異法人の夜-Foreigners night-

-第二部-
第十七話「彼女の場合」
 ぐにゃりと世界が歪んでいる。
 暗いのか明るいのかも分からない場所で、心が落ち着きなく右往左往している。
 何を考えているのか分からない。何を考えればいいのか分からない。何を見ればいいのか分からない。何を信じればいいのか分からない。
 胸の内から込み上げてくるのは、悲しさなのか、不快感なのか、悔しさなのか。
 何もかも放り出してしまいたい。けれど、重すぎて捨てることも出来ない。
 私は何を背負っているのだろう。
 本当は分かっている。この苦しみの原因が何なのか、知っている。
 それでも――その正体を直視出来ない。
 なぜ向き合うことが出来ないのか。それさえ分からないまま、いたずらに時間が過ぎていく。
 徐々に意識がはっきりしてきたのは、気怠さのせいだった。
 気持ち悪い。よく分からないが、吐き気がする。
 ふらふらと、自分がどこにいるのかも分からないまま外に出る。
 そこで思い切り吐いた。
 身体の中のいろいろなものを、全部ぶちまけた。
 それでも、気持ち悪い。頭も痛いし、最悪の気分だった。
 ……こういうときは、どうするんだっけ。
 ぼんやりと、その場に立ち尽くす。いつもなら、こうしていれば、誰かが声をかけてくれた。すぐに駆けつけてくれる誰かがいた。
 身体が冷えて、何だか熱い。
 ……どうしよう。
 本当に、どうすればいいか分からない。ここでこうしているのは違う。なら、どうすればいいのだろう。
 分からない。
 何も分からない。
 ――昔はいつもこうだった。
 物心のつく頃、彼女は実験材料として扱われていた。
 人間として扱われない環境にいた。自由はなく、希望もなく、ただ日々の苦痛をいかにして和らげるか、ということだけを考えていた。
 なぜ自分がこんな目に合うのか、考えたことはなかった。考えたところで救いがあるわけでもない。むしろ、何も考えない方が楽だと思うようになった。
 それからの彼女は、ずっと人形だった。
 今の彼女もそうだ。人間のように振舞っていた人形。ゼンマイが切れて、もう動くことが出来なくなった、ただの人形。
 そうなってしまえば、どんなに楽だろう。
 熱い。寒い。痛い。苦しい。辛い。悲しい。
 ……違う。
 自分は人形などではない。そうなりたいと思ってもなれない。
「……寒いな」
 縁側に一人、横たわっていた。
 ようやく、少しだけ正気に戻れた気がする。
 倒れたまま、降りしきる雪を眺める。
 白い。いったいいつまで振り続けるのだろう。
 雪の白さは、あの光景を思い出させる。
 力なく横たわる彼。そして、踵を返して消えていった包帯男。
 ……そうだ。
 遥の意識は――そこでガチリと固定された。
「あいつが」
 あの包帯男が、彼を殺した。
「殺したんだ」
 大好きだったのに。
 ずっと一緒にいたかったのに。
 思いが報われなくても、ただ生きていて欲しかったのに。
 あの包帯男が、斬り捨てた。
「……そうだ。やらないと」
 全身に力がみなぎってくるようだった。
 こんなところで泣き崩れている場合ではない。か弱いままでいたところで、助けてくれる人はもういないのだ。
 ならば動くしかない。
「仇討ちだ」
 名も知らぬ正体不明の包帯男。彼を殺したあの男を、
「絶対に――殺す」
 相手が正体不明だろうと、どれほど強かろうと、関係ない。どこまでも追いかけて確実に殺す。勝てそうになくとも、手段を選ばず殺す。
「絶対に許さない……!」

 遥の意識は肉体を離れ、ゆらゆらと宙を待っている。盗んだ魔術の一つ、使い魔の使役を行っているからだ。
