ユグドラシル聖戦記

バルムンクとミストルティンを取り戻し、暗黒教団幹部の一人であったウイングとナルツガイスを仲間に引き入れ、イナルナ・オグマ・ルウランの父テンルウとの再会を果たしたイナルナ達。

その足で、レンスターへと足を運ぶ一行。

そんな中、ある場所で不吉な影がうごめいていた……




第34章 風と聖なる弓




イナルナ達はあれから3時間後、別行動を取っていた本隊と合流を果たした。

ショウはイナルナの後に立っていた人物を見て顔色を変える。

「テ……テンルウ様!!!」

「……そのいつまで経っても声変わりしたんだかしてないんだかわかんないようなトーンの高い声は………ショウか??」

「テンルウ様……!!!ご無事だったのですか……?」

ショウは感激と驚きの感情が一気に襲いかかり、どうしたらいいのかわからずおどおどしている。

「無事じゃなかったら、ここにはいないだろ?」

テンルウは少々おどけた表情をしてそう言った。

「テンルウ様………僕は………僕は………!!!!」

「おい、泣くなよ。そんなとこ見られたら子供たちに示しがつかないだろ?」

「でも………僕は………凄く嬉しいんです………!!キイナとユーリが知ったらどんなに喜ぶことか………」

そう言ってショウはいままで溜めこんできた涙をボロボロと流す。

「キイナとユーリはまだ元気でやってるのか?」

「いえ、母はもう永くはありません。テンルウ王」

テンルウの言葉を否定したのは他でもない、ユウキだった。

「母はたった一人でトラキアを支え、今では病気に犯された身。もう死期も近づいていると母自身も気付いてるようです。あともって1ヶ月というところです」

ユウキの言葉を聞いて少し顔色を暗くしたテンルウ。

「そうか………他のメンバーは?」

「モニカも病死、マルス様とミホはイナルナ様達を守ろうとして戦死、キラは行方知れず、ヨウスケも死すらわかりません」

「ルカは?」

「お母様はウィングロードの修道院で子供たちの世話をしていますわ」

アールマティがショウの代わりにルサールカの事を話した。

「そっか………皆、すまなかったな。俺の力が足りなかったばかりにシオンだけじゃなく他の皆も死なせてしまった」

暗い表情を浮かべて、彼は嘆いた。

かつての仲間達のほとんどが死してしまったことを実感していた。

それがどんなに苦しいものか、テンルウ以外には誰にもわからないだろう。

「ショウ。これからの進路は?」

「レンスターにはモニカとカンピナスの娘のアミナルとキイナがいます。彼女達を助け、このままトラキアに向かい、グランビアへ………」

「アイツはやはりグランビアに………」

テンルウの言葉にイナルナが反応する。

「マイラ………私達の敵………グランビア帝国の女帝………暗黒神ロプトウスの生まれ変わり………」

そう呟くイナルナを見てテンルウはショウの耳元でこう囁いた。

「ショウ、マイラの正体を知ったら子供達はショックを受けるだろうな……」

「ええ………僕も正直……信じられませんでした………」

「ショウ……あの子達にはマイラのことはなにも言わないでくれ。まだ知る必要はない……それに、イナルナを悲しませたくはないからな」

「はい、心得ております」

ショウとテンルウは密かにそう話し合った。

だが、その会話を密かにユウキが聞いていたのである。

「ショウ、何故イナルナにマイラのことを話したらいけないんだ?」

「ユ…ユウキ様………」

「………今はまだ知らなくても良いことだからだ」

「俺はマイラを知ってる。1度交えたことがあるからな」

ユウキの言葉にテンルウは少し驚いた表情を見せる。

「ひょっとしてマイラはイナルナの血………」

「ユウキ様、それ以上は言ってはいけません」

「………隠し事か………?なんでも隠せば良いものじゃないだろう」

