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日暮の旅行記・伊豆下田/下田の海

 寝姿を降りてから、宿に向かいました。駅からバスに乗って移動することしばし。その間、私は窓の外に見える下田の風景を眺めながら、やはりここは一種の秘境だったのだろう、などということばかり考えていました。
 途中、白浜海岸の前を通り過ぎて、古代の風景を懸命に思い浮かべようとしましたが、どうしても出来ませんでした。風景と言えるようなものもなく、ただ生い茂る森林と、その隙間から覗ける海があった、という程度の想像しか働きません。
 やはりこの地域は海運あってのものだと考えたとき、不意に日本の海運史についての興味が湧き上がってきました。
 古代の日本は海外との交流があり、特に朝鮮半島との関わりは日本書紀等によく記されています。ただし技術力はそう高いものではなかったように思います。極東という位置にあったため、あまり遠方に船で繰り出すという発想が湧かなかったのかもしれません。
 また、そういう事情から古来日本海側の方が船の往来は盛んだったのではないかと思います。関東の海はその点奥地であったと言ってよく、活躍の場に恵まれない時代が長く続きました。ただ、鎖国と言う方針のため、船というものが日本列島を沿うようにして動くものになり――多少の皮肉を感じますが――この近辺の海が賑やかになってきたのではないでしょうか。

 宿に着くと、穏やかで愛想の良い老紳士が出迎えてくれました。疲れたので一旦部屋で休み、その後露天風呂に出向きました。
 周囲に緑が多いせいか虫が多く、夜ということもあって、電気の点いている風呂の方に集まって来て辟易した記憶があります。昔から私は虫が駄目で、そのせいか折角の露天風呂も、あまり楽しめずに終わりました。