ユグドラシル聖戦記

テンルウ達がエスティマ城についた時、すでにそこは死体の山で溢れかえっていた。

血の匂いが当たりに充満している。

そこに………彼はいた………

返り血を浴びて…………



第25章 血塗れた戦士の願い



ショウは彼に見覚えがあった。

自分よりもかなり優秀で、自分よりも主君を敬愛していた………

トンベリを………

「ショウか………」

「トンベリ………」

トンベリは振り返らず後ろにいる人物を当てた。

ショウにとってその光景は信じられないものだった。

自分の父親を手にかけたトンベリの姿が信じられなかった。

「ショウ。俺はこの先にあるランクル城で待っている。そこで………俺はお前達と戦う」

「トンベリ…………」

「俺は例え人が変わろうともシオン様には逆らえない………」

そう言ってトンベリはエスティマ城から姿を消した………





「トンベリが?!」

「うん………」

ショウの話を聞いたヨウスケとキラは気を落とした顔をしていた。

「もう……あいつを止められる人は誰もいない……」

「どうして………こんなことになっちゃったんだろうな?」

「私達、皆仲が良かったのにね………」

そう、ショウ・キラ・ヨウスケ・トンベリは小さい頃良く遊んだ仲である。

神樹ユグドラシルの前で………

そこにはいつもシオンがいた。

いつも遠めで見て笑っていた。

そんな日々が続くと三人は考えていた。

しかし、現実はそうではない。

もう、この隙間を埋められるものは何一つなかったのだ。

「ショウ………話がある」

そこで、テンルウがオグマトイナルナを連れて来てショウを呼んだ。

「はい……なんでしょうか?」

「お前………ここからアリストに行ってくれないか?」

「え?……今なんて………」

「ここからアリストに行ってくれって言ったんだ。子供達を連れて……」

「それって………」

その言葉の意味はここにいる全員にわかったことだった。

「テンルウ様………」

「嫌な予感がする。それに今、この子達を失うわけにはいかない。アリスト王国ならきっとこの子達を守っていける。だから………」

「私に落ち延びろと………そうおっしゃるんですか?」

「ああ………」

ショウはうつむき震えていた。

「ショウ……………」

「…………わかりました………行きます………」

「ショウ、すまないな。無理なことを頼んでしまって……」

「いえ………ですが……約束してください。シオン様と一緒に帰ってくるって……迎えに来てくださると約束してくださらないのなら、私は行きません」

「わかった……約束するよ。シオンと二人で必ず帰ってくる………!!」

オグマとイナルナをショウに預けたテンルウ。

ショウは彼等を馬に乗せた。

「ショウ。悪いがブランも連れてってくれないか?」

「ブランを……ですか?」

「ああ。俺はやっぱり地べたに足がついてたほうが落ちつくからな」

「…………わかりました」

ショウは子供達を連れて、アリスト王国へと旅立っていったのだった。



「テンルウ様………」

「おそらく………あの約束………果たせないだろうな………」

「どうしてそう思うんですか?」

「直感…………かな?」

そこへオスカーがテンルウのところに来たのである。

「テンルウ様、ランクル城に行けばグランビアはもうすぐです」

オスカーはテンルウにそう言った。

「オスカー。お前……どう思う?そのトンベリっていうやつの行動……」

「トンベリは決して姉上の命に逆らいません。それは小さい頃からずっとそうでした。姉上に対しての忠誠心はおそらくこの中にいる誰よりも強いです。ショウ以上に姉上の事を慕っていましたから……」