「あの子にはショックが大きすぎる。だから伝えないんだ。お前だってイナルナの悲しむ顔、見たくはないだろう?」

テンルウの一言にユウキの表情が変わる。

ユウキは急に少し焦り出したのだ。

「な……なんで俺がイナルナの………」

「素直じゃないな。だがそういうところ、お前の親父に良く似てるぜ。アイツも素直に気持ちを伝えられないヤツだったからな」

「父が………?」

「ああ、ユーリもほとほと手を焼いていたよ。傭兵業が趣味で良く城を抜け出して帰ってこなくなるんだからな。」

そう言ってテンルウはトラキアのある方角の空を見つめる。

「…………一つ…………お聞きしてよろしいですか?」

「何だ?」

「マイラは………誰なんですか?」

「…………今、ここでは言えない質問だな。夜になってから、ショウと二人で説明してやるよ……」




その頃、レンスターでは―――――――――




「キイナ様!!解放軍の一団がもうすぐこちらへ………」

「遂に来たわね……イナルナ……」

キイナは見張り台から遠くを見つめ、そう呟く。

「キイナ、イナルナ様達が来てくださったのね……」

「ええ、そうよアミナル。もうすぐ……もうすぐレンスターは解放されるわ!!アリストのように………」

少し涙ぐんだアミナルの頭をキイナは優しく撫でる。

アミナルは涙を拭い、明るい笑顔を見せ、キイナに笑いかける。

「レンスターを継ぐ私が……泣いては示しがつきませんね………」

「アミナル、貴方は強くなったわ。レンスターを解放したら……」

「はい。父の無念を晴らしに……イナルナ様の元に集います!!」

アミナルの心に新たなる決心が湧く。

そして、彼女は今はいないカーディフのことを心配していた。

「カーディフ………無事に帰ってきてくれるかしら……?」

「その辺は大丈夫ね、イナルナといち早く合流したみたいよ?」

キイナの視力もなかなかのものだった。

コウヘイほどとまではいかないが、眼をこらし、イナルナ達を肉眼で確認していたのである。

「そう……よかった…………」

その言葉を聞いて、アミナルは胸を撫でおろすのであった。





「で、イナルナ軍と合流する前にレンスター軍をのせばいいのね?」

「やってくれますか?ユラ殿」

「あたしは金さえ貰えればいい。依頼料はきちんと払って頂戴よ?」

「もちろんです…貴方の弓の腕に期待していますよ」

金髪の女の子が不思議な弓を持って、グランビア軍が潜んでいた砦からグランビア軍の兵とともに姿を現した。

彼女の右手の甲には、見慣れた聖痕が見える。

その聖痕は色こそ違ったが、イナルナ達3兄妹の持つナーガの聖痕と同じものであった。




「アミナル様!!!南東の砦からグランビア軍が進軍してきました!!!!」

「なんですって?!!!」

フィオレの報告を聞いたアミナルが血色を変えた。

レンスター軍にいる兵は全部で25人。

しかもランスリッターが5人、残りは見習い騎士なのである。

「そんな……まだイナルナ様達は到着なさってないのに………!!!!」

「アミナル、兵に指示を出すわ。きなさい」

「キイナ様………」

「フィオレ、貴方はイナルナ達にこのことを知らせなさい」

「はい!!」

フィオレはペガサスを上空に羽ばたかせ、イナルナ達と合流するためにペガサスを全力で飛ばせた。




「イナルナ、前方にペガサスナイトが……」

「ユウキ、敵か味方か区別つく??」

ユウキはペガサスナイトの顔をじーっと遠くから眺めた。

「う~ん…………なんか、カナメと一緒にいるペガサスナイトに顔がめちゃくちゃ似てる…………」

「イナルナ様。あれは恐らく私の姉のフィオレです。フィオレはキイナ様と一緒に旅をしていましたから………」

「そう、なら心配はいらないわね、来たらすぐにお迎えしてあげて」

「はい!!」

