長き時を経て

第3話
 シグルドたちは、進軍を開始した。
 豊な自然に囲まれた、森と湖の国ヴェルダン。
 そこが今、激戦の舞台へと変わる。
 その中にあって、ミデェールをはじめとする部隊は第一王子ガンドルフが守るマーファ城へ。シグルド率いる本隊は、第二王子キンボイスが守るジェノア城へと向かった。
 それとほぼ同時刻、ジェノア城のキンボイスはエバンスへと向かった。
 シグルド軍によって制圧されたエバンスを奪還するためである。
 双方の激突は必至であった。
 オイフェ、フィンの2人はシグルド軍本隊の方にいる。
 先頭に立って馬を進めるのは、なんと指揮官であるシグルドだった。
 それに続くのは、その親友キュアン。
 どちらも軍の中心たる存在であった。
「シグルド様、指揮官自らが先頭に立つのは危険ではないでしょうか」
 シグルドの傍らに控えるオイフェは、遠慮がちに自分の意見を述べた。
 指揮官が倒されてしまえば、軍というものは結束力が強くない限り霧散してしまう。
 そのために、普通指揮官自らが先頭を駆けるということはしない。
 シグルドもそれは重々承知していた。
「だがオイフェ、我々は圧倒的に人数が少ない。後方に控えていようと、変わらないよ」
 それならば自らが先頭に立つことで、全体の士気を高めた方がいい。
 少ない軍で、なおかつ指揮官が後方に引き下がっていたのでは兵も不安になる。
 が、シグルド自らが先頭に立ち、勇猛果敢に戦ってみせれば、兵たちも心強くなる。
 そのために前に出てきた。
「なるほど……差し出がましいことを口にして、申し訳ありませんでした」
 その言葉には二重の意味が込められている。
 一つは、余計な異論を挟んでしまったこと。
 もう一つは、ただでさえ少ない戦力を分散させてしまったこと。
 オイフェの表情からそれを読み取ったのか、シグルドは力強く言った。
「オイフェの意見は私の助けになっている。そう落ち込むことはない」
 シグルドという人は、人の心を掴むのがうまい人だった。
 しかもそれは計算的なものではなく、自然と掴んでいくような人だった。
 後にシグルドが民衆から高い人気を得て英雄となったのは、そうしたところに影響があるのかもしれない。
「シグルド!」
 と、そこでキュアンがシグルドに追いついてきた。
 キュアンは前方を指差し、見ろ、と言った。
 まだよくは見えないが、注視するとなにか、一団がこちらに向かってきている。
「キンボイスの部隊か」
「まず間違いあるまい。まずは私たちで出るぞ」
「ああ、行こう」
 途端、シグルドとキュアンは馬の速度を上げ、一気に前方へと駆け抜けてしまった。
 シグルドほど馬術に長けていないオイフェは、2人についていくことができない。
 どうするか、と思案していると、後方から蹄の音が聞こえてきた。
「オイフェ殿」
 見ると、フィンとエスリンだった。
 エスリンは杖を用いた回復役なので後方に。
 フィンはまだまだ未熟であるということから、エスリンの護衛を任されていたのだった。
「エスリン様、フィン殿」
「兄上たちはもう行ってしまったの?」
「ええ……」
「仕方ないわね、私たちもなるべく早く追いつきましょう」
 エスリンの指示によって、オイフェとフィンはシグルドたちの後を追うことになった。
 途中、何度かオイフェはフィンのことを見た。
 青髪の、律儀そうな顔つきをした少年。
 自分と年も境遇も変わらないはずなのだが、決定的に違う点があった。
 フィンは、戦っている。
 それに対しオイフェはまだいるだけの人であった。
 そのことが、オイフェに複雑な感情をもたらした。
 僅かな嫉妬と、そして敬意。
 フィンの方もオイフェという、自分と同年代の少年に興味を持っていた。
 戦いこそはしないものの、軍略に長け、指揮官の補佐役という重要な役割を担う。
 それを自分と同年代の少年が、と思うとフィンは不思議でならない。
