺こんな役回りばっかりだな」

そう言いながら書類をテーブルに放り、コーヒーを飲む嵩哉。


それから3ヶ月後、事態は最悪の状態を迎える。


作者:やっとできたよ、続編!!

嵩哉:今回はちょっと短めだな。

作者:裏編があるからね、短くしないと長くなっちゃうのさ。

詩音:その裏編、隠しになってるそうよ。(※当サイトにはありません。

あゆむ:この内容、俺的にすげー不本意………

きらら:まぁ、こんなもんってカンジね

航平:この続きもさっさと書き上げろよ……

作者:努力します……

翼:じゃ、今回はこれでお開き〜♪

双雅:はぁ……

葵:それじゃみなさんさよなら〜☆

翔:葵……さよならって……


マニ

ニューヨーク市警・特殊部隊所属

身長:167cm

体重:50kg

性格:気が優しくて仕事熱心

趣味:オセロ・読書

特技:射撃

好きなアーティスト:バックストリートボーイズ・U2

スリーサイズ:B87・W58・H88