ユグドラシル聖戦記

次の日の朝、近くの村に宿を取り、休息を取ったシオン達はその足で、ローバー王国にへと足を踏み入れた。
その頃、竜騎士・コウヘイは恋人のユーリをディアマンテから救い出すために、ローバー王国のリべロ城の城下町に来ていたのだった・・・




第6章 ユーリとコウヘイ




ユーリはナディアから連れ去られてからは一言も口を利かず、ディアマンテはユーリのそっけなさに手を焼いていた。
なぁ、ユーリ。いいかげん諦めろよ。誰も助けに来ちゃくれないんだぜ?」
「・・・・・・」
それでもユーリは一言も話そうとはしない。
「やれやれ・・・」
ディアマンテもユーリをなだめるのに疲れたらしく、大きなため息をつく。
「ディアマンテ様ぁ、大変ですぅ~!!!」
リベロの兵士があわててディアマンテのいる王室に現れた。
「どうした?!」
「ナディア城が落とされ、ディンゴ指揮官が戦死しました」
「何?!」
その言葉にはさすがのユーリも驚いている。
「今、ユグドラシルは大半の軍を引き連れてアリストへ凱旋しているはずだ!!残ってるのは戦力にすらならない見習いの騎士たちばかりだ。そんな状態のユグドラシルにナディアが取り戻せるはずがないだろう!!で、誰がナディアを・・・」
確かに、今のユグドラシルの軍ではナディアを取り返すことなど不可能に近かった。
「それがたった一人の女にディンゴ隊は全滅したそうです」
「ぜ、全滅ぅ?!!しかもたった一人の女にか?!」
「はい・・・」
「で、誰なんだ?その女は・・・」
ユーリもこの話はしっかりと聞いている。
「かろうじて生き延びた奴の話ですと・・・いや、そいつはさっきそこで死んだんですけど、どうやらグランビアの王女の仕業とか・・・」
「グランビアの王女って、あの司祭よりお堅い巫女で有名な【シオン】っていう女のことか?!」



<シオン様が・・・ナディアを取り戻してくださった・・・!?>



ユーリは心の奥でナディアが取り戻されたと言う事を喜んだ。
「はい・・・」
「確か巫女って・・・フッ、おもしれえじゃねえか。どうせその女のことだ、ユーリを取り戻しにここに来るだろう。その女の力、俺がもらってよりいっそう強くしてもらおうじゃねえか」
「・・・!!」
ユーリにはディアマンテのやろうとしていることがわかった。
それだけは絶対に避けなきゃならない。
「ディアマンテ、シオン様を傷つけるような事は、私が許しませんわ!!」
ユーリはディアマンテを睨みつけて怒鳴った。
「あぁ?ユーリ、やっと話してくれたと思ったら第一声がそれか?そりゃないぜ」
「シオン様はこの先、ユグドラシル王国の全てを担う大事な御方、それだけは絶対に許しませんから・・・!!!」
「ユーリ、お前は自分の立場というものがわかってねえな。だいたい、お前の城に乗り込んだのはお前を連れてくるためだけじゃなく、ユグドラシル王国の侵略が目的で乗りこんだんだ。・・・少しお灸を据えてやらないといけねえな。おい!!ユーリを牢へいれろ!!間違っても変なまねはするんじゃねえぞ!!」
「はい」
リベロの兵士はユーリの両腕を縛り上げ、牢へとつれていこうとする。
「ディアマンテ、絶対に・・・絶対に許さないから・・・!!!」
ユーリはその一言を残し、地下牢へ通じる廊下へとつれていかれた。




