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楠木正成(北方謙三)

 中央公論新社での北方謙三南北朝は「悪党の裔」→「道誉なり」→「楠木正成」という順番で発表され、私もその流れに沿って読み進めてきました。ところどころで前二作とリンクさせつつ、南北朝の英雄とされる楠木正成を等身大に描いた手腕はさすが。
 ただ、最初に本作を読んでいたらちょっと分かりにくいところがあったかもしれません。まあ南北朝時代は元々分かりにくい時代なんですが。
 描かれるのは臆病であり大胆、悩み続けながらも決断を下す、失望を胸に希望を求めた、という人間臭い楠木正成。地獄のような千早城を乗り越えた先にあったのが失意だったというのは切ないところ。
 正成がその命を落とす湊川まで描かなかったのは、そこまで行かずとも十分に正成という男を描ききったからでしょうか。私はそういう風に受け取ったので、それに関しては特に不満はありませんでした。
 人は利によって動く、という悪党の在り方を語る正成を見ていると、なんとなく「竜馬がゆく」の竜馬を思い出します。尊王攘夷に熱中する周囲を少し冷めた視線で眺めていたという点で、両者からは少し似た印象を受けました。

楠木正成〈下〉 (中公文庫)
楠木正成〈下〉 (中公文庫)北方 謙三

中央公論新社 2003-06-24
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