ユグドラシル聖戦記

グランビアで起きた悲劇から17年……

ユグドラシルとの戦いで陥落したアリストは真っ先にマイラの統治する帝国に吸収され、ひどい圧制に苦しめられてきた。

だがそんな中、二人の男の子と女の子がひっそりと身を隠して、このアリストの大地で育った。

その二人は光を受け継いでいた。




第29章 受け継がれた遺志




その男の子と女の子の名はオグマとイナルナ。

かつてのアリスト王国の王子テンルウとグランビア王国の王女シオンの間に生まれた双子の兄妹だった。

オグマとイナルナはそれぞれ父と母の力と意思をしっかりと継いでいた。

それというのも亡きシオン王女の臣下の一人、ショウの働きがあってこそであった。

ショウはテンルウの命により、このアリストの地へ二人を連れて逃れてきた。

オグマとイナルナがテンルウの子供であったからこそ、このアリストの大地で無事に二人を育ててこれたというのもある。

それでも、男手一つでここまで二人を立派に育ててきたのは紛れもなくショウであった。

このアリストの大地では、農作物がそんなに取れる場所ではない。

ほとんどの者が傭兵として生活をしていた国である。

そんな中、二人に決してひもじい思いをさせたことなどただの1度もなかった。

そして、子供たちも大きくなってきた頃には自分達で生計を立て、このあまりもう作物の育たない大地で野菜を作って他の人に分けてやるなど、王家の人間として、上に立つ者としての資格は十分に得ていた。




だが、帝国もそんな王子と王女を黙って見過ごすわけにはいかなかった。

今、このアリストの国を支配しているのはグロリアの王、エデン。

あの、トンベリの弟であった。

トンベリ亡き今はこのエデンがアリストを支配していた。

アリストには四つの城が存在する。

まずは王国の柱となっているセフィーロ。

その親族が住んでいたプレサージュ。

オグマとイナルナが隠れ住んでいるウイングロード。

そして、エデンが居座っているウィンダム。

17年間オグマとイナルナが隠れ住んでいたと言う事がばれてなかったが、ついにその事実を帝国に突き止められてしまった。

しかも、今はショウが外出してしまっている。

今このウイングロードにいるのはオグマとイナルナ。そしてルサールカとクリシュナの子アールマティ。そして、ミホとマルスの子であるハトホルだけがいた。

そして、ルサールカもこの地にいる。

「どうしたらいいの?ショウ様がいらっしゃらないのに……」

「攻撃を仕掛けましょう!!ショウ様の帰りを待っている間に、他の村の人たちが危ないもの!!!」

「けど………」

「アールマティは俺達を心配して言ってくれてるんだぞ?ハトホル。それにきっとショウが念を押して行ったんだと思う。そうでなかったらアールマティが一番最初にあいつ等にかかって行っただろうし……俺はともかく、イナルナはこの世界で一番大事な存在だからな」

