ユグドラシル聖戦記

あれから11ヶ月……

シオン達はナディアを離れ、リデア城に来ていた。

そこでシオン達はメルセデスの復興に力を注いでいる。

でも……そんなシオン達に待っていたのは過酷な現実だった……

19.ユグドラシル王国の裏切り

カンピナスの傷はすっかり癒え、軍備に力を入れている。

あの後、ショウが直々にカンピナスに会いに行き、シオンの胸中を伝えに出向いたのだった。

カンピナスはその「1年間だけの猶予」を許可したのだった。

今は集中的にメルセデスの近衛軍団【クロスナイツ】の再結成に力を注いでいる。

「モニカ……もうすぐ……お前のところに行くから……」

モニカとカンピナスは士官学校での同級生であり婚約者でもあった。

モニカはレンスター王国の王女である。

レンスターはトラキア王国と隣接している国でトラキアよりは裕福な王国である。

おまけに12聖戦士の一人、ノヴァの直系であり地槍ゲイ・ボルグが代々受け継がれている。

カンピナスはしばらくモニカに逢っていない。

会いに行かなくちゃなぁ……などと彼は考えていた。



メルセデス王国も大分落ちつきを取り戻し、シオン達もそろそろナディアへ帰ろうかという相談も出ていた。

で………リデアではちょっとした揉め事があった……それはというと……

「兄様のバカァ!!!」

「うっせ~な!!お前は黙ってトラキアに帰ってろ!!」

そう………コウヘイとミホの痴話ゲンカだった……。

最近は毎日のように続いており、産まれてきたユウキの面倒もほったらかしでケンカしているのであった。ちなみに……ユーリのお腹の中には子供がいる。

ユウキが生まれてから四ヶ月後にできた子供である。

オグマとイナルナも二歳になり、あちこち歩き回るようになり、今では一番のやんちゃな兄妹である。

流石のシオンとテンルウもちょっとだけもてあますぐらい元気なのである…。

「ユーリぃ……お兄様がいじめるぅ………」

「そうやってすぐにユーリに泣きつくな!!」

「コウヘイ……毎日のようにケンカして疲れない?」

「………疲れる………」

その様子を見てテンルウは呆れている。

「毎日毎日ケンカしてよくあきないよなぁ……なぁ?シオン」

「ええ……そうですわね」

「どうした?顔色良くないぞ?」

「え?あ……いや………何でもないですわ」

シオンは最近身体の調子が良くない。

何故かは全くわからない。

何かの病気にかかったのかもしれない……。

もしかしたら精神的なものからきているのかもしれない……。

そんなことが頭の中をよぎる。

ここのところ、シオンは夢に魘されてろくな睡眠時間を取っていなかった。

そう……いつも見るあの夢………。

自分の首を締めつけるあの黒い腕が怖くてシオンは眠れなかった。

けれど、誰にも言えずに悩んでばかりいた。

最近では毎日のようにあの夢を見る……。

そして…………あの不安もかき消せずにいた。



それから二週間後………。

はるか北にある海賊団が村を襲い出したのである。

「シオン様!!北のロードスターの海賊が………」

「………………」

シオンは考えこむ。

今のこの不安定な状態で海賊団が暴れたら今までやってきたことが水の泡になってしまう。

けれどロードスターの海賊団は義賊で有名な海賊団。

決して村を襲うはずがないのである。

しかし現実に海賊団は村を襲っていると言う事………。