 使い魔の種類は多種多様で、直接戦闘可能なタイプ、自分の意思を持つタイプ、等々がある。遥が手に入れたのは、比較的使い手の多い探索型だった。
 戦闘力はなく、視覚を共有した状態で飛ばせるだけのお粗末なものである。
 蝶の形をした使い魔が十二体。限界ギリギリまで作り出した使い魔を、遥は一斉に夜空へばらまいた。
 同時に十二もの視界が開けるという感覚は、戻りかけていた調子を揺さぶるに十分だった。本来なら、覚えたての素人が作り出せる数ではない。だが、遥は無茶をした。
 ……時間が惜しい。
 今は十二月九日の午前二時。もうあれから随分と時間が経っている。
 早くあの包帯男を探し出さなければ。このまま奴を野放しには出来ない。
 しかし気持ちばかりが逸って、思うように使い魔を操れない。ある個体は明後日の報告へふらふらと飛んでいき、ある個体は上下左右の狂った視覚情報を送ってくる。
 そちらに集中しているせいで、身の回りのことに意識が向かない。
 ……まあ、それはいいか。
 今更自分を狙う輩がいるとは思えない。何かあったとしても、そんなことは些細なことだ。今は仇討ちのことだけを考えていればいい。
 だから、誰かに話しかけられたような気がしても、反応はしなかった。
 夜が明けて、陽が高くなってからも使い魔による探索を続けた。
 ……くそ。
 全然手がかりらしいものが見当たらない。町中にいるのは、落ち着きをなくした一般人ばかりだ。
 飛鳥井の連中の様子も探ろうかと思ったが、彼らが根城にしているホテルに近づくと使い魔が無効化されてしまった。彼らは魔術の専門家だ。こういう使い魔への対策は万全なのだろう。
 二回侵入が失敗したところで、遥は諦めて使い魔を一旦解放した。
 自分自身に意識が戻ってくる。宙を漂っているような感覚が消えて、重力が身を包むこんだ。そのおかげで、却って意識がはっきりする。
「……?」
 意識を戻して周囲を見る。よくよく見てみると、自室ではなかった。
 ここは――彼の部屋だ。
 ……え?
 確か自分は自室で使い魔による探索を始めたはずだ。それがなぜ、この部屋にいるのだろうか。
 ぶるりと身体が震える。軽く毛布がかけられていたが、それでも寒かった。
「なんで、私はここに……」
 よく分からない。使い魔を使役している間に、誰かが自分をここまで運んだのか。あるいは、無意識に身体が動いていたのか。
 無理をしたせいか気分が悪い。吐き気はないが、少し休む必要がある。
 一応家の中を見て回る。誰の気配もない。
 ……そういえば、零次はどうした?
 今までまったく意識していなかった。そもそも最後に零次と会ったのはいつだったか。それすらも曖昧になっている。
 がくりと、全身から力が抜けた。壁に寄りかかって自分の額に手を当てると、異様に熱い。調子の悪さが、ついに体調にまで影響を与えたのだろうか。
「ったく、倒れている場合じゃないってのに」
 救急箱から適当にそれっぽい薬を取り出して飲み込む。
 まったく味を感じなかった。
 部屋に戻ると、つい横になってしまう。見上げる天井の色合いが、やけに腹立たしい。まるで気分が落ち着かなかった。
 とりとめもなく、今までのことが脳裏に浮かんでは消える。その中心にいるのは、当然のように彼だった。
 内臓をぐちゃぐちゃに掻き乱されるような毎日だった幼年期。自分を道具としてしか扱わない研究者たちは、自分のことを名前では呼ばなかった。まともな教育も受けたことはない。せいぜい研究者たちの言動から、最低限の言葉を覚えていたに過ぎない。
 自分の名前が遥だということを知ったのは、彼との出会いがきっかけだった。
