異法人の夜-Foreigners night-

-第一部-
第二話「出会いの夜」
 梢は運命というものをさほど信じていない。
「運命なんて、人の言い訳の一種に過ぎない」
 と、言うのが彼の持論だった。
 しかしこの日ばかりは、梢も運命というものの存在を実感することになる。

「さて、と」
 時刻は深夜。町の中心地からは遠く離れた郊外の地に、梢は一人でやって来ていた。いつも一緒に行動している相棒の吉崎の姿はない。
 目立たないように黒いコートを着用し、梢はここまで走ってきた。
 手元のカードに書かれた地図を見て、再度確認する。この場所に違いなかった。
「それじゃ、いくか」
 その言葉とともに梢の身体は宙を舞う。一回転して建物の屋上へと飛び移り、屋上の扉に手をかけた。
 だが動かない。どうも鍵がかかっているようだった。
「まいったな」
 梢はピッキングなどできない。吉崎がいれば頼むことも出来たのだろうが、生憎今夜は一人だ。
 考えること数分――結局いい案が思い浮かばず、梢は強引に扉を蹴破った。
「最初っからこうすればよかったな」
 中に足を踏み入れようとしたところで、屋上への階段を駆け上ってくる音がした。一人や二人ではない。
 足音の主たちはすぐさまやって来た。ライトで屋上の周囲を丹念に照らし、何者かいないか、と探しているようだった。
 ……なんだ、素人じゃねえか。
 梢は機関の人々の間に紛れ込んでいた。巧みにライトを避けながら、堂々と「誰かいたか」などと言ってみたりする。意外なことに、誰も気づかない。闇が深いこともあるが、その動き一つ一つを取って見ても、玄人ではない。
「既に内部に侵入したんじゃないか」
 調子に乗ってそんなことを言ってみる。
「それはまずいな」
 機関の研究員たちは慌てて戻っていく。梢はその中の一人に当身を食らわせて、白衣とIDカードをいただいた。
 気絶させた男を植物で屋上に縛りつけ、梢は悠々と施設の中へと入って行った。

 内部に入ってまず感じたのはこの施設の広さである。
 一つの階にいったいいくつの部屋があるのか。梢は途中まで考えて、やめた。
 ……とりあえずお仲間がいるなら助けてやらねえと。
 今回の一番の目的はそれである。こんなところで実験動物として扱われている者がいるならば助けてやりたかった。
 建物中を歩くうちに、梢は『第一研究室』と書かれた部屋を見つけた。
 ……中に誰かいるな。
 気配がする。それは、梢のように気配を感じることに長けた者でなければ、見逃してしまうような微弱なものだった。
 梢は迷わずに扉を開けた。探している"お仲間"なら助ければ良し、研究員なら黙らせればいい。
 中は真っ暗だった。人の気配はするのに電気はついていない。
 ……何か妙だな?
