ユグドラシル聖戦記

メルセデス王国のなかに存在する街の一つ、サターンに一人の少女がいた。

「ねぇ、一体何の騒ぎなの?」

「カンピナス王がユグドラシルのナディアにいるシオン王女を捕らえるために兵を上げたんだ。それに対抗してシオン王女も軍をこっちに差し向けてきたんだ!!」

「…………シオン王女………か………」




第13章 遥かなる風の聖戦士




「テンルウ様―――――私も一緒に行きますわ~~~☆」

「だから!!くっつくなって言ってんだろ!!」

ミホは相変わらず、テンルウにくっついて離れようとしない。

シオンはそれを見て面白くなさそうな顔をする。

「シオン様、次の作戦ですけど……聞いてます?」

「………聞いてるわよ?」

<シオン様………怖い…………>

怒りのオーラがシオンの周りを取り巻き、ショウは内心すごく怖がっていた。

「シオン様、ここにおそらくメルセデス軍が来るはずですから…ここに選伐隊を配置して、食い止めましょう」

「でもいいの?メルセデスのカンピナス王と貴方、そしてレンスターのモニカ姫とはグランビアの士官学校での同期じゃなかったの?」

「彼は、私が説得します。安心してくださいシオン様。どちらにもいい結果を生めるように努力します」

「ショウはしっかり者ね」

シオンはそう言ってショウに笑いかけた。

「私はシオン様にも、カンピナスにも争ってもらいたくありませんから…」

「友達思いなのね」

「シオン様はそう言う方はいないんですか?」

「昔いたけど……今はもう……病気で亡くなっちゃったから……」

「誰なんですか?」

「同期って言うわけじゃないんだけど……バサラの弟のオペルがそうよ」

「そうか……オペル様と婚約なさってましたよね……シオン様……」

実はクオリスが認めたシオンの相手とは、4年前に病気で亡くなったバサラの弟のオペル。

オペルはシオンよりも2歳年上で士官魔法養成学校の先輩であり、色々と教えてもらったことがあった。

オペルと婚約したのがおよそ5年前、シオンが18歳の時だったのだが、婚約した翌年にオペルが急に病に犯され病死したのである。

オペルが死んだとき、シオンはずっとユグドラシルの樹の前で泣いていた記憶がある。

今のシオンにとっては、悲しい過去でもあり淋しい記憶でもあった。

しかし………その話をこともあろうにミホに全部聞かれていたのである。

<ふぅん………王女にそういう過去がねぇ………これは使えるかもしれないわ>

何を企んでいるのか、ミホは怪しい笑みをたたえていた。




「テンルウ様、知ってる?シオン王女ってひどい女なのよ?」

「またシオンの悪口か?悪いが聞く耳持たないぞ」

「そんなこと言ってていいんですか?……シオン王女に婚約者がいるって言っても…」

ピクッ

テンルウの動きが止まった。

「テンルウ様を騙して……ひどい女ね。自分にはちゃんと婚約者がいるのに…」

「………………」

その言葉はテンルウの心に響いたのである。

そしてシオンがテンルウに作戦を言いに来たのである。

「テンルウ様、今回の作戦なんですけど……」

「……………」

「ここから北にある谷の方にリデア城がありますの。その谷の手前に狭い道がありますから、そこで敵の進軍を………」

テンルウがムスッとした顔をしてそっぽを向いている。

「テンルウ様、聞いてますの?」

「聞いてない」

テンルウの一言にシオンはかなり機嫌の悪そうな顔をした。

「大事なことなんですの、聞いてください」

「じゃあ、俺の質問にも答えてもらおうか」

「な……今そんなこといってる場合じゃないことくらい、貴方だってお分かりでしょう?」

「いいから答えろ」

シオンに威圧をかけるテンルウ。

「……………」

「お前、婚約者がいるんだってな」

「!!!」

シオンはその言葉に驚きを隠せなかった。

「………図星ってところか………」

「そんなこと、誰に聞いたんですの?!」

「誰だっていいだろ、そんなこと。お前、婚約者がいるのに俺と結婚したのか?」

