ユグドラシル聖戦記

シオン達は朝早くにリベロ城を後にし、ユーリの待つナディア城へ向かっていた。そこで、待っていたのは幸せの前兆と悲しみの始まりだった・・・




第11章 VIRGIN ROAD




リベロから出発して3時間後、シオン達はナディアの城門についたのだった。
シオンがブランの背から降り、城門をくぐろうとしたその時であった。
「シオン様ぁ!!!」
ユーリが駆け出して、シオンに抱きついたのだった。
「ユ、ユーリ!!」
「シオン様、お久しゅうございますわ!!」
シオンを強く抱きしめていたユーリを見て、コウヘイは彼女の肩を叩いた。
「ユーリ・・・俺は・・・?」
コウヘイはユーリに完全に忘れ去られていた。
「あ、コウヘイ、お疲れ様。それよりシオン様、お疲れでしょう?お部屋を用意しましたから、ささ、中に入りましょう」
「・・・・・・」
「お前、苦労してるんだな・・・」
「・・・わかるか?」
「ああ・・・でも俺、相手がシオンで良かったよ・・・」
「・・・そうか・・・」
昨日シオンにしたことを思い出しつつ、ユーリの冷たさに少しばかり寂しい思いをいているコウヘイだった。




「ルカ。お疲れ様」
「貴方、ただいま戻りましたわ」
実はこの二人、夫婦だったのである。
マージファイターのルサールカはシオンのお付きをもうすでに15年間勤めていた。
パラディンのクリシュナもオスカーに仕えて12年。グランビアに子供の頃から仕えていた二人は3年前に結婚していた。
子供はいないものの、二人は自分の主人の幸せを心から願っている。
オスカーは城に用意された自室にいる。
そしてある決心を固めていた。




<・・・言わなきゃ・・・今、言わなきゃ・・・始らない・・・>




「オスカー様?お呼びになりましたか?」
キラがドア越しでオスカーを呼んだ。
「ああ、入って。キラ」
「失礼しますわ」
キラはオスカーの自室に入り、一礼をした。
「キラ、椅子に掛けて」
「はい」
「あのね、キラ。話って言うのは、他でもないんだ・・・」
「なんでしょう?」
「その、ね・・・」
オスカーはなかなか話題を切り出せず、少しおろおろしている。
「キラ、君が好きだ」
「え?」
「小さい頃からずっと・・・ずっと好きだったんだ。よかったら私と、付き合ってくれないか?」
キラは自分の耳を疑った。
キラも実は言うと、小さい頃からオスカーのことが気になって仕方がなかったのだ。
「オスカー様、それ・・・本気なんですか・・・?」
「ああ、キラ。私のところに嫁に来て欲しい」
「オスカー様・・・」
あまりの感激に、キラは思わず泣いてしまう。
「ああ、キラ泣かないでよ・・・」
「オスカー様、私もオスカー様をお慕い申しておりますわ・・・」
「これからは、私がキラを守るよ。命に代えても!!」
「オスカー様・・・」
また一つ・・・カップルが出来あがったのであった・・・




それから1時間後―――――




ユーリがオスカーの部屋のドアをノックした。
「オスカー様、ショウとヨウスケが尋ねてまいりましたわ」
「わかったよユーリ、すぐ行く。さ、キラ行こう」
「はい、オスカー様」
二人は部屋を出て、ユーリの導きにより、ヨウスケとショウのいる会議室に行った。
ショウはカルディア城の公子であり聖剣ティルフィングを受け継ぐ聖戦士の一人だった。
そしてヨウスケもレジアス城の公子であり、トールハンマーの継承者である。
「オスカー様」
「ショウ、ヨウスケも慌ててどうしたんだい?」
「実は・・・」
そのころシオンは、礼拝堂でお祈りをし終え、自室へ戻ろうとしていた。
もちろん、ショウとヨウスケが来ている事などまったく知らない。
そして、シオンは自室のドアを開けた。
部屋を出るときには閉まっていたはずの窓が開いており、カーテンが風でなびいている。
シオンは不思議に思ってはいたがあまり気にせずに窓を閉めた。
するとシオンはテーブルの上に一つの箱が置かれているのに気付いた。
「何かしら・・・?さっきまではこんな箱、なかったのに・・・」
シオンは箱の傍に近づいた時にその箱から奇妙な匂いをかぎつけた。
「この箱・・・なんだか血生臭い・・・ような気がするけど・・・」
そう思いつつ、シオンはその箱のフタに手をかけた。その箱に入っていたものは―――――――




いやああああああああああ!!!