「……皆、出撃準備を………」

今のシオンにはそれしか選択肢は残されていなかった。



数時間前、ロードスターでは………

「お頭!!今のメルセデスはまだ不安定な状態、財政状況も獅子王がいないせいで思わしくない……こんなチャンス、滅多にありませんぜ?」

「馬鹿言うんじゃないよ!!あたしらは義賊だ!!ケチな仕事はしないんだよ?!あんたたち、村でも襲ってごらん?あたしが容赦しないからね!!」

お頭と呼ばれた女はそういった後、部屋にへと戻っていった。

「くそ………フェアレディのやつ……前頭の子供だからっていい気になりやがって……」

「おい……フェアレディは前のお頭の娘じゃねえぞ」

「何?!」

「何でも有名な王国の王女様をさらってきたとか何とか………」

「王国の王女?あのフェアレディがか?」

「でも12聖戦士の証があったらしいぜ?」

「へぇ~……それじゃ……アイツの言う事なんざ聞かなくてもいいってことだよな?おい、野郎共!!メルセデスを襲いに行くぞ!!」



「マルス様?顔色がよろしくないですけど、どうかなさりましたか?」

「あ、ミホ王女……」

マルスは綺麗な剣を持っていた。

「まぁ、素敵な剣ですね?マルス様のですか?」

「これは僕のじゃないよ。僕の妹のものなんだ」

「何て言う剣ですの?見たことありませんけど?」

「これはね『レーヴァテイン』っいうんだ」

マルスは懸命にレーヴァテインの手入れをする。

「妹さんってどうなされたんですか?」

そこへ、テンルウがイナルナを連れてマルスのところにやってきた。

「お前……まだそれ持ってたのか?」

「うん、どうしても手放せなくてさ………」

「どうかなさったんですの?」

テンルウとマルスは浮かない顔をしている。

「パーパ……どしたの?」

イナルナはテンルウの顔を見て首をかしげる。

「あぁ、何でもないよ、イナルナ」

「ほんと?」

「ああ、ほんとだ」

「よかった~」

イナルナはそう言って笑った。

「僕の妹ね……10歳の頃に誰かに攫われちゃったんだ………」

「それから何度か捜したんだが、見つからなくてな……城の者は皆、あきらめてしまった」

「このレーヴァテインは妹にしか使えない剣なんだ」

「どうしてですの?」

「さぁ?良くわからないんだけど………レーヴァテインがあの子を選んだとしか言いようがなくてさ……」

「………見つかるといいですね……妹さん………」

「うん……」

テンルウは<自分は邪魔かな?>と思い、イナルナを連れてマルスたちの元を去った。

そこへ、シオンがやってきたのである。

「テンルウ様、出撃ですわ」

「………何でまた……」

「ロードスターの海賊が村を襲っているんですの……」

「そうか……わかった」

そして、この城のほとんどの者がロードスターに向かった……。



フェアレディは部下達が勝手に村を襲っていることに気がついた。

「ビッグホーン!!あたしの言ったことがわからなかったのかい?!今すぐにあいつ等をこっちへ連れ戻しな!!!」

「フェアレディ、俺に指図してもらっちゃあ困るな。お前はもう頭じゃねえ」

「何言ってんだい!!馬鹿も休み休みいいなよ!!!」

「お前は前の頭の娘じゃねえ。現にお前の左腕にあるアザ……それは12聖戦士の証……直系じゃないみたいだがどっかから拾われてきたお前の言う事なんざ、もう誰も聞くヤツなんてこのロードスターには誰一人いやしないぜ!!」

