ユグドラシル聖戦記

ランクル城でトンベリと出会ったテンルウ達。

そこで彼の口から聞き捨てならない話を聞かされていた。

「今、姉上の傍にいるのは誰なんだ?!!教えてくれ、トンベリ!!!」

そう言われ、トンベリとアオイは顔を見合わせる。

「それは……………」




第26章 光のプリンセスと闇のプリンセス




「オペル様なんです」

「え?!!」

トンベリの言葉を聞いてオスカー・キラ・ヨウスケ・テンルウが驚いた。

「なぁ……オペルって……シオンの元婚約者だろ?死んだって言ってなかったか?」

テンルウがトンベリに聞き返した。

「ええ。あの時、確かにオペル様はなくなりました。そのご遺体もちゃんと見ました。けど………現にオペル様は今シオン様と一緒にいます」

「まさか………影武者でも立てたのかしら……?」

「でも……確かにあの『オペル様』の心臓は止まっていたよ。身体だって冷たくなってたし………わざわざ墓を掘り起こしたとも思えないけど……」

「影武者を立ててまで私達の目を欺く理由は………何だったんでしょう?」

その場にいた全員が考え込んでしまった。

そして一番最初に口を開いたのはテンルウだった。

「とりあえず……本人に逢ってみればわかることだろ?」

「まぁ………それはそうだな………」

そうコウヘイに話しかけるテンルウ。

「なら私も同行します」

トンベリがそう言った。

「いいのか?」

「ええ……私はシオン様に元のシオン様に戻ってもらいたい………」

その願いはこの場にいる全員に染み渡っていった。

「わかった……じゃあ、一緒に来てくれ」

「はい」

「私は子供達を連れてレンスターに行きます」

「おい、アオイ………だったっけ?俺の嫁がレンスターの王女のモニカなんだ。俺の名前を使ってモニカを尋ねてくれ。きっと力になってくれる」

「はい、ありがとうございます。獅子王………」

アオイはカンピナスにお礼を言った。

普通ならそこまで親切にはしないはずである。

何せメルセデスを滅ぼしたのはこのトンベリなのだから………

「頼むぞ、アオイ。シオン様との約束………必ず果たせよ」

「はい!!」

「おい………シオンとの約束って………?」

「え?あ………申し訳ありませんけど……企業秘密なんです」

「企業って…………」

「シオン様に口止めされてるんです。いくらテンルウ様でも申し上げられません」

「そうか………なら、聞かないよ。気をつけていけよ。アオイ」

「お心遣い、ありがとうございます。テンルウ様」





こうしてアオイはレンスターへ、他のメンバーはグランビアへと向かった。





「オペル………お前、私に内緒で一体何を企んでる?」

「いや………ただ……邪魔な芽を取り除こうとしているだけだよ」

「……………ならいいが………オペル………前にも言ったが……」

「わかってるよ………テンルウ王子には手を出すな…………だろ?なんであんな男を放って置くんだ?」

「別に………お前には関係ないことよ」

「ふぅん…………」

「それと………もうすぐトンベリがこっちへ来るよ………誰かと一緒みたいだけど………」

「アオイじゃないのか?あの二人、ものすごく仲が良いからな………」

「とりあえず、君はここにいてくれ。私が出迎えるよ」

「ええ…………そうしてちょうだい…………」







オスカーは久しぶりにグランビアの大地に足を踏み入れた。

あれから4年の歳月が流れている。

懐かしいユグドラシルの樹………

何もかもが思い出だった。

そう思いながら、グランビア城は見えてきたのである。

スコローンもグランビアの大地が懐かしいのか、軽く嘶く。

オスカーはそんなスコローンの頭を撫でた………。

だが、そこで待っていたのは……あまりにも残酷な悲劇であった………




「トンベリ………テンルウ王子をしとめそこねたな……」

「オペル様………私ははなっからテンルウ王子を殺す気などなかった」

「何………?」

そう、トンベリの後ろにはテンルウがいたのだった。

「テンルウ王子………!!」

「シオンは何処だ?」

「シオンだと………?貴様……少し馴れ馴れしいぞ。俺のシオンを呼び捨てするとは………」

オペルの眼に嫉妬の色が見える。

「シオンは俺の妻だ。呼び捨てて何が悪い?」

テンルウは自信のある顔でオペルに言った。

「貴様に…………シオンの何がわかるんだ………!!!」