 ところで、先頭の方では予想外のことが起きていた。
 シグルドとキュアンと激突したのは、やはりジェノアの部隊であった。
 その指揮官が、ジェノア城内にいると思われたキンボイスだったのである。
 当然それは、その部隊が主力であることを表している。
 シグルドとキュアンの部隊だけでは、少々きつかった。
 もう1つ予想外なのは、その部隊の中に女剣士がいたことであった。
 ヴェルダンは斧や弓を主流とし、剣を扱うものはあまりいない。
 それだけでもこの女剣士の存在が目立つというものだが、なにより人々の目を惹いたのはその強さだった。
 舞うように剣を振るい、敵を次々と倒していく。
 この女剣士が、シグルドやキュアンの部隊を防戦へと追いやっていったのである。
 その様子を後方から見ていたフィンは、迷わず救援に向かおうとした。
 主君の窮地に駆けつけるのは騎士として当然のことであり、フィンの行動は一般的に見れば決して間違いではない。
 しかし、そのフィンをオイフェは止めた。
「オイフェ殿、なぜ止めるのです」
「あなたがが駆けつけても大勢に変化はありません、やられるだけです」
「では、どうしろと」
「キンボイスが出向いている以上、ジェノアの守備は手薄になっているはずです」
 と、オイフェはジェノア城のある方向を指差して言った。
「そこでまず、我々は敵部隊を回りこんでジェノアへ向かいます」
「でも、敵も気づくんじゃないかしら」
 エスリンが当然の疑問を口にした。
 ジェノアへ向かう場合、平地を通るのがもっとも早く、その分敵に発見されやすい。
 騎兵である彼らの場合、森に入ると行動力を抑えられてしまうため、発見されないとしても時間がかかりすぎてしまう。
 が、オイフェは頭を振った。
「気づかれても問題はありません。あちらは歩兵、こちらは騎兵。追いつかれることはまずありませんし、十分ジェノア城制圧は可能ですよ」
 つまりオイフェの作戦とは、シグルドたちを囮とし、その隙にジェノア城を攻略してしまおうということだった。
 この作戦で、フィンたちにかかる負担は並大抵のものではない。
 城に控えている部隊がいるかもしれない。
 その部隊とキンボイスたちとに挟まれる可能性が高いのだ。
 しかし、これを断る理由など、フィンは持ち合わせていなかった。
 ただ、
「エスリン様はキュアン様の方へ……」
 と言った。
 自らの負担も増加する以上、自分よりは戦慣れしているキュアンの方についた方が安全だろう。
 それにこの作戦をシグルドたちに伝える者がいなければならない。
「分かった。任せて」
 エスリンも特に反対することなく、作戦は決まった。
 ただエスリンは少年2人を見つめて、指を立てた。
「でも約束。2人とも無茶しないで、危ないと思ったらきちんと逃げなさい」
「……分かりました」
 エスリンには、2人とも逆らえない。
 ただ神妙に頷き、エスリンを納得させた。
 それを確認すると、エスリンはすぐさまシグルドたちの元へ向かった。
 フィンたちも早々に移動しなければならない。
 敵部隊を回りこみながら、フィンはオイフェを見た。
「オイフェ殿はすごいですね」
「え?」
「いや、私はただ戦うことに手一杯で、全体を見て判断するということができないですから」
 素直に思ったことを口にする。
 オイフェはそれを聞いて、なにやら妙に照れくさくなった。
「僕はそれしかできないですから。フィン殿のように、戦うことができないのが悔しいです」
「それならば、私たち2人揃えば1人前といったところでしょうか」
「ああ、なるほど。そういう考え方もありですね」
 フィンの言い方に、オイフェは感心した。
 あまり複雑な思考をしないだけに、かえってはっきりとした結論を出す。
 フィンのそういった部分に、オイフェは好感を覚えた。
「では向かいましょう、フィン殿」
