異法人の夜-Foreigners night-

-外伝-
明日を見た日のこと
 一九九三年、十二月三十一日。
 年の暮れ、霧島直人は自宅でごろごろしていた。
 特に予定もないので暇なのである。
「あーあーあー。我々は、宇宙人ダァー」
 暇すぎて意味不明なことを呟いたり、
「ふむふむ。……お、賞味期限切れ発見。一ヶ月前か。なかなか悩むところだな」
 結局食ったり、
「ふぅ。こういうのって普段は絶対やりたくねーけど、一旦やり始めると徹底的にやりたくなるよなぁ」
 家中を大掃除したり。
 つまり、さして特別ではない年末を送っていた。
 霧島は一人暮らしをしている。
 父親は単身赴任で海外におり、母親は病弱のため入院生活を送っているのだった。
 兄弟もいないので、家にいるときは話し相手もいない。
「どっか出かけるかなぁ」
 ようやくそう思い始めたのは、既に日も落ちた五時半過ぎ。
 霧島はコートを着込んで、あまり広くない自宅から外に出た。
 扉から一歩出ると、寒気が襲い掛かってきた。
 秋風市の冬は白銀に彩られる。
 住んでいる身としてはちっともありがたくない雪が、この日も降り注いでいた。
 一気に出かける気が失せたが、ここで戻るのも虚しい。
 仕方なく、雪降る町並へ繰り出すことにした。

 最初に向かったのは学生寮。
 冬休みということで帰省する者も多いが、霧島の友人たちは居残り組みだった。
「あれ、霧島君じゃないか。どうしたんだい?」
 顔見知りの管理人に軽く会釈して、霧島は寮を見上げながら尋ねた。
「孝也と委員長はいますか?」
「二人とも談話室でダウトやってるよ」
「……二人で?」
 不毛過ぎる。
「それだけ暇ってことなんじゃない? 半永久的にやってられるし」
「暇潰しってのは面白くないと意味ないっすよ」
「面白い暇潰しは暇潰しと言わず趣味と言うべきだね」
 なるほど、と納得しながら霧島は寮内に入る。
 半数以上は帰省しているが、残っている者もそれなりにいる。
 そのため寮内ではそこそこ人の姿を見ることが出来た。
「いよう霧島、例のゲーム返せよ!」
「やあ霧島、この前のジュース代返せよ!」
「おっ、霧島。この前貸した秘蔵本返せよ!」
「霧島、あのビデオ返せよ!」
「霧やん、俺のプレーヤー返してぇなぁ!」
 そんな学友たちに爽やかな笑みを送りながら、霧島は軽い足取りで談話室へ向かう。
「ハハハ、そこの寂しい二人組み! ダウトとはまた無意味なことをしているな!」
 幸町孝也と委員長の前に立ち、挨拶代わりの皮肉をかます。
 二人はだるそうに霧島を見上げ、
「なんだ直人か……」
「意外性も何もないね。もっとこう、華が欲しい」
「なんだお前ら、せっかく着てやったのにえらい扱いだなこの野郎。そんなこと言ってると土産やらねーぞ」
 そう言って霧島は買い物袋を掲げてみせる。
 途端、幸町と委員長はしゃきっと霧島に向き直って笑みを浮かべた。
「よく来た友よ!」
「さぁ三人でダウトでもやろうじゃないか!」
「素敵な変わりっぷりだなお前ら。まぁいいか、くれてやろう」
 霧島は袋に手を突っ込み、ごそごそと何かを取り出す。
 それがテーブルの上に置かれた瞬間、幸町たちの表情が落胆に染まる。
 テーブルの上に置かれたのは『激・漢汁』。
 異様な苦味と臭いで評判の、ドッキリジュースである。
「お前、また変なものを……」
「僕らはデリケートなんだぞぅ。こんなもの見せるなよ!」
 目にするのも嫌だと言わんばかりに、委員長は両目を塞いでのた打ち回る。