「わかるさ。あいつの性格も、あいつの物の考え方も………そして……あいつの強いところも脆いところも知っている。シオンの事で知らないところなんて何一つないぜ」

「ほう…………よくもまぁ………そんなことを抜け抜けと………」

その時、オペルはテンルウの左の薬指にはまっている指輪を見た。

それはあの時………シオンに再会したあの時………シオンがはめていた指輪と同じ物だった。

それを見たオペルは内心怒り狂う。

「まさかぽっと出の王子様に私がずっと狙っていた女を横取りされるとは思わなかったよ………だが、今のシオンは私の手もとにある。貴様には二度と渡さない!!」

と……その時だった……



「何か企んでると思ったら…………お前……そんなことを考えていたの?」



その時出て来た者を見て、全員が目を疑った。

「久しぶりですわ。テンルウ様…………」




シオンだったのである。




だが、その目つきは鋭く、氷のような眼だった。

シオンは目つきを変えずににっこり笑った。

「まさか………私のためにここまで?嬉しい限りですわ………」

「シオン、城でおとなしくしてろって………」

「うるさいわよ?お前に指図されるいわれはない」

オペルに対して冷たく言い放つシオン。

テンルウはそんなシオンを見て違和感を覚えた。

「テンルウ様……どうしたの?私に逢えてうれしくないの?」

「………………お前………誰だ?」



ピクッ



シオンがその言葉に微かに反応した。

「お前は誰だって聞いてるんだよ?!」

「誰って………見ればわかるじゃない?それともしばらく逢ってなくて顔を忘れたの?」

「…………聖女はな…………葬式と心を許した人間以外の目の前で……」

その時、テンルウの声のボリュームが上がった。



「黒い服は絶対に着ないんだよ!!」



その言葉に微かに動揺するシオン。

「聖女は神に使える最高位の職業……黒は不浄なものとして葬式以外では着ることを禁じられている。それは同じ神の使いとして巫女・僧侶も同じこと……この上ないほど神を信仰しているシオンが普段に人前で黒い服なんて絶対に身に着けないんだよ!!!そう………キレてない時のシオンはな……」

「………………ふふふふふふふ…………」

突然、シオンが笑い出した………

「シオンか………そういえばこの身体の主がそんな名前だったね……」

「何………?!」

「あの女………最後まで悪あがきをしていったわ………私の魂をこの身体に封印してね…………」

シオンは不適な笑みを浮かべた。

「シオンという女はもはや存在しない……存在しているのはわらわ………暗黒神ロプトウスの化身………マイラよ………」

オペルもテンルウに対して不適な笑みを浮かべる。

「そう言う事だ………言っただろ?二度と渡さないって………」

だがその言葉は最後まで発せられなかった。

「マ…………マイラ………貴様…………」

オペルの身体から腕が生えた………

マイラがオペルの左胸の部分を右腕で貫いたのだ。

「勘違いするな。わらわの心はあの人だけのもの………お前はただの駒にしか過ぎぬ………」

「くっ…………」

「愚かな男………わらわの手の平で踊っていたと言う事も知らずに……自分の愛する者の命すら奪って……………挙句の果てに……自分の兄の息子まで人質にとって………ご苦労なことね」

その氷のような眼は決して笑うことはなかった。

そのまま、オペルは絶命した。

「あの世で仲良くすることね……………」

それを見てテンルウ達は怒りを露わにする。

「貴様……人の命をなんだと思ってやがる!!」

コウヘイがマイラに怒鳴りつける。

「人の命……?わらわにしてみれば人の命など虫けらのようなもの……わらわの生贄としか思えぬ」

「なっ…………!!!」

「あの人意外は虫けら………そう………妹のヘイムすらも………」

「!!!!」

「ヘイムだって……!」

「あの娘から何も聞いていないのか?あの娘はヘイムの生まれ変わり……わらわにしてみれば一番気に入らない存在が………」

その時、マイラの表情が鬼のように変化した。

「まぁ……良い………わらわはあの人さえいれば良いのだから………」

そう言ってマイラはテンルウに近づいた。

そしてテンルウの頬に手を触れる。

「俺に触るな!!」

テンルウがマイラの手を払い除けようとしたその時である……

「目覚めなさい…………」

<呼ぶな!!俺の名を呼ぶな!!>

その声がテンルウの中で聞こえた。

(なんだ……?この声………!!!)