「……………」

シオンはどう答えていいのかわからず黙りこんでいる。

「お前、俺のこと騙したのか?」

「違います、それだけは絶対に………」

「じゃあなんでそんなこと今まで黙ってたんだ?」

「……………」

「答えられるまで、お前の作戦は聞かずに俺の意思でやらせてもらう!!」


パァン


その時テンルウは自分に何が起こったのかわからなかった。

ただ、左の頬に痛みを感じる。

シオンは涙を浮かべて右手を震わせていた。

「戦場に……私情を持ち出すなんて…………最低ですわ……………」

シオンは両手で顔を隠し肩を震わせて泣き出してしまった。

「もう良いです!貴方には頼みません!!!」

シオンはそう言い残し、走って去っていった

テンルウはただ叩かれた頬をさするしかなかった。




「ショウ、この作戦私が実行します」

「シオン様、いけません!!それではシオン様の身が…………」

「良いのよ……私が一人で軍を食いとめるわ。他の皆は援護に回って」

「しかし………」

「これは命令よ!!口出しは一切許しませんわ」

「シオン様………………」

シオンはそう言って一人、北の谷に向かったのだった。


そして、ショウはコウヘイを呼び出したのである。

「なんだ?俺に用って」

「シオン様の助けに行ってあげてください」

「なんだ、あいつらまだケンカしてるのかよ?戦場でくらい私情を持ち出さないっていうことできないのか?!」

「それが…………なにかテンルウ様に言われたみたいで……おまけにテンルウ様の傍にミホさんがいるでしょう?それも気に入らないみたいで……」

コウヘイは呆れた顔をして、頭を掻く。

「ああ、わかったよ。王女を援護すれば良いんだな?」

「ええ、お願いします」

「まったく………世話の焼ける夫婦だぜ…………行くぞ、マグ!!」

コウヘイはマグアナックの背に乗り、空へ、舞い上がって行った。

「ヨウスケ、君はテンルウ様のところに行ってくれるかな?シオン様に言われてここを離れることができないんだ」

「ああ、わかったよ」

ヨウスケはショウに言われ、テンルウのいるところへ走っていった。




ヨウスケがテンルウの傍に来た時、ミホが何かテンルウに言っていた。

「ねぇ?本当でしょう?」

「………………」

「だから、テンルウ様、あんな女やめて私にしましょうよ」

「………………」

それに気付き、ヨウスケはテンルウに話しかけた。

「テンルウ様」

ヨウスケの顔を見て、ミホはものすごく嫌そうな顔をした。

「テンルウ様、どうしてシオン様の言ってた事を無視なさったんですか?」

「別に…………」

「別にって………シオン様はたった一人で北の谷に行ってしまったんですよ?」

「俺には関係ない」

「そうよ、テンルウ様には関係ないんだから、あっち行ってなさいよ」

「………………私、少しテンルウ様の事を評価しすぎていたようですね」

ヨウスケは少し悲しげな顔をして、テンルウを見た。

「だいたい、王女が悪いんでしょ?婚約者がいるのにテンルウ様のこと騙して結婚したんだから………」

そのミホの言葉を聞いて、ヨウスケは察知した。

「ミホさん、テンルウ様に何か吹き込みましたね?」

「別に?ただ本当のことを言っただけよ」

「………確かにシオン様には婚約者がいました。それは事実です。これはユグドラシルの公国全ての人間が知っていることですから」

「ほら、やっぱり騙してるんじゃないの」

「けど……その婚約は4年も前に破談されています」

テンルウはその言葉に反応した。

そしてミホはヤバそうな顔をしている。

「シオン様の婚約者だった方はソアラの公子オペル様、シオン様にとっても私にとっても色んな魔法のノウハウを教えていただいた士官学校の先輩でした。そんなオペル様とシオン様が親同士の合意で婚約したのが5年前。結婚はシオン様が20歳になってからという約束でした。ですが、婚約なされてから1年も満たないうちにオペル様が病気で亡くなられたんです」