 はじめて話したとき、彼は名前を教えてくれた。だが、こちらは何も応えることが出来なかった。研究所の人間たちは知らなかったし、知っていたとしても教えてくれるはずもなかった。
 知ったのは、彼と研究所から逃げ出そうとして失敗し――遥が死にかけたからだ。
 研究所の人間たちは、貴重な実験材料として遥を失うことを恐れた。そのため自分たちの素性がバレないように工夫し、重傷を負った彼女を病院に預けたのだ。
 遥を救ったのは、腕は良いが勘の鈍い老医者だった。研究員に騙された彼は、山から転げ落ちて死にかけた幼い少女に、よく話しかけてくれた。そのとき初めて名前を知ったのだ。おそらく、研究員たちが医者に伝えたのだろう。
 無事遥が完治すると、その老医者は研究員によって処分された。
 それから彼と再会するまでの数年間、遥は一度として名前は呼ばれたことがない。それでも、己の名前を忘れたことは一度もなかった。
 いつか彼に、その名前で呼んで欲しかったから。
 その願いは叶えられた。
 そして、閉ざされた。
 言ってみれば、『遥』という名前は彼のために取っておいたものだ。
 だが、その彼はもういない。
『なあ、遥』
『おい、遥』
『だぁっ、待てって遥!』
『大丈夫か、遥』
『遥』
 二度と、名前を呼んでくれない。
 なら、もう遥という名前もどうでもいいのではないか。
 ……そうだ。私が私でいられたのは彼がいたからで。
 その彼がいない以上、『遥』もまた、死んだも同然なのだ。
 彼の仇討ち。それは即ち『遥』の仇討ちでもある。
 ……そうだ。何を休んでるんだ、私は。
 熱があるから何だ。彼は、何もかもを投げ出して最後まで戦ったではないか。
 脳が動けと命じて動くなら、行動に支障はない。意識を集中させれば、まどろみに沈むようなこともない。
 遥は大きく息を吸って、もう一度使い魔を解き放った。
 今度は一気に、二十匹。

 誰かが使い魔のことを監視している。そのことに気づいたのは、三十分前だ。
 こちらは使い魔の扱いに慣れていないから、どんなに集中しても、一体ごとの精度は低めになるし、動きも目立ってしまう。
 当然、魔術に精通した者ならすぐに気づくだろう。
 もっとも、使い魔だけを見て誰が操者か判別するのは難しい。知っている人間の使い魔ならともかく、初見で何もかもを見破ることが出来るのは、そういう技術に特化した魔術師か、そういう能力の持ち主ぐらいだ。
 だから、相手はこちらが何者か分かっていないはずだ。
 逆に言えば、こちらも相手の正体が分からない。飛鳥井か古賀里か、あるいは別の誰かなのか。
 放っておいても害はないが、鬱陶しくはある。
 だから遥は策を講じた。
「……しっかし、何者なんだかね」
 市街地の中でも人気の少ない裏通り。そこのホテルの屋上に、人影が二つ。
「飛鳥井の連中じゃないんだな?」
「ああ。連中にしちゃ下手糞な扱い方だよ。素人もいいとこさ。同時に十何匹も放ってるみたいだけど、無謀もいいところ」
「俺はそっちには詳しくないが、制御大変なものなのか、使い魔って」
「まあね。作るだけなら簡単だけど、きちんと使いこなすのは玄人でも難しい。使い魔専門の魔術師になると、異法人よか強力な個体を作ることも出来るようになる」
「洒落にならんな、それ」
 話しているのは、古賀里の二人だった。フィストは望遠鏡で町並を見下ろしている。古賀里夕観は片目を閉じて、金網にもたれかかっていた。
 おそらく、夕観の使い魔がこちらの使い魔を監視しているのだろう。そちらに気を取られて、こっちには気づいていないようだった。
「……けど、飛鳥井じゃないってなら、もしかして横取り野郎か?」
「どうだろうね。横取り野郎、多分異法人だからねぇ。異法人ってのは相性の関係もあって、使える魔術に限りがあるんだ。使い魔の使役は……まあ出来なくはないだろうけど、出来たとしても下手糞だと思うね」