 梢はためらいながら、スイッチらしきものを切り替えた。電気の代わりに、何か妙な機械が作動する。重い音が響く中、部屋に青白い光が浮かび上がった。
「な、なんだ?」
 視線は光へと、光は部屋の中央へと向けられる。そこには、ガラスケースの中に横たわる一人の少女がいた。
 黒髪のロングに、やや細身の身体。服装は町で普通の女の子が着ているものとそう変わらない。日本的な美人、と言った感じである。
 眠っている。しかし寝息もろくに聞こえてこない。かろうじて呼吸をしているだけの、いやに機械的な眠り方であった。
 ガラスケースが開かれる。梢は慎重に、少女の元に歩み寄った。
「……おい?」
 軽く揺さぶってみる。起きる気配はなかった。まるで死んでいるようにも見える。
 少し視線を動かすと、試験体と書かれたプレートがあった。
 ……こいつだ。
 眠っている少女を見ながら梢は確信した。この少女が自分の同類であることを。
 もう一度、今度は少し強く揺さぶる。少女は暫く身動ぎ、やがてゆっくりと目を覚ました。不思議そうに梢を眺める。
「よう、おはようさん」
「……おはよう、ございます」
 その声色はどこか沈んでいる。
「また、実験……?」
「実験? いや、違う」
 そこまで言って梢は自分が研究者と同じ白衣を着ていることを思い出した。苦笑しながら訂正する。
「俺はこんな格好をしちゃいるが、ここの人間じゃない。お前を助けに来たんだ」
 それを聞いて少女の表情が驚きに変わる。
「……本当?」
「嘘言ってどうする。なんなら証拠見せてやるよ。ほら」
 と、手元からいくつかの葉っぱを出す。だが、それだけでは味気ないと思い、梢は少し考えた。
「こんなのとか」
 ぽん、と手のひらに薔薇の花束が現れる。それを見て、少女は笑っていた。
「面白いね、君って」
 そう言われて梢は急に気恥ずかしくなり、慌てて薔薇を消した。
 ……似合わないことするもんじゃねぇな。
 無性に恥ずかしい。調子に少し乗り過ぎた。
「俺は君なんて名前じゃないがな。……倉凪梢だ」
「私は遥。遥か彼方の遥だよ」
 遥の声は少し弾んでいた。心を開いてくれているようで、嬉しくもあり、照れくさくもある。
「苗字は? いきなり名前で呼ぶのもなんだし」
 どうも初対面の人間を名前で呼ぶのには抵抗がある。だから尋ねたのだが、梢はそれをすぐに後悔した。
 遥の表情が曇ったのだ。
「ごめん、私苗字分からないの」
 それが何を意味するのか。いくつかの想像が脳裏に浮かぶが、梢はすぐさまそれらを弾き出した。あれこれといらぬ推測をするのは好きではない。
「悪い。それじゃ遥でいいのか?」
「うん。私も梢君って呼ぶよ」
「やめろ」
 梢は顔を赤らめてそっぽを向いた。異性で自分のことを名前で呼ぶ人などいなかった。だから不慣れなのだ。むずがゆい気持ちになる。
「そっか……じゃ倉凪君でいいかな」
「ああ、そうしてくれ」
 遥は残念そうだった。少しばかり罪悪感はあったが、今更名前でいいとも言えない。
 と、そこで数人の足音が聞こえてきた。どうも先程の機械を作動させたせいで、梢の侵入が気づかれたらしい。
「なぁ、もうすぐここの研究員が来るみたいだぞ」
「うん。私にも足音聞こえるよ」
「どうする?」
 敢えて梢は尋ねる。遥は少しだけ考えて、
「倉凪君、ちょっと手を出してくれないかな」
「こうか?」
 言われた通り遥の前に手を差し出す。するといきなり、手を握り締められた。
「なっ、おい!?」
 異性への免疫がないせいか、うろたえてしまう。しかし遥は構わず梢の手を握り続けていた。
 やがて。
「うん、外に行きたいな」
 そう言って遥は手を離した。
「倉凪君なら信じられるから」
 遥は笑う。だが、梢はどうにも落ち着かない。
「なんでそんなことが分かるんだよ」
「それが私の力だから」
 あっ、と梢は息を呑んだ。遥のペースに惑わされて、彼女が自分の同類であることを忘れていたのだ。
「触れることで、分かるんだ。その人の心とか、そういったものが……ものすごく曖昧なんだけどね」
「そうか」
