ユグドラシル聖戦記

イェソド城の旗が降ろされ、オスカー達は自分たちが勝利したのを確信した。

残りの兵たちは、投降し戦うのをやめた。

そして、イェソド城に全員が集まったのである。

第17章 ティフェレトの悪夢

オスカー達が全員集まり、再び作戦会議が開かれた。

「ショウ、この調子でティフェレト城も落とせないか?」

「そうですね……この調子でティフェレトを落とし、明日にはリデアへ行くのも悪くはないと思います」

「じゃあ、ここで一旦解散。城下町で2時間くらい自由行動にしましょう。武器の修理とかも大切でしょうしね。2時間後に城門前で待ち合わせましょう」

シオンがそう言うと、一同はバラバラに散っていった。



テンルウはシオンを連れて武器の修理に行った。

「すまないな、付き合せて」

「いいえ、私はテンルウ様と一緒にいられるだけで嬉しいです」

そう言ってシオンはテンルウに笑いかける。

<シオンの笑顔って……最近憂いに満ちてるよな~…まぁそこもいいんだけど>

などと、テンルウは考えていた。

「それにしても………お前のじいさん、一体何考えてるんだ?メルセデスの全面戦争をおまえにやらせるなんてさ………」

「そこまではわかりませんけど……けど……父上がいないって言う事は指示は全て私に向くっていう事だけは言えますわ」

「まぁ……お前は普通の人とは違うカリスマ性を持ち合わせているから……だから皆お前について来るんだと思うな。俺もそのうちの一人かもな」

「カリスマ………」

「それよりもさ、久しぶりに二人きりになるんだし………」

テンルウは何かを企んでるような顔つきになった。

シオンは何も知らずに首をかしげている。

「買い物でも行こうか。何か買ってやるよ」

「え?そんな………私は欲しいものなんて…………」

「俺が、お前に買ってやりたいんだから良いの!!!」

「…………はい…………」

「何が良いかな……?」

テンルウはそう考えつつ、先に歩いていった。

「あ……テンルウ様、待って!!」

シオンは入ってそこを立ち去った。



コウヘイはというと……

もうすでに臨月を迎え、間もなく出産を迎えるユーリに逢いにナディアに帰っていた。

ユーリはナディアにたった一人でオグマとイナルナの面倒を見つつ、留守番をしていた。

「ユーリ。ただいま」

「コウヘイ、お帰りなさい。どうしたの?」

「いや……2時間自由行動だからさ……お前に会いたくて………」

「そう、有難うコウヘイ」

ユーリはコウヘイに笑顔で感謝した。

「もうすぐだな」

「ええ……………もうすぐ春が来る………そして……この子も皆に姿を見せる時が来るわ」

「無理するなよ?」

「わかってるわよ」

コウヘイとユーリの周りでオグマとイナルナはきゃっきゃ言いながら遊んでいる。

「しかしまぁ………よくテンルウに似たもんだな……この二人……」

「イナルナ様はどちらかというとシオン様に似てると思うけど……」

「なんで黒髪と真珠の髪の人間から金髪が生まれるんだ?」

「………シオン様のお母様の髪の色が金色なのよ」

「あいつの親父は黒かったしな…………」

コウヘイはつくづくシオンの髪の色に疑問をもった。

「シオン様の髪の色は特別だって前にも教えたでしょ?」

「まぁ………な………」

コウヘイは本当に物覚えが悪かった………



そうこうしているうちにあっという間に2時間は過ぎ、シオン軍のメンバーは全員、城門前に集まった。

「じゃあ、行きましょうか」

「はい!!」

「つくのは夕刻になるわね………」

「そうですね………」

シオンとショウが地図を広げて先頭配備の位置確認をする。

そして、シオン軍はティフェレトへの進軍を開始した……



一方ティフェレトでは………

「スイフト様………またそんなもの作って………」

スイフトは自分の趣味である「あるもの」を作っていた

「新しいメイドが来るたんびにああじゃこっちはかないませんよ」

「い~や、今回の私の趣味は多いに役に立つぞ?!」

「どうしてですか?」

「ちょっとした噂なんだが………今回の敵は……これに弱いらしいぞ?」

スイフトの真面目な台詞に兵士は変な顔をする。

「そんな軍隊、何処の世界にあるんですか?!」

「いや!!少なくとも指揮官はこれに弱い!!………はず……」