「ええ、それと――」
「なにか?」
「いえフィン殿、というのは堅苦しい気もしますので。私のことは、フィンで結構です」
「そうですか、それならば僕の方もオイフェで」
 言い合って、2人は静かに笑った。
 このやり取りの中で、2人は密かに互いの主君のことを思っていたのかもしれない。
 2人はわずかな部隊を引き連れて、ジェノア城へと向かった。
 シグルドたちは、思っていた以上に敵が手ごわいことを痛感していた。
 キュアン隊と合わせて、キンボイス率いる軍勢と激戦を繰り広げているが、まるで進むことが出来ない。
 それどころか時間が経つにつれて、被害は増すばかりであった。
 全ては1人の女剣士の、勇猛な働きによるものだった。
 彼女の名はアイラ。
 ここヴェルダンの地より遥か北東、イザーク王国の王女である。
 グランベルとの全面戦争の際、国家存続の希望となったシャナンという王子を連れて脱出するよう、兄であるマリクル王に言われていたのである。
 その後どうにかヴェルダンの地まで到着したはいいが、そこで路銀が尽きた。
 シャナンを食べさせていくのに困っていた彼女は、仕方なく持ち前の剣技を活かし、傭兵家業を営んでいた。
 その折、グランベルとの戦争に備えてキンボイスが傭兵を募集した。
 アイラは募集に応じ、キンボイスの元へ向かった。
 ところがそこで不測の事態が起きた。
キンボイスに、シャナンを人質にされてしまったのである。
シャナンを取り戻すための条件は、エバンス城の奪還であった。
 彼女のこの決死の働きは、祖国の敵であるグランベルへの憎悪と、シャナンを無事助けたいという願いからきていた。
 彼女にとってシャナンは、イザークの希望であるだけでなく、甥でもあった。
 まだ幼い甥を無事に助けたいと願うのは、当然のことであった。
「お前がグランベル軍の指揮官か」
 その思いと、イザーク王家特有の剣術の強さによって、彼女はシグルドの眼前まで迫ってきた。
 シグルドも彼女の目に、なにか並々ならぬものを見たのだろう。
「ああ、私はシアルフィ公子、シグルドだ」
 と、剣を抜き放ちながら名乗った。
 アイラはその礼儀正しさと、誠実さを思わせる声に一瞬戦気を萎えさせられたが、すぐ に殺気だった顔に戻り、シグルドに剣を向けた。
「我が名はアイラ。いざ、参る!」
 それは凄まじい戦いであった。
 イザーク王家は、代々剣技を受け継いできた家系であり、その先祖は12の聖戦士が1人、剣聖とうたわれたオードである。
 剣技に関しては右に出るものがいないと言われているだけあって、女性と言えどもアイラは並の剣士とは比較にならない強さをほこる。
 後年、現在人質にとられているシャナンや、アイラの子であるスカサハ、ラクチェの兄妹も剣士として大陸中に名を広めていることから、この一家の剣技の強さがうかがえる。
 が、シグルドとて負けてはいない。
 オードと同じく、剣を扱った聖戦士バルドを祖に持つ直系の騎士である。
 日頃から剣技の鍛錬も欠かしていない。
 この勝負も、どちらかというとシグルドに有利な展開であった。
 しかしシグルドはあるモノに警戒していた。
 イザーク王家には、代々伝えられている技というものがある。
 シグルドも話に聞く程度でしか知らないが、それは流星剣と呼ばれるものだった。
 流星の如き動きにて、瞬時に敵を五度切り裂く、と伝えられている。
 もしも眼前のアイラがその技を使えるのだとしたら、今は有利だとしてもいつ逆転されるか分からない。
 アイラはその流星剣を既に体得していた。
 虎視眈々とシグルドの隙をうかがっている。
 僅かな隙を見つければ、瞬時に流星剣を放つつもりであった。
 アイラにとって流星剣は絶対の必殺技である。
 流星剣を前にして、倒れなかった者はいなかった。
 だから、アイラは十分この戦いに勝機を見出している。
(流星剣さえ、放つことができれば――――)