 自分のものより厄介な力だな、と梢は思った。触れることで相手の心が分かる。それは、便利なようでいてとても恐ろしい。
「ごめんね、試すようなことして」
 遥は謝ってきた。あまり自分の力を、良いものと考えていないようだった。
「気にするな。初対面の相手をすぐに根拠もなく信用出来るほうがおかしい」
 梢は今までの経験から、信用すること、されることの大変さを知っている。だからか、きちんと信用する相手を選ぼうとする少女に、むしろ好感を覚えていた。
 そうしているうちに、研究員たちの足音が近づいてくる。
「よし、行くか」
「うん、よろしくね」
 梢は遥の手を取って立ち上がらせる。二人はそのまま、扉の外へと駆け出していった。

 同時刻。梢が潜入している研究施設の前に、一台の車が停まった。
「ここだな、奴らのアジトは」
 中から出てくるなり、青年はそう言い放つ。年の頃は梢と同じぐらい。涼しい表情をした、美男と言っていいであろう容姿の持ち主だった。ただ、どこか冷たい印象を人に与える。
「僕らもついていきましょうか?」
 車の中にいた仲間の一人が尋ねる。しかし少年は首を振って、その提案を断った。
「俺一人で結構だ。何かあれば呼ぶ。ここで待機していてくれ」
「そうですか。ではお気をつけて、零次」
「……あまり、無理はするな」
「ま、心配いらねえだろ」
 運転手らしき男がそう言ったとき、既に零次と呼ばれた青年はその場にいなかった。

 暗い通路を、梢と遥は走っていた。
「大丈夫か」
 少しペースが遅れてきた遥に声をかける。遥は黙ったまま頷いて見せた。しかし、無理をしているのは明らかだ。
 ……まだ麻酔の効果がきれてねぇのか。
 そのうちに非常階段のところへと到着する。現在梢たちは三階にいた。見降ろす風景の高さに、遥はたじろぐ。
「じゃ、ちょっと失礼っ!」
「えっ?」
 そう言うとすぐさま梢は遥を抱きかかえ、非常階段から飛び降りた。
「えっ、えぇぇぇぇ!!」
 突然のことに思わず大きな声をあげる遥。対する梢は気楽な表情のまま地面へと着地した。
「す、すごいね」
「なんだ、お前は出来ないのか」
「うん……ちょっと無理、かな」
 ……なるほど。俺と全くの同類ってわけじゃないらしい。
 遥は特殊な力こそあれ、肉体的には普通の人間とそう変わらないようだった。そう考えると、ますます自分の身体能力が異常な気がしてくる。
 ……いや、兄貴も俺と似たような芸当やってたよな。
 そう考えてどうにか自分だけがおかしいという疑念を振り払う。
「お兄さん?」
 と、遥が梢の心を読んだかのようにして尋ねてくる。
 ……あ、そういやまだ抱きかかえたままだったな。
 つまり、実際に読んだのだろう。触れることで相手の心を読むのが彼女の能力なのだから。
 梢はそっと彼女を降ろす。
「本当の兄貴じゃないけどな。俺が最初に出会った"お仲間"だよ」
「へぇ、そうなんだ」
 言い方はあっさりしているが遥は会話一つ一つをとても楽しんでいるようだった。だからかどうかは知らないが、梢も不思議と心が和む。
「さぁ、さっさと逃げるぞ」
 再び遥の手を引く。
「――――――そうはいかない」
 そこに、冷たい声が割り込んだ。
 二人の間に緊張が走る。即座に声のする方に視線を向けた。そこに、ダークスーツを着込んだ青年が立っている。
「彼女を渡してもらおう」
 不機嫌そうな表情で、青年は二人に向かって告げた。その眼光は、鋭い。どう考えても友好的な態度ではなかった。
 ……なんだ、この野郎は。
 梢も敵意を剥き出しにして男を睨む。
「なんなんだ、お前は」
「答える義理はない。渡すか渡さないかだけを答えてもらう」
「なら答えはノーだ」
 梢は吐き捨てながら、遥を後ろにやった。
 場の緊迫感は高まっていく。梢の額から汗が流れ落ちた。
 研究所の人間には見えない。だが、普通の人間とも思えない。
「そうか」
 黒服の青年は残念そうに頭を振ると、梢を冷たい眼で睨みつけた。
「――ならば貴様を排除する!」
 鋭い音を立てて男が突撃してくる。
 ……速ぇっ!
