ユグドラシル聖戦記

キイナの兄、グロウディアは自分の祖国・プロシードを襲った。

その理由は誰もわからなかった。

その事実を聞いて気を落とすキイナ。

キイナはテンルウ達の力を借りてプロシードへ向かう決意をする。

だが、その前にグロウディアの部下・フェンディがアルティス城を包囲していた。




第22章 空に舞い、散り行く天馬騎士




「テンルウ様!!アルティス城が包囲されてます!!!」

ルサールカがテンルウに城の外の様子を伝えに来た。

「くそ……先を読まれてたか?」

テンルウはテーブルを乱暴に叩いた。

そこへ、キラがイチイバルを持ってテンルウの前に来た。

「テンルウ様、私が奴等を蹴散らせて見せますわ!!」

「キラ?!」

「………大丈夫か?」

テンルウは心配になってキラにそう聞いた。

「包囲されていると言っても相手は天馬騎士。私みたいな弓兵とは相性がかなり合いません。今、弓攻撃ができるのは私だけです。守備台に立って相手を蹴散らせて見せますわ!!」

「そうなのか?」

テンルウはそう言った事に関してちょっと疎かった。

それをキイナに聞き返した。

「ええ、相手はおそらくフェンディでしょう。フェンディはこのセンティア王国にある4天馬騎士団長の一人です。もちろん一番を誇っているのはあのミラージュなんだけど……天馬騎士や竜騎士と言った飛空系の騎士というのは弓攻撃に非常に弱いものなの。天馬騎士はまだ魔法攻撃に少し耐久力があるから魔道士にも適合してるんだけど、コウヘイ王子みたいな竜騎士が相手だったらこの場所は最悪かもしれない……センティアは風魔法を重んじている国だから風使いが多いのよ。あと天馬が育ちやすい環境だから天馬騎士も多いけど……フェンディは風使いをあまり好まない力押しの将軍。いるとしたら大半が天馬騎士でしょう」

そのことを聞いてテンルウは考えこんだ。

そして傍にいたショウに聞いたのである。

「ショウ、お前……この作戦どう思うかな……?」

「どの作戦ですか?」

「まず、天馬騎士団をキラが一掃、だけどおそらく他にも敵がいると思うから何人かをキラの護衛につかせる。そして、ヨウスケに火の魔法を持たせて後方支援……他の皆はそれを援護するって言う作戦……」

ショウはそれを聞いて考えこんだ。

けれどテンルウの作戦は風使い対策も入っていた。

火と風とでは風のほうが部が悪いのである。

「コウヘイ様はおそらくこの場所ではかなり不利でしょうから、マグから降りてキラの援護につかせてみてはどうでしょう?」

ショウはテンルウの作戦に補足をした。

「よし!!その手で行こう!!全員、出撃準備!!!」




「了解!!!」




オスカーはキラのところまで走ってきた。

「キラ!!君一人で天馬騎士を一掃するって………」

「ええ………私も少しは皆さんのお役に立ちませんと……」

「そんなことないよ………キラがいてくれているから………姉上も安心して後方を気にせず戦っていたんだから………」

オスカーはキラの手を握る。

「オスカー様………」

「生まれてきたユラのためにも………無事で帰ってくるんだよ……」

オスカーとキラはセンティアについて間もなく結婚。

つい1ヶ月前にユラという女の子が生まれている。

「大丈夫です、オスカー様。私は決して負けませんから………」

キラはオスカーの手を握り返す。

「そうだ、キラ……これをあげる」

オスカーはそう言って懐からペンダントを取り出した。

そのペンダントにはナーガの刻印が彫られたルビーが光っていた。

「オスカー様……それは………」

「姉上がさ、士官学校卒業のお祝いにくれたものなんだ。魔法攻撃を和らげてくれるんだけど……キラにあげるよ」

「え………!?そんな大切なもの……私には受け取れません!!!」

「もらってよ。私達もう夫婦なんだし、それにもう私には必要ないよ」

「でも………」

「私は今まで姉上の背中を見て育ってきた。けど……姉上がいなくなってわかったんだ。もうそんなことじゃいけないって………私には姉上を越えるような力はないけど、せめて姉上を驚かせられるような…………そんな魔道士になりたい。「賢者」の称号まで手に入れたんだもの……それくらいしなきゃ……」

