ユグドラシル聖戦記

ショウはカナメとルウラン、そしてカーディフを引き連れて先にレンスターに向かっていた。フィオレも先にレンスターへと戻っている。
「カーディフ様、アミナル様は大丈夫でしょうか・・・?」
ルウランの質問にカーディフは軽く答える。
「あぁ、大丈夫。キイナもいるし、それにアリシアもトラキアから帰ってきてるみたいだからね」
「アリシア・・・?」
「レンスターの精鋭部隊・ランスリッターを率いる総隊長だよ」




第36章 強くなる秘訣




「アミナル様、グランビア帝国軍がまもなくこちらに到着します。レンスター城が戦場になる確率が高いです」
「ありがとうアリシア。ランスリッターの準備は整ってる?」
アミナルにそう聞かれ、アリシアは大きく頷いた。
「はい、いつでも戦闘できるように整っております」
「ごめんね、アリシア。ファングも貴方のことを心配していると言うのに・・・」
「そんな、私達のことなど、気になさらないでください」
「でも・・・」
「その言葉をいただけるだけでも、うれしゅうございます」
そう言ってアリシアはアミナルに頭を下げる。
(ちなみにファングとアリシアの関係はユウキ・ショウ外伝参照(ぉぃ))
そこに、キイナがやってきた。
「アミナル、アリシア。最後の詰めよ。イナルナ達がくるまで、なんとしてでも持ちこたえ、レンスターを守るのよ」
「はい!!キイナ様」




丁度その頃、イナルナ達はショウ達よりも遅く、レンスターに向かっていた。
相変わらず、仲の良いもの同士で楽しく進軍している。
そして、懐かしい人物がイナルナ達を合流したのである。
「イナルナ様、遅れまして申し訳ありませんでした。アリストの守備はロベルトとグレイスを中心に万全の状態です」
「ありがとう、ギリアム。これでアリストの方はもう大丈夫ね」
「はい、もうアリストは帝国に支配されることもないでしょう。これもイナルナ様達のお力です。では私はウイングロードに戻ります。イナルナ様、御武運を…」
「ギリアム、気をつけて帰ってね・・・」
「お心遣い、有り難く頂戴いたします。ショウ様によろしくお伝えください」
そう言ってギリアムは、アリストの地へと帰っていった。
「相変わらずギリアムは真面目ね」
「あぁ、どっかの誰かとは大違いだよなぁ・・・」
と言いつつ、ユウキはジト目でオグマの方を見る。
その視線に気付き、凄いムスっとした顔をするオグマ。
「んだとぉ・・・俺の何処が不真面目って言うんだよ?!!!」
「イナルナに毒キノコ食わせるわ、すぐイナルナ泣かすわ、指揮は取れないわ・・・これの何処が真面目だって言うんだ??」
オグマは一瞬『まだ言うか!!』と思った。
ユウキは相当、オグマがイナルナに毒キノコを食べさせて死にかけたという出来事を根に持っているようである。
「・・・お前、そんなコトしたのか?」
と、呆れ顔をしたテンルウがボソッと言ったのである。
「ち・・・」
「違うとは言いきれないよなぁ~?オグマぁ・・・」
否定しようとしたオグマにユウキはそう言う。
「俺は、お前みたいなバカ息子を持った覚えは1ミクロンもないぞ?」
「バカ息子って・・・」
「充分お前はバカ息子だと思うぞ?」
「ユウキ・・・お前みたいな万年方向オンチには言われたくないぜ・・・」
ユウキに言われ、そう返すオグマ。
そして二人の睨み合いは始まってしまったのである。
それを見てテンルウも呆れ顔。
「もう!!どうして二人とも仲良くできないのよ?!!今はいがみ合ってる場合じゃないでしょ?!」
イナルナは少し怒った表情で二人を仲裁する。
が・・・!!「お前には関係ないだろ?!さっさと指揮でも取りに行けよ、この泣き虫!!」
と、オグマがイナルナに対してそういったのである。
「だっ・・・誰が泣き虫よ!!」
「お前だお前!!!何かあったらすぐピーピー泣くくせに・・・お前みたいな泣き虫なんか、挟んで捨てられればいいんだよ!」
「オグマ・・・てめぇ・・・!!!」
イナルナをとことん馬鹿にするオグマ。
それを聞いてユウキが黙っているはずもない。
ユウキが銀の剣を抜こうとした時だった。


