ユグドラシル聖戦記

アリスト王国をユグドラシル帝国から解放したイナルナ達。

彼女達は一路、アティルト砂漠にあるマイラ神殿および、レンスターへと足を向ける。

一方、レンスターではキイナとアミナルの他にもレンスター解放戦争に手を貸していた人物がいた。




第32章 赤い竜騎士と黒騎士




イナルナは昨日辺りからひしひしと何かを感じ取っていた。

「どうした?」

オグマはそんなイナルナを見て不思議に思う。

オグマにはイナルナほどの感の鋭さを持っていない。

この双子の唯一の性質の違いである。

イナルナは年を増すごとに母親に似てきているのである。

一方、オグマのほうは父親そっくりである。

「いや………でも、久しぶりにユウキに逢えるような気がして……………」

「お前さ………あの方向オンチの何処が良いんだよ?」

「そんな言い方しないでよ!!確かに方向オンチだけどユウキは素敵な人よ」

ユウキ…………

彼はあのコウヘイとユーリの子供であり、イナルナとオグマの幼馴染みであった。

イナルナはそのユウキに片思いをしていた。

ここらへんは母・シオンとは大違いである。

「ユウキ…………早く逢いたいよ……………」

そのイナルナの思いは神に通じるのである。




「アミナル王女、吉報よ。イナルナ王女達がこっちへ向かってきているわ」

「本当ですか?キイナ様」

アミナルは挙兵はしたものの、苦戦を強いられていた。

「こんなときにカーディフがいてくれたら……………」

そう。レンスターは今、アミナルただ一人の手で守られていた。

弟のカーディフは数年前に旅に出てしまい、不在であった。

「アミナル王女、大丈夫よ。イナルナ達がこっちに向かってきているし、もうすぐトラキアからユウキが来るって連絡があったわ」

「ユウキが………?また道に迷ってるんじゃないの……………?」

「………………………否定は出来ないわね………………………」

などと言いながら、それでも二人はイナルナ達とユウキが来るのを待つのだった。

「キイナ様、イナルナ様の軍がマイラ神殿に向かっているとのことです」

キイナの連れの天馬騎士がキイナにイナルナ軍の進路情報を伝えに来た。

「ありがとう、フィオレ」

「キイナ様、申し訳ありません。他にフィアナとフィリアがいれば私達の力を発揮でき、キイナ様のお役に立てれたものを………フィリアがいち早く国を出てしまったせいで…………」