「………それ本当か?」

「………本当です。もし本当でなかったとしたら、貴方と結婚するなんてそんな大それた事をシオン様はしたりなんかしません。それに……」

「それに?」

「自分の身を削ってまで、貴方に誠意を見せてるじゃないですか」

その言葉の意味がテンルウにはわからなかった。

「シオン様が貴方にあげたアミュレットはシオン様が10年の寿命と引き換えに作り出したもの……。この話を聞いても、シオン様を信じられませんか?」

「…………シオンは今何処にいる?」

「北の谷にいます」

シオンの居場所を聞いて、テンルウは北のほうへと向かった。

「………」

ミホはただ黙ってテンルウの姿を見送る。

「嘘はよくないですね」

「何よ?」

「嘘をついても、いずれはばれるんですよ」

「………………何よ、王女だって嘘ついてるんじゃない」

「人には……言いたくないことだってあるんです」

それを聞いた後、そのままミホは黙ってペガサスに乗っていってしまった。




一方シオンは………


北の谷に着いて、一人立ちすくんでいた。

<…………テンルウ様の馬鹿………>

そう思いつつ、シオンは敵が来るのを待っていた。

「戦争をやるんなら、別のところでしてもらいたいわね」

後ろからそう聞こえ、シオンは振りかえった。

「誰……?」

「私は旅の吟遊詩人………とでも言っておきましょうか」

「その吟遊詩人さんが何の用?」

「国民の迷惑考えて戦争しろって言ってるのよ」

「……………確かに……貴方の言っていることは正しいわ……」

「だったら、兵を引き上げたらどう?」

「私達が兵を引いても戦争は終わらないわよ?」

「どういうことかしら?」

「向こうが狙っているのは私だからよ」

「ふぅん…………」

「けど、貴方に言われて決心がついたわ……私は向こうの捕虜になる」

そう言われて吟遊詩人は驚いた。

「ちょっと……本気なの?!」

「ええ。もともと望んでやっていることではありませんから……」

「…………………どうやら貴方とは気が合いそうね」

「え?」

「力を貸してあげるわ。シオン王女」

「貴方は一体………」

「私はキイナ。センティア王国の王女よ」

シオンはそれを聞いて驚いた。

「センティアってあの雪国の……風使いセティの国の……」

「ええ。おまけにフォルセティの継承者よ。今は持っていないけどね」

「けど、どうして一国の王女が国を抜け出して吟遊詩人だなんて……」

「色々と事情があるのよ………とか言ってるうちに来たわよ?」

シオンとキイナの目の前に立ちふさがる騎馬部隊があった。

シオンはナーガのロッドを構え、キイナはエルウインドの魔道書を懐から出した。

リデア軍がシオンとキイナに襲いかかる!