「月光剣!!!」


テンルウの手加減なしの月光剣がオグマに炸裂した。
「お、親父・・・何しやがる!!!」
血だらけになったオグマがテンルウを睨みつける。
「イナルナを苛めるな、お前、お兄ちゃんだろうが・・・!!!」
「ぴえぇ~~~~~~~ん」
だが、すでにイナルナは泣き出している。
いつもはショウが慰めるのだが、ショウは今ここにはいない。
変わりにユウキがイナルナの頭を撫でて慰めている。
「別に俺はいじめてなんて・・・」
「いじめてるだろ?ルウランには優しいクセして、なんでイナルナにも同じように接することができないんだ?シオンが見たら泣くぞ?」
「う・・・」
シオンの名前を出されて何も言えなくなるオグマ。
実は彼、シオンに対しては強く出れないのだった。
彼は昔から、シオンの言うコトだけは素直に聞いていたのである。
俗に言う、マザ○ンである。
「俺はマザコンじゃねぇ~!!!」
あ、わざわざ伏せてやってるのに自分でばらしやがった・・・
「えぅ・・・」
「ぴえぇ~~~~~~~~ん・・・」
相変わらず波瀾な解放軍だった。




それから1時間後、ショウ達はすでにレンスター城に到着していた。
「キイナ様、お待たせしました」
「ショウ、よく来てくれたわ!!イナルナ達は?」
「少し遅くですが、間もなく到着します」
「そう。それはよかったわ」
キイナとショウがそう話していると、カナメが割りこんできた。
「お久しぶりです。母上」
「カナメ・・・」
キイナは自分の息子を見て少し驚いた。
「立派に成長したわね、カナメ、ライナは?」
「それが・・・ライナは母上を探しに旅に出たきり帰ってきません。解放軍に居ればきっと見つかると思い、国を出てきました」
「そう・・・やっぱりあの子にはフォルセティを預けておいてよかったわ。何かあったら大変だものね・・・」
「母上・・・」
「カナメ、この戦争には絶対に勝たなくちゃならない。死なない覚悟はおあり?」
「はいっ!絶対に・・・勝って、生き残って、父のあとを継ぎ、イナルナ様に全てを捧げる覚悟です」
「・・・それでこそ、私の息子ね」
「キイナ、帝国軍が攻めてきたわ!!!」
アミナルが血相を変えて、キイナの元に走って来た。
「ショウ、これから帝国軍を止めるけど、加勢してくれるかしら?」
「当たり前です、キイナ様」
「じゃあ・・・行くわよ!!」




