ユグドラシル聖戦記 外伝4

2月14日―――――――――

マセラティ大陸にもバレタインが訪れる……。

女性から男性にチョコレートが手渡されるのである。




チョコの香りは危険な香り?前編




シオンはバレンタインの為にチョコレートをこしらえていた。

それは自分の手作りチョコレートをテンルウに食べてもらうためである。

もちろん、城内にいる男性陣にもあげるためでもある。

ゆっくりチョコレートを溶かしていたシオンだが、材料が足りないことに気がついた。

「いけない。チョコの中に入れるピーナッツ買ってくるの忘れちゃったわ……ついでだからラッピング用のリボンも買ってきましょう★」

そう言いつつ、シオンは大急ぎでピーナッツを買いに街に出かけていった。




「フフフフフ………」

その妖しげな笑みをたたえているのは紛れもなく、この間シオンたちにぼこぼこにされたナイトマンのピンクであった。

「この、レッド特性の毒薬をこのチョコに混ぜて………これで最強を誇っているナディア軍もおしまいね………ウフフフフフ………」

そう言いながらシオンのこしらえたチョコレートに子ビンに入った毒薬を全部入れたピンク。

「さ、ばれない内にずらかりましょう★」

そして、ナイトマンピンクは窓から外へと去っていった……。




その後、何も知らないシオンは固まる前のチョコレートにピーナッツを入れた。

そして、こともあろうにいつものくせで毒味をしたのである。

「うん、味もばっちりね★さ、冷えて固まるのを紅茶でも飲みながら待ちましょうか」

そう言ってシオンはその場で紅茶を入れて飲み出した。

それをじっと見ていたナイトマンピンク。

「おかしいわ………どうして苦しまないの?!」

確かに毒薬なら苦しんで死ぬはずである。

後から効いてくる毒薬だろうか?

