異法人の夜-Foreigners night-

-Border Breaks-
断章「どこにあった?」
 榊原が山小屋から持ち帰った資料。
 そこには、遥が今までどのような扱いを受けてきたかが書かれている。
 目にした涼子や吉崎は露骨に顔をしかめ、美緒は眉を吊り上げていた。
 遥とは直接の面識がない矢崎刃も、その内容に口元をきつく結んでいる。
 だが、榊原にとって一つ意外なことがあった。
 一番怒りを露わにするだろうと思っていた梢が、妙に大人しいのだ。
 無論怒りを感じてはいるのだろう。資料を読んでいるとき、梢の肩は絶え間なく震えていた。
 しかし読み終えた途端、なにやら思い悩むような表情を浮かべ、黙りこくってしまったのである。
「なあ師匠。それ、山小屋で見つけたって言ってたよな」
「ああ。正確な位置はよく分からないが、市の北部にある山のどれかだろう」
「……」
 榊原の話を聞いて、梢は眉を潜めた。
 珍しく、考え込むように唸っている。
 が、やがて頭を振って立ち上がった。
「……あの子は、死んだはずだ」
 それはとても小さな呟きだった。
 誰も反応していないところを見ると、榊原以外には聞こえなかったらしい。
「とにかく、遥が心配だ。俺ぁ今から赤間ビル見て来る」
「ならば付き合おう」
「ああ、頼む」
 そして二人は出て行った。
 残された三人は遥の無事を祈りつつ、三人で議論を交わしている。
 榊原は一人、梢たちが去っていった方向を眺め続けていた。