それから20分もたたない内に、レンスター城は戦場と化した。
ショウを中心にカーディフとルウランが前衛で敵の侵入を阻み、キイナとカナメが後方支援にはいっている。
そして、はじめてミストルティンを手にしたカーディフは信じられないほどの力を発揮する。
「これがミストルティンの力か・・・気持ちいいくらいに力がみなぎってくるぜ」
「カーディフ様、自分の力を過信してはいけません。それこそスキを生み出す最大の弱点ですっ!!」
ティルフィングを振り下ろし、攻撃しつつもショウがカーディフに言い聞かせる。
「わかってるよ、ショウ!!」
「キイナ様!!後ろに弓兵が・・・!!!」
フィオレが上空から見たらしく、キイナにそう報告する。
「フィオレ、馬を下りて戦いなさい!!撃ち抜かれたらおわりよ!!」
「わかりました。キイナ様!!!」
フィオレはそういうと、後方に下がっていった。
「ルウラン様もオグマ様の引けをとらない立派な剣さばきをなさりますね」
ショウが傍目からみて、そう思い口にする。
「ありがとう、ショウ!!」
そういいつつ、月光剣を放つルウラン。
だが、何処からともなく、ルウラン目掛けて、弓矢が飛んできたのである。
「ルウラン!あぶないっ!!」
カーディフは彼女の前に立ち、その矢を斬り落とした。
ショウはその矢を見てゾッとする。
「この矢は・・・イチイバルの矢・・・!?」
「我が弓の名を知っているとは・・・反乱軍の人間か?」
ユラが倒れた兵士の死体を踏みつけながら、ショウ達の前に姿をあらわす。
「キ、キラ・・・?」
「私の名はユラ。イナルナ王女は何処にいる・・・?」
「お姉様に・・・何をするつもり?」
ルウランが険しい表情でユラに尋ねる。
「私の目的のため、死んでもらう」
「ユラ様、ご自分の従姉妹を・・・殺すとおっしゃるのですか・・・?」
ショウが少し哀しげな顔で言う。
だがユラは顔色を変えずにこう言った。
「従姉妹なんてどうだっていい。あたしには他に大切なものがある」
「ユラ様・・・」
「そう、私にだって大切なものがあるわ。だからこの先には行かせない・・・イナルナ王女も殺させやしない。この城だって守って見せるわ」
アミナルがゲイボルグを携え、ユラに姿を見せる。
「私の邪魔をするつもり?」
「えぇ、イナルナ王女はこのマセラティの未来を導かなければならない人。その人を殺させるわけにはいかないわ。いくら貴方が弓騎士・ウルの血を引いた12聖戦士の一人でも、容赦はしません!!!」
アミナルが強い意志を表情ににじませ、ユラを睨みつける。
「ユラ、やめなさい」
そこでキイナが口を開いた。
ユラはキイナの顔を見て驚く。
「キイナおば様・・・!!!」
「ユラ、キラはそんなこと望んではいないわよ?」
「キイナおば様・・・あたしには・・・あたしにはお金が必要なんです!!!」
ユラの悲痛の叫びが木霊する。
そしてユラは涙を浮かべてこういった。
「私はトラキアにいる修道院で身を潜める孤児達を育てるためにこうやってお金を稼いでるんです。愚かなのはわかっています。母を殺した帝国に身を置くなんて………」
「そんな・・・キラも帝国に殺されていたなんて・・・」
ショウはユラの言葉を聞いて絶望する。
そして間もなく、イナルナ達がレンスター城に到着した。
「キイナ!!」
イナルナは元気な笑顔でいつも見守ってくれた人の名を呼ぶ。
「イナルナ、よく来たわね」
「キイナか?だいぶ女らしくなったんじゃないか?」
聞き覚えのある声に驚くキイナ。
「テンルウ王子?!!・・・生きて・・・?」
「神様に見捨てられてさ、まだ生きてるぜ」
「それより、キイナ。この子か?キラの娘っていう・・・」
テンルウがそう口にした時、キイナは頷いた。
「えぇ、この子がキラの娘のユラよ」
「・・・・・・」
だがユラは一言も話そうとしない。
視線もテンルウから反らしている。
しかし、その表情は実に申し訳なさそうな顔をしていた。
「そっか・・・ユラっていうのか・・・キラを亡くして、一人で淋しかっただろ・・・?」
そんなユラに対して、テンルウは優しく彼女の頭を撫でた。
その瞬間、ユラの中の何かが弾け飛んだのである。
「ごめんなさい・・・ごめんなさいぃ・・・!」
ユラはイチイバルを手から放し、テンルウに泣きついた。
「本当は・・・本当はあたし・・・帝国に雇われなくちゃならないくらい力がない自分が凄く悔しかった・・・一人だけ逃げて、お母様を見殺しにして・・・孤児院で暮らして・・・でも、孤児院にはお金がなくて・・・あたしが一生懸命働いても全然足りなくて・・・で、帝国に雇われて・・・そんな情けない自分が悔しい・・・!!」
泣きながら、そう呟いたユラ。
テンルウはずっとユラの頭を撫でている。
「お前、あの孤児院の子供の一人か・・・」
ユウキの言葉にイナルナが反応する。
その反応に気付いたのか、ユウキがイナルナにこう言った。
「いやな、何年か前にマンスター地方にあった孤児院が子供狩りにあってな・・・そこで助かってきた子供達が、今トラキアの教会に住んでるんだよ。その中に弓使いがいるって聞いてたが・・・まさかイナルナの従姉妹だったとはな」「まぁ、見た目じゃわからないよね。でも、大変な思いをしてたんだね、ユラ・・・」
「ごめんなさい、イナルナ・・・。あたしはもう、貴方とは敵対しない・・・解放軍にあたしを加えてください」
「もちろんよ、ユラ。お母様と貴方のお父様の故郷を私達の手でマイラから取り返しましょう!!」
イナルナはユラの両手を優しく包み、握り締める。
ユラはその手の温もりをかみ締めていたのであった。
「イナルナ王女、この先にあるインプレッサ城に帝国軍の将軍、エスティマがいます。エスティマは姑息な性格なゆえ、気を付けたほうがいいと思います」
「わかったわ、ユラ。ユウキ、悪いんだけど私はこれからインプレッサ城に行って陥落させてくるわ。オグマとノルンと呼んで来てもらえるかな・・・?」
「それはいいが、アイツらでいいのか・・・?俺も一緒に行くぞ?」
ユウキの言葉を聞いてイナルナは首を横に振る。
「いいよ、ユウキ。私とノルンとオグマの3人だけで行く。私も指揮官だからって戦闘にあまり参加しないっていうワケにもいかないよ。いつか母上みたいな聖女に私はなりたいから・・・」
「そうか・・・わかった」
ユウキはそう言うと黙ってオグマとノルンを探しに行ったのである。