 そんな委員長を蹴り飛ばして黙らせると、霧島はジュースの缶を開ける。
 そして気絶した彼の口元に缶を押し当てる。
「ボス! 注入開始しやす!」
「行け、直人少佐!」
 幸町が眼鏡をキラリと光らせ許可を出す。
 その瞬間、委員長の喉に異物が混入される。
「ぐぶおぁっ!?」
 あまりの味に意識を取り戻し、委員長は青ざめた表情で跳ね起きた。
 しかし勢い余って一回転し、凄まじい音を立てながら頭から落ちる。
 どうやら再び気絶したらしく、ぴくりとも動かない。
 談話室周辺にいた生徒たちが、ぎょっとした顔で視線を向けてきた。
「むぅ。想像を絶する威力だな」
「ああ。しかしこんなものを飲ませようとしてたのか、お前」
「なんだよ、孝也だって共犯だろうが」
「委員長はいいんだよ。僕に飲ませようとしたのは駄目だね」
「よくないよっ!」
 委員長が起き上がりざまに投げつけた空き缶が、すこーんと霧島の頭に直撃した。

 学生寮で軽く時間を潰した後、霧島がやって来たのは住宅街にある大きな屋敷だった。
 比較的現代の匂いを感じさせる他の家と違い、その家は古めかしい。
 表札には『榊原』とある。
 大きな門の鍵を開け、霧島は躊躇うことなく中へ入っていった。
「あれ、兄貴じゃん」
 庭先から男の子の声が聞こえてきた。
 少し伸びた髪を左右に分けた、垂れ目の少年である。
「おー吉崎。どうした、締め出されたか?」
「んな訳ないだろ。かまくら作ってんだ」
「へぇ、かまくらか。懐かしいねぇ」
 霧島も子供の頃はよく作ったものである。
 この辺りは雪が積もりやすいので、材料には事欠かない。
 もっとも、霧島は尋常ならざる身体能力がある。
 そのため、あっさりと作れてしまう。
 幼い頃はそれが味気なくて、よくかまくら作りを楽しむ方法を研究したものだった。
「俺も手伝ってやろうか?」
「いいよ。兄貴がやると一瞬で終わっちまう。こーいうのは、自分でやってこそ意味があるの」
「おうおう、二桁にもいかねぇお子ちゃまの分際で言うじゃねぇか」
 ぐりぐりと頭を撫でる。
「痛、いただだだだっ! 力加減、力加減!」
「おっと、悪ぃ」
「ったく……倉凪と言い兄貴と言い馬鹿力なんだからよ」
 ぶつぶつと文句を言いながら、吉崎は再び作業に没頭する。
 雪を一つ一つレンガのような形にして積み上げていく。
 それなりに本格的な作業のようだった。
「風邪引くなよー?」
「分かってるって」
 ひらひらと手を振る吉崎に背を向け、霧島は屋敷の中へ入った。
 広い和風屋敷というのは冬場が辛い。
 全体へ暖房が行き届かないからである。
 特に玄関や廊下などは、外とさして変わらない温度だった。
「寒っ」
 温かさを求めてすぐさま居間へと飛び込む。
 そこには、こたつでぬくぬくしている美緒の姿があった。
「あ、直兄ぃ。いらっしゃいませー」
「うぃっす。ほーれ、お土産の肉まんだぞ」
「にゃっ!?」
 美緒の双眸がきらりと輝く。
 こたつから出ている上半身だけをくねくねと動かして、霧島の足にしがみつく。
「肉まん~、肉まん~、肉まん~肉まん~肉まん肉まん肉まん」
 まるでゾンビのような動きだった。
 霧島の方も悪戯心が湧き上がって来たのか、肉まんの入った袋を高く掲げる。
「ほれほれ、届かないだろー。こたつの中でぬくぬくしてるだけじゃ肉まんは手に入らんぜぇ?」
「ぬうぅぅ」
「悔しかったらこたつから出てみろー。はっはっ……ぐほぁっ!?」
 突如足に痛みが走る。
 その拍子に、手にしていた肉まん袋が下に落ちた。