フェアレディの周りには誰一人として味方はいなかった。

「ビッグホーン……貴様………!!」

「おい!!誰かフェアレディを殺っちまいな!!!」

「くっ………」

フェアレディはただ、逃げるしか生きる道は残されていなかった。



ヨウスケとキイナはシオンに頼まれ、ロードスターに向かっていた。

ちょうどつり橋に差し掛かったところで二人は海賊に襲われている女の子を見た。

年のころはちょうど17歳くらい。

「キイナ王女、あれは……」

「公子、貴方はシオン王女に知らせて!!私はあの子を助けに行くわ!!」

「わかった!!」

ヨウスケは馬に乗り、シオン達のいる方へと急いで向かっていった。

キイナはそのままつり橋を渡る。

つり橋はキイナが動くたびに上下に揺れる。

そして、キイナが近くで見たその光景は……。

「流星剣!!」

その女の子はテンルウと同じ動きをして海賊を斬り倒していた。

キイナは一瞬、そこにテンルウがいるんじゃないかと錯覚してしまった。

けど、女の子の髪の色はマルスとそっくりである。

けれど、切羽詰った状況は変わらない。

キイナは印をきった。

「エルウインド!!!!」

急に現れた風の刃に海賊と彼女は驚く。

「大丈夫?」

キイナは女の子のところに駆け寄る。

「え?ああ………助かった……ありがとう……。貴方は……ナディア軍の?」

「そうよ」

でもそんな会話をしている場合ではなかった。

海賊はそんな間をくれるはずもなく次から次へと襲いかかってくる。

「あたしはロードスターの元海賊頭領、フェアレディだ」

「私はセンティア王国第一王女、キイナよ」

互いに自分の名を名乗ったところで、戦闘態勢に再び入った。



シオン達はヨウスケに状況を聞き、急いで北のほうへと向かっている。

そしてちょうどつり橋のところに差し掛かったところでマルスとテンルウの動きが止まった。

「テンルウ様、どうかなさりましたの?!」

テンルウとマルスはその目を一瞬疑ってしまった。

「あれは………」

「………フェアレディ………!!!」

マルスはその姿が誰なのかを認識すると大急ぎでかけていった。

「あ、マルス公子……」

ミホはその様子を上空から見ていた。

そして、マルスの後を追うようにペガサスを飛ばした。

「テンルウ様……一体何が……?」

「話せば短くなるんだが……」

「………長くなる……の間違いじゃありません?」

「いや、短いから短くなるんだよ………」

「………最近キャラが変わってきてますわね……」

「いや……あのお預けに比べたら……」

シオンは<まだ言うか!!>と思っていた。

そう……あれから延々と何かを口にするたびにその内容が出てくるのである。

「で?何があったんですの?」

「いや、俺達がガキの頃にマルスの妹が何者かに攫われて、それから音沙汰なかったんだけど……さっき海賊団に襲われてた女の子がその妹に似ているって言う話し」

「本当に短い話ですわね………」

「だって短くしたもん」

「…………」

シオンはちょっとため息をついた。



「マルス様!!」

「ミホ王女………」

「あの人が貴方の?」

「確信は持てないけどね」

マルスは馬には乗らずに走っている。

つり橋はギシギシと音を鳴らして上下に揺れている。

「マルス様!!乗って!!」

ミホは右手をマルスに差し出した。

その手をマルスは握り、マルスはペガサスに乗った。

そしてキイナ達の元へ急ぐのだった。




キイナとフェアレディは西に向かいつつ、海賊団を倒していく。

だが、もうすぐそこは海。

逃げ場を完全に失ってしまった。

「フェアレディ……お前には死んでもらう」

「くっ……ここまでか………」

「何処の誰かは知らねぇけど、フェアレディに荷担したお前にも死んでもらうぜ!!」

この時ほどキイナは「フォルセティ」のない自分の非力さを呪った。

と……その時……

「キイナ王女!!!」

ミホがマルスを乗せてやってきたのであった。

「ミホ王女!!マルス公子!!!」

マルスはミホのペガサスから飛び降り、ミホはそのまま手槍を海賊に投げつけた。

「キイナ王女、大丈夫かい?」

「ええ、大丈夫よ」

「フェアレディ、君も大丈夫かい?」

「………お前……何故私の名を知っている?!」

フェアレディは逢ったことのない男にその名を呼ばれ、驚く。

「僕だよ、マルスだよ。覚えてないのか?」

「マル………ス……?」

微かに聞き覚えのある名がフェアレディの頭の中をよぎる。

「なら、この剣を持ってみて」

「なんだ?やけに綺麗な剣だが………」

フェアレディはマルスから剣を受け取った。

すると……何かが心の奥底からこみ上げてきた。

それは……アリストで育ってきた10年間の思い出と、自分の兄の顔である。

「お兄……様………マルス兄様……?」

その言葉にマルスは喜ぶ。

「そうだよ、フェアレディ、僕だよ!!」

「ああ………兄様………こんな日が来るなんて夢にも思いませんでしたわ……また逢える日が来るなんて……テンルウ兄様はご一緒じゃないの?」

フェアレディは涙を流しながら兄との再会を喜ぶ。

でも、そんな余裕は今はない。

フェアレディはレーヴァテインを手に海賊団の方へと向かっていく。

「レーヴァテインよ!!その力を解放せよ!!」

そしてレーヴァテインを頭上に掲げた。

レーヴァテインは炎の渦を巻き起こし、海賊団を炎の海に包みこんだ。

それを見たミホ・キイナは驚きを隠せない。

「すごい…………ボルガノン以上の力だわ……」

「私もあんなすごい炎を見たのは初めてです……」

「レーヴァテインはファラの分身と言われている剣。その威力はファラフレイムに劣らないと聞いたことがある……。レーヴァテインは人を選ぶ剣なんだ。意思を持っている剣なんだよ」

