異法人の夜-Foreigners night-

-Walk Together-
式泉運命の章「式泉運命と泉の姫君」
 愛なくして人は生きていけない。
 どんな人間の人生も――その人なりの愛があって成立する。



 それは、今――二◯◯五年より、三十二年ほど前のこと。
 一九七三年。東北地方のある山村での話である。

 鄙びた山村は、大半が水田で埋め尽くされていた。
 周囲は高い山脈に囲まれており、見渡せば緑が否応なく目に飛び込んでくる。
 四季折々の姿を見せてくれる豊かな大自然は、人が生きるには少々過酷なくらいだ。
 昭和も四十八年になろうというのに、この村の雰囲気は江戸時代のそれである。
 電線も少ししか通っておらず、ポストは村はずれに錆び付いたものが一つだけ。
 屋根は揃って茅葺きで、洋風の建物はついぞ見当たらない。
 今、道を我が物顔で歩いているのは、人間ではなく牛だった。
 その牛の上に――若者が寝転がっている。器用なもので、まるで落ちる気配がない。牛の方も慣れているのか、嫌がる素振りをまったく見せなかった。
「ゆっくり急げよ一郎兵衛。あと三十分もしないうちに、雨が降るぞ」
「ンモォ~」
 若者の言葉に牛が応える。どことなく「それなら自分で歩け」と言いたげに見えた。あるいは「降るわけないだろ」と言いたいのかもしれない。
 空は快晴。雲ひとつない青空だった。
「なんだよ、疑ってるのか? 一郎兵衛、お前俺と何年付き合ってるんだ」
「――様ぁ~」
 そのとき、遠くの方から子どもが走ってくるのが見えた。甚兵衛に鉄下駄という妙な風体の少年である。若者はそちらを見て、牛からひらりと降りた。
「さ、運命様ぁ~」
 息を切らして走っていた少年は、無我夢中だったのか、止まりそこねて若者に激突してしまった。弾かれる形で尻餅をつく少年に、若者はそっと手を差し伸べてやる。
「なんだよ文次郎。相変わらずそそっかしいな、お前」
「さ、運命様っ!」
 文次郎と呼ばれた少年は、そう言ってぱっと飛び起きた。おお、と若者――式泉運命は感心の声を上げる。
「手ぇ使わないでよく起きれるな。尊敬していい?」
「そ、そんなことはどうでもいいんです!」
「分かったから落ち着けよ。ほら、これでも食え」
 何か言おうとした文次郎の口に、道端で拾った木の実を放りこむ。息を吸い込んでいた文次郎は、思い切りそれを喉につまらせてしまった。
「……なにするんですか! 運命様!」
「わ、悪かったよ。そんな怒るな。それで、用件はなんだよ。早く言えって」
「運命様が言わせてくれないんでしょう!」
 それもそうだ、と運命は口にチャックをする仕草をしてみせた。文次郎はそれにも突っ込みを入れたそうだったが、ぐっと堪えて、
「咲泉家のお嬢様がカンカンに怒ってましたよ! 会う約束があったの、すっぽかしたって言うじゃありませんか!」
「だって気が乗らなかったんだもん。なぁ一郎兵衛」
「ンモォ~」
「だもんじゃないですよ! まったく、いい年した大人なのに……」
「おいおい、俺はまだ十八だぜ。お前こそ十なのに爺さんみたいに口うるさいな。上泉家ってのはみんなそうなのか?」
「違いますよ」
 はぁ、と文次郎は溜息をつく。いつも運命のペースに惑わされ、苦労しているのだ。
「日本の法律はどうか知りませんが、この里で十八はもう大人ですよ。いい加減お嫁さん決めないと、式泉家がどうなることか……」
「分かってるよ。でも俺、見合い結婚とか嫌だし。ほら、男と女は好き合ってくっつくのがもっとも幸せだと思わない?」
「くっつけば自然と上手くいくもんだ、と大人たちは言ってますが」
「どうだか。賢しら顔でそんなこと言う奴に限って、他所では旦那や嫁さんのこと悪く言ってたりするんだぜ。例えば……」
