ユグドラシル聖戦記

シオンがテンルウの傍を離れてから1年―――――――

テンルウ達はセンティア王国のアルティス城に身を潜めている。

というのも、キイナ王女の母親であるカリーナ王妃がキイナ王女を連れ戻すためにテンルウ達にこの城を提供したのだ。

そんなセンティアも今、国政が大きく乱れていた。




第21章 センティア王国の動乱




「よし!!できたわ!!」

ユーリはあるものを持ち上げてそう言った。

その言葉にコウヘイは反応する。

「できたか?」

「ええ、これで彼も少しは落ち着きを取り戻してくれるでしょう」

「しかし……どうやって渡すか………だよな………」

「それならこれを使ってみたら?」

そう言ってユーリはコウヘイに指人形を渡した。




テンルウはというと……

未だにあのときのショックが抜けずかなり落ちこんでいた。

マルスは時々気晴らしにと彼を闘技場に誘った。

そして今日も、マルスはフェアレディと共にテンルウを連れて闘技場へ行っていた。

「流石テンちゃん、相変わらず強いよね~」

「…………そうか」

そう言ってテンルウはため息をつきながら力なく城へと帰る。

<………やっぱり今日も駄目だった………>

「テンルウ兄様………」

フェアレディも流石にテンルウが心配になってきていた。




「王女がいなくなってからずっとこんな調子で………本当に王女を助ける気あるのかな?」

「何かこう……テンルウ兄様の気合を入れ直せる物ってないんでしょうか?」

「それなら今ユーリ公女がそれを作っているんだよ。そろそろ出来ても良い頃合いかな?」

「そうですか?それならいいんですけど…………」








テンルウは自室へと戻ってきた。

部屋を見るたびにため息が出る。

つい1年前まではテンルウが部屋に帰ってくるとシオンが




「テンルウ様、おかえりなさい」




と笑顔で言ってくれるのだが、シオンはもうテンルウの傍にはいない。

「シオン………」

シオンから貰ったアミュレットを見るたびにあのときの記憶が蘇って来る。




「テンルウ様…………子供たちを頼みます………」




その時の様子が頭からどうしても離れなかったのである。

テンルウはバルムンクを腰から降ろし、ベッドの上に座りこんだ。

「テンルウ様、元気出して★」

という声が聞こえてきた。

テーブルの上にシオンと同じ姿をした人形があった。

「テンルウ様、私は強くて逞しくて頼りになるテンルウ様が大好きですの★どうかシオンの為に元気になってください★」

そう言うたびにその人形は動く。

テンルウは声がするテーブルの前に立った。

すると………

シオンの指人形を動かしながら女の声色を出しているコウヘイがいた。

「コウヘイ…………ここで何してる……?」

そう言われてコウヘイは上を見上げた。

「あ……あははははははは………」

コウヘイは心持ちない笑いを浮かべた。

「シオンはもっと愛らしい声をしてるんだ!!お前が真似するとシオンのイメージが壊れる!!」

「そんな言い方ないだろ?せっかく良いもの持ってきてやったのに………」

そう言ってコウヘイは先程ユーリに渡されたぬいぐるみをテーブルの上に置いた。

それはシオンの姿をした大きいぬいぐるみだった。

「これがどうしたんだよ?」

「いいから見てろって………」

コウヘイはシオンの姿をした人形の背中にある何やら固いもののスイッチを押した。

すると………

「テンルウ様ぁん、好き好きぃん★」

と、シオンの声で喋り出したのである。

「素材はぬいぐるみと同じ、だけど構造は魔法人形と同じ……ユーリ特製・名付けて≪シオン人形≫」

それを見てテンルウの顔付きはがらっと変わった。

「これ……くれるのか?」

「ああ、お前のためにユーリが作ったんだからな」

「嬉しい………」

そう言いながらテンルウはシオン人形を手にとって抱きしめた。

「いやぁん、テンルウ様ったらぁん★」

「シオンと同じ声でこう言われるとますます抱きしめたくなる……」

「もう抱きしめてるじゃん……」

「しかしまぁ……よくシオンの声が手に入ったよなぁ……?」

テンルウは感心しながらまじまじとシオン人形を見た。

「それは、その中に組み込まれている構造を作ったのはシオン王女本人だからな」

「シオンが?」

「こうなること予測していたのかどうかはわからないけど、この本体だけ作ってユーリに渡していたそうだから………」

「シオンが………」

テンルウはシオン人形をじっと見つめた。

「それにしても………可愛い………」

コウヘイはある程度予測はしていたが、まさかここまで喜ぶとは思っていなかった。




一方キイナの方はというと――――――――――――

「だからぁ、私はこのセンティアを継ぐつもりは毛頭ないんです!!!」

「キイナ!!フォルセティの後継者の貴方以外に誰がこのセンティアを継ぐというのですか?!」

「グロウ兄さんがいるでしょう?!グロウ兄さんに継がせれば良いのよ!!!」