「下手糞なんだろ? そのくせ十何体も一気に作るような奴だ」
「そうだねぇ。そう言われてみれば……それっぽい気がしてきたよ」
 土門荒野、横取り。この二人が探しているのは、どうやらあの包帯男のようだった。
 二人の目的は草薙樵の救出。即ち土門荒野の消滅にある。そして、彼らは土門荒野そのものを破壊する術があると語っていた。
 彼がもういない今――二人が土門荒野ごと壊すべき標的は、あの包帯男に切り替わったと見るべきだろう。
 遥はもう少し、二人を監視している個体を接近させた。
 それがまずかったらしい。
 夕観はすかさず右手を上げて、指先から魔弾を撃ち込んできた。
 監視用の個体に抵抗する術はない。魔弾をもろに受けた遥の使い魔は砕け散った。送られていた映像がぶつりと途切れる。
「どうした、夕観」
「フィスト。あんたほとんど魔術使えないにしても、気配ぐらいは察してよ」
「ん、なんだこっちも見張られてたのか」
 フィストは存外呑気そうに言った。
「私が追ってる使い魔と同じ奴のものっぽかったね。相手さん、技術力は素人だが頭は悪くないらしい」
「囮を使ってこっちの意識を逸らしてた。んで、その間に俺らの居場所を探り当てたってことか。……どうする?」
「無駄に戦うつもりはないよ。奴さんの本体がここに来る前に撤退する」
 二人は手早く撤退の準備をして――そこで動きを止めた。
 フィストは、夕観が動きを止めたから。
 夕観は、自分たちが既に撤退不可能な状態にあると気づいたから。
「どうやら……時既に遅し、だったみたいね」
「俺は気配察するのは苦手なんだけどな。囲まれてるってのは、なんとなく分かる」
 そう。二人の周囲は既に蜘蛛の巣と化していた。
 素を紡いでいるのは、遥の魔糸だ。
 夕観たちが動きを止めたことを確認して、遥は屋上に出た。
 さっきからいたのだ。屋上に出る扉の裏に。
 夕観たちを捕捉してすぐに、遥自身が出向いていたのである。
 偵察用の使い魔がいるなら、本体はまだここに来ていないだろう――それが魔術師たちの常識的な発想だ。そこから生じる僅かな隙を突いて、遥は即席の結界で二人を封じ込めたのである。
「あんたか」
 夕観はこちらを見て、少しバツの悪そうな表情を浮かべた。
 一方のフィストは動じることなく、夕観を後ろにやる。
「何の用だ? こっちはもうあんたに用はないんだがな」
「悪いが、こっちにはある」
 一歩踏み出す。
 フィストが構えた。彼の実力を図れるほど遥は戦闘に精通していない。ただ、接近されれば勝ち目がないことぐらいは分かる。
 だから遥は両手を広げ、足を止めた。
 敵意がないことを示すために。
「……何の真似だ?」
「私は別にあんたらとやりに来たんじゃない、ということだ」
「なら、何の用だい?」
 夕観が、警戒の色を見せつつも尋ねてくる。
「あんたたちは、今土門荒野の片割れを持ってる奴を探して壊すつもりなんだろ」
「だったら?」
「――手を組まないか?」

 当然、夕観は難色を示した。
「いきなりどういう風の吹き回し? あんたからすれば、私たちは敵だろ」
「今は違う。敵対する理由はないだろ」
「……うちの樵に対して、含むとこがあるんじゃないの?」
 確かに、樵も彼の仇の一人と言えなくもない。美緒も樵のせいで重傷を追うことになってしまった。
 だが、遥は頭を振った。
「美緒にしたことについては聞いてる。けど、美緒は生きてるから」
「生きてりゃ不問にするって?」
「そうじゃない。許すも許さないも、それは美緒が決めるってこと」