「実名挙げないでくださいよ!」
「はいはい」
 運命はこれ以上会話を引き伸ばしたくなかった。さっと一郎兵衛の背中に戻り、目を閉じてしまう。
「とにかく、俺の相手は俺が決める。それでいいだろ」
「よくないですよ。ただでさえ式泉の家は運命様一人で立場も弱ってるって言うのに」
「そんなもんどうでもいいさ。――――どのみち俺は魔術で大成することなんかない。お前なら分かるだろ」
 そう言うと、文次郎は口をつぐんだ。それは運命にとって――魔術師・式泉運命にとっての急所だった。心底運命を心配している文次郎にとっても、それは急所に等しい。
 式泉運命は異法人である。
 世界の理――魔術師たちの言う『法』とは異なる『異法』を体内に宿した能力者。それは『法』を扱う魔術師と根本を異とする存在である。
 魔術師は『法』を利用した現象を引き起こす術を黒魔術と言い、それとは別の、人々が生み出した第二の法――『幻想』を利用する術を白魔術という。
 独自の『法』を有する運命は、黒魔術が使えない。正確に言うとまったく駄目なわけではないのだが――ほぼ使いものにならない精度なのである。
 泉家は白魔術を中心に扱っているが、それでも黒魔術が駄目というのは痛かった。
 ちなみに――この時期、異法人に関する詳細な情報は、魔術師や能力者たちにもなかった。異法人の性質を推察し、黒魔術との相性が悪いと結論づけたのは、式泉の家が初期の一例であった。多少時間の前後はあれど、似たような発見は世界各地で見られてはいる。だが、式泉家が、異法人とは何かという命題に取り組んだ鏑矢の一つだったことに違いはない。
 この推察がいわゆる裏の世界に広がっていくのは、中国に本部を置く異法隊が、様々な臨床実験を行い、結果を正式に発表してからのことになる。
 この山村――通称『泉の里』の大人たちは、運命がそういう存在だとは知らない。しかし彼が普通の魔術師とは違うということには薄々感づいているはずだ。
 知っているのは運命の家族と、この文次郎だけである。
「俺ぁこの村苦手なんだよ」
 ぼそっと言った。
 元から苦手だったわけではない。ただ、自分が他の人と違うことに気づいてからは、急に周りが別物に見えて、馴染めなくなってしまった。
 咲泉の娘も嫌いなわけではない。だが、好悪とは関係なく、一緒になると考える気にはなれなかった。おそらく、どちらも幸せにはなるまい。
「だいたい昭和も四十を過ぎた御代に、家名を残せだ家臣だ主君だ、時代錯誤もいいところだぜ。山向こうに行けば電車だって走ってる。車がたくさんある町だってあるし、東京なんか山より高いビルがわんさかあるそうじゃねぇか。一家に一台、テレビと電話と冷蔵庫。洗濯機だってあるんだぜ?」
 いちいちリアクションをつけて喋る運命に、文次郎は何か言いたげな表情を向けた。しかし言っても無意味だと思ったのか、ぷいっと踵を返して走り去ってしまう。
「早く帰れよー! もうすぐ雨が降るぞー!」
 そう忠告してやると、文次郎は途中でくるりと振り返り、
「運命様の馬鹿っ! 臆病者ぉ! おたんこなすー!」
 ありったけの罵声を浴びせて、再び走っていってしまった。
 残された運命は、しばらくきょとんとしていたが、やがて溜息をついて一郎兵衛の上に寝転がる。
「……分かってるよ」
 空を見上げる。
 運命の見立て通り、徐々に雲行きが怪しくなってきていた。

 夜。
 運命は屋敷をこっそり抜け出して、夜のあぜ道を一人歩いていた。足取りは軽い。
 この村には二通りの人間がいる。魔術に精を出す人間と、農業に精を出す人間。
 夜になると、前者は家の中で様々な実験や魔術式の考案に熱中する。後者は日中頑張った分、ゆっくりと休んでいる者がほとんどだった。