そう思いナイトマンピンクはさして疑問に思わなかった。










シオンがチョコレートをラッピングしてテンルウのところに持っていこうとしたその途中でシオンはコウヘイにばったり会った。

「王女、今日はやけにご機嫌だな?」

「ええ。あ、丁度よかったですわ。コウヘイ様、これ受けとって………」

シオンは顔を上げてコウヘイの顔を見た瞬間、思考がとまった。

「………?」

コウヘイはじっと見つめてくるシオンに疑問を持った。

「王女、どうした?」

シオンの心で何かが沸騰するように沸きあがってくる。

そしてそれは胸の鼓動をものすごく早くさせた。

「あ……………」

そして、何かを塗り変えるように大きく膨らみ爆発した。

「コウヘイ様…………」

「はい?」

「私…………ずっと……ずっと黙っていましたの…………私……」

「………何?王女……」

シオンは顔をあげ、赤らめながらこう言った。

「コウヘイ様の事をずっとお慕い申しておりました!!」

「え?!!」

その言葉に一瞬硬直するコウヘイ。

「お慕いするあまり押し倒したいとも思っていますの!!!」

「ちょ……ちょっと王女……?」

「お互い結婚相手がいると言う事も、子供がいると言う事も、今の私には問題ではありません!!!愛してますわコウヘイ様ぁ!!!」

そう言ってシオンはコウヘイに抱きついた。

「ちょ、王女!!!やめてくれ!!!くっつくなぁぁぁ!!!!」

必死にシオンを引き剥がそうとするコウヘイ。

そのとき、シオンの目の色が変わった。

「コウヘイ様は……私のことがお嫌いなのですか……?」

じっと見つめてくるシオン。

その目はあのヴァンパイア事件の時にテンルウに使っていた色目と同じだった。

一瞬ドキッとするコウヘイ。

その一瞬の隙をシオンは逃さなかった。

「コウヘイ様………愛してますわ………」

シオンはコウヘイの首に腕を回してコウヘイの唇を自らの唇で塞いだ。

「!!!」

必死にシオンを引き剥がそうとするコウヘイ。

だが、シオンはしがみついて離れない。

すると、背後から殺気を感じた。

「………………コウヘイ?」

その声には思いっきり聞き覚えがあった。

コウヘイは恐る恐る後ろを振り返る。

そこには………

ものすごい怒りのオーラと鬼のような顔をしたテンルウが立っていた。

「て……テンルウ?!!!」

「コウヘイ………シオンに何してんだよ………?」

「違う!!!俺じゃない!!!今回は俺のせいじゃないんだぁぁ!!!!」

力一杯弁明するコウヘイ。

しかし、今のテンルウには何を言っても無駄だった。




「流星剣!!!」




「ぐはぁぁぁぁ!!!」




コウヘイは血だらけで倒れこんだ。

テンルウはその返り血を浴びている。

「きゃああああああ、コウヘイ様ぁ!!!」

その光景を見て悲鳴を上げるシオン。

「コウヘイ様ぁ……しっかりしてください~!!!」

シオンは半泣きでコウヘイにしがみつく。

「シオン、何でこんなやつかまったりするんだ?!!」

「こ………こんなやつって………」

シオンは目に涙を浮かべながらキッとテンルウを睨んだ。

<な………泣いてる……俺が……俺がシオンを泣かしたのか?>

テンルウはそう思ってしまい一瞬たじろいでしまう。

「今私が愛してるのはコウヘイ様です!!!!貴方には関係ないですわ!!」

「シ……シオン?」

テンルウはシオンの言葉の意味がわからなかった。

「私の大事なコウヘイ様を傷つけるようなテンルウ様なんて………大っ嫌い!!!」




ガァァァン……




そう言ってシオンはすぐさまコウヘイにリライブをかける。

テンルウの頭にシオンの「大っ嫌い」という台詞が木霊している。

「コウヘイ様、大丈夫ですか?!もうすぐ傷もふさがりますから!!」

コウヘイは何とも言えずテンルウの方を見た。

テンルウは完全に放心して真っ白くなってしまっていた。

「テ……テンルウ?大丈夫か?」

「シオンに………嫌われたら俺………どうしたら良いんだ?」

完全に違う世界に行ってしまっているテンルウ。

「テンルウ!!」

「シオンに嫌われたら………俺はもう生きていけない………」

そう言い出したテンルウはバルムンクを鞘から抜き出し自分の首筋にあてた。

「わあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!テンルウ、早まるなぁぁぁ!!!」

そう言ってコウヘイはテンルウのバルムンクを持っている右手を掴んだ。

「止めるなコウヘイ!!!俺は………俺はぁぁぁ!!!!」

「だから、何かおかしいって気付かないのかお前はぁぁ!!!」

コウヘイは思わずその言葉を口にした。

「そう言われてみれば…………そうだ………」

コウヘイは大きくため息をついた。

「おかしいだろ?王女が俺に惚れるなんて言う事は100%有り得ないぞ?!」

「お前馬鹿だしな」

<こいつ……いっぺん殺したろか!!!>

そう思うコウヘイであった。

「一体何があったんだ?」

「いや………それが……俺の顔を見たとたんにこうなっちゃたんだよ……」

「じゃあお前が悪いんじゃねえか!!!」