「いいのよ、フィオレ」

フィオレと呼ばれたこの天馬騎士はイナルナ軍の天馬騎士フィアナにそっくりであった。




イナルナ達は今、砂漠を越えていた。

この砂漠を西に向かえば、マイラ神殿が見えるのである。

イナルナ達の目的はマイラ神殿に納められている神剣バルムンクの回収である。

これがあればオグマの力は一気に上昇する。

「でも、どうしてバルムンクだけマイラ神殿に収められているのかしら?」

「いえ、あそこには魔剣ミストルティンも収められています」

「魔剣ミストルティンって…………確か獅子王カンピナスの家系の宝剣でしたよね?」

カナメはイナルナにそう聞いた。

「そうよ。ミストルティンは黒騎士へズルの血に連なる者が使える伝説の剣………アミナル王女が使えたら良いのだけど…………」

「アミナル王女って…………獅子王の子供だったんですか?」

「…………………………………」

カナメの一言に一同が黙りこんでしまった。

「お前…………母親から何を聞いてるんだ?」

オグマは完全に呆れ顔でカナメを見ている。

イナルナは頭を抱えている。

「カナメ、アミナル王女はレンスターのモニカ王女とメルセデスのカンピナス王の娘さんよ?」

フィアナの答えにカナメはポンっと手を叩く。

「そうか、そうなんだぁ……………」

その時イナルナとオグマは耳元でひそひそと話をしていた。

「キイナ………一体彼に何を教えて育てたのかしら?」

「ものすごく天然だぞ?コイツ………」

「世間知らずとも言うわ……………」




そう言いながら彼らは西へと進路を取る。




レンスター国境近くに一つの城があった。

その国は「クラウン」ユグドラシル王国が昔管理していた城である。

だが、今はある男がこの城に住みついていた。

その城には一人の少女がいた…………。

「ルウラン、お前は踊り子だ。客を喜ばせることが仕事だ!!その客になんて事しやがる?!!!」

「私は…………娼婦なんかじゃないわ!!!こんなこと真っぴらごめんよ!!!」

「てめえ、まだ逆らうか?!!大した色気もないくせに客引きも出来ないでどうする!!」

その男はルウランと呼ばれる少女に手を上げる。

ルウランは頬を殴られる。

そして、彼女はその男の方をキッと睨んだ。

「何だ?その反抗的な目は?お前が死にかけてたところを助けてやったのは何処のどいつだ?!俺だろ?どこかの王族の娘らしいが俺の手にかかったらそうはいかねえぜ!」

「くっ…………………」

ルウランは歯を食いしばり、怒りを押さえた。

この上ないほどの怒りが彼女を襲う。

だが彼女はそれに絶えようとしていた。

「良いか?今度ヘマしたらただじゃすまないからな」

一室に一人残されるルウラン。

とめどなく涙がこぼれ出す。

「もう嫌……………こんな生活…………お母様……ルウランはどうすれば良いのですか?」

ルウランは額のサークレットを外しそれをぎゅっと握り締める。

「………………………」

そしてルウランは、この城から逃げる決意をする。




黒い鎧に身を纏った少年が馬に乗って砂漠を渡っていた。

「アミナル姉さん、もう少しの間だけ待っててくれ………もうすぐそっちに行くから…………」

そう。彼は紛れもなくアミナルの弟のカーディフであった。

彼はレンスターへ帰る途中だった。

「ミストルティンは見つからないし…………レンスターでは挙兵しちゃうし…………なんだか踏んだり蹴ったりだな…………」

などと独り言を漏らしながら彼は馬の脚を進める。

そこへ…………なにやら遠くで何かがあったらしい。男達の声が飛び交っていた。

カーディフは何が怒っているのかはわからなかったが何となく気になって仕方がなかった。彼はそっちの方へ馬を走らせたのである。




彼が見た光景は一人の黒髪の女の子が大勢の傭兵に追われていたのである。

見た目は踊り子であろう。彼女は剣を持っていたが持っていたのは細身の剣。

しかも女の手で扱っているため殺傷能力がない。

彼女は必死になってカーディフのいる方向に走ってきている。

そして彼女はカーディフを見たのである。

「騎士様、お願いです力を貸してください」

彼女はカーディフに向かってそう叫んだ。

カーディフは女一人に大勢の男がよってたかっているのを見て何となく腹立たしかった。

「わかった、いいだろう」

「ありがとう」

彼女は満面な笑みを浮かべ、後ろを振り返った。

そして事もあろうに剣を構えたのである。

「おい!!お前は俺の後ろへ下がっていろ、危ないぞ?!」

だが彼女の耳にその言葉は届かない。

彼女は大きく深呼吸をし、敵に向かって走り出した。

「な………………」

その時彼が見たのは…………次々と敵をなぎ倒していく踊り子の姿だった。




「月光剣!!!」




その必殺剣はアリスト王国に伝わる秘剣・月光剣であった。

月光剣は力技。

とても女である彼女が使えるような必殺剣ではない。

だがカーディフは彼女の左腕にあるアザを見たのである。

<あれは…………剣聖オードの聖痕………………>