「オグマ、私のことなら大丈夫よ。だって母上が私を守ってくれているもの」

イナルナは母から受け継いだロッドを握り締めた。

「お前はいいよな……母上に色んなもの貰ってるんだもんな………」

「あら、その代わり父上には何も貰ってないわよ?父上の銀の大剣持ってるのオグマだし、私じゃ使えないもんね」

イナルナはあっけらかんと言った。

「でもさ。お前、父上と母上のこと覚えてるか?」

「覚えてるよ。とくに父上のことはさ……」

「母上のことは?」

「微かだけど覚えてる。そう言うオグマは?」

「俺は母上のことははっきり覚えてるぞ。もちろん父上の事だってさ」

「私の覚えてる母上はとても優しい人だった……」

「優しかったな。母上は………」

イナルナは急にため息をついた。

「父上はさ………私……あまり良い印象ないんだけど………」

「俺も………」

そう言って二人は暖炉の上に乗っている人形の方に目をやった。

『あれ、ずっと手放さなかったもんね………』

二人の声がシンクロする。

それは少しボロボロになったユーリお手製のシオン人形だった。


《テンルウ様、好き好きぃん★》


未だに起動しているところがすごい…………。

「ショウが言ってたけど、これユーリさんが作ったんだってさ……」

「父上は母上しか眼中になかったって言ってたな……ショウが……」

そうして二人は大きなため息をついた。

「父上って本当に強い人だったのかな………」

「さぁ?」

二人に父への疑問がまた一つ生まれた………。





ウイングロードへの出撃を命令されたエデンの重臣セクレトは20人の騎士を連れて進軍した。

その様子をある二人がじっと見ていたのだった。

「お兄様……動きましたわ……」

「ああ………俺達もウイングロードに行くぞ」

その二人はセクレト達に気付かれないように、後を追った。




ちょうどその頃………。

天馬騎士と一緒にペガサスに乗った魔道士がアリストの国境に入っていた。

「ねぇ……まだなのぉ?」

天馬騎士は魔道士にそう聞いた。

「あともうちょっとなんだけど……」

「もうちょっとって……もうアリスト公国に入っちゃったじゃない!!!」

「だってお前、アリストに用があるんだろ?」

「ええ、ちょっとした人たちに逢うのにね」

「ふぅん……」

「そう言うカナメこそ一体何処に行くつもりよ?」

カナメと呼ばれた少年がちょっと躊躇しながら行った。

「俺は……マンスターへちょっと……」

「マンスターって……ここからもっと南にあるレンスター王国とトラキア王国の国境近くにある場所じゃないの!!!」

「そこに妹がいるんだよ」

カナメはちょっとだけ淋しそうにそう言った。

「妹?」

天馬騎士はカナメに聞き返した。

「俺の父さんは妹が産まれてからすぐに死んじゃって……母さんが今まで育ててくれたんだけど……その母さんも10年前に俺達を置いてどっかに行っちゃった」

「ひどい親がいたもんねぇ~……」

「仕方ないさ。父さんはあのシオン王女の臣下だったし……母さんはセンティアの女王だしさ……母さんなりに何か大事なことがあったんだと思う」

「へぇ~……カナメって結構偉い人なんだね」

「そういうフィアナはどうなのさ?」

カナメはフィアナにそう聞いた。

「私はね、ウイングロードに用事があるの」

「ウイングロードに?なんで?」

「知らないの?シオン王女とテンルウ王子の子供がそこに隠れ住んでいるって言う噂………」

「………それ本当か?!」

カナメはフィアナに真実かどうかを聞いた。

「あくまで噂だけどね………でもこの噂、確実なルートから手に入れた情報だから確かだと思うわ」

「お前、そこに行ってどうするんだ?」

「解放軍に加えてもらおうと思ってさ」

「解放軍?」

「カナメ、本当にシオン王女の臣下の息子なの?」

カナメは情報を全くと言って良いほど持ってはいなかった。

「解放軍はイナルナ王女を中心としたアリストの軍隊よ。人数は少ないらしいけど……」

「……………」

カナメはそれを聞いていてもたってもいられなくなった。

「フィアナ、予定変更だ。俺も一緒に行くよ」

「え?」

「イナルナ王女と逢うのも……久しぶりだしな……」




 




イナルナ達は出撃準備を終えた。

それぞれ親から受け継いだ武器を手に持って……。

「イナルナ、行くぞ」

「ええ、わかってるわ。オグマ………」

「やっと……俺たちの戦いが始まったんだ……」

「父上と母上の仇を討つ日が来たのね……」

イナルナはオグマの腕を軽く叩く。

「頑張ろう、オグマ。回復と援護はまかせて!!」

「ああ、信頼してるよ。イナルナ」

「私もね!!」




アールマティはルサールカのいる修道院へ行っていた。

「母さん、行ってくるわ。イナルナ様とオグマ様と共に……」

「アールマティ、これを持っていきなさい」

ルカはアールマティに一冊の魔道書を渡した。

「これは……?」

「私の愛用していたダイムサンダの魔道書よ。持っていきなさい」

「……ありがとう、母さん!!!」

「しっかりお二方を守るのよ」

「はい!!!」




ハトホルは剣の手入れをしている。

それは父が残していった剣、ファルシオンだった。

ミホはハトホルが3歳の時に病死し、マルスはあのグランビアで起こった悲劇の時以来行方知れず。

ハトホルもショウによって育てられた子供である。

そして、ハトホルはファルシオンを構えた。

「父さん、母さん……私、行くわ………そして守り抜いてみせる……お二人を…」

ハトホルは今まで育ってきたこの部屋に別れを告げた。




そして

新たな戦いが始まろうとしていた。





作者:第二部のはじまり~★

イナルナ:けど、この時点で第一部が終わってません。(実話)

オグマ:いいかげんさがひしひしと伝わってくるぜ。

作者:いいかげん、いいかげんって言うなぁ!!

イナルナ:確かに今のうちですよね?こう言う風に集中できるのは……

作者:……………ふっ…………

オグマ:日頃の行いが悪いからだろ?

作者:あんたに言われたくないわ

イナルナ:さぁ、これからどうなるんでしょうね?

オグマ:さぁ?

カナメ:ちょっと、俺を忘れないで下さいよ!!!

イナルナ:あ……カナメ………

カナメ:作者、次の回で僕はイナルナ様と再会できるんでしょうね?!

作者:………………それじゃあ、また次回~★

カナメ:逃げるな!!このクズ作者ぁ!!!




キャラクター紹介




オグマ  21歳

クラス:ソードファイター

第2部主人公。でも指揮官ではない。

ショウに剣術をしこまれてここまで成長した。

性格はテンルウとさして変わらないけど、テンルウより物事に冷たい。




イナルナ  21歳

クラス:シャーマン

第2部ヒロイン。解放軍指揮官。

ショウに戦術の立て方を教わって育ってきた。

戦術の立て方はシオンより上手くはないがなかなかのもの。

性格は明るくて穏やか。




アールマティ  17歳

クラス:マージ

クリシュナとルサールカの子供。

ルカに育てられているのでオグマとイナルナへの忠誠心はものすごい。




ハトホル   17歳

クラス:ソードファイター

マルスとミホの子供。

ソードファイターなんだけど天馬の扱い方も一級品。




カナメ   16歳

クラス:マージ

ヨウスケとキイナの子供。

トールハンマーをすでに継承している。

妹を捜して、旅に出たらしい。(国をほったらかしにして(笑))




フィアナ  16歳

クラス:ペガサスナイト

センティア王国の天馬騎士。

なにやら出生に秘密がありそう………