 それを美緒ががっちりと掴む。
「にゃっはっは、直兄敗れたり!」
「……ちょっと待てこの。お前、今俺の足に噛み付いたろ!」
「えー、私そんなことしないよぉ。直兄、苛める……」
「途端にしおらしくなってんじゃねぇ! くそ、誰に似たんだか……」
「どう考えてもあんたの影響だろ」
 と、少年の声が聞こえた。
 視線を、勝者の笑みを浮かべて肉まんを頬張る美緒から外し、台所に移す。
 そこには、台に乗りながらも手早く夕食を作っている梢の姿があった。
「ったく、明るくなってきたのはいいんだけど……段々性格捻じ曲がってきたなぁ」
「それが俺のせいだというのかマイブラザー」
「そうだ! 素直な美緒を返せ!」
「やかましいシスコン。育てる側の理想を押しつけるのは傲慢だぜ!」
 びし、と妙なポーズで梢を指差す。
 しかし梢は料理に集中しているのか、霧島の方を見ていなかった。
 ここでいちいち反応していては霧島のペースに飲まれるだけだ、ということを最近覚えてきたらしい。
 霧島は高めの鼻をひくひくと動かした。
「おっ、鍋か。いいねぇいいねぇ」
「参加したいなら一人分の材料を買ってくること」
「アイアイサー!」
 霧島はすぐさま外に駆け出して、商店街で食材を買い揃えて戻ってくる。
「ほれ、買ってきたぞ」
「……相変わらず神速だな。十分もしないうちに戻ってきやがった」
「ふふん。大方俺が戻ってくるまでに鍋食い始めてようとか思ったんだろ。俺を悔しがらせるには、十年早いな」
「ちっ」
 舌打ちしながらも、梢は薄い笑みを浮かべた。
 素直に言ったりはしないが、梢も霧島のことが嫌いなわけではない。
「ほら、さっさと入れろよ」
「おう。鍋奉行は任せとけ、きちんと年齢に合わせて肉分配してやっからよ!」
「えー、私お肉いっぱい欲しいー!」
 こたつに入ったまま美緒が口を尖らせる。
 それと同時に、吉崎と榊原が入ってきた。
「やけに騒がしいと思ったら、案の定お前か」
「嫌だなぁ師匠。俺が騒がしいみたいに言わんでくださいよ」
「……まぁ、いい」
 榊原が腰を下ろす。
 吉崎や梢もこたつに足を入れ、最後に霧島がどっかりと座り込む。
「んじゃ、榊原家忘年会でもやりますか!」
 酒を出しながら宣言する霧島の額に、榊原が無言で手刀を叩き込んだ。

「うあー。飲み過ぎちまったぜい」
 深夜三時過ぎ。
 榊原家で盛大な忘年会をやった後、霧島は酔って眠りこけてしまった。
 気づけば深夜一時を回っていた。
 榊原は泊まっていけと言ってくれたが、それは辞退することにした。
 なんとなく家に帰りたくなったのだ。
 理由は特にない。
 一種、予感めいたものが働いたのである。
「あ」
 家の前に辿り着いたとき、その予感が形となって現れた。
 霧島の家の前に立つ、一人の少女。
 寒空の下で、震えながら立ち尽くしている。
「優香……!?」
 秋に出会った少女の名を口にしながら、霧島は慌てて駆け寄った。
 優香は眠そうな双眸を上げ、霧島を見た。
「あ、おかえり……」
「何がおかえりだ馬鹿。こんな時間に何やってやがる」
「え? 今、何時……?」
「もう二時回ってるっての。女が一人でこんな時間に出歩くもんじゃない」
 めっ、と優香の額に軽くチョップをする。
「あうっ」
「ったく、時計見るのも忘れて何やってんだか。俺がいないならさっさと帰れば良かったんだよ」
「と、時計忘れちゃって……」
「ほうほう。でもさすがに帰るという選択肢は残ってるはずだよな?」
「暗くなったら、帰り道分かんなくなっちゃった……」