「あのなぁ!!!今までそんなこと一度もなかったのに急にこうなるわけないだろうがぁ!!」

コウヘイは顔を真っ赤にして怒り出す。

「……………確かにそうだよな………」

「お前………実は動揺しまくって頭の中混乱してるだろ?」

「うん」

即答で答えるテンルウ。

「………コンマ1秒で答えるなよ………」

コウヘイは頭を抱えた。

「コウヘイ様ぁん★」

シオンはいつの間にかコウヘイの腕に抱きついていた。

「…………」

とうとう痺れを切らしたコウヘイはある行動に出た。

「王女、今ちょっと取りこんでるんだ。悪いが席を外してくれないか?」

その言葉を聞いて膨れっ面をするシオン。

「え~~~~?私の前では言えないことなんですの?」

「ちょっと男同士の内緒の話だから………な?」

「でも…………」

「王女……頼むよ……な?」

「わかりましたわ…………」

ものすごく落ちこんだ顔をして頷くシオン。

コウヘイはシオンの頭を撫でる。

「王女、庭園で待っていてくれないか?後で行くから……」

「はい」

シオンは嬉しそうに笑って行った。




それを見ていて一番面白くないのはテンルウである。

「そんな顔すんなって……すぐに元に戻るよ………」

「俺には………一度もあんな笑顔見せてくれてないのにな……」

密かにいじけているテンルウ。

「……………」

どうしたら良いものかコウヘイは悩む。

「ユーリに相談するか…………」




その様子も一部始終見ていたピンク。

「な………なによこれ………………あたし、し~らないっと………」

そう言ってピンクは去っていった………




「シオン様がコウヘイに惚れたぁ~?!」

それを聞いたユーリの顔付きは信じられないという気持ちが表に出ていた。

「そうなんだよ………」

「あげくのはてにテンルウに『大嫌い』攻撃するしな………」

「有り得ない………全く持って有り得ないわ………」

ユーリはぼそっとつぶやく。

「でもね、どう言う状況でそうなっちゃったの?」

「いや……ばったり逢って……そういえば王女……俺に何か渡そうとしてたな……」

「何か?」

「結局何も貰ってないけどな」

「………………今日、何日?」

ユーリの質問にテンルウとコウヘイは考えこんだ。

「………2月14日………」

二人の声が同調する。

「それよ…………」

「え?」

「シオン様……チョコレートをコウヘイに渡そうとしてたのよ」

「はい?」

「今日はバレンタインじゃない」

ユーリの一言に一瞬沈黙が走る。

「そうだった………」

「俺達に関係ないと思ってたから全然覚えてなかった……」

ユーリは頭を抱えてため息をついた。

「あのね………もう少し女心……勉強したほうが良いわよ?二人とも……」

「だってなぁ………」

「ねぇ、コウヘイ。シオン様からそのチョコレート貰ってきてくれない?」

「なんで俺………」

「だって今のシオン様はコウヘイに惚れてるんでしょ?貴方が貰ってくるのが正当じゃない」

ユーリの言葉に肩を落とすコウヘイ。

「結局こうなるのか………………」

「いってらっしゃ~い、テンルウ様。その間に私達はお茶でもしてましょう」

「ああ………」








コウヘイは庭園へと向かった。

そこではシオンがしっかりコウヘイのことを待っていたのである。

小鳥とじゃれあうシオン。

それを見てコウヘイは(普通にしてれば可愛いのにな……)と思うのである。(シオンに対して普通って一体………)

「王女、待ったか?」

「いいえ、全然待ってませんわ」

「そうか………」

庭園にあるテーブルセットの前に腰掛けるコウヘイ。

シオンもその向かいに腰掛けた。

「コウヘイ様、私コウヘイ様に渡したいものがあるんですの」

「何?」

「私が作った手作りチョコですの。今日はバレンタインでしょ?だから渡そうと思って………受け取ってくれますか?」

シオンは半ば顔を赤くしてチョコの入った箱をコウヘイに渡す。

「ああ、ありがとう王女、でも今ちょっとアレだから、後で食べさせてもらうよ」

「そうですの………」

「そうだ、王女。これな、いつ作ったんだ?」

「え?今日の朝からしこんでましたけど?」

「その時、一瞬でもこのチョコから離れたか?」

シオンはしばし考えこむ………。

「あ………」

「離れたんだな………?」

コウヘイに再度聞かれ頷くシオン。

「チョコレートにいれるピーナッツを買いにちょっと離れましたわ……」

「何分くらい?」

「10分くらいだったと思いますけど………どうしてそんなこと聞くんですの?」

シオンにそう言われ、ギクっとするコウヘイ。

「いや……気にしないでくれ……たいしたことじゃないから…さ………それとな、出来れば俺以外の人間にこれ、渡さないで欲しい」

「え?それって………どう言う事ですの?」

「………鈍感だな………俺は王女に俺以外の男に王女の手作りチョコなんて渡して欲しくないんだ……………」

「コウヘイ様…………」

「王女………頼むよ……他の男が王女の造ったチョコを食べてるところなんて見たくないんだ………」

(全く違う意味でな…………)