「エルウインド!!」

「オーラ!!」

こうして、攻防戦は始まったのである。




あれから何時間経っただろうか。

シオンもキイナも次から次に来る軍隊を相手に疲れが見えてきた。

途中から来たコウヘイも加勢しているものの、弓兵がいるので下手に動けずにいた。

そして………ちょっとした隙を生み出してしまったシオンに矢が襲いかかったのである。

「きゃあ!」

背中に痛みが急に走り出した。

背中には2本の矢が刺さっている。

その痛みに耐えきれず、シオンは思わず片ひざをついてしまう。

コウヘイはその矢を放った弓兵に向かってグングニルを投げつけた。

「王女、大丈夫か?」

「………このくらい…………平気ですわ………」

「待って、今抜いてあげるわ!!」

キイナがシオンの背中に刺さった矢を掴んだ。

「っ…………」

そして力任せに矢を引き抜いた。

シオンの服が赤く染まっていく。

そして……シオンはたった一人だけ、違う雰囲気をかもし出した騎士を見た。

「あれは………ヘズルの聖光……………」

ちょっと目がかすみ目を細めてシオンはその聖光を見た。

「あの人は………」

それは……獅子王の異名を持ったメルセデスの王、カンピナスの姿だった。

「お前が………グランビアのシオンか………」

「………そうよ………」

「悪いが、お前の身柄を確保させてもらう。そう言う依頼もあったし…わが国を傷つけるものは誰一人として許さない………」

シオンの身体をキイナが支える。

コウヘイは上空にいる。

「王女、俺と一緒に来てもらおう」

カンピナスがシオンにそう言って近づいた……。

「そうはいかないぜ」

シオンはその声に聞き覚えがあった。

「悪いがそいつは俺の嫁でね………勝手に連れて行かれちゃ困るんだよ」

「…………テンルウ様…………」

シオンはまさかテンルウが来るとは思ってもみなかったのである。

「………こっちにも色々と事情があるんだ。王女は連れていかせてもらう」

「なら俺を殺してからそうするんだな。殺せたらの……………話だがな!!」

テンルウがバルムンクを構え、カンピナスに向かって走り出した。

カンピナスは馬から降りて、見慣れない剣を携える。

「この魔剣ミストルティンに敵などいない」

「それはどうかな?」


キィン


二人の剣が交錯する!!

「ちっ………神剣バルムンクか!!!ということはアリストの……」

「そういうことだ。並大抵の力じゃ俺には勝てないぜ!!」

「ふっ………望むところだ!!」

そうして二人の戦いは始まる。

すばやさを武器にするテンルウの剣と力重視のカンピナスの剣は互いに引けを取らずに二合、三合と剣を交わらせる。

シオンは出血のせいで立っていられなくなりその場にへたり込む。

「王女、大丈夫なの?顔色が………」

「…………」

言葉を話す気力ももはや尽きたのかそのまま瞳を閉じてしまうシオン。

キイナはそんな王女を助けるべく一本の杖を出した。

「私の魔力じゃ止血程度にしかならないけど……ライブ!!」

杖から発せられる光がシオンの傷を癒していった。

テンルウはというと…

<このままじゃ終わらないな……相手もなかなかすばやい動きをするし……こうなったらあれを使うしかないか………>

そう頭で考えてテンルウは一度動きを止め深呼吸をする。

「流星剣!!!」

テンルウの放った必殺剣がカンピナスを襲う。

完全にあたりはしないもののほとんどの攻撃を全てかすめていた。

「……………良いだろう。今回は引いてやる。だが、必ず王女は連れていかせてもらうからな」

カンピナスはそう言って、馬に乗り、リベロに帰っていった。

「シオン、大丈夫か?!」

シオンの身体はだんだん体温を失っていく。

「駄目ね………私の魔力じゃ傷は治らないわ」

「…………お前、誰だ?」

「私はセンティアの王女、キイナ。今日から王女に同行させてもらうわ」

「そうか………とりあえずナディアに連れて帰ってユーリに回復を……」


その会話すら、今のシオンにはまったく届いてなかったのである。

「シオン、しっかりしろ!!!」

「王女!!!」

その呼ぶ声にも、シオンはまったく反応しなくなったのであった。




作者:いやぁ………疲れたわぁ………

テンルウ:おい!!まさかシオンが死んだりなんかしてないだろうな?

作者:してないよ…………

テンルウ:だって……こんなに身体が冷たくなって………

作者:誰だって血の気が引けば身体が冷たくなるでしょう?

キイナ:ごめんなさい。力が及ばず………

テンルウ:いや……お前のせいじゃないし………

コウヘイ:で?王女と仲直りするんだろうな?

テンルウ:俺にはシオンしかいないのに……シオン…頼むから死なないでくれ…

作者:だから…………死なないんだってば!!

コウヘイ:そう思うんならケンカなんてすんなよ………

作者:あんたと同じじゃん「ケンカするほど仲が良い」ってね

コウヘイ:…………………

カンピナス:俺の一撃は重いのか………

作者:いや、ミストルティンが重いのよ。

カンピナス:じゃ、バルムンクは軽いのか?

作者:重さを数値にするなら、バルムンクが3でミストルティンが20ね。

ショウ:じゃあ、ティルフィングはどうなんですか?

作者:その中間の15ってとこね

ヨウスケ:俺ってトールハンマー持ってないの?

作者;まだ使ってないだけで持ってるよ。

ヨウスケ:ふうん………

キイナ:私はいつ手に入るの?

作者:まだまだ先ね。




キャラクター紹介


キイナ

年齢:18歳

職業:マージファイター

平和主義のお姫様。兄貴がいるんだけどフォルセティは兄貴を選ばなかった、時代の変わり目の証拠の第一人者でもあるかな?