マルスは代々伝わってきたレーヴァテインの話をキイナとミホに話した。

そして、海賊団は炎の渦へと消えていった。



やっとの思いでシオン達はマルスたちと合流できた。

「テンルウ兄様、お久しゅうございますわ!」

フェアレディはテンルウに抱きついた。

「そうか、やっぱりフェアレディだったのか。元気だったか?」

「はい!!テンルウ兄様もお変わりなく」

「俺ってそんなに変わってないか?」

「ええ、年上の美人に弱いところなんて全く変わってませんわ」

「………………」

フェアレディはシオンに視線を向けてテンルウにそう言った。

「?」

シオンは何のことかわからず首をかしげている。

そしてフェアレディはシオンのところに歩いてきた。

「始めまして、私はマルスの妹のフェアレディと申します。先程はどうもありがとうございました」

「いいえ……そんな……」

「王女、私もこの先兄と共に同行させていただいてもよろしいですか?」

「ええ、大歓迎よ」

シオンは笑顔でフェアレディと握手を交わした。




その日の夜―――――――――

シオン達はロードスターで一夜を明かすことにした。

だが、そのときもシオンは不安にかきたてられる。

<何だろう……この消し去れない気持ちは……………>

その不安がいっそうシオンの心を蝕んでいく。

そしてその気持ちは別の方へとシオンを導き出した。

部屋で一人、じっとしているのは慣れているはずなのに、今日は心の何処かで何かを求めている。

じっとしてはいられずシオンは窓の方へ歩いていき、手を組んで祈りを捧げる。

別に誰のためというわけでもない……。

だけど祈らずにはいられなかった。

そして、テンルウが稽古を終えて、部屋に帰ってきた。

窓際で祈りを捧げているシオンを見たテンルウは、ベッドに腰掛ける。

「シオン、もう遅いから……今日は寝よう……な?」

「テンルウ様………」

振り向いたシオンの表情は切なげで何処となく壊れかけた感じがした。

「どうした?」

「テンルウ様………お願いがあります……」

そう言ってシオンはテンルウの横に座る。

「何?お願いって………」

シオンは少しうつむき、テンルウの腕を掴む。

「テンルウ様……私を抱いて………」

「……………」

あまりの唐突さにテンルウは少し戸惑う。

シオンからそんなことを言ってくるなんてほとんど有り得ない。

「お願い………二度も言わせないで………」

「………わかった」

シオンはそうして自分の不安をかき消した。

テンルウの愛を感じることで、自分の存在を確認した。

そうすることで落ち着きを取り戻すことができた。

いつだって……傍にいてくれるこの人に…………抱かれることで……



次の日の朝、いつもよりもはやくに目の醒めたシオンはバルコニーで一息をついた。

だが、そこで見たメルセデスの光景はいつもとは違っていた。

火の手が上がっているのである。

シオンはその目を疑った。

各城に上がっている旗は全てユグドラシル王国の……グランビアのものだった。

リデア城はまだ無事だったものの、他の城は全てグランビアによって制圧されている。

「そんな……どうして………!!!」

シオンはバルコニーから走って急いで皆のいる一室に急いだ。

そこには、リデア城で留守番をしていたはずのコウヘイ・ユーリ・ショウと子供たちがいた。

「オグマ、イナルナ……!!」

シオンは子供たちを抱きしめた。

「王女、大変なことになったぞ」

「シオン様………」

ユーリが差し出した手紙をシオンを受け取り、それを読んだ。

シオンの顔色が真っ青になる……。

<ユーリ公女へ―――反逆者であるシオン王女を差し出すことを命ずる>

そんな感じの文面であった。

「私が……?どうして………?」

「それを差し出してきたのは………バサラです」

「……………」

思わず涙がこぼれるシオン。

今までやってきたことは何だったのかわからなくなってしまった。

「シオン様…………」

ユーリはシオンを慰める。

今やシオンには帰る場所は何処にもない。

祖父に裏切られたと言う気持ちがシオンを追い詰めていく。

「姉上……私は、おじい様が信じられません」

「シオン様が反逆などするはずがないのはヴィッツ様が一番良くおわかりのはずですわ!!!」

「シオン様!!」

オスカー、キラ、ヨウスケがシオンを何とか落ち着かせようとする。



そして、数時間後……

メルセデスのリデア城を落とした一人の騎士がいた。

「トンベリ様………」

「いいか、シオン様を無傷で連れて来るんだ!!絶対に傷つけてはならんぞ!!」

「はい!!!」

ユグドラシル軍はロードスターへ進軍を始めた。




作者:19章完成!!!

シオン:一日で仕上げましたわね?久々に……

作者:これから20章も書くよ

テンルウ:おい。また一部妖しいシーンが……

作者:パラ○イト・○ヴの原作小説よりかなり押さえてあるぞ?

テンルウ:それはそうだが………

キイナ:ちょっとだけ出番が増えたわ!!

作者:これからもっと増えるよ。約一名いなくなるからね

テンルウ:おい………その約一名って………

作者:さぁ?誰でしょうね~?

トンベリ:せっかくの初登場なのに台詞はあの一言だけですか……?

テンルウ:うわ!!出たな!!後藤○希軍団その4!!

トンベリ:その言い方やめましょうよ………

作者:あははははは………




キャラクター紹介



フェアレディ

年齢:18歳

クラス:ソードマスター

オリジナルキャラです。

なんとな~く作ってみたキャラ………。



トンベリ

年齢:18歳

クラス:マシーナリー

やっと登場のトンベリくんです。

けどこのショウでは一言しか喋ってないですね………

でもこの先活躍します……ある意味で……。