「……暗くなったらって。俺も暗くなる寸前に家出たんだけど……丁度入れ違いだったか」
 そこまで言って、ふと気づく。
「あんた、何時間この寒空の下突っ立ってたんだよ!? ああもう、とりあえず入れ入れ!」
「へ、変なこと……しない?」
「それが嫌だったら普通、夜は男の家に一人で来ない!」
「え……」
「いや、しないから! とにかく、風邪引いたらまずいだろ!」
「う、うん」
 優香は霧島の勢いに負けて頷く。
 霧島は慌てて鍵を取り出し、ドアを開けて彼女を招き入れた。
 もっとも、暖房などをつけていたわけではないので、家の中も寒い。
 玄関の電気をつけながら、
「とりあえずこれでも羽織ってろ! すぐ暖房つけるから……いや、ストーブ? こたつ? 湯たんぽの方がいいのか!?」
 おどおどする優香と、パニックになる霧島。
 結局二人が暖かい部屋で落ち着いたのは、一時間後のことだった。

「で、何しに来たんだ?」
 少しきつい言い方だとは分かっていたが、心配させられたのだから無理もない。
 霧島は顔をしかめながら問い詰める。
 優香はというと、若干俯きながらぼそぼそと話した。
「あ、あのね。……友達と新年迎えるのって、やってみたかったの」
「……あー。なるほど」
 平凡な理由だった。
 平凡すぎて、どう返せばいいのか困る。
「だったら予め電話すれば良かっただろ? 電話番号教えたじゃねぇか」
「……」
 優香は顔を真っ赤にして黙り込んでしまった。
 霧島が不思議そうに見ていると、かき消えそうな程の声で、
「は、恥ずかしかったから……」
「え?」
「男の子に電話するのって、恥ずかしくて……電話、しようとしたんだけど。その」
 うあ、と霧島も真っ赤になる。
 かなり照れ臭かった。
 こんな女の子いねぇよ、と理性は言っているが、優香の育った環境は普通とは少し違う。
 友達を作らず、ずっと家で家族とだけ生活する日々。
 人の感情を夢で知ってしまう彼女は、人付き合いを次第に恐れるようになったのである。
 そこを霧島と出会い、二人は友達になった。
 霧島自身妙な力を持っているし、比較的思ったことはなんでも口にするタイプなので、内面を読まれることはさほど苦痛ではなかった。
 そのため、二人は今のところ良い友達である。
 恋愛関係には発展していない。
 だが、優香は間違いなく女の子だった。
 それも、珍しいくらい華奢でか弱そうな、思わず守ってやりたくなるタイプの子である。
 その動作に、霧島はつい異性を感じてしまう。
 まして、その感情を彼女は『夢』で知るかもしれないのだ。
 嫌ではないが、かなり照れ臭い。
「あー、優香さん」
「な、なに?」
「今、俺は反則技喰らってダウン寸前であります。……恥ずかしさで死ねそう」
「それは私もだよぅ……」
 二人揃って、真っ赤になって俯いてしまう。
 まともに相手の顔を見ることが出来ない。
「えーとさ」
 気まずさを打ち消すため、霧島はどうにか口を開く。
「別に恥ずかしいことじゃないと、思いますですよ? うちのクラスの女子なんかも、平気で家に電話してきたりするし」
「そ、そうなの……? クラスの女の子、電話してくるんだ……」
 優香の声が途中から強張っていく。
 霧島は慌てて弁解した。
「いや、クラスの用事とか! 俺、クラス委員長と友人だから副委員長みたいな扱いされてて! そう、あいつのせい! あの馬鹿が悪い!」
 言ってから、ふと首を傾げた。
 ……なんで俺、こんな一生懸命弁解してんだ?