「はずですか………」

「指揮官は女だからな!!」

「それって偏見じゃないですか……女の人でも強い人は強いですよ……」

「だから、ちょっとした噂を聞いたんだってば!!」

「はいはい……期待しないでいますよ……それより、今シオン軍がネツァク・イェソドを制圧、今こっちに向かってきているそうですが……?」

その時、スイフトの目が輝いた。

「よし………早速試すぞ!!」

「……………」

兵士は呆れかえっている。

「着く予定は?」

「夕刻になると想定されます」

「そうか………………なら効果覿面だな………」

「……………」



夕刻、だいたい7時くらいだろう。

まだ晩冬な為、あたりは暗くなってきている。

シオン達はすでにティフェレトの城門まで来ていた。

「変ね………向こうが攻めてこないわ………」

「そっちの方が都合よくないか?」

「でも……何か不吉な予感がしますわ………こんなにあっさり城に来れるなんておかしいですもの………」

「それはまぁ………」

シオンはあまりの不自然さに疑問を抱く。

テンルウもシオンにそう言われ、疑問に思う。

「シオン様、何かあったら大変ですから小人数で城に入ってはどうでしょう?」

ショウはシオンにそう提案した。

「それもそうね………」

「どうやって決めるんだ?」

テンルウがシオンに聞いた。

「ジャンケン」

シオンは冗談で言ったつもりなのに本当にジャンケンで選伐隊を決めてしまった。

選伐隊はシオン・ヨウスケ・オスカーになった。

テンルウはシオンと離れたくないのかシオンが行くことになると「シオンが行くなら俺も行く」の一点張り。

他の皆は留守番をすることになった。

そして…………幕は開けた………




薄暗く少し湿気の入り混じった空気が漂い、足元には霧が立ち込めている。

シオンはテンルウの腕をしっかり掴み、放そうとしない。

「なんかこの雰囲気……好きになれませんわ………」

「姉上、大丈夫ですか…………?」

シオンの顔色に少し不安が出る。

そして、ある程度歩いたところで……

ヒヤッ

「きゃあ!!」

シオンの首筋に冷たい何かが触れた気がした。

「どうした?」

「今……何かが首筋に……………」

そう言ってシオンはテンルウにしがみつく。

「大丈夫か?シオン………」

テンルウの言葉にもシオンは答えない。

「……姉上、急ぎましょう。皆待ってますから……」

シオンは少し怖がりながら、首を縦に振る。

そしてまた………

ヒヤッ

「ひゃあ!!!」

再び、シオンの首筋に冷気が走った。

シオンは座りこんでかたかたと振るえている………

カツン

とシオンの足に当たった。

シオンはその足にあたったものを見た。

「きゃああああああああああ!!!」

シオンの悲鳴が廊下中に響き渡る。

そこにあったのは………

血まみれの生首がシオンの足元に転がっていたのだ。

シオンは恐怖のあまりにテンルウに抱きついて離れない。

「いやあぁ……怖いよぉ…………」

2年前のあの日からシオンはそう言う関係のものが完全に苦手になってしまい、ゲテモノとかホラー関係はまったく駄目になってしまった。

テンルウはそっとシオンの身体を抱きしめる。

「しかし………どうしてまた………生首なんて……ってあれ?」

ヨウスケは何か違うことに気付き、その生首を持ち上げた。

「いやああ!!こっちに近づけないでぇ!!」

シオンは顔色を真っ青にしている。

「これ………人形だ。人形の首にトマトジュースとケチャップを付けてる」

「あ………本当だ」

エナメルでできたような髪、ごつごつした触りごこちですぐに人形だとわかる。

「じゃあ……私の首筋に触れたのって………」

シオンが恐る恐る後ろを振り返った。

するとそこにあったのは……

糸に括り付けてあってぶら下がってるコンニャクがそこにあった……。

「こ………コンニャク………」

「なんでこんなところにコンニャクが………」

「何なのぉ……………この城ぉ…………」



そして気を取りなおし、ヨウスケとオスカー、シオンとテンルウは再び城の奥へ入っていった。

しばらくは何もなかった………が…

ガシッ

シオンの足首を何かが掴んだ。

シオンは足元を見た………

「ニクゥ…………ニクゥ…………」