城中に断末魔にも似た悲鳴がこだまする。
城にいた全員がその悲鳴を耳にした。
「あの声・・・姉上!!」
「行こう、ショウ!!」
「うん!!」
オスカー、キラ、ショウ、ヨウスケは走ってシオンの部屋へと急いだ。
テンルウにもシオンの悲鳴は聞こえていた。
何があったのかと思い、テンルウはシオンの部屋へ真っ先に着き、ドアをノックした。
「シオン、どうした?」
部屋からは何も返事がない。
「シオン?!シオン!!」
何度呼んでもシオンからの返事はまったくない。
テンルウはドアノブにを掛け、ノブを回した。
ドアは何事もなく、無造作に開いた。
シオンは地面に座りこんでいる。
「シオン」
シオンはテンルウの言葉に反応すらせず、ただ呆然としている。
そしてシオンのその瞳は完全に光を失っていた。
「シオン、しっかりしろ!!」
体をゆすって何度呼んでも、シオンはピクリとも動かなかった
そこへ、コウヘイがやってきたのである。
「おい、どうした?」
「いや、それが・・・」
その時、コウヘイはテーブルの上の箱を見つけ、箱に近寄った。
「うっ・・・」
箱のフタは開いていた上に、鼻腔を嫌なにおいが刺激した
「コウヘイ、どうした?」
テンルウもその箱の中身を見た。
「・・・・・・」
そして、オスカー達もシオンの部屋の前にきた。
「ユーリ、ここから先は来るな!!」
「どうして?」
「キラも、来ちゃ行けない・・・」
ユーリとキラは顔を見合わせ不思議そうな表情をする。
ショウとヨウスケは何があったのか心当たりがあった。
「まさか、シオン様の元に・・・」
そして、シオンもだんだん意識がはっきりしてきたのか、急に身体がガタガタと振るえだしたのだ。
テンルウはそんなシオンの身体を強く抱きしめた
「見たのか?あの箱の中を・・・」
テンルウの質問にシオンは震えながら首を縦にふった。
シオンの瞳の色はまだ光を完全に取り戻してはいない。だがその瞳
テンルウはまだ落ちつかず、一言も話そうとしないシオンを抱きかかえている。
「アリストへ凱旋なされ、我が軍は勝利を治め、アリストは陥落しました。ここまではよかったんです。ですが・・・」
「それが、この箱の中身・・・クオリス王子の首と何か関係あるのか?」
「何者かに暗殺されたそうです」
「・・・」
ショウがここまで話した後、ヨウスケが話しを続けた
「それで、それから先にキラとショウの父上が行方不明なんです」
「何者かに攫われたかなにかしたかに違いありません」
オスカーは苦い顔をしてキラの方を見たが、キラは落ちこんではおらずしっかりと話を聞いていた。
「・・・・・・」
テンルウは無言で話を聞いていた。
実質的にはここにいるコウヘイ以外の人間は仇の子供達なのである。
シオンに至ってはそこの王女である上に王位継承者。
複雑な気持ちがテンルウを襲う。だが傍らにはシオンが未だに放心状態で虚空を見つめている。
「しかし、まさかシオン様の元に、アレが届くとは思いませんでした」
「クオリス様のご遺体には、首がありませんでしたから・・・」
「・・・誰かが、シオンを絶望に追い込もうとしたに違いないだろうな」
テンルウがボソッとささやく。
「そういえば、貴方は?」
ショウがテンルウに何者なのかを尋ねた。
「彼はアリスト王国セフィーロの王子のテンルウ様だよ」
その言葉を聞いてショウとヨウスケは驚く。
「アリストの・・・」
「でも、何故ここに?」
「シオン様と共にこのナディアを取り戻してくださったの」
ユーリが二人に軽い説明をした。
「それよりもテンルウ様、シオン様を休ませたほうが・・・」
キラがシオンを気遣い、テンルウに言った。
「ああ、そうするよ・・・」
そう言うと、テンルウはシオンを抱き上げ、部屋から去っていった。
「シオン様・・・大丈夫でしょうか?」
「大丈夫です。テンルウ様が傍にいますもの・・・」
ユーリの一言に、ショウが少しだけ表情を変えた。
「・・・ショウ、シオン様のことが気になるの?」
「そんな、僕は別に・・・」
「あら、そう言わなくてもいいじゃない。コウヘイ以外は皆知ってるわよ?ショウの気持ちを・・・」
「・・・仮にそうだとしたって、叶うわけないじゃないか。僕とシオン様は6つも離れてるし、主従関係にある。どう逆立ちしたってシオン様を振り向かせるなんて・・・あの人みたいに、シオン様より年上で、シオン様の魔道の先輩で皆に憧れられる存在だったら・・・話は別だけどさ・・・僕にはそんなこと出来ないよ・・・」
ショウが少し切なげな表情で、そう語る。
ユーリはそんなショウの頭を撫でた。
「ユーリ・・・」
「ショウ・・・そうやって最初から諦めてるから、何事も上手くいかないのよ?貴方の運動神経だってそう。自分は運動神経鈍いんだって思いこんでるからいつまで経っても剣技が上達しないのよ?少し、自分に自信を持ちなさい」
ユーリは優しい瞳でショウを捕らえ、そう言い聞かせた。
「・・・・・・わかったよ、ユーリ・・・」