キイナには兄がいた。

名を「グロウディア」と言う。

しかし、フォルセティはグロウディアではなく妹のキイナを選んだ。

城の者はおそらくグロウディアに魔法の才能がないせいじゃないかと噂した。

実際、グロウディアは魔法が使えない。

そう言う事実がセンティア王国・プロシード家にはあった。

「母上……今の私は、センティア王国よりグランビアのシオン王女が気掛かりでならないのよ?!テンルウ王子を見てるだけですごくつらいのよ……ここにいる人たち皆が……だからわかって………シオン王女を見つけ出すことが出来たら国でもなんでも継ぎますから………」

カリーナはそれを聞いてため息をつく。

「わかったわ……ただしキイナ。一度でいいですからプロシードに帰ってきなさい。貴方にお話がありますから……」

「はい、わかりました……」

そう言ってカリーナは城へ帰る用意をした。

「キイナ様、カリーナ様は本当は貴方に城に帰ってきてもらいたくて、そう言っているのですよ?少しはそのお気持ち、わかってあげてください」

ミラージュがキイナに少し悲しそうな顔をしていった。

「大丈夫よ、ミラージュがいるんだもの。母上は淋しくなんかないでしょう」

「まったく……キイナ王女は………」

「で?グロウ兄さん……今何をしてるの?」

「さぁ……?あのお方は今ファンカーゴ城に住んでらっしゃるのですが………今では何を考えているのかがわかりません……」

ミラージュはそうキイナに言った。

「そう……」





そして、数日後。珍しい客がショウに訪れたのである。

「ショウ様、獅子王が見えてます」

「カンピナスが?!!」

それを聞いてショウは大急ぎで客間へと急いだ。

「ショウ!!久しぶりね!!」

「モニカ?!モニカじゃないか!!久しぶりだね、元気だった?」

「おい、ショウ……まず先にモニカかよ………」

「あ……ゴメン……」

ショウは三年ぶりに逢った親友との再会を喜んだ。

そのせいでカンピナスの事が後回しになってしまった。

「ショウ、すまない。俺たちで何とかシオン王女の行き先をつきとめようとしたんだが……無理だった……」

「カンピナス……今までシオン様の事を捜してくれてたのかい?」

「ええ。だってシオン王女はショウの大切な人でしょ?」

モニカにそう言われてショウは顔を赤くする。

「ショウってシオン王女にホの字だったもんね~……」

「モニカ、からかわないでよ!!」

「グランビア士官学校でも有名だったもんな~……お前のシオン王女好き」

何で有名かと言うと、シオンは1年に一度、グランビア士官学校に出向いてショウとそして別のクラスだったトンベリに逢いに来るからだった。ちなみに二つ上のキラが士官学校にいた時からシオンは来ていたらしい。

「あの浮かれようは尋常じゃなかったもんな。その度にあのヤギ先生に怒られてたっけ~……ショウは」

「で、いつだったかしら?シオン王女の婚約が決まったとき、一日中泣きはらして……目が真っ赤で授業に出られなかった日があったね」

「恥ずかしいからやめてってば………」

「へぇ~……ショウって姉上のこと、好きだったんだ」

そのとき、たまたま客間の前を通ったオスカーとキラがその話を聞いていた。

「それは初耳だったわ。ショウって以外と美人好きだったのね」

キラがショウをからかった。

「美人が好きだったんじゃなくて、シオン王女が好きだったんだよ」

「あの士官学校にだっていっぱい美人はいたんだけど、こいつ見向きもしなかったもんな」

「うん、私と言う美人だっていたのにね」

モニカは胸をはってそう言った。

そして、こともあろうにその場をテンルウとコウヘイが通ったのだった。

「…………」

テンルウはカンピナスの方をじっと見つめる。

「てめぇ!!獅子王!!一体どの面下げてここに来るつもりだぁ!!」

テンルウ……気付くのが遅すぎ………

「ショウに用があってここに来たんだ!!テンルウ王子には関係ない!!!」

「ちょっと、カンピナス。人のところに来てまで喧嘩しないでよ……」

モニカの声を聞いてコウヘイは過剰反応した。

「モニカ?!!」

「その声は………コウヘイ?!!」

「モニカ、何しにここに来たんだ?」

「コウヘイこそ何でここに……?」

モニカとコウヘイは顔を見合わせて互いにそう聞いた。

「モニカ……トラキアの王子と知り合いなのか?」

「知り合いも何も………幼馴染みだもん……私達……」

「国同士が敵対しあっているのに幼馴染みなの?」

途中からユーリが来てコウヘイに聞いた。

「ああ。だが敵同士って言うのは俺のじいさんの時代までの話。俺の親父も友好関係までは組みはしなかったものの、レンスターとは離縁関係。だが、それも俺たちの時代で終わったよ。俺が15の時にレンスターに出向いて同盟を組んだんだ。それ以降、レンスターとトラキアは昔のように元に戻ったわけ。今じゃレンスターから食べ物も輸入されてきているし、軍事関係の方も何かあればトラキアからドラゴンナイト部隊が出るようになっているしな。親父も喜んでいたよ」