「確かに、ユラの言った通り作戦の組み方が姑息そのものだな」
オグマは丘の上から敵の状況を見てそう嘆いた。
「あまり感心される戦闘陣形ではありませんわ」
「でも、この姑息な戦闘陣形を崩すには最小限の戦闘力がいいと思うわ。さすがイナルナ王女ね」
ノルンはイナルナの顔を見てそう言う。
イナルナはそれに答えるように笑って見せる。
「じゃあ、作戦開始といくか?」
「ええ」




その作戦とは、敵の懐に飛び込んで指揮官を倒すというこっちもこっちとて姑息な方法だった。しかも敵の兵士に変装するという演技つき。イナルナは、敵兵に変装したノルンとオグマに連れられ、エスティマのところに向かった。



「エスティマ様、敵の指揮官のイナルナ王女を捕らえてまいりました」
オグマは少しそっけのなさそうな声色でエスティマにそう告げる。
ノルンは後ろの方でイナルナを掴んでいる。
「くっ・・・」
イナルナは悔しそうな表情をにじませて悔やむ。
「おぉ、でかしたぞ。さっそくその娘を私の目の前でその首を切り落とせ」
「・・・申し訳ありませんが、それはできません」
オグマはエスティマの言葉をキッパリ断った。
「何?今何と言った?この私の命令が聞けぬと申すのか?!」
「ああ、聞けねぇな。なんたって俺達は・・・」
オグマがそう言うと鎧を外し、兜を外した。
ノルンも共に元の格好に戻った。
そしてイナルナの手枷がはずれる。
「イナルナ軍の人間だからな。なおかつコイツは俺の妹だ。例え根性が腐れきってしまったとしても妹を手にかけるようなマネなんか絶対にしねぇよ」
「エスティマ将軍。レンスター王国を苦しめた罪、死を持って償っていただきます」
イナルナ達が戦闘準備にはいる。
「くっ・・・!!皆の者、出あえ出あえ!!!!」
某時代劇のような部下の呼びかけに応じる敵兵様ご一行。
そしてオグマのバルムンクが、戦闘開始の合図をする。
それから5分もたたない内に兵は全員倒れるのである。
エスティマの前に立ちはだかるイナルナ・オグマ・ノルン。
エスティマが苦悩な表情を見せる。
「これで終わりだな」
「くっ・・・」
「そう、これで・・・さよならね」
その言葉がエスティマの最期を物語ったのである。




イナルナ:途中をはしょってますわ・・・
オグマ:まったくだ・・・
作者:どうせわかりきってる結末なら書かんほうがいいかと・・・
イナルナ:これが小説を書き上げるのに時間のかかった理由・・・
オグマ:やな理由だよな・・・