イナルナの言葉にフィアナは少し嬉しそうな顔をして元気良くそう答えたのである。

だが、テンルウだけはあまり良い顔をしなかったのである。

少し考えた表情のテンルウを見て、ショウは何かを察知したようだ。

「テンルウ様、おそらくあれは………」

「早くレンスターへ行った方が懸命だな。ショウ、一足先にレンスターへ行ってくれるか?ヨウスケの子供と、カーディフとルウランも一緒に」

「わかりました」

「俺の感が当たってるなら、きっとグランビアが動き出してるはずだ。あと微かだがここから北北東の方角にナーガとそしてもう少し強くウルの力を感じる」

テンルウの言葉にショウは少し考えこんだ。

「ナーガとウル………キラとオスカー様の子供でしょうか?」

「その可能性が高いな。おそらくウルの直系だろう。イチイバルを持ってる恐れがあるからな、気を付けたほうが良い」

「わかりました。すぐにレンスターに向けて………」

「ああ、すまないな。」

ショウとテンルウが話しこんでいるのを見ていたらしく、イナルナが不思議そうな表情でショウとテンルウに歩み寄ってきた。

「父上、ショウ。何かあったんですの?」

「イナルナ様、私はカナメとカーディフ、ルウラン様を連れて先にレンスターに出向きます」

「どうして??」

イナルナが疑問を表情に思いきりだし、首をかしげてショウに尋ねた。

「俺がショウに頼んだんだ」

「父上がですか?」

「ええ、テンルウ様のご指示です」

「父上って以外と用心深い方なんですのね」

父の知らなかった一面を少し知ったイナルナが苦笑する。

「オグマも父上みたいにもう少し用心深くなってくれたら、苦労はしないのに」

「それは言えてますね」

「アイツは…………後でミッチリしごいてやるかな?」

テンルウの言葉にショウとイナルナは笑っている。

その頃のオグマは感心なさそうにノルンとおしゃべりしている。

「最近、オグマったらノルンとばかりお話するんですのよ?困ったものですわ」

「そういうお前はユウキとおしゃべりばかりしてるんだろ?」

テンルウの言葉にイナルナは顔を真っ赤に染めて焦り出した。

「ユウキは幼馴染みですし、小さい頃からずっと仲が良かったですから話が合うだけです!!別に特別な感情は…………」

イナルナの言葉を聞いて、ショウとテンルウは笑い出した。

「えっ??えぇ?????」

「はははは……誰もそこまで言ってないだろ?お前は物事を隠せない子だな」

「イナルナ様は表情に出ますからねぇ」

「……………」

顔を真っ赤にしてイナルナはふくれ面をするのであった。

「イナルナ、そんな顔しないの。ショウ、それじゃあ頼むぞ」

「はい、テンルウ様」

ショウはテンルウに言われた通り、カナメ・カーディフ・ルウランを連れて一足先にレンスターへと向かったのであった。

「父上……ひどいですわぁ……」

「でも、なるべく早くそういう事は伝えたほうがいいぞ?」

「ユウキは……私のことをそう言う風に見てはくれてませんわ」

「なんでそう思う?」

「幼馴染み……だからでしょうか?」

「生まれた頃から………ずっと一緒だったもんな」

「私、父上や母上みたいな…………そんな………そんな出会い方をしたかった。ユウキと………」

イナルナの言葉にテンルウは少し暗い表情をする。




良いことばかりがあったわけじゃなかった…………

あまりにも短かすぎた3年という………短い生活を彼は思い出していた。




「ユラ殿、レンスターはもうすぐです」

「ええ。必ず落として見せるわ………レンスター城………」





イナルナ:まぁた遅い仕上がりで…………

作者:こちとら忙しいんだよ………

テンルウ:相変わらずいい加減だな

ショウ:ですね………

作者:色々指摘されて修正していたんだよぉ!!!

テンルウ:夏休み……もうすぐ終わるぞ?

作者:うぐっ………