数時間後、シオン達はローバーの国境を越え、ランチアという街へ来ていた。
「本当は急がなきゃならないんだけど・・・きちんとした装備を整えていないの。ここで装備を整えてから、出発しましょう。ユーリが殺されると言う事はまずありえないことだから、安心しても大丈夫・・・」
シオンはそう全員に提案し、一同は10時を目処に街門のところで待ち合わせという風にし、別々に行動を起こした。
テンルウは鍛冶屋に行き、バルムンクの修理に行ったは良いが、時間がかかるらしくしばらくの間、暇を潰すのに鍛冶屋から出ていた。
何歩か歩いているうちに、占い屋の前に立ち尽くしているシオンを見かけた。
彼女の言っていた装備というのは回復の杖だったらしくリライブの杖を持っていていた。その他に見慣れない杖も一本持っていた。
入るのか入らないのか迷っているらしくずっとそこに立ち尽くしている。
「おい、そこの占い屋の前に立ち尽くしてるグランビアの王女!!」
テンルウが声をかけるとビックリしたのか身体が少し動き、そしてすぐにテンルウのいる方向を見た。
「ビックリした・・・テンルウ王子、ここで私を王女と呼ぶのは止めてください!!」
「事実を言ったまでだ」
「そういう自分は王子様じゃないですか!!」
「別に俺は王子と言われても困らない」
「私は困るんです!!」
「何で困るんだ?」
そう質問されたとたんにシオンはうつむいてしまった。
「それは・・・黙って城を出てしまったからです。それと・・・もうひとつは・・・」
「もう一つは?」
「・・・貴方に言う必要はないですわ」
「か、可愛くねえ・・・!!」
テンルウの一言にちょっとだけムッとした顔をしたシオンだが、それ以上言う事はなかった。
「ところで・・・なんだってこんなとこに突っ立ってんだ?入るなら入れば良いじゃねぇか」
「私・・・占い・・・したことないんから・・・なんだか恥ずかしいんです」
その一言がツボに入ったのか、テンルウは急に大声で笑い出した。
「そ、そんなに笑うことないじゃないですか!!」
シオンの顔はりんごのように真っ赤になっている。
「占いしたことないっていう女、始めて見たぜ・・・くくくくくくくく・・・」
「そ・・・それは・・・私は巫女ですから、占いなんてしなくてもたいていの未来は自分で占えます!!自分で占うこともできないこともありますけど・・・」
「で?お姫さん、あんたここに何を占いに来たんだよ?」
少しうつむきながら顔を真っ赤にしてシオンが小さな声で話す。
「こ・・・」
「こ?」
テンルウはシオンの声があまりに小さくて聞きづらく聞き返した。
「・・・恋占い」
そしてテンルウは、また笑い出した。
「お前・・・恋占いしようと思ってここへ?・・・バカじゃねぇのか?」
テンルウは呆れた顔をして、シオンをけなす。
だが、シオンの表情は切なげではあったが瞳は真剣で少し涙が入り混じっていた。
「それは・・・私だって・・・恋の1つ二つくらい・・・したっていいじゃないですか。貴方は巫女の厳しさがわからないからそうやって笑ってられるんです!」
「俺は女じゃないし、巫女じゃないからそんなもん、わかるわけないだろ」
「巫女は、特にヘイムの血を引いた巫女は、許されたもの以外と結婚はおろか、恋をすることすら、禁じられているんです。そのせいで、魔力がピークの時よりも遥かに衰えてしまうから・・・。そうでないと・・・純潔を奪われようものなら、巫女としては生きていけなくなります。それくらい意思が強くないと巫女なんて勤まらないんです。占い屋を見ていたのだって・・・他の女の子が羨ましくて・・・だから・・・」
シオンの表情がだんだん暗くなっていく。
「・・・すまなかったな。笑ったりして・・・」
「いいえ、こればかりは仕方ないですから・・・」
そう言うとシオンは笑顔をテンルウに見せる。
その笑顔を見たテンルウは何故かドキドキしている。
しかも直視できずに目をそらしている。
<・・・なんで、あいつの笑顔を見ると胸がドキドキするんだ?!>