 凄まじい速度で迫る男の攻撃を、梢は両腕でどうにか防いだ。しかしそのまま利き腕を掴まれ、地面に叩きつけられてしまう。
 衝撃に眩暈がした。しかしそれに負けてはいられない。即座に掴まれた腕を振りほどき、身体のバネを利用して勢いをつけたまま、相手の顔に蹴りを放つ。その攻撃も相手の膝によって阻まれる。梢はすぐさま飛び退いた。
 ……こいつ、素人じゃねえ。
 今までにない緊張感が梢を支配する。だが相手の男にはいくらか余裕があるようだった。
「素人ではないらしい。だが、玄人と呼ぶほどでもないな」
 両者の間には実力差がある。僅かな攻防だったが、梢はそれを痛感した。
 ……やばいな。
 梢は遥を守りながら戦わねばならない。その上相手の方が強いとあれば、不利は決定的だった。
「貴様は能力者のようだな。それがなぜ機関に所属している」
 黒服の青年の問いかけに、梢は今自分がまだ研究員の白衣を着ていることを思い出した。
「はっ、俺は別にこの機関の人間じゃねえよ」
「ほう、ならば何者だ」
 黒服の男は怪訝そうな表情を浮かべる。それに梢が答えようとしたとき、周囲にいくつもの気配が現れた。
「見つけたぞ!」
 ここの研究員たちである。
 ……これだ!
 傍らの遥の手に触れ、自分の思考を伝える。遥は黙ったまま頷いた。
「この男が侵入者だ!」
 梢は黒服の男を指差して叫んだ。周囲は真夜中だけあって薄暗い。白衣を着ていることもあって、梢のことを部外者だと思う者はいなかった。梢の言葉で扇動された研究員たちが男を取り囲む。
「その男の目的はこの女だ! 私はこの女を連れて逃げるから、そちらは頼む!」
 普通の人間に過ぎない研究員がどれだけの時間稼ぎになるかは分からない。だから、梢はそう言うとすぐさま遥を連れて駆け出した。
「くっ、貴様……どういうつもりだ!」
 黒服の男が叫ぶ。その周囲を研究員たちが取り囲む。
「逃がすか!」
 それは研究員の叫びか、はたまた黒服の男の叫びか。そんなものを判断している余裕など二人にはない。
「あいつ、俺より強い。追いつかれたら終わりだ。もっと速く走るぞ!」
「う、うん……分かった!」
 遥は辛そうだったが、梢は走る速度を落とさなかった。そうでもしないと追いつかれる。追いつかれたら勝てない。
 ……騒ぎを大きくしておいたほうがよさどうだな。少しでも時間を稼ぎたい。
 そう判断すると、梢はすぐさま自身の能力を発動させた。
 途端、研究施設から爆発が起き始める。梢が施設の地下に大量の植物を、建物を下から上へと貫くようにと一気に具現化したのである。
 結果、大量の機材が破損し、中にはいくつか爆発を起こすものまであった。そのまま二人は施設の門から飛び出る。
 そこには、意外な人物が待っていた。
「よう、倉凪。それに、可愛いお嬢さん」
「吉崎!?」
 今日は危険だから来ないと言っていたはずの友人がいる。梢は戸惑った。
「話はあとだ、三人乗りはちとキツイが、かっ飛ばすぜ」
「お、おうっ」
「お願いしますっ」
 梢は遥と共に吉崎のバイクに乗り込む。
「追われてる、市街地まで最高速度で頼む」
「アイアイサー!」
「しっかり捕まってろっ」
「はいっ」
「――GO!」
 その声と同時に、バイクは常識はずれのスピードで走り出した。

「仲間がいたか……」
 バイクが彼方へ消えていくのを眺めながら、黒服の男――久坂零次は拳を握り締めた。
 大失態である。あの少女を救出、保護するのが目的だった。しかし、何者とも知れない男によって任務は失敗に終った。今までにない屈辱感が零次を締め付ける。