オスカーは左手を拳にしてそこに力を貯めこんだ。

「オスカー様………」

「だからキラ、これを受けとって欲しい。お守りとしてね」

「はい………ありがとうございます、オスカー様…………」

オスカーはそのペンダントを外し、キラにつけてあげたのだった……。





そして………再び、テンルウ達の戦いの幕は開いた。




キラは作戦通り、とにかく徹底的に天馬騎士の一掃に力を注いだ。

やはりテンルウの予想通り、地上戦向けのソルジャーやソードファイターが待ち構えていた。

コウヘイとフェアレディがキラに敵を近づけさせないように守備に入る。



一方テンルウとキイナ・ヨウスケの三人は敵の目を盗んでプロシードに向かっていた。

もちろん、雪で足が取られてしまっているので思うように速く走れない馬達。

その馬の中にシオンの愛馬のブランもしっかりいた。

ブランの背にはキイナが乗っている。

「お願い、ブラン……急いで………早くしないと母上が………」

その思いは果たして神に届くのであろうか………




「呼んだか~?」

げ………神・カンピナス?!!神的存在論からわざわざ何の用だ!!!

「なんの用とは失礼じゃの~………」

「お前!!神に向かって不躾よ!!!」

あら……大天使・紫闇まで………

「いや……わし達、ある子を迎えに……」

迎えに………?

…………誰を………?

「それがの………かくかくしかじかで………」

えぇえぇえぇぇぇぇえぇぇ?????!!!!!!

「叫ぶな!!!」

そうだったんですか………それはご苦労なことで……

「そう言う事じゃから、わしを崇めろよ?!一番偉いんじゃから!!」

お~いかみちゃ~ん……メェェ~~~~~~~~~

「それはものを書くための≪紙≫じゃ………」

「ヤギに食わせるとは………」

ふっ……………

あ、ゲスト出演ありがとうございます~

「いえいえなんのなんの★」

「それじゃ、迎えに行きましょう、カンピナス様★」

「ほいほい~」

………………

去っていったよ……………





その頃、ミラージュは4天馬騎士団の一人、シャネルと戦っていた。

シャネルもグロウディアに寝返ったのである。

「ミラージュ!!久しぶりじゃないか」

「シャネル………!!!」

「悪いが、「最強」のレッテル……私がもらうよ!!!」

「そうはさせません!!キイナ王女がプロシードに来るまでは………一歩もプロシードに入れさせないわ!!」

ミラージュ隊・シャネル隊はこうして戦いの火蓋を切って落とした。

その時、グロウディアはこともあろうにグランビアに援軍要請をしていたのだった。

その援軍に来たのは………………

キラの国の弓騎士団、その先頭に立つのはキラの弟のコウキだった…………。



コウキの率いる弓騎士団は次から次へとミラージュ隊を打ち落としていく。

「おのれ、シャネル!!!貴様、天馬騎士としての誇りもなくしたのか!!!」

「貴様に勝てれば手段は選ばない………ただそれだけの事!!!」

「くっ…………」







「死になさい………ミラージュ…………」







その冷ややかな言葉はミラージュへの集中攻撃の合図となった。

弓騎士の的となるミラージュ。

ミラージュの愛馬も弓の攻撃を避けきれず、射抜かれ大地へと落下していった。

「キイナ様………………申し訳ありません…………」





それが………天馬騎士・ミラージュのあっけない最後だった―――――――――




そしてプロシードは陥落した………。







「キイナ!!あの旗は…………」

テンルウがセンティア王国のセティの旗とは違う旗をプロシード城に見た。

「あれは……………グロウ兄さんの旗………!!!」

「遅かったか………!!!」

と、その時である。

「久しぶりですね、キイナ王女!!!」

上空からキイナを呼ぶ声がした。

キイナは上空を見つめる。

「お前は………シャネル!!!」

「王女、ミラージュの助けを期待しても無駄だよ!!」

「……………まさか……お前…………!!!」




「ミラージュはさっき死んだよ」




その言葉にキイナは一瞬信じられない気持ちがよぎった。

「私が殺したのさ、一番しぶとかったけどね……」

「シャネル!!!お前………天馬騎士としての誇りを何とする!!!」

「おやまぁ………ミラージュと同じこと言ってくれちゃって………私はただ強さを求めた。それだけの話さ。それにもともと私はグロウディア様の側近。キイナ王女、あんたにはグロウディア様の王位のために死んでもらう。風使いセティの血もここまでさ!!!」