「私の父上もとても喜んでた。レンスターとトラキアが敵対しあうようになってからもう300年………長かったわ」

モニカもしみじみしながらそう言った。

「家出していた時にそんなことしてたのね………コウヘイ……」

「まぁな★俺も伊達に王子はやってないぜ」

「コウヘイにしては有り得なさそうな話だな」

「んだと?テンルウ……そう言うお前はどうなんだよ?!!」

「俺の国はそんなことなかったからな」

テンルウはそう言った。

「ああそうかよ………」

コウヘイは少し面白くなさそうな顔をしてそう言った。

「あ、それと言う事があった……俺、もう王じゃないから」

カンピナスはあっさりとそう言った。

「へ?」

皆が声をそろえた。

「王じゃないって………」

「どう言う事?」

その場にいたものがカンピナスに聞いた。

「あの後……ちょうど2ヶ月くらい前かな?グランビアにメルセデスを落とされた。俺のクロスナイツも全滅。その時グランビア軍を指揮していたのはショウの幼馴染みのトンベリってヤツ……」

「トンベリが?!」

ショウ・ヨウスケ・キラが声をそろえてそう言う。

「トンベリがそんなことするはずないよ!!!トンベリは俺なんかよりシオン様の事を尊敬してたんだ!!シオン様の意を無視してメルセデスを陥落させるなんてそんなこと有り得ないよ!!」

ショウは力一杯そのことを否定した。

「だが、実際にメルセデスを落としたのはトンベリだ」

「そんな………」

ヨウスケは信じられない気持ちでいっぱいだった。

「オスカー様……トンベリは何を考えているのでしょう……」

「ごめん、キラ………今となっては私もわからないよ……」

オスカーは少し気落ちしてしまった。

「そして、シオン王女の居場所もわからずじまいだ」

「これはあくまでも噂なんだけど……今グランビアを支配しているのはバサラ公爵だっていう話なの。その人の部下の一人がシオン王女に似てるって言うの」

「シオンに?!」

テンルウがモニカに聞いた。

「ええ。でもその人の名前がすごく引っかかるの……だって……あの「ロプト帝国」を作った女帝と同じだから………」

「女帝………」

ユーリはその言葉を聞いて不可思議に思った。

「というわけだ、これからは俺もモニカもテンルウ王子について行くことにした。以後よろしく頼む」

カンピナスはそうテンルウに言った。

「お前………」

「テンルウ様、お願いです……もうカンピナスと喧嘩しないで下さい……私にとっては二人とも大事な人なんです、それが争うなんて……もう……」

ショウはつらそうな顔をしてそう言う。

「わかったよ、ショウ……ま、とりあえずそう言う事だ。こちらこそよろしく頼むぜ、獅子王」





とその時であった――――――――――――――

「キイナ様!!!大変です!!!グロウディア様がプロシード城を攻撃しました!!!!」

「なんですって?!!」

「今、ミラージュ隊が全力で食い止めています、どうか援軍を……」

一人の天馬騎士によって知らされた事実。

キイナは信じられない気持ちでいっぱいだった。

「おい、キイナ。大丈夫か?」

気遣うテンルウ。

「大丈夫………それよりテンルウ王子。力を貸してくれないかしら?プロシードを守りたいのよ」

「ああ、お前の母上のカリーナ王妃にはお世話になってるからな!丁度良い恩返しだぜ!!」

テンルウの言葉を聞いて他の者達もすでに武器を手に準備をしている。

「皆…………ありがとう………」

キイナは仲間がいるって本当に良いな……と心からそう思った。








作者:21章だぜ!!ついに来たという感じ!!

シオン:何を張りきってらっしゃるんですの?

作者:おや?この時点ではすでにあの世に行ってるかどうかもわからないシオンちゃんじゃないか

シオン:その言い方………何かむかつきますわ………

作者:でも何とか30章までにこの親編、終わらせたいな……

シオン:一番の佳境は子供編ですものね

作者:そう……子供編の方が色んな設定がありすぎて……謎も多いし……

シオン:まぁ、もともとこの話もあるゲームのパロディみたいなものですから仕方ありませんでしょう?伝説の武器と血筋なんてモロだし……

作者:そう言うなよ…………

シオン:工夫は必要ですわ!

作者:はいはい………