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この国のかたち/一

 ローマ人の物語は、文庫版がこの前紹介した「終わりの始まり」までしか出てないので、しばらくお休みです。というわけで、久々に司馬遼太郎さんの著作に戻ることに。
 長編小説は「韃靼疾風録」とかを除くとあらかた読んだので、たまには趣向を変えてエッセイの方でも。
 今回読んだのは「この国のかたち」。事前に氏の著作を読んでいればより楽しめると思いますが、この作品から読み始めても内容はすんなり頭に入るかと思います。歴史小説は分かりやすく伝えるのが難しいと思っているのですが、そういう意味では司馬さんはさすがという印象ですね。
 ちなみに、本シリーズを通して感じられるのは「昭和初期の軍事政権への批判」。これは徹底していて、現地で参戦した人の言葉なだけに重みがあります。司馬さんに限ったことではないですが、戦争を知らない世代からすると妙な感覚ですね。まだ百年経ってない時代の話なんですが。
 特に取り上げられるのは「統帥権」。私は公務員試験を一時やってみようと憲法や民法を軽く学び、「法は解釈次第」というのをおぼろげながら感じ取りました。そういう観点からすると、統帥権というのは肥大化した解釈の化け物という印象があります。それ自体も恐ろしいですが、こういうものが「解釈」によって誕生した世の中というのも恐ろしいもんです。
 そういう戦争に関する話題だけでなく、日本文化のさり気ない点について触れたり、近隣諸国(中国や朝鮮半島)の文化について触れていたりもするので、様々な視点から楽しめる作品だと思います。
 小説作品を読んで司馬さんのファンになったという方は、より濃厚に氏の考えに触れることが出来るので、こういうエッセイもお勧めですよ。人物主体でないという点以外は小説とそんなに雰囲気も変わりませんしね。

この国のかたち〈1〉 (文春文庫)
この国のかたち〈1〉 (文春文庫)司馬 遼太郎

文藝春秋 1993-09
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おすすめ平均 star
starこれも小説と同列に扱うべき堂々たる司馬作品である
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