 ところが、戦いの最中にキンボイス部隊が撤退を始めてしまった。
 味方の退却を、アイラは知らない。
 シグルドは、意識をよほど集中させないと戦うことの出来ない、アイラにとっては初めての難敵であった。
 それはシグルドにとっても同様らしい。
 アイラとの一戦に集中するあまり、全体を見るゆとりがなくなってしまっていた。
 シグルドからやや離れた位置にいて戦っていたキュアンは、エスリンから聞かされてこの異常に気づいた。
 フィンたちがジェノアに接近していることを、敵が気づいたのである。
「追撃する」
 キュアンは自らの部隊にそう命じて、シグルド隊を置いて前進した。
 アイラとその配下数人ならば、シグルド隊に任せてても大丈夫だろうと見たのである。
 それよりも問題はフィンとオイフェであった。
 フィンはまだ騎士見習いという立場から、配下はほとんどいない。
 オイフェに至っては配下など引き連れていないのである。
 実質、フィンの部隊のみがジェノアへと向かったことになる。
 ジェノアを攻略するだけならば、そう難しいことはない。
 キンボイスは軍勢のほとんどを城から出してしまっていたからである。
 ところが、今やその軍勢のほとんどがジェノアに引き返しつつある。
 フィンの部隊は、挟み撃ちの形になった。
「助けにいかないとまずい」
 キュアンはエスリンにそう言い放ち、自らの馬を先頭に走らせて部下を鼓舞した。
「急げ! ジェノア城を落とすんだ!」
 そのキュアンの声で、ようやくアイラも異常を悟った。
 流れるような動きでシグルドから離れ、部下を引き連れて物凄い速度で引き返していく。
「我々も向かうぞ!」
 シグルドもそこでようやく動き、敵味方入り乱れながら全軍はジェノア城へと向かった。
 ジェノア城は、異変に気づくのが遅すぎた。
 平時戦いの訓練などしていないためか、見張りなどもいない時が多く、その点は蛮族らしく統率がまるでなっていなかった。
 だからか、フィン隊が城門を突き破って突入するなり、ヴェルダン兵はろくに応戦もせずに逃げ出す者がほとんどだった。
 彼らからすれば、敵がここまできたということは本隊が敗れたということであり、この城を守っても無駄死にするということである。
 城の守備兵の中にも傭兵が多くいたため、彼らは利にならぬと見るや、鮮やかに逃げ出した。
 そのため、フィン隊は予想以上にあっさりとジェノア城を陥落させることができた。
 多少の戦いはあったが、ほとんど被害は出ていない。
「こうもあっさりいくとは……」
 フィンとしては、うまく物事が進みすぎているだけにかえって不気味であった。
 が、オイフェはそうではない。
 すぐさま城門を固く閉めるように兵たちに命じた。
 このままキンボイス軍がここに戻ってきた場合、城門を開けっ放しにしておくと危険だからである。
 さらに、いくつかある門の中からもっとも小さい北門だけは、開けておくように命じた。
 フィンの部隊は少数ゆえに大勢と戦いことはできない。
 しかし小さき門を1つだけ開けておけば、敵はそこから入ろうとする。
 そこで、フィンの部隊は応戦するのである。
 一度に多くの敵と戦わなくて済むため、そこそこ善戦はできるはずであった。
 またオイフェは、すぐさまシグルド、キュアン隊へと伝令をやった。
 もしもシグルドたちがこちらへ着てくれなければ、彼らは孤軍となってしまうのである。
「さすがに手際がいいですね」
 フィンは、オイフェの軍師としての動きに目を見張っていた。
 が、いつまでもそうしているわけにもいかないので、彼は彼で、2、3の部下と共に城内を見て回った。
 まだ伏兵が潜んでいる可能性があるためであった。
 しばらく見て回った後、厳重に鍵がかけられている部屋を見つけた。
「なにかあるのか……?」
 と呟くと、扉の向こう側から、
「誰?」
 という声が返ってきた。
