異法人の夜-Foreigners night-

日常の欠片-Fragment-
久坂零次

 ――――――――――ゲームセンター・サーガ

 実に豪華な面子が揃ったものだ。
 俺たちは現在、駅前付近にあるゲームセンターに来ていた。
 以前俺は、ここで行われた大会に店長と共に出場した。
 そこで水島という好敵手と出会ったのだ。
 彼女は俺の左脇で不敵な笑みを浮かべている。
 それに対し、俺の右脇には緋河がいた。
 こちらも挑戦的な表情だ。殺る気充分らしい。
 そして最後に、なぜかサングラスをかけた美緒が正面にいる。
 ……あー。
「状況を整理したい。俺は何をしているんだろうか」
 三人が一斉に、呆れ顔でこちらを見た。
 今更何を、という顔だ。
 いや、俺だって分かっている。
 この面子が集まれば、こういう事態になることは明白なのだ。
「くさぴょん、もう忘れたの? この包帯君が私に喧嘩売ってきたんだよっ!」
「その言い方だと俺が悪いみたいだぞ、このゲーマー女」
「むぐぅ、ちょっと腕が立つからって生意気なぁー!」
 ちなみに、第三者の視点から説明させていただこう。
 当初、俺は水島と二人でここに遊びに来た。
 俺は音ゲーで遊んでいたのだが、水島は格ゲーをやっていたらしい。
 少しばかり調子づいたのか、水島は次々と挑戦してくる相手を蹴散らしていった。
 それはもう、やり過ぎとしかいいようがない程に。
 そこで登場したのが緋河だ。
 緋河はどうも初心者狩り狩りという変わった趣味を持っているらしい。
 そして今回、緋河のターゲットになったのが水島だった。
 水島は余裕を見せながら戦って、見事に負けた。
 本気を出したら包帯君なんか敵じゃないんだよ、と水島がゴネた。
 こうなるとこいつは五月蝿い。
 しかも、緋河は緋河で水島を挑発するようなことばかり言う。
 結局二人は勝負をしなおすことにしたのだが、今度は決着がつかなくなった。
 そこへ偶然居合わせた美緒によって、勝負は一旦お預け。
 その後、協議の結果、四人で戦うことになったのである。
「しかし、なぜ俺も?」
「久坂さん、こういうの傍観してるだけで楽しい?」
「いや、実に暇だった」
「だったらいいじゃん。皆で楽しく遊ぼう遊ぼう」
 美緒は手に持った箱をじゃらじゃらと鳴らしながら言った。
 ちなみに中身はメダルである。
 俺たち四人は、それぞれメダルを十枚ずつ持っていた。
 三十分間でこれをどれだけ増やすか、という勝負である。
「メダルゲームは運が大きく関わってくるからな……どうなることやら」
 そう言いつつ、緋河の眼は絶え間なく動き続けている。
 どのゲームをやれば比較的入りやすいか、それを考えているのだろう。
「はい、それじゃスタートっ!」
 という美緒の号令で、今日のゲームが始まったのだった。

 結論から言おう。
 俺はすっからかんだった。
「あちゃー、久坂さん駄目だったみたいですにゃー」
 美緒が薄い笑みを浮かべながら現れた。
 どうでもいいが、最近こいつの猫度がどんどん進行している気がする。
 倉凪に言っておいた方がいいのだろうか……ってオイ。
「美緒。き、貴様……」
「ふっふっふ、私にかかればこんなもんよ!」
 美緒のは、メダルが箱から溢れ出そうになっていた。
 俺は経験したことはないが、『友達とパチスロ行って自分だけ負けた』というのは、こんな気分なんだろうか……。
 ちなみに今の例えは店長から聞いたものだ。
「問題はあの二人だ。……水島も緋河も、相手が強ければ強いほど熱えるタイプのように思える」
「そうだねー。まだ時間あるし、ちょっち様子見てこよっか」
 美緒と二人、ゲーセン内で水島たちの姿を探す。
「あ、いた……って、えええぇぇっ!?」
「どうした美緒」
「ちょ、あれっ! あれっ!」
 美緒の視線の先。
 そこでは、それぞれ箱を三つほど置いて戦う二人の姿があった。
 水島はポーカー。緋河はスロットをやっている。
「この台はアタリが出やすい。……今なら許してやるぞゲーマー女」
「ふん、私だってこの台のダブルアップの法則見つけたもんねー。包帯君こそ、さっさと降参した方がいいよー?」
 ばちばちばち、と火花が散る。
「……二人とも。そろそろ三十分経つぞ」
「くさぴょん、こんなときにタイムリミットを設けるなんて無粋だよ」
「同感だ。久坂さん、あんた男と男の勝負に茶々入れる気か?」
 ……いや、緋河。水島は女だぞ。本人勝負に没頭していて否定する気配がないが。
 二人の勝負は終わりそうにない。
 下手に突けば、こちらが被害を受けそうな状態だった。
「こりゃ駄目だなぁ……あ、涼子ちゃんだ。久坂さん、涼子ちゃん誘ってどっか行こうよ」
 美緒の指差す先には、確かに冬塚が歩いていた。
 足取りもゆっくりしているし、一人きりだ。どこかへ行こうと誘えば応じてくれそうである。
「……そうするか」
 勝負魂に火をつけた二人は放っておこう。
 触らぬ神に祟りなし、とはこういうことなのだ。きっと。