キイナの中から何かが溢れ出してくる………。

キイナは心の中で泣いていた。

ミラージュはキイナが小さい頃から一緒にいてくれた大切な友達。

一番最初に出来た友達だった。

もともとキイナは恥ずかしがり屋で人見知りが激しい子で、友達が異様に少なかった。

そんなキイナに初めて友達が出来た。

それがミラージュだった。

ミラージュのおかげで人見知りもしなくなり、友達も一気に増えたのだった。

そのミラージュが死んだ――――――――――――――

キイナは泣かずにはいられなかった。

けど、涙は見せられない………

「キイナ王女………」

ヨウスケはそんなキイナを気遣う。

テンルウは聞いていて面白くなかった。

「お前…………気に入らないな………」

テンルウがバルムンクの柄に手をかける。

「待って!!!…………テンルウ王子…………先にプロシードへ行って下さい」

「キイナ、お前………」

「こいつの落とし前は私がつける!!!風使いセティの末裔として……こいつを許さない!!!」

「キイナ王女…………」

「…………………」

テンルウはしばし考えこんだ……。

「一人じゃ危険だろ……ヨウスケはここに残れ。俺一人でプロシードに行く!!」

「わかりました。テンルウ様……お気をつけて………」

「王子……王女のブラン……お返しするわ……やっぱり貴方が乗ったほうが一番良い……」

キイナはテンルウの顔を見ることなくそう言う。

「わかった………」

テンルウはブランの背に乗り換え、一人プロシード城に向かった。

「行かせないよ!!!」

シャネルはテンルウに槍を投げつけようとした。




「エルウインド!!!」




それをキイナが止めた。

「シャネル………お前だけは………絶対に許さない………!!!!」

「フォルセティを持たないお前に何が出来る!!!」

シャネルは指を鳴らし、シャネル隊に合図を送った。

シャネル隊は一斉にキイナに襲いかかってくる。




「トールハンマー!!!!」




ヨウスケのトールハンマーがシャネル隊を襲った。

「今のキイナ王女にフォルセティがなくても今の僕にはトールハンマーがある!!!」

「くっ……魔法騎士トードの末裔だったか?!!」

キイナはそんな暇を与えることなく魔法を繰り出す!!