テンルウはシオンを自室へつれていった。
シオンはまだ話をしない。
そんなシオンを見ていてテンルウはものすごくつらかった。
さっきまで笑顔を見せて笑っていた女性の心はこんなにも、もろかったものだとテンルウは知った。
テンルウは今の気持ちとは裏腹に今まで以上にシオンに対して愛おしいと思った。
そして、ようやくシオンは口を利くようになった。
「・・・お父様・・・」
その一言は父を痛ましく思った一言であった。
そんなシオンをテンルウが強く抱きしめた。
「テンルウ・・・様・・・」
「シオン、そんな瞳をしないでくれ。俺はそんなお前を見るのが辛い」
今にも壊れそうなシオンをぎゅっと抱きしめ、シオンの耳元でそうささやいた。
「テンルウ様・・・」
「シオン・・・・・・結婚しよう。そうして・・・二人で・・・二人でこれからを・・・これからの人生を一緒に歩こう」
その言葉がシオンの心を・・・壊れかけた心を修復し満たしていく・・・




<私・・・満たされていく・・・>




「テンルウ様・・・私、そう言ってくださるだけで私は・・・」
「シオンをこれ以上傷つけたくない。だからシオンが傷つかないように俺が守る。そんな辛そうな顔をしているシオンは見たくないんだ」
「テンルウ様、本気なのね・・・?私は、貴方にこれから先もついて行きますわ・・・」
それから2週間後―――




「テンちゃん。何もそんなにそわそわしなくてもいいんじゃない?」
「いや、だって・・・人生の一大イベントの一つだぞ?そわそわせずにいられるかよ」
「まぁ、確かにそうだけどさ・・・」
ちょっとオロオロしたテンルウをマルスがなだめる。
そこへ、ユーリが礼拝堂から出てきたのである。
「さ、テンルウ様、花嫁の登場ですわ」
ユーリの手に導かれて、真っ白なウェディングドレスに身を包んだシオンは2週間前にあった出来事を忘れさせるかのように、美しい笑顔でテンルウを見つめた。
その笑顔を見るたびに可愛いと、テンルウは常日頃に思っている。
「似合いますか?テンルウ様」
ちょっと照れくさそうにシオンはテンルウに尋ねた。
「すごく似合ってるよ、シオン」
その言葉を聞いてシオンはまた笑顔に戻る。
そうしてナディアで行われた結婚式は、ナーガの祝福を受け、無事に幕を閉じたのだった。




3ヶ月後――――




ルサールカがテンルウの元に走ってきた。
「どうした?ルカ。そんなに慌てて・・・」
「テンルウ様、吉報ですわ」
「吉報?どんな?」
「シオン様がご懐妊なされたのです」
「・・・何?」
ルサールカの突如の言葉に彼は状況をいまいち把握していなかった
「ですから・・・シオン様のお腹の中に、テンルウ様のお子様がいらっしゃるんですってば・・・」
「そうか、妊娠したのか・・・」
そう納得しつつ、彼の頭の中で何かが爆発した。
「おい!!それ、本当か?!!」
テンルウの剣幕に一瞬、ビクッとするルカ。
少し疲れた表情で
「・・・嘘ついてどうするんですか?」
ルサールカとみつめあうこと1分――




テンルウは急いでシオンと自分の部屋に駆け出していった。




「シオン!!」
バタンっと乱暴にドアが開くのと同時に、テンルウはシオンの名を呼ぶ。
「テンルウ様、慌ててどうなさいました?」
「今、ルカから聞いて・・・」
「あら、そのことですの。もちろん本当ですわ」
あまりの嬉しさにテンルウはすかさずシオンの腕を引っ張って抱きしめる。
「シオン、これから頑張ってくれよ」
「ええ、もちろんですわ」
それから7ヶ月後にシオンは男の子と女の子の双子を出産した。
男の子の方にオードの聖痕、女の子の方にナーガの聖痕を持ち、二人とも直系として産まれたのであった。
それから1年間は平和な日々をシオンたちは送ることになる。




作者:結局1日で上げちゃった~・・・
テンルウ:生まれた子供の名前くらい出せよ
作者:それは12章で出てくるからいいの。
シオン:しかしなぁ・・・
作者:いいったらいいんだぁ!!第一、いきなり出しても子供は生まれてないんだから意味ないだろう!!
テンルウ:まぁ、確かにそうなんだがな・・・
シオン:いいじゃないですか。次回で登場しますよ、きっと・・・
テンルウ:だといいんだがなぁ・・・




キャラクター紹介


ショウ
年齢:14歳
クラス:軍師
カルディナの公子。
そしてシオン軍の優秀な軍師。
主君であるシオンに恋心を抱いている。


ヨウスケ
年齢:14歳
クラス:マージ
レジアスの公子であり、トールハンマーの継承者。
ユグドラシル王国で3つの指に入るくらいの魔力の持ち主。
優しい心の持ち主で、主君のシオンには厚く信頼されている。