「そうか………ならそいつに聞いた方が早いな………」

テンルウ達は一路、ランクル城へと向かった。





一方ランクル城では――――――――――――――

「トンベリ………もう一度思い直して………そんなの間違ってる」

「アオイ………でも、俺はどうしてもシオン様を裏切れないんだ……」

「トンベリ…………」

一人泣くアオイの頬をそっと撫でるトンベリ。

「お前はレンスターへ行け」

「トンベリ……」

「お前はシオン様と約束しただろ?」

「うん………」

アオイは泣きながら頷く。

「でも………もう少し傍にいさせて………一緒にいたいの………」

「アオイ………………」

トンベリはそんなアオイをぎゅっと抱きしめるのだった……。






アティルト砂漠はおそろいほどの熱さを放っていた。

皆、暑さでへばっている。

「暑い…………」

汗をだくだく流しながら、皆は口をそろえてそう言う。

「つい昨日まで雪国にいましたもんね………」

「雪国の次は砂漠………勘弁して欲しい………」

「その次は亜熱帯だったりして………」

などと愚痴を言いながらランクル城へ足を進める軍の皆さん。

そこで、カンピナスはモニカにこう言ったのだ。

「モニカ、お前……ここからレンスターへ帰れ」

「ちょ………カンピナス!!何考えてるのよ?!!」

「知ってるんだぞ?お前………妊娠してるだろ?」

「……………」

モニカは実は妊娠していた。もうすでに五ヶ月になっている。

ちなみに二人目の子供である。

一人目の子供のアミナルは城に置いてきているのである。

「でも………」

「良いから、ここからレンスターに帰れ。後で必ず行くから………な?」

「絶対?」

「絶対」

「…………わかった………じゃあ私、ここから帰るね………絶対に帰ってきてね……愛してるよ………カンピナス………」

モニカはカンピナスにキスをした後、一人レンスターの方角へ馬を走らせたのだった。

「良かったのか?獅子王………」

「ああ、仕方ないだろ?俺もこの先に嫌な気配を感じる………今のモニカにはこの先一緒に連れていけない」

「…………どうやら……他の皆もそう感じてるようだな」

その気配が一体なんなのか………

それは今は誰一人知る由もなかったのである。







2時間後――――――――――――――

テンルウ達は砂に足を取られつつも、ランクル城についた。

そこは静かに風を受けていた。

だが、テンルウ達が来ていると言う事を知ると、そこは兵士で群がったのである。

「トンベリ………やっぱり戦う気なのか………?」

オスカーの最後の望みはその兵士を見て一気に崩れ落ちた。

「テンルウ兄様、私が先陣を切ります」

フェアレディがテンルウにそう申し出た。

「フェアレディ?」

「私も少しはお役に立たなきゃ………私にはレーヴァテインがあります。だから……大丈夫です!!」

フェアレディはそう言ってテンルウの言葉に聞かずに突っ込んでいった。

「フェアレディ?!!」

フェアレディは走りながらレーヴァテインの力を解放する。

「レーヴァテインよ、その秘められし力を解放せよ!!!」

レーヴァテインから紅蓮の炎が生まれてくる。

「敵軍が責めてきたぞ!!全員戦闘配置に就け!!」

だが、その判断はすでに遅かった。




「ゴッドバード!!!」




フェアレディの言葉と共にレーヴァテインから炎の鳥が現れたのだった。

その炎の鳥が兵士達を跡形もなく燃やし尽くしてしまったのだ。

後に残ったのは風に吹かれその周りをうめ尽くす人の焼ける匂い………

「…………皮膚が焼けるときの匂いって臭いのよね………」

そうしみじみ思うフェアレディだった。




テンルウ達はランクル城内へ乗りこんだ。

王の間を目指すのは簡単だった。

それはさっきのフェアレディの攻撃で全員死んでしまったからである(みもフタもないな……)

王の間には、スワンチカを持っているトンベリが一人立っていた。

「貴方がシオン様の………そしてアリストの王太子テンルウ様ですね?」

「そうだ………」

テンルウはバルムンクを片手にトンベリの前に立ちはだかる。

「お手合わせ………願えますか?」

「わかった………」

そして、互いに武器を構えた。

「トンベリ!!」

ヨウスケとキラはその様子を見ている。

「トンベリ、お願い止めて!!」

キラの言葉もトンベリには届かない。

そして、二人が動いたのである。

トンベリはマーシナリー。

マーシナリーは斧を剣のように扱うことが出来る。

聖斧スワンチカと神剣バルムンクが交錯する。

「流石剣聖オード………力押しの私の力に耐えるとは………」

「俺にはシオンから分けてもらった力があるからな……」

「そうでしたね………巫女の力を貴方は手に入れたのだから……耐えられて当然ですね………!!!」

互いに力が腕にこもる。

しかし、斧と剣とでは斧の方が部が悪いのである。

一気にトンベリはテンルウに押されてしまう。

「ぐっ………」

それでも耐えるトンベリ………

そしてその時だった………



「やめてぇぇぇぇぇぇ!!!」



「お願い!!やめて!!!」

そう叫んだのはアオイだった。

「アオイ!!!レンスターへ行けと言った筈だ!!!」

「テンルウ王子、お願いです!!やめてください!!!」

泣きながらテンルウにすがるアオイ。

テンルウはそのアオイの気持ちがわかったのか、バルムンクを鞘に収める。

「何故だ!!私と戦え!!」

「悪いが………俺にはお前は斬れねえよ…………人を愛する気持ちは同じだからな」

テンルウはそう言った。

その言葉がトンベリの心に刺さっていく。

「……………」

トンベリもスワンチカをしまった。

「聞きたいことがある」

「シオン様の……………事ですね………」

トンベリの言葉に頷くテンルウ。

そこにはキラ達が全員集っていた。

「非常に申し上げにくいのですが……………今のシオン様は別人としか言いようがありません」

「そんな………トンベリ、嘘だろ?」

オスカーは取り乱す。

「オスカー様、落ちついてください。実はあの日………シオン様が自ら私のところへ来た後………私達はシオン様をかくまっていたんです」

アオイがトンベリの言いたかったことを変わりに言った。

「11ヶ月間………丁度……今から三ヶ月前まで………シオン様は私達と一緒にいたんです。ですが………私達がシオン様をかくまっていると言う事をバサラに嗅ぎつけられてしまったんです。シオン様は………バサラによって連れて行かれてしまいました……それからです………シオン様が急に人が変わってしまいました………」

「国王陛下を………手にかけたんです」

その言葉に皆が動揺する。

聖女である人間が自分の家族を殺すと言う事は有り得ないのである。

たとえどんなに憎くても………

「シオン様は自分のご意志で王位につきました。そして事もあろうにローバー、アリスト、メルセデスを滅ぼして吸収し、帝国を作り上げてしまった……その時一度お会いしたんですけど………あれは…………何か操られているような……そんな雰囲気がしたんです」

「そして………シオン様を連れていった後……バサラは亡くなりました」

「今、シオン様の傍にいるのは…………今でも信じられないんですけど……」

オスカーは怒りの表情でトンベリを問い詰めた。

「今、姉上の傍にいるのは誰なんだ?!!教えてくれ、トンベリ!!!」

そう言われ、トンベリとアオイは顔を見合わせる。

「それは……………」




テンルウ:また意味深なところで話を終わらせる………

コウヘイ:困ったものだな……

作者;悪かったね!!

テンルウ:全くだ………

作者:だから、こうでもしないと面白くないでしょう?!!

テンルウ:このまま行くと………30章越えるぞ?

作者:う…………

コウヘイ:ま、俺達の知ったことじゃないけどな………

作者;……………(激汗)