異法人の夜-Foreigners night-

-Border Breaks-
断章「とある女性の手記」
 私たちが一体何をしたというのだろうか。
 今日は石を投げつけられた。小さな子供だった。親と一緒だった。
 普通なら親が注意するだろう。けれど、親は私たちを憎々しげに一瞥すると、子供には何も言わずに去っていった。
 親に手を引かれて去ろうとした子供は、最後に「悪魔なんか、死んじゃえ!」なんて言っていた。
 憎い。憎い。憎い。
 憎い。憎い。憎い。
 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い。
 あの子の何がいけないのだ。
 何か悪いことをしたと言うのか。
 私にとっては可愛い子供だ。掛け替えのない家族だ。
 確かに普通ではない。人間ですらないというのは、あの子自身が先日私に語った言葉だ。
 何とも思わないわけではない。あの子さえいなければ、もっと私たちも平穏な暮らしが出来ると思ったことはある。
 それでも、自分のことを「人間じゃない」なんて言うあの子を、何もかもを諦めてしまったようなあの子を、あちこちの人たちに苛められてもじっと耐えているあの子を、親の私が見捨てるわけにはいかない。
 あの子があまりに可哀想だ。普通ではないということが、そんなに罪なのだろうか。
 恐い。恐い。恐い。
 恐くて憎くてうざくて気持ち悪くて。
 普通という言葉が数を持つと、あんなにも醜悪になるなんて。
 私一人であの子たちを、後どれだけ守れるだろう。
 あの人がいてくれたらと思う。
 ああ、今もまた誰かが窓ガラスに石を投げつけてきた……。