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日暮の旅行日記・京都&大阪2008/第19話「大阪ウォーズ・リターンズ」

 なぜうちの大学は卒業式を二日に分けてやるのだろう……。
 他にも明日使うガウンを今日いちいち持って帰らなきゃいけなかったり、何か面倒というか無駄が多いもんです。これで明日、短時間で式が終わったら理不尽と言わざるを得ない。……いろいろあって今日はテンションが微妙です。会社関連でありがたい話があったのが唯一嬉しいことですかねえ。

 とりあえず京都旅行日記。大阪の夜の一風景をお楽しみ頂ければ幸いです。

 とうに限界だったのだ、と気づいたのはあまりに遅く。
 そのときには、既に緑が倒れていた。
 大阪に到着して間もない夜のことだ。『くいだおれ』で調子に乗ってあれこれと口にしていたのだが、食後、緑が急に突っ伏して動かなくなった。
 単なる疲労だろう、と休ませておいたのは正解だったのかどうか。
 何十分経っても目覚めない緑に、俺とピーターは不安を抱くようになっていた。
「まずいな、旅行前も体調崩してたって言ってたし。早めに宿に戻った方がいいかもしれない」
「……いや、もう少し休ませてからじゃないと。移動するのも無理そうだぞ、この様子だと」
 確かにピーターの言う通りだ。まあ、時間が許す限り居座るのも悪くはない。俺たちもそれなりに疲れてるし、休憩にはちょうどいいだろう。
 そんな風に考えたのが一時間半前だ。同じ店にこれだけ居続けると、さすがに飽きが来る。そろそろ起こして帰ろうか。あとはホテルで寝かせればいいだろう。そんな自分本位な考えが脳裏をよぎったとき、ようやく緑が蘇生した。
「……」
 とは言え、完全蘇生には程遠い。顔中に「疲れた」と書いてある。でもまあ、帰ることぐらいは出来るだろう。
 少々酷な気もしたが、俺たちは緑を起こしてホテルに戻ることにした。帰り際、ホテル下にあったファミリーマートで夜食と酔い止めを買っておく。歩いているうちに回復したのか、緑の顔色は多少ましになっていた。
 が、部屋に戻って間もなく、再び夢の世界に召されてしまった。おそらく良い夢ではあるまい。関係ないが、良い夢というのは本当にあるのだろうか。俺は夢を見ると大概何かに殺されて目が覚める。見て良かったと思える夢なんぞ一つとしてない。
 そんなことをぼんやり考えていたものの、やがてそれにも飽いた。ぼーっとしているのは嫌いではないが、友人と一緒にいるときにそうしてると、どうしようもなく虚しくなる。
 ここで俺がくだらない考えを起こさなければ、あんなことは起きなかった。普段は煽り役と自負している俺だが、この晩だけは、火付け役をやってしまったと猛省している。
 そう、こんなことを言わなければ良かったのだ。
「見ないで描いてみよう、第一段!」
 いわゆる、誰もが知ってる、でも完全に思い出して描くとなると微妙に難しいキャラクターを描いてみようという遊びだ。
 確か最初の題材は、某火星猫社長だ。もはや手元にないので公開は出来ないが、ピーターのが並として、俺の描いた社長は「歴史上最大の悲しみ」とまで言われる出来となった。
 その後もジブリアニメのとなりのアレとか、マクドナルドのアレなどを描きつつ、夜はどんどん更けていく。こういう遊びは一旦始めるとエスカレートするもので、内容はどんどんカオスな様相を増していった。
 気づけば、イルミの目をしたギタラクルとハッサンが二人で踊っている場面を描いていた。中途半端に可愛い系になってしまったゾーマがいた。
 特にゾーマがまずかった。多少回復して起きてきた緑がこれに感化されたのか、本格的にゾーマ改造計画を始めてしまったのだ。更にピーターはストーリー作りに目覚めたらしく、リレー形式で小説っぽいのを書き始めようと言ってきた。俺と緑はかなり無茶をやって次々と登場人物を増やした。
「削除削除削除削除……!」
 その度に、登場したキャラを片っ端から殺していくピーターは、まるでデスノートを手にした魅上のようだった。これまたどうでもいいが、リレー小説は過去何度もやって、一度としてまともに終わったことはない。よほど志向が通じ合っている者同士でないと話にならないのだろうか。
 このリレー小説も今は手元にないので詳細を述べることは不可能だ。
 あえて要約するなら、まず緑が死んでゾンビになった。緑緑と言われ始めたのはこのゾンビ化のせいだ。ピーターは緑の描いたゾーマと幸せに暮らした。長男サンチョ次男ソーマは色々な意味で壊れたので、晩年は苦労したものと思われる。壊したのは主に俺だが。
 と、ここまで読んでもサッパリ理解出来ないかもしれない。それが正常と言うべきで、このときの俺たちは本当に壊れていた。どうかしていたとしか思えない。
 気づけば、三時を過ぎていた。
 寝ることにした。

 大阪の夜編―完―