テンルウは思わず耳を塞ぐ。

だがマイラはその耳元で呟いた。





「オード……………」





そう呼ばれた瞬間、テンルウの中で何かが目覚めたのである。

<知ってる…………俺は知ってる………この女を………マイラを………!!!>

頭が割れそうに痛む。

テンルウは頭を抱え込んだ。

「テンルウ!!大丈夫か?!!」

「テンルウ様!!!!」

だが、その痛みはすぐに止んだ………

「……………」

黙りこむテンルウ。

それを見てキラやオスカー達は心配した。

「テンルウ様………?」

「……………マイラ………お遊びが過ぎるぞ」

その言葉を聞いてマイラは笑った。

「オード…………やっと逢えた………500年間………ずっと待っていたわ…・」

「………マイラ………」

テンルウはマイラを抱きしめた。

そのテンルウの行動は回りの者を驚かせた。

「テ……テンルウ様?!!」

「テンルウ、お前……何考えてる!!!」

コウヘイ達にしてみればテンルウの今の行動は信じがたいものである。

相手はシオンを殺し、身体を乗っ取った暗黒神の化身である。

「…………だがマイラ………俺はお前を愛することはできない」

「………!!!」

その瞬間、テンルウはバルムンクでマイラを攻撃した。

それを察知できなかったとはいえ腕に傷を負うマイラ。

「全く………おかげで前世の記憶が蘇ってしまった………」

「テンルウ………お前………何言ってるんだ?」

「俺はオードの生まれ変わり………」

「テンルウ……?」

「どうやらヘイムの生まれ変わりのシオンと出会うのは運命だったみたいだな。まさか後世で結ばれるとは思わなかったが…………」

その言葉の意味がこの場にいた全員にはわからなかった。

「ヘイムはお前を封印した後、俺から姿を消した。マイラ……お前のことを思ってな」

「ふん…………今更………」

「俺は辛かった………ヘイムがいなくなったからな………俺はアイツを心のそこから愛していたから………」

「そんなお前に………私の気持ちなど………わかるはずな………」

その時、急にマイラが頭を抱え出した。

「ぐっ………まさか………まだいたのか!!!死にぞこないめ……!!!」

苦しむマイラ。

それを見てテンルウは何かを感じ取った。

「…………シオン………?」

<テンル……さま…………お願い………殺して…………この身体と共に……マイラを………>

<おのれ………残留思念か………!!!>

「シオン!!!」

その時一瞬だけ、シオンの顔に戻ったのである。

「ごめんなさい………貴方に何も言わず………逝ってしまった私を許して……」

シオンはその時泣いていたのである。

キラとユーリはそれを見て泣いてしまっている。

「シオン様………」

「こうするしかなかったの………貴方達を失いたくなかったから………そして……目覚めてしまったのね………オードの記憶が………」

「シオン…………」

「もう………この意識も持たないわ………最後のお願いよ………この身体はすでにマイラと同化している……だから……この身体を壊して……そうすれば……マイラは永遠に目覚めることはない……」

「シオン様!!」

「姉上!!」

<皆に………ナーガ神のご加護がありますように…………>

そしてシオンの残留思念は消えていった………




テンルウに傍にいなかった間に起こった事を伝えて………





コウヘイ:おい……こう言う話の終り方やめろって!!!

作者;…………だって眠いもん………

テンルウ:おい………

作者:なんざましょ?

テンルウ;テンルウとしての意識はあるの?俺………

作者:あるから「シオン」って言ってるんじゃん

テンルウ:本当か?

作者;本当だって!!

テンルウ:で?次回は何故か1年前の話に戻るんだろ?

作者:そう。シオンサイドのお話を書くの。何がどうなってこうなっちゃったのかわからないでしょ?

テンルウ:ふぅ…………ん……一応考えてるんだ………

作者:当たり前でしょうが!!!