異法人の夜-Foreigners night-

-Border Breaks-
断章「遥専用」
 図書館に行ってから数日後。
 梢と遥は、商店街へとやって来ていた。
「お買い物~」
「おいおい、あんましはしゃぐんじゃねぇぞ」
 躍り上がりそうなくらい嬉しそうな遥。
 そんな彼女を見ているうちに、梢の気分は多少晴れやかなものになっていた。
 遥も、最初に外出したときよりは落ち着いてきている。
 まだ一人で外に出すのは不安だが、誰かと一緒なら問題ない。
 もっともそれは、彼女を巡る事態が解決したときの話である。
 まずはスーパーで、数日分の食材などを買い入れる。
 遥が一緒なので、バーゲンセールスの類は全部無視。
 そちらに夢中になっている間に遥の身に何かあったら洒落にならない。
 あれ何、美味しそう、食べたいな、などの発言を繰り出す遥を適当にあしらいながらスーパーを出る。
 後は帰るだけ。
 しかし途中である看板を目にし、梢は足を止めた。
 梢の後を追うようにして歩いていた遥は、その背中に顔をぶつけてしまう。
「ど、どうしたの?」
 鼻を押さえながら尋ねる遥を、梢は笑いながら撫でた。
 戸惑いながらも顔を赤らめる遥を連れて、梢はその店に入る。
 そこは雑貨屋だった。
 生活に必要なものを色々と取り揃えており、梢もたまに利用する。
「遥、食器を買おう」
「へ?」
 いきなり言われて、遥は疑問符を浮かべた。
 そんな彼女に、梢はコップや皿などを指差して、
「今までは客人用のだったけどさ。やっぱお前も自分の物っての欲しいだろ」
「え、え……い、いいよ。そんな、悪いよ」
「気にするなよ。食器ぐらい買ってやるって。ほら、箸だって色々種類あるんだぞ。どれがいい?」
 遠慮の姿勢を見せる遥の背中を押してやる。
 遥はしばらく申し訳なさそうにしていたが、梢が勧め続けているうちに、とても楽しそうな表情を浮かべるようになった。
 買ったのは箸とコップ。
 それぞれ薄いピンクの色をした、可愛らしいデザインのものだった。
 遥はそれらが入った袋を幸せそうに抱きかかえている。
 今日帰ったら早速使うつもりなのだろう。
 ……こりゃあ、気合入れて晩飯作らないとな!
 嬉しそうな遥の横を歩きながら、梢は密かに気合を入れるのだった。