這いずりゾンビがシオンの足首を掴んでいた。

そしてその足首をゾンビは噛みつこうとしている。

「いやああああああ!!」

ブチッ

「あ…………」

「シオン様……?」

シオンの堪忍袋の緒が………切れた………

「てめぇ!!人の足首に触るんじゃねえ!!」

シオンはそう言って、そのゾンビの頭を思いっきり蹴り上げた。

そのゾンビは頭が吹っ飛びそのまま息絶えた。

「姉上…………」

「シ………シオン様ぁ………」

「なんだよ?!」

オスカーとヨウスケを据わった目で睨みつける。

<姉上…………貴方の性格は一体誰に似たんですか?>

<父上が言ってたけど……シオン様………本当にセレン王太子妃様にそっくりみたいだ……>

セレンはシオンとオスカーの母の名前である。

実はセレンには「怒り」という特殊なスキルを持ち、そのスキルが発動すると性格が変わるというものだった………。

シオンもしっかりそのスキルを受け継いでいる。

それを発動させた状態が、今の目の据わったシオンである。

「おら!!さっさと行くぞ?!」

「はい、姉上………」

「シオン…………」



その後にあった仕掛けは、狼男に変装した兵士やら、ドラキュラの真似をした大臣やら、その影で一生懸命ドライアイスを溶かすメイドやら、フランケンシュタインの格好をした将軍やらで溢れかえっていた。

そのたびにシオンがキレて魔法を放つのは言うまでもない……。

「シオン………頼むからキレないでくれ………」

そう切実に思うテンルウであった………。



長い時間をかけて、シオン達は王の間の前にまでやっと辿りついた。

「ったく………何考えてんだ?ここの公爵は………!!!」

シオンはまだ目が据わっている。

<シオン…………>

<姉上………今日は一段と怖いです………>

<シオン様………お願いですから優しいシオン様に戻ってください…>

3人ともキレたシオンにたじたじであった。

そして……王の間の扉は開かれた………するとそこでは……



ゾンビの大群が全員同じ動きをして踊っていた。

「……………………」

<ス……ス○ラー?!>

<音楽までかかってるし………>

<マ……マ○ケ○ジ○ク○ン………>

ゾンビが音楽に合わせて皆同じ動きをして踊るその光景は異様だった……

「ふっ………どうだ?私の趣味は堪能していただけたかな?」

スイフトが玉座に座り、どうどうとして言う。

「なかなかの悪趣味だな」

「かなりイッちゃってますよ。ここまでくると……」

「てめぇ………ぶっ殺す………」

「異常だな」

全員が一言そう言った。

「あ………悪趣味とはなんだ!!私の一番の楽しみを………」

「人を怖がらすのは趣味じゃねえ!!ただの変態だ!!」

「貴様………絶対ぶっ殺す………」

「変態を極めてますね」

「かなり異常だ」

スイフトの趣味を完全に否定する。

「少しはまともな奴はいないのか?この国の公爵は………」

「とりあえずぶっ殺す…………」

「姉上をキレさせたのが運のツキです」

「さらば…………」

シオンはすぐに呪文の詠唱に入った。

「ライトニングー!!!」



「ギャアアアアアアアアア!!!」



こうして………メルセデスの公爵家は全て滅んだ………

「合掌…………」

「礼拝」

「オスカー………作者のところと宗教が違う………」

うちは礼拝ないよ………オスカー………

「あ?そうなの?」

うちの宗教は禅宗だよ

「あ~。南無釈迦牟尼佛ね………」

「なんでそんなこと知ってるんですか?オスカー様………」

「なんでだろうね……?」




作者:17章完了!!

シオン:作者。なつかしい映画ネタ出すなよ?

テンルウ:シオン、まだ目が据わってる………

作者:よかったし、好きだよ。スリ○ー。

シオン:ああ………そうかい……

テンルウ:バ○オハ○ードネタもあったな。

作者:ああ、ゾンビの頭蹴飛ばす奴ね。主人公が男だと踏み潰すんだよ

テンルウ:ふ………踏み潰す………

作者:そっちの方がよかったかい?

テンルウ:シオンの綺麗な足をゾンビの汚れた血で汚したくない……

作者:でしょ?

シオン:俺は別にそっちでもよかったんだけどさ

テンルウ:シオン。それだけはやめよう……ね?

シオン:わかったよ………テンルウ……だからそんな眼で見るな…