不思議な気持ちにちょっとだけ戸惑うテンルウだった―――――




その頃、リベロ城ではランチアにシオン達が訪れていると言う情報を聞き、出陣の準備をしていた。
「ディアマンテ様、雇ってもらいたいと言う竜騎士が来てるんですが・・・」
「あぁ?竜騎士?いいぜ、ここまで通しな」
「はい!!」
そう言って兵士が連れてきた竜騎士は紛れもないコウヘイだった。
「お前、名前は?」
「・・・シヴァ」
ディアマンテは彼の名を聞いて安心した。
「なんだ・・・どっかの勘当食らって城にいれなくなった馬鹿な王子かと思ったぜ。ひやひやしたぞ・・・」
コウヘイは内心「貴様だけは俺が絶対殺す!!」と思っていた。
「なら、早速仕事してもらう。地下牢に一人の女がいるからそいつの見張りをしもらう。俺達は他にやることがあるんでな」
「わかった」
それから、一人の兵士に地下牢に案内してもらう途中に話を聞いた。
「おい。ディアマンテ王子は何しに行くんだ?」
「なんでもランチアにユグドラシルのグランビア王女が来てるらしく、その女を攫いに行きましたよ」
「・・・お前達の王子はハーレムでも作るつもりか?」
そのコウヘイの答えに兵士は笑う。
「違いますよ~。グランビアの王女シオンはおそらく大陸一の巫女でしょうね。シオンの力が欲しくて攫いに行くらしいんですよ。でもその王女、結構な美人らしいって噂だから、どうなるかはわかりませんけどねぇ」
「・・・ふぅ~ん・・・」
そうこうしているうちに地下牢へついた二人。
「では、このあとをよろしくお願いします」
「ああ、わかった・・・」
辺りを見まわして誰もいないことを確認したコウヘイは一つ一つ牢の中を見ていった。
その中の一つほとんど真ん中の位置に一人の女が縮こまって隅っこに座りこんでいる。
「ユーリ・・・ユーリ!」
ユーリは自分を呼ぶ声が何処となく誰かに似てると思い、声の主の方を見た。
「コウヘイ?!」
「ユーリ!」
二人は鉄格子越しで再会を果たすことが出来た。
ユーリにとってはコウヘイに逢うのは2年振りになる。
「コウヘイの馬鹿ぇ・・・心配したんだから・・・逢えなくてずっと寂しかったんだからぁ・・・」
そう言ってユーリは泣き出してしまう。
「ゴメン、今まで逢いに行けなくて・・・」
「どうやってここへ?」
「・・・ここの城の主に雇われた」
ユーリはコウヘイの一言に驚きを隠せなかった。
「お願い、コウヘイ。シオン様を助けて!ディアマンテはシオン様の巫女特有の能力を利用して力を手に入れてユグドラシルを制圧する気なの。このままじゃシオン様が危ないの!!シオン様は私の為にナディアも取り戻してくださった。コウヘイ、お願い・・・シオン様を・・・」
「わかった、だが先にお前をここから連れ出す方が先だ。外にマグを待たせてある。それに俺にはダインの加護とこのグングニルがあるから誰にも負けない!!お前を必ず守って見せる!!」
「コウヘイ・・・」
鉄格子越しに互いの手を握り合う恋人達は、次なる試練へと足を踏み入れる。
「まずは、この鉄格子を何とかしなきゃな・・・」
「それなら兄さん、あっちの机に鍵が入ってるからそれを使うと良いよ」
向かいの牢に入っている青年がそういった。
「お前は・・・?」
「俺かい?俺のことはどうだって良いよ。それよりも早くその子を連れて逃げた方が良いよ。ディアマンテは好色だからその子も危なくなる」
「お礼にそこから出してやるよ」
「いや、良いよ。俺はここの方が落ちつくからね」
「そうか、すまない」
そう言ってコウヘイは机に合った鍵を取り出し、ユーリの牢を開けた―――――――




そして、二人の脱出劇は幕を開けたのである。




作者:いやぁ、長いねぇ・・・(しみじみ)
コウヘイ:まったくだ・・・
ユーリ:そういえば・・・今日はシオン様との対談じゃないのね
コウヘイ:そういつもいつも同じ奴ばかり書いてられないよなぁ・・・
作者:そう言うこと
ユーリ:それで次回は?
作者:次回は脱出劇とシオンの謎をちょっと明かそうかと。
ユーリ:シオン様の謎かぁ・・・何か素敵♪