ユグドラシル聖戦記

シオンの記憶が………

最後の記憶がテンルウのもとに届いた。

その記憶がシオンの死を物語っている………

もうこの世にはいない最愛の妻のため………

テンルウはマイラを倒す決意をした。




第28章 闇、制する時…




「マイラ………俺は絶対にお前を許さない」

テンルウの怒りが表情になって露わになる。

「よくもシオン様を…………」

その場にいた者全員がマイラに怒りを向け、武器を構える。

「ふっ………いいでしょう………まず先に貴様等から我が神の生贄として捧げてやるわ!!」

マイラが右手を天に翳した。

闇がマイラの手に集まっていく。

「死霊の叫びと怨みを聞き、その心を壊すが良い!!」

マイラの両手から死霊が生み出される。

その死霊は叫びを上げながらテンルウ達を包みこんだ。

その叫びは頭の奥まで届き、痛みを走らせる。

全員が耳を塞ぎその声をさえぎろうとする。

しかし、指の隙間からその叫び声は微かに脳を刺激する。

そして、キラが動いた。

「イチイバルよ、闇を貫けぇ!!!」

キラは出来る限りの力をイチイバルに込めてマイラに向けて矢を射った。

マイラはそれを左手で受けとめた。

矢がマイラの左手に突き刺さり貫通している。

その矢を抜き、そこから流れ出す血を眺めている。

「こしゃくな…………」

マイラはキラに威圧をかけ、キラを睨みつけた。

その瞬間………キラが頭を抱えて叫び出した。

「いやああああああああああああああ!!!」

その威圧はキラを恐怖の底へと陥れたのである。

「キラ!!」

オスカーがキラを落ちつかせようとキラの身体を抱き寄せる。

「いや!!いやあああああああああああああああああああああ!!!!」

完全に錯乱状態のキラ。

恐ろしい何かを見せられている………そんな感じがした。

キラの表情は恐怖で歪んでいる。

コウヘイはユーリの元に行った。

「ユーリ。お前は子供たちとマグでトラキアへ行け!!」

「でも………」

「ここで俺達が死んだら何にもならないだろ?!!行け!!!」

「コウヘイ………」

「後で俺もトラキアに帰るから…………先に帰っててくれ………」

コウヘイは切なそうな顔でユーリを見る。

ユーリはその表情でコウヘイの考えていることがわかった。

「わかった…………そうする………」

「これ、預かっててくれ」

コウヘイはグングニルをユーリに渡した。

「コウヘイ…………」

「早く行け!!」

マグはユーリを乗せ、トラキアの地へと飛び立っていった。

「ユーリ………ごめん………」

コウヘイは腰に刺していた銀の剣を抜いた。

「テンルウ、俺も付き合うよ。旅は道連れって言うだろ?」

「いいのか?」

「ああ。俺も………こいつのことがメチャクチャ気に入らない!!!」

コウヘイはそう言ってマイラを睨みつける。

「俺もすごく気に入らない!!」

カンピナスも馬から降りてコウヘイと同じ方向を見た。




オスカーはキイナの所へ錯乱しているキラを連れてきた。

「キイナ、キラを連れてセンティアへ帰ってくれ」

「オスカー王子?!何を………」

「ヨウスケも一緒にね……」

「オスカー王子!!」

「ここで皆死ぬことなんてない、光は受け継がれているんだ。風も……雷鳴も受け継がなくちゃいけない!!だから………キラを連れてセンティアへ逃げてくれ!!」

オスカーの眼には光りがあった。

その光りは失われようとしている。

キイナは少しの間考えこんだ………

「わかった。私はこれからアティルト砂漠を越えてセンティアに帰ります!!」

「ヨウスケ!!ヨウスケ!!」

オスカーはヨウスケの名を呼ぶ。

「オスカー様」

「気をつけて行くんだよ!!絶対に死んじゃ駄目だからね!!!」

「わかりました………オスカー様、ご武運を!!」

ヨウスケとキイナはマイラのつけた追っ手をなぎ倒しながらセンティアへキラを連れてセンティアへと向かった。




テンルウとコウヘイ、そしてカンピナスはマイラの前に立っている。

マイラは自分のものにならないテンルウも……

そしてそれに荷担する人間が気に入らなかった。

「気に入らぬ…………何故そこまでヘイムにこだわる?!ヘイムの何処が良いのだ!!!」

「俺は別にヘイムにこだわっちゃいねえよ」

「ならば何故…………」

「俺はグランビア王国の王女として生まれてきた『シオン・ティルト・フィン・グランビア』という人間に惚れてるんだ。あいつがヘイムの生まれ変わりだとかそうでないとかは関係ない。おれはアイツが良いんだよ」

テンルウはシオンから貰ったアミュレットを握り締めてそういった。

その時そのアミュレットは微かに熱を発していた。

「……………ふっ…………どちらにしろ結果は同じであろう?!オードはヘイムを選んだ………双子として産まれ、大差のなかったわらわを選ばずに………」

「俺に言わせてみればそっちの方がくだらないな。振られたから世界を闇に返す?お前がそう言う女だったからオードもお前を選ばなかったんだろ?!俺としてもおまえみたいな女、お断りだな」