 自分がとやかく言うことじゃない。思うところはあるが、そういう理由でこの二人と戦う気にはならない。
「けど、彼は違う。彼は殺された。殺した奴を許すことも、責めることもない。……どうすることも出来ないんだ」
 もう二度と――笑ってもくれない。
「その殺した奴ってのは……」
「黒い剣を持った包帯だらけの奴だ。今、土門荒野の片割れを持ってるのは、十中八九奴で間違いない」
「なるほど、こっちの標的と同じ。だから手を組もうって言ってきたわけね」
 言いながら、夕観は周囲に張り巡らされた糸を見る。
「ちなみに、断ったらどうする気だい?」
 遥と夕観の視線がぶつかる。
 数日前にぶつかったときは、手も足も出ない相手だった夕観。
 それが今は、こちらに警戒の色を見せている。
 数秒の沈黙の後、
「別にどうも」
 遥は淡々と告げる。
「この糸は、いきなり逃げ出されたら困るから出しただけ」
「……とてもそういう顔には見えないけどねぇ」
 言われて、遥は自分の顔にそっと触れた。
 かさかさで、冷たい。表情はよく分からないが、ろくでもない面構えなのだろう。
 それで良い。笑顔で復讐する奴はいない。
「手を組む、ってのはどういうことを言うのかしらね」
「そっちは人手が足りなくて、奴を探すのに苦労してる――というように見える。だから私は人を用意しようと思う」
「人? 矢崎亨は飛鳥井陣営に行ったし……久坂零次ぐらいしかいないんじゃない?」
「零次はアテにならない」
 零次を責めるつもりはない。ないが、肝心なときに動いてくれなかった。そんなイメージが付きまとってしまう。
 それに、零次の力を借りて復讐は果たしたくない。
 理由は分からない。ただ、強い拒否感があった。
「けど、それじゃ誰が協力者なのさ」
「ここに来る途中で三十八人」
「は?」
 言いながら、遥は指で三、そして八を表した。
「私の力は、他者と不可視の要素を共有すること。発動条件は『接続する』こと。通常は触れることが接続の条件になる」
「……それで?」
「三十八人は私が共有の力を仕掛けた相手。共有したのは、包帯を見たという認識。三十八人の誰かが視界の端にでも包帯を捉えれば、即座にその情報が私に送られてくる」
 これまでは、人と精神そのものを共有することが多かった。大雑把な括りな分、やりやすかったからだ。その代わり、その大雑把なものを多くの人と共有していては、捌ききれなくなる。
 だが、共有するものを限定的にしておけば、捌きやすさは格段に増す。共有そのものは少し難しくなるが、維持するのはむしろ簡単になる。
 相手にかける負担も小さなものになるため、遥に共有をしかけられた者たちは、そのことに気付きすらしなかった。
「飛鳥井の連中に気づかれることなく人手を増やし、奴を探すことが出来る」
「けど、一般人をいくら使ったところで見つけられるとは思えないけどね」
「これは実験みたいなものよ。これからは飛鳥井の魔術師にこの共有をしかける」
「ちょっと待てよ」
 そこで、構えたままフィストが口を挟んできた。
「あんたの目的はさしずめ復讐ってとこなんだろうが、それなら俺たちより飛鳥井の奴らと手を組んだ方がいいんじゃないのか? なんで、こっちに来たんだよ」
「……あっちには行きづらくてね。喧嘩売ったこともあれば、捕まったこともあるし」
「そうか」
 フィストはそれだけで引き下がった。思っていたより淡白な男なのかもしれない。
「こっちが望むのは、奴を見つけたときの共闘。それと情報交換だ。そっちにとっても悪い条件ではないと思うが」
「……」
 夕観はそれでも険しい表情を崩さなかった。
 様々な懸念のこもった眼差しが向けられてくる。遥はそれをただ受け止めた。
 やがて、場に静かな溜息が漏れた。