 だから、運命のようにどちらにも属さない第三者にとって、この時間はもっとも気楽なものだった。と言って、彼が普段何もしていないわけではない。父の研究を手伝うこともあれば、母の農作業を手伝うこともあるし、家人たちの仕事を手伝ったりもする。要するに腰が落ち着かないのである。
 そういう男にとって、誰にも邪魔されず我が物顔でやれる夜の散歩は、いい息抜きになる。それに、足取りが軽くなる理由がもう一つあった。
 運命は村の外れに向かって歩いていく。行く先には、ある人がいるはずだった。
 その人と運命が初めて出会ったのは、この年の頭頃。肌寒い正月の散歩の途中、山への道から姿を見たのが最初だった。
 遠かったので、向こうは運命に気付かなかった。しかし、運命の方はというと、その人の姿を一目見た途端、腑抜けのようになってしまった。
 それから、運命はそれとなくその人の姿が見える方に足を向けるようになった。
 咲泉の娘との縁談を渋っているのは、運命の特異性ばかりが理由ではない。
 式泉運命は――恋をしていたのだ。
「……お」
 この日も、その人の姿が見えた。
 白を基調とした、羽模様の着物。足元まで長く伸びた艷やかな黒髪。どこか茫洋とした眼差しは、いつも月を見上げている。
 山へ向かう道の脇。切り立った場所に、彼女は時折立っている。
 年の頃は十六程度だろう。しかし身に纏う雰囲気は、その年頃の女性のものではなかった。
「――やあ、未了さん」
 後ろから声をかける。
 未了と呼ばれた女性は振り返り、運命に小さく会釈した。
 いつもそうなのだが――憂いを帯びた表情である。
「こんばんは、運命」
 こうして会話するようになったのは、最初の出会い――運命の一方的な発見とも言えるのだが――から数日後のことだった。
 勇気を出して運命の方から話しかけた。
「こ、こここんばんは」
 いつも人一倍動く口が、そのときはまるで頼りにならなかった。味気ない言葉が弱々しく出て、運命は一瞬声をかけたことを後悔したものだった。
 しかし、そのときも彼女は自然とこちらを振り返り、驚く素振りをまったく見せず、今と同じように挨拶をした。違っているのは、名前を呼ぶか呼ばないかくらいである。
 運命の恋は、今のところそれだけしか進歩していない。
 運命は未了の隣に腰を下ろし、じっと月を見上げた。未了の方も何も言わない。
 こうした無言の一時が、運命は嫌いではなかった。よく回る口は自分をごまかすためのものである。未了といるときは、ごまかす必要がない。だから自然体の自分でいられた。
 もっとも、村の大人たちがこんなところを見れば、黙っていなかっただろう。
 未了は、この里にとって――否、全国に散っていった無数の『泉』の人間にとって、重要な人間だったからだ。
 出会って間もなく、運命はそのことを知った。そのときは驚いて、未了と会うのをやめようかとも思った。
 彼女は『泉の姫君』だった。
 伝承をそのまま信じるなら、運命にとって遥かな先祖でもある。泉の家は彼女から始まったと言っても過言ではないのだ。
 そんな人がなぜ未だに生きているのかは分からない。ただ、千年以上もの間、その姿は少女のままであるという。
 泉の者たちは長い歴史の中で移動を続けてきた。同じ魔術の家柄でも、権力に近しい位置にいた飛鳥井や奈良塚と異なり、泉は民衆側に属していた。特に鎌倉から室町にかけての頃は、集合離散を繰り返し、全国各地に泉の里が広がっていったという。
 彼女は各地に点在する里の回っていた。特定の里に定住はしなかった。彼女がそこに定住すれば、その里が権威を持ち、横に広がっていた泉の在り方が変わってしまう。だから彼女は、均衡が崩れないように旅を続けていた。
