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ローマ人の物語/ティベリウスとカリグラ

 紀元前から紀元後に時代が移り、初代皇帝アウグストゥスが世を去ってからのローマの物語。
 ティベリウスはアウグストゥスの後を継いで二代目の皇帝となるも、その業績は当時の人々には理解されがたいものだった――。

 歴史を見ていると、二代目というのはあまり評価されないケースが多いなあ、とつくづく思います。なんというか、ほとんどの『二代目』は地味なんですよ。この話で描かれるティベリウスもそんな二代目の一人です。まあ見方によっては三代目とも言えるかもしれませんが(カエサルを初代とすれば)。
 ティベリウスに課された任務は、広大なローマ帝国の体制を盤石のものにすること。この点なら彼は抜群の成果を挙げたと思います。
 しかし彼の仕事は地味だった。加えて彼自身も他者に理解を求める姿勢に欠けていたので、同時代人や古代の史家からの評価は高くなかった。……分かりやすく言ってしまえば、仕事は出来るが嫌な奴、という印象だったんでしょう。カエサルやアウグストゥスは政治におけるアピールの重要性を分かっていたけど、ティベリウスはその点では二流だったんじゃないかな、と。正論ばかりを述べる人に、他の人はついていかない、というのは今も昔も変わらないのかもしれません。

 次いで皇帝になったカリグラは、ティベリウスとは正反対の印象でした。アピールは存分にやる。支持を得ることの重要性を分かっていたという点で、彼はある意味一流だった。
 ただ、中身がまったく伴わなければ意味はない。彼の政治はアピールにばかり全精力を投入したがために、それ以外の面では失策ばかりだった、と。
 年齢を考えれば無理もないんでしょうけどね。二十歳そこそこの若者に帝国の全権を委ねたということで、元老院や市民にも責任はあると思うんですけれども。

 この二人及びその後のクラウディウスとネロを見ていると、政治における有権者との関係の難しさというのを考えずにはいられません。有権者に気を使って政治の本質を見失うか、政治に専念するあまり有権者への対応をおざなりにするか。
 後世の『歴史を見る立場』からだと、ティベリウスかクラウディウスが良いのでは、と思うんですが、同じ時代に生きていたら、私も彼らのことを嫌っていたかもしれないな、と思います。


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