テンルウははっきりとマイラに言った。

それがマイラのプライドに触る。

「……………どうせわらわのものにならないのなら…………お前を殺す………その方がわらわの為になる………!!!」

「結局自分のことしか考えてないじゃねえか」

テンルウに駄目押しでそう言われたマイラの怒りは頂点に達する。

「うるさい!!!貴様に何がわかる!!!」

「わからないさ、そしてオードもわからない。俺やオードにしてみれば大切な人を奪われたことだけは確かだ。二度もな………俺としてもそれが許せない」

バルムンクを構え、テンルウは気を集中する。

コウヘイもカンピナスもテンルウに並び剣を構えた。

「地獄であの女とおち逢うが良いさ……………ロプト帝国は復活する!!!お前達の血肉でな…………」

マイラが呪文の詠唱に入った。

呪文を完成させまいとテンルウ達は彼女に斬りかかる。

オスカーはその後で光魔法を詠唱している。

ミホは上空で手槍を構えている。

テンルウの合図と共にミホ・オスカー・ルカが動いた。




「ダイムサンダ!!!」



「オーラ!!」




ルカの雷魔法とオスカーの光魔法はマイラに向けて放たれるが、結界でさえぎられてしまう。

「わらわに魔法は効かない。何故なら………この身体の主の力はわらわの力として結界が身を守ってくれるからだ!!だから………こう言う事も出来る!!!」

マイラが唱えていた呪文はとても聞き覚えのある呪文だった。




「リザイア!!!」




マイラが唱えたのは光魔法だったのである。

その威力は絶大で全員の身体から体力が奪われていく。

「ひ………光魔法まで………!!!」

「暗黒神のくせに………!!!」

思わずそう言う言葉が出る。

「取られたら取り返すまで!!!!」

カンピナスがよろつきながらもマイラに斬りかかった。




「太陽剣!!!!」




ミストルティンがマイラの腕を傷つける。

だがその傷はかすり傷程度にしかならなかった。

しかし、太陽剣はそれだけの傷でも体力をしっかりと奪っていた。

「こしゃくな…………」

マイラの手のひらがカンピナスに向けられた。




「ファイアー!!」




マイラの生み出した炎はミストルティンによって遮られる。

しかし、その力はまだ残っており、その残りの炎がカンピナスを襲った。

「ぐあぁ!!」

思わず地に倒れこむ。

その隙にコウヘイがマイラの懐に飛び込んできて彼女を斬りつけた。

すぐさま結界を張るが結界を張るタイミングが遅く、彼女は左腕を失った。

「私の腕…………」

斬れた左腕から流れる血を彼女はじっと見つめる。

「貴様………よくも………!!!!」

マイラはコウヘイを思いきり睨みつけた。

その瞬間、彼の身体は金縛りにあったように動かなくなった。

<か………体が動かない………!!!>

必死に動こうと四肢に神経を集中させるが、どうしても動かない。

そして………マイラの右手が動いた。




その場にいたもの全員の視線がコウヘイに向いた。

コウヘイの左胸にはマイラの右腕がめり込んでいる。

彼女は彼の心臓を軽く握った。

「ぐあぁっ!!」

「苦しいか……?だが………その苦しみもすぐに終わる!!!」

その後の彼女の行動はその場の人間を凍りつかせた。





ブチッ




鈍い音と共に彼女は右手をコウヘイの左胸から抜いた。

その血まみれの手にはビクビクと鼓動をうつ赤い物体が握られている。

コウヘイはその瞬間に倒れこんだ。




「お兄様ぁぁぁぁぁ!!!!」




ミホの叫びがグランビアの空に響いた。

テンルウはコウヘイ近寄り彼の身体を起こした。

彼の命はすでに絶っていた。

ミホはすぐさま地上へ降りて、コウヘイの身体をぎゅっと抱きしめた。

「お兄様ぁぁぁ………お兄様ぁぁぁ!!!」

泣き崩れるミホ。

マイラはその赤い物体をペロッと舐めた。

「うふふふふふふふふ……………」

「てめぇ…………!!!」

「なかなか熱いわね………彼の心臓は…………」

その瞬間、彼は信じられない光景を見た。

コウヘイの身体から引き千切った心臓を食ったのである。

「な……………!!!」

ルカとミホはそれを見て吐き気を催す。

他のメンバーの顔色は一気に青ざめる。

「どっか狂ってんじゃねえのか……?!!」

「ユーリに………ユーリになんて言えば良いの………?お兄様………」

ミホはショックのあまりに気絶してしまった。

マルスはそんなミホを抱きかかえる。

「テンルウ、悪いけど彼女をアリストに連れて帰るよ!!」

「ああ、そうしてくれ!!」

「ご武運を祈るよ!!」

マルスはテンルウにそう言い残し、ミホのペガサスに乗ってアリストへと向かった。

「コウヘイの仇…………討たせてもらう……!!!」

「できるかしら?非力なお前達に………何も出来ないお前達に暗黒神と同化したわらわが倒せるとでも思っているのか?」