 しかし江戸時代、社会が成熟した。泉の里も大名たちの領地に組み入れられていき、少しずつ独自性を失っていった。民衆的な魔術の家柄だっただけに、社会の変容の影響が大きかったのだろう。
 少しずつ『泉の里』は消えていった。
 彼女がこの村に来たのは数年前のことだった。運命はまったく知らなかった。大人たちは彼女の存在を隠していたのである。
 それまで彼女がいた村は、地域活性化により新しい人々を積極的に受け入れていくことにしたのだという。そんなとき、何年経っても同じ姿の自分がいては不都合だろうということで、そこを離れたのだそうだ。
 あとはここだけらしい。他に、『泉の里』はもうないのだそうだ。
 つまり――彼女の居場所は、もうここだけなのである。
 運命はこの村が苦手だった。正直、飛び出してよそに行きたいと思っている。
 未だここにいるのは、彼女がいるからだった。
「未了さん、酒でもどうかな」
 台所からこっそりくすねてきたものだ。
「月見に酒はかかせないでしょ?」
「――現行の法律では、二十歳未満だと『あるこおる飲料』は飲めないと聞いていますよ」
 真剣そのものの表情だったが、アルコールの言い方が妙に舌足らずな感じでおかしかった。
「大丈夫大丈夫。甘酒だから。アルコールはないない」
 言って、とっくりを未了に持たせると、すかさず甘酒を注いだ。
 未了は若干戸惑ったようにそれを見ていたが、断るのも悪いと思ったのか、
「ありがとう。いただきます」
 と、両手で戴くようにして飲み始めた。
 一方運命は、手早く自分で注いで一気に飲み干した。
「いい飲みっぷりですね」
 感心したように未了が言う。
「私だけでは悪いですし、御酌を致しましょうか」
「い、いや。それはさすがに勘弁です」
 そう言うと、未了はかすかに眉尻を下げた。始祖相手に酌をさせるのはまずい――運命の言葉をそんな風に受け取ったようだった。泉の人間は、大抵そんな風に彼女と接するのである。
「遠慮はいりませんよ」
「遠慮ではないですよ。いや、本当にいいですから」
 運命が酌を拒否したのは、まったく別の理由によるものだ。だが未了にそれが伝わるはずもない。
 二人はしばらく、静かで不毛なやり取りを続けるはめになった。
 結局、未了に押し切られる形で運命は御酌されることになってしまった。緊張でとっくりが震えている。
 甘酒ではあるが、もう酔ってしまいそうな心地だった。
「さ、どうぞ」
「い、いただきます」
 一気に飲み干すのは少し勿体ないかな――などと思ったのは束の間である。こちらに向けられた未了の眼差しを見た途端、照れ臭くなって一気に飲み干してしまった。
 会話はそれっきりである。
 未了は自然と、運命は自らを落ち着かせるために、それぞれ月の方に視線を戻した。
 月は満ち欠けはするものの、いつもそこにある。いつも変わらぬ太陽の輝きとは、まったく異なる趣きが感じられた。
 運命は月の方が好きである。太陽は少し眩し過ぎた。
「未了さんは、月がお好きなんですか?」
 夜風によって火照りが静まった頃、運命は聞いてみた。なぜよくここで月見をするのかを聞くのは野暮な気がしたが、好きか嫌いかくらいはいいだろうと思ったのだ。
「そうですね。きっと好きなんだと思います」
 どこか曖昧な言い方だった。
「習慣なんです。月を見るのが。ただ、どうしてそういうことを始めたのかは、もう覚えていないのですが」
 千年以上も生きてきたのだとすれば、忘れるのも無理はない。ただ、ずっと続けているということは――きっと何か強い思い入れがあるのだろう、と運命は思った。
 遠い眼差しで月を見上げる未了の姿は、とても綺麗だった。
 運命は、自分の心の臓が跳ね上がる音を聞きながら、