と思いながらシオンに言うコウヘイ。

「コウヘイ様………わかりましたわ。私………他の男性にはこれ渡しませんわ」

シオンは笑顔でコウヘイにそう言った。

(そうしてくれるとメチャクチャ嬉しい…………)







「ユーリ…………貰ってきたぞ………」

コウヘイは半ば疲れた顔をしてユーリに言った。

「おい………お前、シオンと話をするのがそんなに嫌なのか……えぇ?!!」

その顔付きを見て、今日一番コウヘイのことが気に入らないテンルウがそう言う。

「あのな……俺はさ……ああ言うタイプの女と話すのが苦手なんだよ?!」

「どう言うタイプだよ………」

「純情一途なタイプ」

「あっそ………」

「コウヘイ、それちょっと開けてみて」

ユーリに言われ、チョコレートの入った箱をあけるコウヘイ。

開いた瞬間ユーリはそのチョコレートの匂いをかいだ。

「…………微かに匂うわ………」

「はい?」

「これ…………この独特の香りを放つのは………「ホレちゃい草」の根の香り……」

「何……?「ホレちゃい草」っていうそのふざけた名前………」

コウヘイはユーリに聞き返した。

「『ホレちゃい草』っていうのはね、魔法薬によく使われる薬草の事よ。この『ホレちゃい草』っていう根のエキスは立派な「ホレ薬」としてよく使われるの。ちなみに実は媚薬になるのよ★」

「誰がそんなもん入れたんだ……?シオンがそんな事するなんて思えないしな」

テンルウはそう言って考えこむ。

「そういえば……ついでに聞いてきたんだけど……王女はこれを朝からこしらえてて、10分くらいこのチョコレートから離れたらしいぞ」

「コウヘイ!!!珍しく偉い!!!!」

「よく聞いてきたわ!!誉めてあげる!!!!」

「あのなぁ…………」

コウヘイは「俺ってこいつらにどう思われてるんだ……?」と思った。

「じゃあ、これに「ホレちゃい草」の根のエキスを入れた別の人間がいるって言うわけだ…………」

「そんな馬鹿なことをするやつは…………」

「この世であいつ等しかいない…………」

「捜すぞ……」

「おう……」







作者:あはははははは………

テンルウ:てめぇ!!前編後編にわけたなぁ?!!!

コウヘイ:なんでそんな小細工を………

作者:先に延ばしたほうが面白いかと思って………

コウヘイ:だいたいこのネタ書くのをやめたんじゃないのか?!!

作者:いや……リクエストがあったもんだから……

テンルウ:誰だよ……こんな話のリクエストしたやつ………

作者:それは…………

コウヘイ:こんなのの何処が面白いんだ?

作者:こんなのってなんだよ!!こんなのってぇ!!

テンルウ:こんなので十分だ、お前の小説なんて!

作者:あっそう………そう言う態度でくるわけ?テンルウ……

テンルウ:な………なんだその不適な笑みは………

作者:そんな事言うなら18禁書いて皆に見せてやるぅ~~~~~!!!

作者は走り去っていった。

テンルウ:ちょっと待て!!18禁って………まさか………

コウヘイ:お前とシオン王女ネタじゃないのか?

テンルウ:こ………困る………それは困る………

コウヘイ:困るのか?

テンルウ:俺とシオンだけの秘密が………

コウヘイ:なんだよ………それ………