 そこに、一台の車が駆けつけた。中から仲間が出てくる。
 矢崎刃、矢崎亨、霧島直人。皆、零次と同じ組織に属する同類たちである。
「随分派手な事態になりましたねぇ」
 呆れたような、驚いたような様子でぼろぼろになった建物を見て、矢崎亨が言った。その兄である刃は何も言わない。寡黙な大男である。
「お嬢ちゃんの方は失敗したか。何か戦ってる気配があったけど、誰かに邪魔されたか。この惨状も、そいつの仕業か?」
 すらりとした体躯の霧島直人が尋ねた。
「思慮の浅そうな男だった。実力もたいしたことはない――失敗は、俺の油断が原因だ」
「そう言うな。俺らが動かなかったことにも原因はある。連帯責任ってやつだ」
 そう言って霧島は零次の肩を叩く。亨はやや不服そうだった。
「嫌だなぁ、連帯責任なんて」
「亨」
「分かってるよ兄さん。問題はうまいこと僕らの眼を潜り抜けてここから逃げおおせた、その邪魔者でしょ」
「今後注意する必要があるかもしれねぇな」
 霧島が面倒くさそうに周囲を見渡す。現場に残されているのは梢の植物によって破壊された建物と、零次に叩きのめされた研究員たち。
「後始末、面倒くせぇ」
「確かに」
 苦笑する霧島と亨。対する刃は特に何も言わない。零次は、じっと梢たちの走り去った方を見ていた。
 ……次会ったときは、必ず今日の借りを返す。
 苦々しげに、零次はそう誓った。

 榊原宅のリビングにて。深夜の二時過ぎという時間帯ながら、その場には梢、吉崎、美緒、そして梢たちの養父である榊原がいた。
 どうにか家に戻った梢を待っていたのは慌てふためく美緒と、仕事を終えて帰宅していた榊原だった。
 無理をして動いていたのか、遥は倉凪宅に到着する頃には既に意識を失っていた。榊原は単なる疲労と診て、今は客室の布団で眠らせている。
 そして今、梢は事情を榊原に話していた。
「――と、いう訳だ」
「成る程。馬鹿弟子め、また無茶をしたもんだな」
「うるせぇ鬼師匠、あんたの影響だ」
「あん、なんか言ったか?」
「おう、言ったぞ」
「二人とも、喧嘩しちゃ駄目だよっ」
 この家族は万事この調子である。なにかにつけて榊原と梢は喧嘩をし、それを美緒がなだめる。そういう図式になっている。
「でもなんで吉崎があそこにいたんだ?」
「お前のことだから本当に一人で、しかもすぐに行っちまってるんじゃないかと思って美緒ちゃんに電話で聞いたんだよ」
「それで私が頼んだの。お兄ちゃん、吉崎さんいないとどこか抜けてるところあるから心配だって」
「まるで信用ないのな、俺」
 実際助かったわけなのでなんとも言えないのだが。
「だがお前の見た黒服の男、気になるな」
「師匠、心当たりあるのか?」
「ない。ただ、何かきな臭いな。そもそも、研究機関は結局ただの人間の集まりだったわけだ。そんな連中がどういう経緯であの少女を捕らえたのかが分からない」
「何かまだ裏があるとでも?」
「ああ、こいつは俺の直感だが……組織的な力が動いているような気がする」
 こういうとき榊原の直感は鋭い。現場で鍛え上げられた力というよりは、榊原特有の才能と言ってもいい。
「なんにせよ遥を一人にしとくのは危険だ。俺はここでしばらく匿ってやった方がいいと思うんだが」
 梢の言葉に一同は頷く。
「なんにせよこの事件はこれで終わりではないだろう。お前たち、これからは一層気をつけろよ」
「ああ」
 この事件はこれで終わりではない。それは梢も分かっていた。
 ……あの野郎、次は絶対負けねえ。
 梢は拳を握り締めながら、そう誓うのだった。