だが、彼女に見とれている間に他の傭兵が彼に襲いかかる。

「誰かは知らねえが、ルウランに肩を持つヤツは生かしておけんな」

「ほう…………彼女は『ルウラン』って言うのか……………だがな、女一人に男大勢は感心できないな」

「ほざけ!!!」

カーディフはすぐさま馬から下り、銀の剣を構えた。

「メルセデス王家の力…………見せてやる!!!」




そしてカーディフとルウランはたった二人で20人の傭兵を葬ったのであった。




「ありがとうございます、騎士様。おかげで助かりました」

「いや、良いよルウラン」

「どうして私の名を?」

ルウランは首をかしげてその事を聞いた。

「あいつらが君をそう呼んでいたからさ。ところで君はアリスト王国の王族なのかい?」

「え…………?いえ………私は……………両親の顔を知りません」

「そうなのか?」

「母は私が生まれてすぐに死にました。父が誰かはわかりません」

「でも…………君の使っていた月光剣はアリスト王国の必殺剣だぞ?それにその左腕のアザは……………」

そう言いかけた時、カーディフは彼女の左胸にもう一つのアザを見た。

「君……………もしかして…………ユグドラシル帝国の人間じゃ…………」

「え?ああ…………そういえば私を育ててくれたおば様がそんなことを言ってたような…………?」

ルウランは少し考えこむような素振りをする。

「ところでルウラン、君はこの先行くところがあるのか?」

「いえ…………私には行くところがありません」

「よかったら俺と一緒にこないか?俺はレンスター王国の王子カーディフ。カーディフ・カリス・フィン・リデアだ」

カーディフの言葉を聞いてルウランはものすごく驚いた表情を見せる。

「まぁ、なら貴方があのメルセデスの『獅子王』のご子息ですの?」

「そう言う事になるな。俺は親父の顔を見たことはないけど…………」

「私は…………ルウラン・アンジェ・グランビア……………」

ルウランが自分の名前を口にしたとき、カーディフは彼女の母親と父親を確信したのである。




ちょうどその頃、赤い鎧を身に纏った竜騎士が空中でウロウロしていた。

「あれ…………?どっちに行けばいいんだっけ?」

彼こそ、トラキアの王子・ユウキであった。

彼は幼馴染みのイナルナとアミナルが挙兵したと聞いて真っ先に飛んできたのである。

だが、彼は筋金入りの方向オンチで、レンスターから約15キロ離れたアルスターでウロウロしていたのであった。

「つ~か………ここ何処だ?わかるか?マグ」

マグ…………

この竜はコウヘイの愛竜マグアナックだった。

飛竜の寿命は約200年。

マグは生まれてから3年後にコウヘイに引き取られ、愛竜としてコウヘイと一緒に育ってきた。そして17年前、彼はマグをユーリと共にトラキアに帰したまま2度と帰ってくることはなかった。

それから、マグのご主人は息子のユウキになったのだ。

しかし、マグは主人のいう事を聞いてここまで来たのだ。いまさらレンスターがどっちにあるかなどわかるはずもない。

「う~……………………どうしようか…………ん??」

その時ユウキは北の方角に集団を発見した。

ユウキの視力もコウヘイに似て非情に良い。

動物並みである(笑)

「あれは……………」

その集団を見た瞬間、ユウキの顔付きがガラッと変わる。

「マグ、あっちの方角に行くぞ!!」

マグは軽く嘶き、ユウキが示した方角へ飛んでいった。




それから二時間後のことである。




イナルナの予感が的中したのである。

イナルナ達の上空に一匹の飛竜が飛び立ったのである。

その飛竜は大きな風と共に、地上へ降りてくる。

「ユウキ!!!」

イナルナの眼がキラキラと輝く。

横でオグマは呆れた表情をする。

<イナルナのヤツ……あんな方向オンチの何処がいいんだ……?>

「イナルナ、無事だったのか?」

「ユウキ、貴方こそどうしてここへ??」

「どうせレンスターへ行こうとしたら道に迷ったんだろ?」

「う……………」

オグマのツッコミに反論できないユウキ。

事実そうだった………。

「マグ、貴方も元気だった?」

マグはイナルナのことを覚えているらしく喉を鳴らし、イナルナに頭を摺り寄せてきた。

「よしよし…………お疲れ様、マグ」

「ところで、お前ら何処に行くつもりだったんだ?」

「マイラ神殿です、ユウキ様」

ショウがユウキにそう言う。

「あ、ショウ………母さんがよろしく言ってたよ」

「今日はクスハ様と一緒ではないんですか?」

「クスハは今修道院で孤児になった子の保護に行っている、トラキアでも子供狩りが始まってしまった。何とか母さんが俺の親父の昔の臣下を説得しつづけたんだが………結局ユグドラシル帝国に身を委ねるヤツが大半でトラキアも今では国がバラバラの状態なんだ。まぁ……レンスターに手を出さずに援軍をしているって言うところだけは今でも変わらないが………今のレンスターはカーディフが席を外している。今のレンスターはかなり危険だ。アミナルはゲイボルグを持っているから何とか持ちこたえているが………それも時間の問題だ」

