異法人の夜-Foreigners night-

-第一部-
プロローグ「月下の孤独」
 世界はいくつもの法によって出来ている。しかし、稀にその法から外れた者たちが現れることがある。
 その者たちは、普通の人間とは異なる力を持っていた。
 普通ならば絶対に出来ないこと。それが出来るからと言って、彼らを羨ましがってはいけない。
 彼らは異質。世界の当たり前から外れた存在である。当り前の世界に、彼らの居場所はほとんどない。
 周囲の全てが自分とは違う。それは孤高よりもなお寂しい孤独である。
 理解しあえる味方はいない。理解してくれない敵ならば大勢いる。
 彼らにとって、世界とはそういうものだった。

 他人とは違う自分。自分とは違う他人。見えない境界線によって遮られた世界。
 それも、夜には薄くなる。
 だから、彼らは夜に生きた。

 傷だらけの身体を引きずって、少年は庭に出た。
 家の中にいるのは嫌だった。恐い人が沢山いる。しかしそんな人々は、少年の方こそが恐いと言う。
 分からない。少年には理解できない。
 確かに普通の人とは違う力を持っている。だからと言って、なぜあんなにも殴られなければいけないのか。なぜ、あんなに嫌われなければならないのか。
 昼は嫌いだった。普通の人々が起きているからだ。
 彼らが起きている限り、自分は蹂躙され続ける。そのことを、少年は幼いながらも理解していた。
 夜は好きだった。普通の人は眠りにつき、殴られることも罵られることもない。誰もいない自分だけの世界で、くるくると自由に動き回る。
 夜こそが少年の世界。異質な自分に許された、唯一の世界。
 雲の合間から顔をのぞかせた月は、静かに優しく少年を照らし出す。
 閉ざされた闇の中。少年は独り、くるくると動き続けた。
 その動きは楽しげに。
 その顔は、寂しげに。