マイラは勝ち誇ったようにテンルウ達を見下した。

その時、テンルウの横をすりぬけて何かが飛んできたのである。

それはマイラの頬をかすめた。

トンベリのスワンチカである。

「…………もはやこれまで……………いくら姿がシオン様でも………私はお前を殺す!!!」

「お前の父のようにか?」

「何故それを………!!!」

「わらわが何も知らないとでも思っていたのか?この親殺しが………!!!」

皮肉を込めてマイラはトンベリにそう言い放った。

「貴様のような………頭の線が何本か切れてるような女に言われたくない!!!」

トンベリはそう言うとマイラに向かって走り出した。

「愚かな………黙ってわらわの言う通りに動いていれば殺さずにすんだものを……!!!」

マイラはトンベリに向かってある魔法を唱えた。

「死ね…………出来そこないが…………!!!」




「ロプトウス」




その言葉が彼を死へと誘う。

トンベリの目の前には黒くて馬鹿でかい龍が姿を現した。

「あ………暗黒神…………!!!」

恐怖が彼を襲う。

だがそれに負けず、トンベリはマイラの放った魔法にスワンチカを投げた。

「ワレノニエトナレ………セイフスワンチカヲモツモノヨ…………」

その言葉が終わった時………

トンベリは暗黒神に身体を噛みつかれていた。




「ぐあああああああああああああああああああ!!!」




激しい痛みが彼の体を襲った。

噛まれた部分から血が噴出してくる。

そして彼は倒れた。




ルカはすかさず回復魔法をかけようと試みるが、すでに遅かった。




「ちくしょう…………やっぱり………ナーガがないと勝てないのか……!!!」

カンピナスの言葉にテンルウははっとした。

<まさか………シオンのやつ………イナルナに全てを託したんじゃ………?>

もしそうならば、ここで戦う必要性はなくなる。

<いや………ヤツを葬れる別の方法があるはずだ……!!!>

だが、それは思いつかない。

テンルウは最後の作戦に出る。

「ルカ、アリストに行ってくれ」

「テンルウ様?!」

「子供たちのこと頼む………!!!」

「まさか…………」

ルカの予想は当たった。

「カンピナス…………オスカー………俺に命をくれ」

「……………」

「……………もちろんです」

「オスカー様、私もお供します」

クリシュナがオスカーにそう言う。

「ルカ………早く行け………!!!!」

「…………テンルウ様…………」

「ショウにさ、謝っておいてくれよ。変わりにさ…………」

「……………わかりました…………」

ルカはその言葉を聞き、グランビアの地を去った。

「覚悟が出来たようね」

マイラは相変わらず不適な笑みを見せる。

「死ぬ気でやってやるさ………最後まで………!!!!」





だが、その後………

誰一人、グランビアから帰ってきたものはいなかったという…………





第1部  完





作者:第一部完結です!!

テンルウ:…………しりきれとんぼな終わり方を………

作者:マイラに勝てないのわかってるんだからその様子を描写する必要などない!!!

シオン:ただ単に面倒臭かっただけじゃ………?

テンルウ:お前もそう思うか?シオン

シオン:ひしひしと伝わってきてます。

コウヘイ:あれ………むちゃくちゃ痛いぞ……?

テンルウ:そりゃ痛いだろうな?心臓握られたあげく引き千切られるんだから。

シオン:しかも食われてるし………

コウヘイ:ユーリ…………帰れなくてごめん………

テンルウ:シオン………マイラを闇に送れなくてごめん………

シオン:だって私、テンルウ様がマイラを倒せるなんて、そんなこと全く期待してなかったもん★

テンルウ:……………シオン…………(泣)

コウヘイ:王女…………最近ものの言い方きつくないか?テンルウに対して……

シオン:いつもこんなものですけど?

テンルウ:………………(完全に落ちこんでる)

コウヘイ:というわけで…………

シオン:さよなら~★(妙ににこやか)

テンルウ:……………どうせ俺は…………




オグマ:親父たちの時代は終わったぜ!!

イナルナ:次回からは私達が主役よ!!!

テンルウ:俺達の時代って………ちょっと待ておい!!

オグマ:すでに親父が主役を張る時代は終わったんだ、次回からは俺たちTwinsが主役だぜ!!親父は引っ込んでろよ!!

テンルウ:なっ………俺はそんな風にお前を育てた覚えはないぞ!!

イナルナ:育てられてないし………

シオン:二人とも立派になって………ねぇ?

イナルナ:全ては母上の仇を討つために頑張って修行しましたもの……ね?オグマ★

オグマ:そうそう、死んだ母上の為に今まで頑張って修行したんだもんな

テンルウ:……………………俺は?

イナルナ:あら?父上、いらっしゃったの?(確信犯)

テンルウ:………………