「未了さん、どこか月みたいな雰囲気ありますよね」
「あら。そうでしょ――」
「す、好きですよ。月もみりゃうさんも――」
 ってうわぁ……、と運命は頭を抱えて仰け反った。
 噛んだ。肝心要の場面で噛んだ。
 しかも告白する相手の名前の方を噛んだ。せめて噛むなら月の方だろ、と心で叫ぶ。
 死んでしまいたかった。しかしそれも怖かった。
 恐る恐る未了の方を見る。いつも通りの憂い顔で「すみません、よく聞こえなかったのですが――」などと言ってくれることを期待しつつ。
 しかし、期待は外れた。
 未了はぼうっとした表情で運命のことをじっと見ていた。
 自分が何を言われたのか、理解が追い付かないのだろう。
 彼女からみれば、運命など子どものようなものなのだから。
「あ、あの。未了さん。今言ったことは――」
 慌てて取り消そうとして、運命はぎりぎりのところで思いとどまった。
 ――嘘は言ってねえ。
 開きかけた口を一回閉ざし、表情を引き締めて、
「――本気です。俺は未了さんに惚れてるんだ」
 改めて、思いを打ち明けた。
 二人はしばし無言で見つめあった。
 運命にとっては、地獄のような時間だった。心臓がばくばく音を立てているし、唇はカサカサに渇いていた。
 未了は、少しずつ自分が置かれた状況を理解してきたようだった。透き通るような白い肌が、ほんのりと赤くなっていく。
「さ、運命。あなたは何を……」
「俺は、ほ、本気です」
 こうなったら阿呆になれ。そう思って、運命は先程と同じ言葉を繰り返す。
「俺は、未了さんに惚れたんだ!」
 今度は、未了の顔が目に見えて赤くなった。視線を運命から逸らし、俯いてしまう。
「あ、あなたは……何を言っているのですか!」
「告白してるんです! 一人の男として!」
「……っ」
 運命が更に押す。すると、未了はすっと立ち上がって、足早に歩いて行こうとした。
「ちょ、ちょっと未了さん! 返事は――」
「……」
 未了は立ち止まり、振り返る。
 凛とした表情。赤くなっていても、気品はまるで損なわれていない。
 初めて見たときも思ったが――やはり美しい。
 見た目の問題だけではない。その姿が、在り方が美しく見えた。
 一方で、どこか危うい気もした。美しいし、放っておけない。大事にしたい。
 そう思って、勇気を出して告白したのに、返事も貰えないのは酷過ぎる。
「返事は、待ってください」
「それは――」
「気持の整理がつかないんです。こういうことは――きちんと考えて応えたいのです」
 そう言われては、これ以上強く出れない。
 告白というのは、自分の思いを相手に伝えるものだ。相手に答えてもらうための言葉ではない。貰えるに越したことはないが、無理に引き出しても、それは相手の本心にはならないだろう。
「じゃ、じゃあ一つだけ!」
 それでも、何か繋がりを残しておきたかった。このままだと、自分と未了の縁がここで切れてしまうのではないか。そのことが、運命には恐ろしかった。
 だから、
「いつでもいいです、返事は。振られたらすっぱり身を引きます! でもそうじゃないなら俺はずっとここに来ます。あなたに会いに来ます! それで、絶対好きになってもらえるように頑張ります!」
 と、頭を下げた。

 運命の告白はすんなり通ったわけではない。未了本人の承諾以外にも、乗り越えなければならない壁は数多あった。
 だが、懸命に思いをぶつける式泉運命を、未了は受け入れていく。ここではその仔細について触れないが――式泉運命の懸命さは、人を惹きつける何かがあったということなのだろう。
 先の話になるが、二人の間には三人の子どもが生まれる。
 八島優香。榊原遥。冬塚涼子。
 彼女たちがこの物語に姿を現すのは――まだしばらく先のことになりそうである。