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ローマ人の物語/クラウディウス

 駄目だ。最後のクラウディウスに対する仕打ちのせいで、セネカが嫌な人間に思えて仕方がない。実際はそれだけの人ではないんだろうけど。
 そんなわけで今日もローマ人の物語。文庫版は短くてさくさく読み進められるのがいい感じですね。巻数は凄く多いけど、一冊一冊は安めだし。総合的に見るとどうなんだろ。
 閑話休題。
 この巻では、失政を繰り返したカリグラの後を引き継いだクラウディウスが描かれています。前任者よりずっと年上。しかも前任者を暗殺した者たちに擁立された皇帝。失政者カリグラの後だから即位はスムーズに行われたけど、当時の人々はこの新皇帝にどんな感情を抱いたんでしょう。
 そんなクラウディウスは、ずばり情けない中年でした。生まれつき身体が弱く公職からも離されていたので、人にどう見られても「俺なんてそんなもんだよ」と考えてしまう。これがティベリウスなら完全に黙殺しそうなところですが、クラウディウスは何か開き直っていたような感じがします。「俺なんかどうせ」といった風に。
 ただし、クラウディウスはいわゆる歴史学者として生きてきた人だったので、先人の教えを生かす、という点では一流。イメージ的には、長年図書館の司書をやっていたおじさんが突然内閣総理大臣に任命されたようなものです。頭は良かった。地道な作業をコツコツと続けることも出来た。だから元老院にも、彼に協力する人が出てきたんでしょう。
 ただ、いきなり知らない人だらけのところに放り出されれば、誰だって不安になる。しかもクラウディウスは「俺なんかどうせ」気質の人だったから、かなり心細かったんじゃないかな、と思います。そこで自分と親しい奴隷を重用するわけですが、これで元老院が不満を抱く。格下扱いしてきた相手に実権取られたんだから、まあ不満も出て当然かもしれません。
 おまけにクラウディウスは家庭に、特に妻に恵まれなかった。気の弱い権力者ということでその妻はいろいろ問題を起こし、ある者は自害を命じられ、ある者は旦那であり皇帝でもあるクラウディウスを毒殺する。どんだけ気の毒な人なんだこの人は。
 でも、クラウディウスには何か親近感を抱いてしまうんですよねえ。私も歴史好きですし、身体もあまり丈夫じゃないからか。実際、現代でもこういうクラウディウスみたいなおじさん、いそうな気がします。皇帝と言うには情けなかったけど、学者としてなら良い人だったんじゃないかな、と思います。実際、学者のままで生きてた方が当人にとっては幸せだったんじゃないだろうか……。
 でもあのガリア民族の元老院入りに関する演説は素晴らしいと思いました。史家たちが称賛したっていうのも頷けます。


ローマ人の物語〈19〉悪名高き皇帝たち(3) (新潮文庫)
ローマ人の物語〈19〉悪名高き皇帝たち(3) (新潮文庫)塩野 七生

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おすすめ平均 star
star「敬意」を払われることの重要さ
starクラウディウスは悪名高き皇帝じゃない。
star真骨頂

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