 まだ幼い少年の声のようだった。
「閉じ込められているのか?」
「うん……キンボイスのやつが、アイラを戦わせるためにって」
「人質、か……卑怯な真似を」
「ところで、誰?」
 少年の声には、未だ警戒心があった。
 フィンは律儀な男だから、少年相手にもきちんと名乗った。
「レンスター王家に仕える騎士……見習い、フィン」
「レンスター?」
「分からないならそれでいい。それよりも鍵が開けられそうにないから扉を突き破る。少し扉から離れてくれないか?」
「あ、うん」
 フィンの誠実な雰囲気を読み取ったのか、声の少年は素直に応じた。
 やがてフィンは、部下と共に扉に体当たりをして、どうにかこじ開けることに成功した。
 部屋の中を見回すと、黒髪の少年が1人、立っていた。
 どこか気品を感じさせるその雰囲気に、フィンは一瞬呑まれたような気がした。
 が、それを振り払って、少年の肩に手を置いた。
「もう大丈夫だ」
 そう告げるフィンのことがとても頼もしく見えたと、後にこの少年――――イザークの王子、シャナンは語っている。
 その後、オイフェの読み通りに事は進み、キンボイス軍は城へ入ることも出来ず、追撃してきたシグルド軍の手によって壊滅した。
 その際シャナンが助け出されたことをシグルドはアイラに語り、アイラも自らの素性をシグルドに告げた。
 最初シグルドは驚いていたが、敵国の王族であるシャナンとアイラを、喜んで保護することを約束した。
 このあたりが、シグルドという男の不思議な魅力であろう。
 アイラは、グランベル憎しという気持ちは変わらないが、シグルドに受けた恩に報いるために、シグルドと共に戦うことを誓った。
 義理堅さはイザークの民によく見られる性格の特長である。
 一方ミデェールたちは、マーファ城へと進行。
 途中、教会に隠れている公女エーディンを発見、無事に保護する。
 なぜ捕らわれていたエーディンが教会に隠れていたのかは、エーディン自身が語った。
 なんと、ヴェルダン第三王子であるジャムカがエーディンを逃がしてくれたのだという。
 その際、エーディンの護衛代わりとして、同じく捕まっていた(こちらは自業自得だが)デューという少年もジャムカによって逃がされている。
 デューという少年は幼いながらも盗賊として働き、そのことによってヴェルダン軍に捕まってしまったのだという。
 偶然エーディンと向かい合わせの獄に入れられたことから親しくなり、エーディンに諭されて盗賊を止めると約束し、共に脱出した。
 ヴェルダン軍第一王子ガンドルフはこのことを知り激怒したが、そのときジャムカはマーファ城から離れ、北西のヴェルダン城へと戻ってしまっていた。
 さらにエーディンたちも城を離れた後だったため、すぐさま追撃部隊を用意。この追撃部隊からエーディンがどうにか逃げ切れていたのは、デューの働きが大きかった。
 ミデェールはエーディンとデューを保護し、すぐさま追ってきた部隊を蹴散らした。
 斧を巧みに扱うドズル家のレックス公子、炎の魔法に長けているヴェルトマー家のアゼル公子などが同行していたため、ヴェルダン勢はあっさりと壊滅した。
 どちらの家も、シグルドのシアルフィ家と同様、グランベルの中枢を担う家なのである。
 統率力、兵の個々の強さなど、ヴェルダンよりも遥かに上であった。
 その後シグルドたちと合流したミデェールは、以前の借りを返すかのように、マーファ城を守っていたガンドルフの胸に矢を放ち、これを倒した。
 死に際ガンドルフは、妻にしようと思ってさらったエーディンに逃げられたこと、城を攻められたことの不幸を呪って逝ったが、それはお門違いというやつであろう。
 実質的に、グランベル侵攻の指揮を執っていた男は死んだ。
 しかし、シグルドたちは外交上の関係で、このまま本国へ帰るわけにはいかない。
 ヴェルダン城へと、向かわねばならなかった。