ユウキの話を聞いて、イナルナは考え込んだ。

そして一つの案がひらめいたのである。

「ねえ、ショウ。小人数でマイラ神殿へ行くのは危険かしら?」

「どういう事でしょう?」

「私とオグマだけでマイラ神殿に行こうと思うの。封印やらなにやらあってもオグマ一人じゃ何もできないし、はやくレンスターへ援軍をしたほうが良いと思うし………」

イナルナの考えを聞いてショウが考えこむ。

だがその考えは少し危険が蔓延っていた。

今のオグマはテンルウほど強くはないのである。

流星剣は使えても月光剣だけはマスターしていないのである。

ここらへんは昔のテンルウそっくりである。

「イナルナ、俺も一緒に行く」

「ユウキ………」

「こんなできの悪い兄貴と二人だけでマイラ神殿なんて行かせられない。イナルナを危険な目に合わせるだけだ」

「な………なんだとユウキ………もう一度言ってみやがれ…………!!!」

「お前と二人きりだと危ないって言ったんだ」

「ちょっと……ケンカしないでよ、二人とも………」

イナルナが二人の仲裁に入ろうとする。

だが………

「イナルナは黙ってろ!!!」

イナルナはオグマに思いっきり怒鳴られてしまった。

「そ………そんな言い方ないじゃないぃ…………」

イナルナはシオンとは違い、非常に泣き虫であった。

小さい頃そのせいで良く父親のテンルウだけではなく、育て親のショウを困らせたものである。

今も泣き出しそうな勢いである。

「オグマ……てめぇ………イナルナを泣かすんじゃねえよ………!!!」

「んだとユウキ………やる気か?」

「ふえぇ…………」

イナルナはついに泣き出してしまい、ショウに泣きすがっている。

「ふえぇ………オグマがいじめるぅぅぅ…………」

「よしよし………イナルナ様、泣かないで下さい………」

その様子を見てグルーヴィ、ノルン、カナメ、フィアナは唖然としている。

「あの兄弟、ホントに全く正反対だね」

「ああ、これがあのシオン王女の子供だと思うと、呆れてくるな」

「父さん………俺、本当にこの人方に仕えていいんでしょうか?」

こんなやりとりをしている暇などないはずなのにユウキとオグマの睨み合いは続くのであった………。




「カーディフ様、何処に行くんですか?」

「北にイナルナ王女達が来てるって話を聞いたから、そっちへ行こうと思ってるんだ」

「イナルナ王女…………?」

「ルウランは知らないのか?アリストの解放軍の話を…………」

その後、カーディフはルウランに事細かにアリストの解放軍の話をする。

ルウランは真剣にその話を耳に入れる。

「わかったか?」

「ええ………じゃあその人たちはユグドラシル帝国の圧制を食い止めるために戦争をするんですね。私もその解放軍に加えてもらいたい………この月光剣で………」




作者:第4話完成!!!!

イナルナ:何が完成よ、このダメ作者!!!

オグマ:これを書いてから3ヶ月以上何してやがった

ユウキ:どうせネタが浮かばなかったんだろ?

作者:甘いな…………どう書いていいのかわからなかっただけだ

イナルナ:威張って言うことなんですの?

オグマ:バカだ………





キャラクター紹介




カーディフ  16歳

クラス:フリーナイト

獅子王とモニカの間に生まれた剣豪。

姿は獅子王そっくり(笑)



ユウキ    20歳

クラス:ドラゴンナイト

コウヘイとユーリの間に生まれた長男。

イナルナとオグマとは幼馴染み。

どうやらイナルナに多少気があるらしい(爆)



ルウラン   17歳

クラス:ダンサー

月光剣が使えるという怪力少女(というのは嘘です)

何処となくある人に似ている。



アミナル   17歳

クラス:ランスナイト

カーディフのお姉さんでレンスター王国の王女。

モニカの後を継いでゲイボルグを継承している。