「エルウインド!!」




その声は悲しみが入り混じっていた………。





テンルウは一人、プロシードに向かった。

プロシードには守りの兵士が一人もいなかった。

この光景を……これと同じ光景をテンルウは何処かで見た。




一度陥落したナディアである…………




そこでテンルウはシオンと出会った。

そこから運命が始まった………。

しかし、今のテンルウにはそんな思い出に浸っている場合ではなかった。

嫌な予感が走る。

「カリーナ王妃………無事でいてくれよ………」

だがテンルウの嫌な予感は的中してしまった。




プロシードの王の間は血の匂いが充満していた。

その中に………カリーナ王妃もいた。

だが、カリーナはまだ息をしていたのである。

「カリーナ王妃!!」

テンルウはカリーナに走り寄った。

「テンルウ………王子……?」

「そうです!!もうすぐキイナも来ます、だから………」

「テンルウ王子………私はもう助からないでしょう………お願いがあります……玉座の後ろにフォルセティが眠っています……それをキイナに渡してください…」

カリーナは玉座を指差していた手をゆっくり下ろした。

そのまま冷たくなっていくカリーナの身体……。

テンルウはこの感じを知っていた。

人の死とは…………

こう言うものだと言う事を…………








キイナは苦戦していた。

シャネル隊はあるだけの兵力を全てキイナに向けていた。

その中にはまだ見習の天馬騎士もいた。

ヨウスケもキイナもだんだん疲れが見え始めてきた。

その時である。



「キイナ!!!」



テンルウが戻ってきたのである。

その手には一冊の魔道書があった。

シャネルはそのことに気付いていない。

「キイナ、受け取れ!!!」

テンルウはその魔道書をキイナに投げつけた。

キイナはそれを上手くキャッチする。

キイナはその魔道書を見た。

「これは……………ありがとう、テンルウ王子!!!」

キイナはその魔道書に見覚えがあった。

「フォルセティ………」

その言葉を聞いてシャネルは動揺する。

「しまった………!!!」

キイナは魔道書を広げた。

<遥かなる風………神の吐息よ…………その眠りし力を……今ここに解放せよ!!>




キイナの右手が天に向けて掲げられた。




フォルセティ!!!




力ある言葉と共に、風は渦巻き、一点に集中する。

その狙いは…………シャネル!!!




緑色の風がシャネルを覆い、シャネルを襲った。

シャネルはそのまま天馬と共に地にふしたのであった。

その様子をシャネル隊は見ていた。

シャネルがいなくなった事を知ると、一目散に退却していった。

「これが………フォルセティの風………」

「すごい…………」

ヨウスケはその様子を見て感動してしまった。

「ふぅ…………」

少し疲れたのかその場に座りこむキイナ。

「キイナ………すまない……間に合わなかった」

テンルウの言葉を予想していたのか、キイナは笑っていた。

「いいよ……王子のせいじゃないもん……」

「キイナ王女………」

ヨウスケはそんなキイナを見て抱きしめた。

「ヨウスケ……?」

「強がらないで下さい……哀しい時は泣けば良いじゃありませんか……今は…思いっきり泣いてもいいんです……強がっている貴方を見ると……僕はとてもつらいんです………」

その言葉を聞いたキイナは今まで我慢していたものが溢れて来た。

一気に涙がこぼれ出す。

「…………ひっく…………うぇ…………」

「キイナ王女……」

「わぁああああああああああああああああああああああああん!!!」

キイナはヨウスケの胸の中で声をあげて泣いた。

「キイナ…………」

「うわぁぁぁぁ……あああああああぁ………ミラージュ……お母さまぁぁ!!!!」




キイナは自分の大切な人の死を涙でいたんだのだった………

ヨウスケはそんなキイナを強く抱きしめた………







作者:やっと来た、ヨウスケ×キイナ!!!って感じ?

シオン:この作者は………

作者:いいじゃないかぁん、楽しみは取っておくものよ★

シオン:兄弟が傍にいた頃は楽しみは先に先に……でしたのにね……

作者;だって………のろのろとやってたらおかず取られちゃうんだもん。

シオン:取られたら取り返す………すごい姉弟ですわ……

作者:だってねぇ………

神・カンピナス:ゲスト出演!!!

大天使・紫闇:カンピナス様、もう少し落ちついて……

シオン:あ………大天使……

神・カンピナス:そうじゃ、作者。もう迎えは終わったぞ

大天使・紫闇:しばらくは天界で住む事になりますでしょうね。時が来るまで…

作者;あ、ご苦労様でした~……

神・カンピナス:じゃ、さらばじゃ~~~~~~~!!

作者:…………あれ?誰か足りない…………?……まぁいいか………




キャラクター紹介



神・カンピナス

神的存在論からゲスト出演。

ここにはある人を迎えに来たらしい………

なんでも時がたつのを待たせるためとか………



大天使・紫闇

このお方も神的存在論からゲスト出演。

いつも神様の傍にいる。

神に恋心を抱いてるらしいけど………それっていいのかなぁ……?



(注釈→神的存在論とは)

このユグドラシル聖戦記と同様に、読者が登場人物の設定を決定するという読者参加型小説。
神や魔王が創造した「白き者」「黒き者」たちが繰り広げるストーリー。
現在は作者の方が音信不通状態になっているため、自然消滅。
私の周辺では紫闇様や黒霊様、キイナ様なども参加されていました。
Foreigners nightに登場する倉凪梢、榊原幻の原型となるキャラがこの小説に存在していました。
(世界観は全くの別物です)