 優香の方も同じようなことを考えていたのか、両手を振りながら、
「べ、別にいいんじゃないかな。霧島君モテモテでもいいと思う! 格好いいし!」
「そうか? サンキュサンキュサン……」
 言ったこと、言われたことに気づいて、またお互い真っ赤になってしまう。
 夜という時間のせいなのか、年の変わり目という時間のせいなのか。
 このままだと身が持たない。
 そう思った霧島は、勢いよく立ち上がった。
 なるべく冷静を装って、優香に手を差し伸べる。
「今からよ、ちょっと出かけないか?」
「え? ど、どこ?」
「いいとこ。――――綺麗なもんが見れる絶景の場所だ」

 雪が積もる中、二人は山の中腹まで歩いてきた。
 かなり積もっているため、普通はこの時期、ここまで来る人は少ない。
 しかし、霧島にかかればどうということはない。
 優香には少しきついようだったので、霧島は彼女を抱きかかえたまま歩いてきた。
 そのことがまた気恥ずかしさを呼び、到着するまで二人は無言だった。
 目的地に辿り着くと、霧島は優香を降ろして汗を拭った。
 歩いたせいで出た汗ではない。
「霧島君。ここ、何があるの?」
「うん? 今は何もないぞ」
「……?」
 きょとんと首を傾げる優香に、霧島は「まぁ見てろって」と笑ってみせた。
 それから数分後。
 次第に、空の向こう側から光が現れ始める。
 優香も、そこでようやく気づいたらしい。
「初日の出だぁ……!」
 思わず落ちそうになるほど身を乗り出し、朝日を眺める。
「おいおい、気をつけろよ。雪なんだから滑りやすいぞ」
「うん。でも、綺麗……」
 余計な障害物など何もない場所。
 秋風市の町並が見渡せる地は、初日の出を見るには絶好のポイントだった。
「俺の親父が教えてくれた場所だ。孝也にも委員長にも、ガキどもにも教えてない秘密の場所なんだぜ」
 言いながら、霧島は優香の頭をポンポンと叩く。
「良い眺めだろ」
「うん」
「こうやって明日が来るんだよなぁ」
 何気なく言った一言。
 しかし、それに対して優香が言ったことに、霧島は狼狽した。
「ずっと、こうして見てたいね」
「……え?」
 霧島は手を止めた。
 優香はあまり意識してないのか、相変わらず夢中で昇りつつある光を見ていた。
 ……ずっと見てたいって、俺とか? 毎日、こうしてたいってことか? ん? どうなのよ、おい。
 頭の中でぐるぐると思考が巡る。
 そのうち、陽が完全に昇りきった。
 空は青く、雪がきらきらと光っている。
 肌寒い風が流れ、優香の髪がさらさらと流れるように動いた。
 彼女はゆっくりと霧島の方を振り返る。
 そして、少し照れ臭そうに言った。
「あけましておめでとう。――――今年もよろしくね」
 太陽の光を背にそう言う彼女を、霧島は素直に綺麗だと思った。
 だが、それを口にするのは恥ずかしいし悔しい。
 どうせ後でばれるのかもしれないが、今だけは強がっておこう。
「ああ、よろしくされてやる。面倒のかかる友達だけど、ずっとずっと面倒みてやるよ」
 え、と優香が声を上げる。
 しまった、と霧島は言ってから気づく。
 結局、二人は最後まで照れ臭い気持ちを引きずったまま、新年を迎えることになったのだった。

 余談。
「人様の娘を朝帰りさせるとはいい度胸じゃねぇか若人……」
「いや、誤解だ。俺、何もしてないし!」
「何ぃ!? そこまでうちの娘に魅力がねぇと抜かすかこの野郎ぅ!?」
「い、痛! おっさん、痛い! やめ、ギブ、ギブゥゥ~!」
「知るかこの野郎! 違うってならお前は不能だ、やーいやーい」
「あらあら。二人とも、仲がいいのねぇ」
「それ、違うと思う……」
 八島家の元旦は、いつになく賑やかなものだった。