Foreigners night × Forbidden heresy

北海道旅行記 エピソード6
 さて、笹川&緋河家主催野球大会を終えた一行は札幌市内のとある高級焼肉店(朝那御用達)へと来ていた。
 ちなみに、便宜上焼肉店と言ったが、ジンギスカンの専門店である。
「う、美味いっ!美味すぎる!!」
「へぇ、クセがあるって聞いてたけど、思ってたほどじゃないね」
「そりゃマトンの方だ。ラム肉はそこまでクセはない」
 ガツガツと勢い良く食べている藤田と、感心している雅にそう説明しているのは、
 そろそろ説明役が板についてきそうな響志郎である。
「っていうか、よく聞くけどさ、ラムとマトンって何が違うんだ?天夜、説明しろよ」
「…ったく。ラムは子羊でマトンは成羊なんだよ。ちなみにマトンの方が安価で臭い」
「ふ〜ん…出世魚みたいなもんか?」
「……まぁ、間違ってはいないかもしれないが」
 こちらはやはりガツガツと食べている詩巳に、面倒臭そうに説明している天夜である。
「零次も梢さんも来ていれば食べれたのになぁ。こんな美味しいもの食べれないとは可哀想に」
「うんうん、可哀想だよねぇ、お兄ちゃんも零次さんも」
「…とか言いつつ2人とも箸を休める気はないのね」
「いや、それとこれは関係ないし」
 言葉とは裏腹にやっぱりガツガツと食べている亨と美緒に呆れる涼子。
「……」
「眞昼?居心地悪そうだが、大丈夫か?」
「あ、は、はい…ちょっとこういう場は苦手なだけで…」
「そんなんじゃこれからの人生大変だぞー。あ、店員さん、この子に適当なお酒!」
「あの、私、未成年なんですけど」
「んっふっふ、年長者に従うのは年少者の務め。さぁ、飲むのだ」
「は、はぁ…」
 沙耶に強引に押し切られる形で、酒を飲み干す眞昼。
「……」
「おい、眞昼、大丈夫か?」
「…フ、フフフフフフフ」
「ま、まっぴー…?」
 いきなり含み笑いをしだした眞昼にちょっとヒく沙耶。
「フフフフフフフフフフフフフ」
「ちょっ、な、なんか、腹の底でとんでもない事考えてそうで怖いよ、この子?」
「いや、俺に言われても」
「フフフフフフフフフフフフフフフフフフ」
「彼氏ならなんとかしろーっ!」
「彼氏でも無理なものは無理です。俺も命は惜しい」
「フフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフ」
 とりあえず、そんな眞昼の笑みはまだずっと続く事になるのだが、それはまた少し後の話である。


「ところで、結婚生活というのはどんな感じなのだ?」
「え?え?えええ!?」
 直球勝負な質問をされて思わずどもる遥。
「…楓、一体何聞いてるんだ、お前は」
「結婚は女の夢だぞ。知らないのか、天夜?」
「…いや、お前の口から女の夢という単語が出た事には驚くが」
「っていうか、2人って許婚とかそういうのじゃなかったの?」
「ぶっ!?」
 遥の爆弾発言に思わず飲んでいたウーロン茶を噴き出してしまう天夜。
 楓の方は顔色を変えることはなかったが、なんだかこらえるようにしかめっ面になっていた。
 どうも照れているらしい。
「い、いや…違う…と言えば嘘になるのか?」
「そ、それよりも、私はそういう事を話した覚えはないのだが」
「…あ、気にしないで気にしないで。で、2人はその辺りどうなの?」
「私は天夜がいいって言えば、いつだって…」
「あのな、楓…お前は重要な事を忘れている」
「何?」
「…日本の法律じゃ、未成年は親の許可がないと結婚出来ないんだ」
「そうなのか!?」
「残念ながら」
 天夜の言葉に楓はがっくりと肩を下ろす。
「あ、あはは…で、でも2人とももう1年もしたら結婚出来るし」
「まぁ、そうなんだけど、生活が安定していない以上結婚する気はないぞ。俺フリーターだし」
「……」
「いや、誰かさんが猫拾ってきたり、むやみやたらとナイフ買って来たりするし」
「む…天夜だって、よく分からないロボットが出てくるゲームを買ってくるではないか」
「俺は程度が違う」
「む、むむむむむむ…」
 と、睨み合うバカップル2人。
「まぁまぁ2人とも、夫婦喧嘩は犬も食わないって言うし」
「それ、用法間違ってるわよ、姉さん」
「あれ?」


 そうこうしてる内に、食事も終わって再びテレビ塔に舞台は移る…
 のだが、その前に、
「う〜、く、苦しい…食べ過ぎた〜…」
「馬鹿だねぇ。自己管理はしっかりしとかないと」
「フフフフフフフフフフフフフフ」
「…こいつ残しておくと心配だな」
 というわけで、藤田、雅、勇人、眞昼脱落。


 さてさて、テレビ塔の展望台に入った他の面子(ただし、沙耶は雅にグッズ買うよう頼まれたので脱落)だが。
「うわ〜、凄〜い」
 と、窓の外を見渡してそんな声を上げる遥。
「うんうん、いい景色よね。実は私、地元民のクセに初めて来たんだけど」
「フッ…玲ちゃん、でも、それよりも美しいものを俺は知ってるよ」
「あ〜、はいはい。言わなくていいから。恥ずかしいから」
 と、言いつつも既に照れてる玲。
「知らなかったな…こんなに夜が綺麗なものだったなんて」
 街並を見ながら、楓はそうポツリと呟いた。
「楓…」
「ねえ、天夜…私は今、幸せでいいのか?」
 いつものクールな様子からは考えられないほど、不安そうに彼女は呟いた。
「……」
「そうしなきゃ、生きる事が出来なかったと言っても、私は沢山の人々をこの手で殺してしまった…。そんな私が、幸せになっていいはずがない…」
 楓はそう言いながら、震えていた。
「もし、私に罪を突きつけようとする者が現れたら、私は…」
「…お前はちゃんと償っているじゃないか。罪を罪だと思っているんだから」
「天夜…」
「それでも、お前を裁こうとする者が現われるなら…俺がお前を守る。たとえ…それがこの世界を敵に回す事だとしても、もう二度と側を離れない」
 そう言って、天夜は楓の肩を抱き寄せる。
「だから…心配するな」
「…うん」

「……え〜と、なんだか盛り上がってるとこ悪いんだけど」
「うぉわっ!?」
 唐突に後ろから声をかけられて、思わず驚愕の声を上げる天夜。
「は、遥さん?いつからそこに…」
「あ、たった今だから心配しないで。会話なんて聞いてないから」
「……」
「ふ、2人とも信じてない?」
「ああ、もちろん」
「そー言われても信じれない」
「うぅ…酷いよ」
 と、ちょっと落ち込む遥。どうやら本当に聞いていなかったらしい。
「で、一体何の用ですか、あんたは」
「あ、うんちょっとね…明日もみんなで北海道見て回るんだけど、付き合ってくれるよね?」
「拒否権なさそうな気がするからいいけど」
「うん、それじゃ、また明日、時間と場所は今日と同じでいい?」
「ああ」
「それと…」
 遥はそこで、楓の方を見ながらこう言った。
「出来れば、彼女と先に2人きりで話をしたいんだけど…」
「…私と?」
 その言葉に少し驚きの声を上げる楓。
「俺は別に構わないけど。楓の方は?」
「…私も、問題ない」
「うん、それじゃ明日、今日より30分くらい早く来てね」
「わかった」
 楓は少し訝しげに眼を細めたまま、そう頷いた。